真夜中の零時過ぎ。
オレと斗貴子さんは静まり返ったひいひいおじいちゃんとひいひいおばあちゃん達に別れの挨拶を交わすことなく未来に戻ることにした。
タイムパラドックス現象が起こることはないけど。ドクトル・バタフライ曰く「いずれ君達の人生に変革は起こるだろう」と言っていたけど。
どういう意味だったのかな。
「カズキ、大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ、斗貴子さん」
この明治時代で過ごした三週間で培った経験は絶対に役立ててみせる。ドクトル・バタフライの連れてきてくれた妖怪の時逆時順の「ほいじゃあ、いくぞぉ」という言葉を合図にオレ達の身体は透けていく。
帰ったら、まひろにも話してあげようかな。
そうひいひおじいちゃん達の寝室の方に視線を向けると窓を開けて、静かに此方に向かって手を振って微笑んでいる二人が見えた。
「勝ってくるよ、おじいちゃん!おばあちゃん!」
「ご指導、ありがとうございました」
そう言って二人に親指を突き立てた瞬間、オレと斗貴子さんは錬金戦団の医務室のベッドに腰掛けたまま、一時間しか時間は経過していなかった。
夢か幻にも思えるけど。
オレの手には蛮竜を使えるようになるために鍛え上げた傷跡や包帯もあり、斗貴子さんにも小さな刀傷が残っているのが分かる。
あの三週間は夢なんかじゃない。
蛮竜を担いで医務室を出ると騒々しい声が聴こえてくる。そういえばブラボーに告白して玉砕しちゃった奇ちゃんが食堂で泣いていたっけ?
「ん。戻ってきましたね」
「ホウ。面構えが変わったな」
いつものように仲睦まじく寄り添う二人の姿が、一瞬だけひいひいおばあちゃんと重なって見えた。オレも斗貴子さんとあんな風になりたいな。
「お二人は誰と戦ったんですか?」
「オレは相楽左之助って人だけど」
「糸色姿、二度とあんなヤツと戦うかッ」
オレ達の言葉にパチリと目を見開き、直ぐに優しげな微笑みを浮かべた賛さんは白手袋を嵌めた手を振るい、オレに二重の極みを撃とうとしてきた。
────刹那、オレと斗貴子さんは無意識に彼女の身体を地面に倒してサンライトハートとバルキリースカートで押さえ込んでいた。
「……フフ、随分と強くなりましたね」
「あっ。あと賛さんに似た感じのお姉さんと話したんだけど。あの人がひょっとしてオレとまひろ、賛さんのひいひいおばあちゃん?」
「糸色景さんですね」
くるりと何事も無かったように一瞬で汚れを取り除いた賛さんの言葉を聞き、やっぱり彼女も同じ人達に出会えて居たんだと嬉しさが溢れる。