「おばあちゃん、どう?」
「それなら迫力を出すために、こういう線を描いて」
「成る程、こう?」
「フフ、とても良いですね」
まだ、お休みを継続している間にひいひいおばあちゃんの作っている漫画……今で言えば絵草紙の仕事を手伝っている。かなり鉛筆やボールペンじゃない上に一度の失敗で一枚全てが台無しになるから集中力が必要だ。
静かな時間────。
意識を一つの事に集中して何かをするのって試験やテストの時ばっかりだけど。なんだか、いつもより意識が深く沈んで目の前の事に集中出来る。
「………く…」
和紙の繊維まで細かく見える。
「…う……くん…」
もっと、もっと、深く沈んでいける。
「武藤君、もう終わりましたよ」
ガッシリと両頬を捕まれて、ひいひいおばあちゃんの顔が間近にあった。終わった、もう描くのが終わったのかと手元の和紙を見つめる。
四十枚近かった漫画の束が綺麗に纏まっている。
「ほんとだ、終わってる…」
「まさか武藤君にも素質があるなんて」
「素質?」
「
ひいひいおばあちゃんの手伝いをしていただけなのに、まだ強くなれる可能性がオレにはあるんだ。コンセントレーション・ワン、集中力を高める技術なら突進技に使えるかも知れない。
「……あべさんってだれ?」
「札幌に居る林檎農家の人です」
明治時代の日本って、色んな達人がいるな。
「斎藤さんに伝えておきますね」
「あ、うん」
ゆっくりと立ち上がって仕事部屋を出ていくひいひいおばあちゃんを見送りつつ、日本最古にして現代技術に近い絵柄のひいひいおばあちゃんの漫画を読む。
もう数本しか現物の残っていない「うしおととら」もオレの部屋に置いてるヤツと同じだけど。墨の臭いと迫力が桁違いにすごい。
「ウチの家系って、なんなんだろう?」
「私は関与していないよ。武藤カズキ」
「その声はドクトル・バタフライ!?」
「どうやら本当に時空を渡ってきたようだね。しかし、余り長居すると君達の存在はこの時代のモノになってしまう、そう悠長に考えている暇はないよ」
いきなり窓の外に立っていたドクトル・バタフライの言葉に困惑しながらも確かに身体の重さを感じるようになっていたけど。
まさか、オレも斗貴子さんも過去の人間に成り掛けている?と自分の両手を見つめる。まだ、沢山の事を教わりたいけど、時間が差し迫っている。
「オレは、全部やり切って帰る…!」
「ふむ、Perfectな答えだ」
そう言うとドクトル・バタフライは消えた。
あの人、神出鬼没すぎないか?