共闘戦線を結ぶ 序
かつて敵対していたマスター・バタフライ様率いるLXEと錬金戦団の日本支部は共通する大敵の奈落を倒すために一時的に共闘戦線を結び、私とお坊っちゃまと武藤カズキと津村斗貴子は銀成市に帰って来ています。
やはり慣れ親しんだ地元は落ち着きます。
「お坊っちゃま、蝶野家の跡地を利用してラボを建設する件は立地的に問題なく出来るそうです。……それと奥様に訃報を知らせておきました」
「そうか。で、母さんは?」
「ただ、静かに泣いておりました」
「……今更だな」
そう言って旦那様の座っていた書斎の椅子に腰掛けて読書に耽っているお坊っちゃまは珍しくマスクを外して、どこか退屈そうに住宅街を眺めている。
武藤カズキと決着をつけることに固執し、私というエネルギー源を有するお坊っちゃまはドクトル・バタフライ謹製のホムンクルス以外で唯一人間を補食せずに活動できる特異個体として錬金戦団は興味を示していた。
まあ、直ぐに叩き伏せましたけど。
「賛、お前は奈落に勝つ自信はあるか?」
「私の勝利は揺るぎません。何より此度の大戦は錬金の戦士とホムンクルス、そして妖怪も巻き込んだ。かつての大戦を上回る可能性もあります」
自然と吊り上げってしまう頬を押さえる。
ここ数週間ほど強い相手と戦ってばかりで私の内側に巣食っている戦士としての衝動を制御することが難しくなってきました。やはり、一度お母様かお婆様に見て貰った方が良さそうですね。
「武藤と津村の近況はどうだ」
「特に変わったところはありません。───ですが、やはり武藤君は背負い込み過ぎていますね、少し気分転換を行った方が宜しいかと」
「ふむ、ならばアレを開くか」
「あれ、とは?」
「アレはアレだ。賛も楽しみにしておけ」
「?」
私の知らない間に何かをやっていたのでしょうか?
ちょっとだけ寂しいです。
そう思いながらもマスクを着けて空に羽撃くお坊っちゃまを見送り、久しぶりに帰ってきた蝶野家の掃除をするためにツナギに着替えて軍手とゴム手袋を装着し、庭の手入れを真っ先に始める。
蛮竜を振るえば簡単に背の高い草は切れ、シャベルで根の部分は掘り返し、素早く整地していき、木々の枝を剪定し、切り落とした枝や草は分別し、業者の方々に連絡して運んで貰います。
軍手とゴム手袋を付け替えて室内の掃除に移動する前に土埃を拭き取り、埃まみれの天井や置物の上を雑巾で掃除し、床に落ちたゴミを箒で集める。
「……此処にやって来た当時を思い出しますね」
あの時、初めてお坊っちゃまに出会った。