相楽左之助。
斗貴子さん曰く日本交易業界に大きく貢献し、日本が先進国として有名になってきたのもこの人の存在によるものだそうだけど。ひいひいおじいちゃんのアグレッシブさの方がオレとしては気になる。
武藤君とオレを呼ぶひいひいおばあちゃんの声が賛さんと重なる。少し不思議な雰囲気はまひろに似ているけど、彼女の視線は穏やかに見守る温かさだ。
「暫くは此処で寝て下さいね」
「ありがとうございます」
「すまないな」
斗貴子さんと同じ部屋なのは男の子として精神的な特訓になるものの流石は明治時代の生活、ライトスタンドじゃなくて行灯が置かれている。
「カズキ、二重の極みを受けていたが大丈夫か?」
「うん。平気だよ、ひいひいおじいちゃんも殴るときに加減してくれてたみたいだし」
「それなら良いが、余り無理はしないように」
「出来る限り努力するよ」
「そこは『はい』か『分かった』だろ。全く」
屏風越しに呆れた声で溜め息を吐く斗貴子さんの声を聞きつつ、銀成高校の学ランから着物に着替える。本家に行くときは着物が多いから、あんまり着物自体には新鮮さは感じないかな。
そう思いながら振り返ると着物を着た斗貴子さんと目があった。良いね、うん、オレの彼女は世界一、いや、絶対に宇宙一可愛い。
「ウンウンと何を頷いてるんだ?」
「えっ、ああ、綺麗だなって」
「ば、ばかもの!」
斗貴子さんがバルキリースカートを使おうとした瞬間、ふと視線を感じて後ろに身体ごと振り返って襖の方を見ると女の子……しとりちゃんが立っていた。
「けんかはめっ!」
「「……はい」」
「ん!」
にっこりと笑った顔がまひろと重なり、まだ半日も経っていないのに懐かしさを覚える。みんなは元気にしてるかな?なんて考えながら、斗貴子さんと一緒に廊下に出ると相楽左之助さん、ひいひいおじいちゃんが蛮竜を担いで中庭に立っていた。
ひいひいおばあちゃんはいない?
「持ってみろ」
しかし、キョロキョロと辺りを見渡していたオレにずいっと蛮竜を差し出してきたひいひいおじいちゃんに促されるままに蛮竜の柄を握り締めた瞬間、バリバリィッ!!と青白い雷が弾け、オレの手を拒んだ。
「蛮竜が、拒んだのか?」
「大丈夫。斗貴子さんは見てて」
「いや、止めとけ。今の反応でコイツの継承権だとかいう話の意味は分かった。何かコイツが妬むようなものをお前が隠し持ってるだろ」
武器が嫉妬するの?と聞きそうになるけど。
賛さんも蛮竜以外は使わなかった。核鉄は持っている筈なのに、使わなかった……いや、蛮竜の拒絶感を考えると使えないんだ。
蛮竜、さては面倒臭い武器なのか?