ひいひいおじいちゃんと悠久山和尚に戦い方を教えて貰う度に強くなっているという自覚はあるのに、未だにオレは蛮竜の青白い雷撃を受け止める事が出来ず、手が焼けるような痛みを感じていた。
斗貴子さんとひいひいおばあちゃんに手当てして貰った両手を月明かりに照らしながら、道場の真ん中に置かれている蛮竜に視線を向ける。
あと少しで掴めそうなのに、どうしてなんだ。
「鉄砕牙みたいに自我を顕す様になったわね」
「てっさいが?」
夜食のおにぎりと豆腐とワカメの味噌汁、沢庵など持ってきてくれたおばあちゃんの呟きに聞き返す。てっさいが。初めて聞く名前だけど。
まさか、人の名前じゃないよね?
「鉄砕牙。文字に書けば『鉄を砕く牙』という戦国時代に世界を救った人間と妖怪の混血児、半妖の少年が振るっていた妖刀で、その蛮竜と同時期に存在していた伝説の妖器物の一種です」
「へえ、そんな物があったんだ……」
ひいひいおばあちゃんの昔話に感心しながらおにぎりを食べていると紫蘇と梅干しの酸味の良さに食欲を刺激され、すぐに一個目のおにぎりを食べ終わり、二つ目のおにぎりに手を伸ばす。
「あれ?その鉄砕牙って、まさか」
「えぇ、奈落を倒した妖刀ですよ。当時の事は知ることは出来ませんが、蛮竜の遣い手は半妖の少年と共に奈落を倒すために戦ったという可能性もあります」
すごい事を聞いてしまった。
でも、あの奈落が賛さんを一番に狙って殺そうとした理由も分かった。アイツは、それだけ賛さんの振るう蛮竜が怖くて仕方ないんだ。
───だったら尚の事、オレも早く蛮竜を使えるようにならなくちゃいけない。賛さんだけに不安を掛けるのは絶対にダメだ。
それに賛さんに何かあったら蝶野も心配する。
「武藤君、聞きたかったことがあるんです」
「なに、おばあちゃん?」
「君が戦うと決めた切っ掛けは覚えている?」
「オレが、戦うと決めたきっかけ?」
オレは裏山の廃工場でホムンクルスに襲われそうになっていた斗貴子さんを助けるために走り出した。そこから、激動のように蝶野や蝶野の造ったホムンクルス達と戦って、今も此処にいるのは、ずっと誰かを、みんなを大好きな家族や友達、斗貴子さんを守るために戦っている。
「オレは皆を守るために戦うって決めた」
ドクンッ! ドクンッ!! ドクンッ!!!
そうひいひいおばあちゃんの問い掛けに答えたその時、今まで聴こえてこなかった蛮竜の鼓動がハッキリと聴こえてきた。
今なら触れる。
そんな気持ちが溢れて、右手が蛮竜の柄に触れるも青白い雷撃は弾けず、むしろ温かくて身体の内側にエネルギーが流れ込んでくるのが分かる。
「おばあちゃん、これって」
「カズキ、今までお前は蛮竜の力を得るために頑張っていたが、お前本来の大切な人を守る意志ってのがなけりゃ蛮竜は振るえなかったんだよ」
いつの間にか道場にやって来ていたひいひいおじいちゃんの言葉に漸く気付けた。ここに来たから、ずっとオレは蛮竜に認められるために力を求めていた。
誰かを守る意志が、蛮竜を使える条件のひとつ。
「次は蛮竜を振るう特訓だな」
「はいッ!!」
今度こそ絶対に使えるようになってやる!!