「はあ、今日も掴めなかった」
そうオレは夜遅くに縁側で愚痴を溢す。
今日だけで斗貴子さんが着物の裾をはだけてバルキリースカートを使っていた事を問い詰められ、左之助さんとひいひいおばあちゃんに未来の事情を素直に話すなど沢山のことがあった。
ただ、この時代の錬金戦団に対するひいひいおじいちゃんの態度と怒り具合に不安を抱き、それとなく緋村さん達に聞けばアメリカに居たとき、しとりちゃんが産まれそうな瀬戸際に襲われた事がある。
そこから海外を巡っているときも狙われた経験のせいだと教えてくれた。
多分、この時代の錬金戦団はブラボーや火渡さん、剛太達みたいにしっかりと自分の心の意志を貫ける人じゃなくて、私腹を肥やす人達がまだまだ沢山居て、戦士達も心が折れていたんだと思う。
「武藤君、寝れないの?」
穏やかな声色で話し掛けてくるひいひいおばあちゃんの声にビックリして、後ろに振り返ると何枚か半纏を羽織ったひいひいおばあちゃんが縁側の奥、居間の向こう側の廊下に立っていた。
此処に来るときに閉め忘れてたんだ。
「…おばあ、糸色さんに聞きたい事があるんだ」
「なんですか?それと、武藤君が私の事を糸色さんって呼びにくいならおばあちゃんで良いですよ。未来の私と左之助さんの子供なのは変わりませんから」
「うん、ありがとう。おばあちゃん」
やっぱり未来を見える話は事実なんだって実感できるほどに落ち着いているひいひいおばあちゃんに「オレが錬金戦団に居るのは嫌だったりする?」と、少しだけ戸惑いながらも問い掛ける。
「嫌、という事は無いですよ。偶然か必然かこの世には必ず人生の分岐点はありますから、武藤君の進むべき道がそちらにあるのなら、真っ直ぐ自分の意志を貫ける様に歩いて、困ったときは誰かを頼る事を覚えておけばいいんです」
にこりと笑うひいひいおばあちゃんの言葉を聞きながら縁側から見える満月を見上げる。もしもヴィクター化を止める方法が無かったら。
きっと、なんとなくだけど。
オレは月に向かっていたと思う。
「そうですね。じゃあ、困ったときや悩んだときはこう考えてみるのも良いですよ」
「どんなの?」
ゆっくりとひいひいおばあちゃんは指を空に掲げ、にっこりと微笑みながら言った。
「『俺は世界の中心。ならば世界は俺が救ってやる』。武藤君もこれくらい大胆不敵に思っても良いんじゃないですか?貴方の世界は貴方が中心、そう思えば人生の苦難や苦行も楽しく思える」
「世界はオレが救う、世界は自分を中心に回っている……ハハッ、おばあちゃんの言うことって何だか不思議と元気になるよ、未来の世界はオレが中心だ!」
そう言ってオレも拳を突き上げる。