「よし、何者なのか隠さずに言え」
そう言ってオレと斗貴子さんを見下ろす『悪一文字』の法被を着た男と日本刀を腰に差した人達の視線を受け、オレはビビりながら「ここは本当の事を言うべきなのかな?」と斗貴子さんにアイコンタクトを送る。
「(私に振るな。君のご先祖様だろう)」
しかし、あっさりと切り捨てられた。
「……えと、信じて貰えるかは分からないけど。オレは、ああ、オレの名前は武藤カズキで、何て言えば良いのか。うん、オレは糸色景さんの子孫です」
ハッキリと伝えた瞬間、空気が凍った。
これは普通に失敗しちゃったヤツだと斗貴子さんにヘルプサインを送ってみるけど。とことん無視している斗貴子さんの口許が少し吊り上げっている。
オレの焦るところを楽しんでるの?
「相楽、気苦労が耐えないな」
「やめろ。斎藤、今は頭が痛てえんだ」
「おろ。子孫でござるかあ……」
「ワイ達は離れとくか」
「えーっ、面白そうなのにぃ」
そんなやり取りをしながら法被を着た男の人が頭を押さえるように溜め息を吐き、オレの頭を鷲掴みにして思いっきりぶん投げた。
「うおっ、わあああぁあっ!?」
「吐くならもっとマシなウソを言えッ!」
「がはあっ!?」
「カズキッ!?」
地面に叩き伏せられた瞬間、オレの腹に向かって振り下ろされる拳の形の違和感に気付くと同時に二重の極みの衝撃が駆け抜け、斗貴子さんも予想外だったのか。慌ててオレに駆け寄ってきてくれた。
「左之、流石にやり過ぎでござるよ」
「オイ。今のは極み外しか?」
「ごほっ、ギリギリ土壇場で成功したあ……」
錬金戦団のトレーニングルームで奇ちゃんに教えて貰った二重の極み対策だったけど。まさか、いきなりぶっつけ本番で成功させられるなんて。
「カズキ、コイツの私が相手をする」
「いや、嬢ちゃんと喧嘩する気はねえよ、それに少しだけお前達の話を信じてやるよ。まあ、お前が景とオレの孫か曾孫か知らねえが、景のヤツが信用してたのもあるけどよ」
その言葉に思わず、彼を見上げる。
じゃあ、この人がさのすけさん?
オレのひいひいおじちゃんで、二重の極みと蛮竜を使いこなせる当代の遣い手ってことでいいのかと血反吐を袖で拭いながら考える。
「ありがとう。ひいひいおじいちゃん」
「……ちょっと待て、ひいが一つ多くねえか?」
「そうなの?斗貴子さん」
「少なくともデータに残っているものだとカズキの方で合っている」
斗貴子さんの言葉に安心するオレと違って、子孫の数を指折り考えている彼の姿に、なんか夏休みの宿題の多さに寄宿舎の広間で悩んでいたまひろみたいだなと思って笑ってしまう。