時止めのキャロル〜かつての邪神はいま、少女となって魔をふるう〜   作:陸そうと

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憧れラララ:後編

 

「あ……あの〜」

 

 禁止区域の入り口に位置する森林。

 草木をかき分け、最低限しか整備されていない道を進むキャロルの後ろを、ララはこわごわとした様子でついて行った。

 ある種肉体労働であるいまの状況に似合わない、ゴシック調の美麗な装束に身を包んだキャロルが躊躇うことなく自然のなかを突き進んでいく。

 

「どうしたの? 歩くの疲れちゃった?」

「言い出しっぺはララだけど……ほんとに付いてきちゃってよかったのかなって」

 

 魔術師としてではなく個人的な頼みとしてララの願いを聞き入れる、とキャロルは確かに口にした。

 ララからしてみれば願ったり叶ったりな展開だが、あまりにも事が自分の有利に進むものだから、子どもながらに漠然とした不安を覚えていた。

 実質的に無償で依頼を受けるだけじゃなく、度を越した希望まで叶えてくれるとは都合がよすぎる。

 なにか企みがあって、目の前のキャロルという魔術師は自分をうまくのせて何かに利用しようとしているのではないか、と。

 

「こわいの? 一度は来てるはずなのに」

「あっ……いや、まあ、人が消えちゃった場所だし、改めて来るとちょっと不気味だなあ〜なんて……」

「大丈夫だよ。なにかあってもわたしが守ってあげるから」

 

 白い少女は依然ララが欲しい言葉ばかり浴びせてくる。それも逆に不安を煽る要因になっていた。

 この場についてくることもララから頼んだことだが、それもこんなにあっさりと承諾されるとは思っていなかった。聖騎士が相手なら一般市民を禁止区域に入れることはまずない。

 

 ともあれ、森へ入ったからにはララもぼうっとしているわけにはいかなかった。

 キャロルの後ろを歩きながら「探し物」を目で見つけようとする。

 

「まあ、こんなところかな」

「え?」

「日が落ちちゃう前にはっきりさせておきたいんだけど」

 

 不意にキャロルが立ち止まったかと思いきや、ララのほうへ振り返って唐突に切り出した。

 

「あなたが欲しいものは把握してるけど、理由まではわからないの」

「な……なんの話、ですか?」

「ああ、ごめんね。いろいろ端折りすぎちゃった」

 

 まったく緊張感のない身振りでキャロルは言い放つ。

 

「嘘なんだよね?ぜんぶ。行方不明になったお友達なんていないんでしょう?」

「ぎくっ————!」

 

 思ってもみないタイミングで想定外の踏み込み方をされたララが体をぴくりとさせたのを見て、キャロルはふっと口元を緩ませる。

 

「やっぱりそうなんだ。事務所に来たときから、お友達がいなくなったわりには落ち着いた語り口だなって思ってたの」

「そ、そんなことないですよぉ〜……⁉︎ ララ、お友達が消えちゃって、不安でこわくて悲しくて震えが止まらないです〜…………」

 

 やけにオーバーな手振りで弁明を始めたララに、キャロルは微笑ましげな視線を注ぎ続けてくる。

 やがて観念するように肩を落としたララはそっぽを向きながらすっかり口をつぐんでしまった。

 

「欲しいのは……“邪神の遺物”、かな?」

 

 キャロルが付け加えた発言を耳にして、動揺するようにララの肩が小さく跳ねる。

 彼女が求めているものが直感的に理解できたのは不自然な振る舞いのほかに、やはり昔の自分と通ずるものも感じたからだろうか。

 邪神の遺物を取り込んで魔術を得る。

 ララが果たしたい自己実現のためにはその過程が必要なのだろうという野心の予感が、出会った当初の彼女の瞳からも見え隠れしていた。

 

「たしかに聖騎士には関わってほしくないよね。運よく見つけたとしてもすぐに回収されちゃう。でもそれは、魔術師だって同じだよ?」

「……魔術師って、もう魔術を持ってる人たちなんですよね? だったらもう、新しい遺物は要らないんじゃないんですか? お願いしたら譲ってくれるんじゃ……」

「遺物の横流しはけっこうな重罪だよ」

「それは流石になんとなくわかりますけど……。魔術師の人たちなら、法的にブラックなことも内緒でやってくれるかなって」

「うーん、否定はできない」

 

 タダで遺物を譲ってくれるような魔術師なんていないという点を考慮しなければ、実際ララが語ったようなあくどい方針で活動している輩もいるとは聞く。

 キャロル自身はうまく立ち回れる自信がないので、そういういずれボロが出そうな行為には手を染めないよう気をつけているけれども。

 

 というかこの子、意外と小賢しいところがあるかもしれない。

 デビルーナと気が合うかも。

 

「こほん……こうなってしまってはしょうがない! 認めましょう、ララは邪神の遺物が欲しい。欲しくてたまらないのです」

「どうして?」

「だってそれがあれば魔術師になれるんでしょう⁉︎」

 

 確信を得ているキャロルの表情をうかがって隠す気をなくしたのか、開き直った様子でララが言い放った。

 

「ララは小さい頃から魔術師に憧れていたのです!」

「いまでも十分ちいさくない?」

「時にふわふわ飛んで街を見守り、時に勇ましく魔物と戦って、みんなから尊敬されるそんなかっこいい魔術師に! 衣装だって作ってあるんですよ!」

「イメージに偏りがあるみたいだね」

 

 どんな大層な野望をお披露目してくれるのかと思いきや、ただただ現実と乖離したイメージ像を伝えられるだけでキャロルは当惑した。

 

「魔術師のお仕事って、そんなキラキラした感じじゃないよ」

「でも『ラバー伝記』にはそう書いてましたよ?」

「なにそれ」

「かつて存在したとかしなかったとか言われている大魔術師ラバー=アンダーソンの生涯を記録した小説です!」

「知らないなぁ」

「今度貸すから読んでください! ぜったい後悔させないので!」

 

 これまた眩しい瞳で詰め寄ってくるララ。彼女がどこから影響を受けて魔術師を目指しているのかを察する。

 

「魔物と戦って街を守りたいなら、聖騎士になる選択肢もあると思うけど」

「あー、それはパスです。重たい剣振って戦うとかララには無理です」

「そんな身も蓋もない」

 

 いよいよ底が見えてきたなかで、どうしたものかとキャロルは頭を捻る。

 家出するかたちで独立した経歴を持つキャロルとしてはララの好きにしてみればいいという気持ちはあるものの、それはあくまで自分の行動に対して責任をとれる力を備えていることが大前提。

 

 邪神ゾアの魂を宿すキャロルの場合、魔術師として生を送ることが自己実現に繋がるという確信があった。だからこそベルスーズ家を飛び出したあとも、こうしてヒトとしての生活を営んでいけている。

 

 だがララは……言ってしまえば大成できる根拠を感じない。

 

 この世界において魔術師として成功することは、基本的に世俗から離れていくことを意味する。

 会話からも俗っぽさをひしひしと感じるララがその運命に身を委ねて幸福になれるかと言われると、正直イメージがわかないのだ。

 

「ララちゃん、歳はいくつ?」

「十歳です」

「もう少しちゃんと考えたほうがいいかも」

「え~?」

 

 端的な指摘が返ってきてララが不服そうに眉をひそめた。

 

「キャロルお姉ちゃんは何歳なんですか?」

「十四」

「四つしか違わないじゃん。なのに()()()()()()なんでしょ? 街の人たちが言ってたよ。それじゃあララにだって魔術師になれる可能性があったっておかしくないでしょ!」

「う~~~~~~ん…………」

 

 キャロル自身特殊すぎる境遇なので参考にならない例の代表みたいなものなのだが、邪神の生まれ変わり云々を説明するわけにもいかず、キャロルは悩ましげに瞼を閉じる。

 

 そうこうしてるうちに日も暮れてきた。

 とりあえず行方不明の友達とやらはデタラメだとはっきりしたので、今日のところはララを連れてドリスへ帰還したほうがいいかもしれない。

 

 ひょい、とララを脇に抱えながら森の出口へと踵を返す。

 

「帰ってから改めてお話ししようか」

「わ、そんなこと言って! ララを叱ったうえで二度とここへ来れないようお母さんに言いつけるつもりでしょ! 大人っていっつもそうですよね! ……あ、お姉ちゃんまだ子どもか!」

「けっこう口が達者だよねあなた」

 

 小動物みたいな力で抵抗するララをしっかり押さえこみながら一歩を踏み出した、そのとき、

 

「…………まじか」

 

 気味の悪い魔力の波が、すぐ近くから急激に膨れ上がる気配を感じた。

 

「え? なに?」

「わたしから離れないで」

 

 ララを抱える腕力を強める。

 まとわりつく不快な魔力が徐々に濃度を増していく。

 ふたりを取り巻く空間が歪み、瞬く間に視界に映る景色が塗り替えられた。

 

「え……」

 

 キャロルに担がれていたララが信じ難いものを目の当たりにした顔で固まる。

 先ほどまで“眠りの森”にいたはずの自分たちは、いつの間にかレンガの壁で囲まれた迷路に迷い込んでしまっていたのだ。

 つまりは、

 

「迷宮に取り込まれちゃったね。わたしたちがいた場所の近くに遺物が埋まってたみたい」

 

 鈴みたいに声音が鳴り止まなかったララが絶句する。

 

「こ……これが……迷宮……?」

「普通は意図的に強い魔力を注がないと迷宮が発生することは殆どないんだけど……時間をかけて蓄積された微弱な魔力が影響して暴発するケースもあるんだ。今回は運悪くそのタイミングに遭遇しちゃったみたいだね」

「っ…………!」

 

 地面に下ろされるや否や、ララは怯えるようにキャロルの脚にしがみついてくる。

 先ほどまでの減らず口はどこへいったのか。

 一転してしおらしい態度になったララに手を添えながら、キャロルは奥へ続いている迷路に向かって足を踏み出そうとした。

 

「す、進むの……?」

「どこかにいる魔物を倒さないと外に出れないからね」

「ら、ララも行かなきゃだめ……?」

「ひとりにはできないな。迷宮にいる時点でどこも安全じゃないから」

「う…………」

 

 沈んだ雰囲気のまま、しがみついてくる手に力がこもっていくのがわかる。

 なんというか…………こういうものを庇護欲と呼ぶのだろうか。自分よりか弱い存在を放っておけないという気持ち。

 

 たしかに興味深い心の起伏が芽生えているのを感じるが、かつての兄もキャロルに対して同じような感情を抱いていたのだろうかと想像すると少々不愉快だった。

 

 

「まだ着かないの……?」

 

 歩き始めて十五分ほど経って、再びララの口から弱音がでた。

 迷路は続いているが、わかりやすいゴール地点なんて用意されているわけがない。変わらない景色に彼女の精神が削られていく。

 

「……こんなものか」

「え?」

「わたしたちを疲弊させようとしてるみたい。様子見してたけど……このまま移動を続けても、たぶん時間の無駄」

 

 魔力操作による抵抗力を持たないララの限界が近づいていることを察し、キャロルはやむを得なく自分たちが置かれている状況をそのまま知らせた。

 

「どういうこと?」

「顔を上げないで」

 

 自分のほうを見上げたララの頭をそっと押し込んで地面へと向き直す。

 

「えっ、な、なに……?」

「“ナラク”の眷属だね。姿を認識したら体を乗っ取られるよ」

「へっ……⁉︎」

「でも思ったより早く片付きそう。————向こうから近づいてくれてるみたいだから」

 

 背後から歩み寄ってくる気配を感じ取りながら、キャロルは体内の魔力を強く起こし始める。

 

 迷宮はその中心となっている魔物を葬れば消滅する。だがそれは必ずしもわかりやすい位置に鎮座してくれているわけではない。

 今回のように取り込んだ獲物を肉体的・精神的に疲弊させ抵抗力を奪ったあとでじっくりと喰らう魔物もなかには存在する。

 そしてそういう輩は、大抵直接的な戦闘能力が低い小物がほとんど。

 

 邪神ナラク————かつての大戦ではほかの邪神たちに敵わないと早々に悟り、迷宮に引き入れた人間の精神を次々と支配することで手駒を増やして、人間社会での勢力を拡大しようとした邪神の一柱。

 

 まあ、例に漏れず小物だ。邪神同士の戦いから逃げ出した雑魚。

 そんなヤツの眷属が生み出す迷宮ごときで、最凶の邪神・ゾアの魂を持つキャロルをどうこうできると思っているのか。

 

「わたし…………舐められるのって、すごく嫌かも」

 

 標的である気配に背を向けたまま、キャロルは両手の五指の先から高密度の魔力を抽出する。

 以前手に入れた邪神アトラの「糸」の魔術。

 キャロルが魔力探知で敵の位置を正確に探りつつ両腕を振るうと、レンガの壁と床、天井を抉りながら網目状に展開された魔力の糸が回避不能の斬撃となって後方の暗闇に潜む魔物へと殺到した。

 直後、なにかを細切れにする感触。

 

「んなっ……な、なにいまの⁉︎ かっこいー!」

「でしょ。でも憧れるくらいがちょうどいいよ」

 

 相手の魔術の影響下に置かれないようしっかりと全身を魔力で覆いながら、バラバラになった魔物を確認する。

 数メルー先で解体されているのは()()()()()

 血の通っていない真っ白で粘土みたいな肉片が散らばると同時に、キャロルたちを囲っていた迷宮も崩壊していく感覚があった。

 

 

 

 

「————念のため確認したいんだけどさ」

 

 明かりなんてあるわけがない、夜の森に迷い込んだ少女ふたりのうち、黒髪のほうがぼやくように言った。

 

「……なんですの?」

「あたしたち、カンペキ迷子だよね?」

「見てのとおりですわ」

「だああああああああーーーーーーーー‼︎」

 

 頭を抱えて葉の天井に見え隠れする星空へ向けてデビルーナは叫ぶ。

 

 この“眠りの森”へ入って行ったキャロルたちを密かに追跡してきたクラウディアとデビルーナだが、ある瞬間を境に尾行していたはずのふたりが消失。

 日が完全に落ちる時間になっても発見には至らず、やがて無駄に迷子を増やす事態となってしまった。

 

「クラ子が道わかるって言うから信じて歩いてたのに」

「せ、聖騎士の研修でうかがったことがあったんです! だから大丈夫と思って……。でも、さすがにこう視界が悪くなってしまうと……」

「ほんとポンコツお嬢ね、クラのすけは」

「ぽ、ポンコツ……⁉︎ 言っていいことと悪いことがございましてよ! それにデビルーナさんだって意地を張らずに最初から同行していれば、見失うこともなかったはずですわ!」

「意地ってなによ意地って! ケジメつけるのは当然でしょうが!」

「心配で胸が張り裂けそうなお顔をしておいてよく言いますわ!」

 

 言い争いの最中、不意にどこからか発せられた夜鳥の声が鼓膜を撫でる。

 それを受けて反射的に身を縮めたクラウディアは真正面に視線を固定したままぴくりとも動かなくなってしまった。

 

「なに、こわいの?」

「こわいに決まってますが」

「キャロ坊がいないと見栄はらないわよねあんた」

 

 軽口を叩きつつもデビルーナは周辺の空間に魔力を走らせて魔物の類がいないかを探っていた。

 夜間——それも視界が遮られる森での戦闘は極力避けたい。

「変身」魔術で五感を強化したとしても、戦闘要員ではないクラウディアを庇いきれる自信がない。

 

「……一度引き返しましょう。キャロルさんが付いているので、最悪の事態になることは考えにくいと思いますが————」

「呼んだ?」

「わきゃあああああああああああああっっ⁉︎⁉︎」

 

 緊張が強まるなか、不意打ちのように茂みから顔を出してきた白い少女にクラウディアが絶叫を轟かせた。

 デビルーナも突然現れた少女たち——キャロルとララを見て目を丸くさせる。

 

「キャロルさん⁉︎」

「ふたりとも迎えにきてくれたの?」

「キャロ坊あんた…………って、行方不明になってたって子は?」

 

 事務所を出たときと同様、ララひとりしか連れていないキャロルへ探るようにデビルーナが問いかけた。

 

「詳しいことは事務所で。とりあえず帰ろう。わたしお腹すいちゃった。ララちゃんも一緒にどう?」

「あ…………うん」

 

 キャロルに手を引かれながらバツが悪そうに俯くララ。

 依頼をしに三人を訪ねたときから、ララのなかでデビルーナの印象は「説教担当」で止まっている。このあと話がすべて嘘だと打ち明けたとき、彼女から叱られることになるのだろうな、という後ろめたさをララはすでにうっすらと感じていた。

 

 捜索対象の子ども……なんてのは最初から存在しないのだが、依頼が失敗に終わったと勘違いしているクラウディアとデビルーナは肩を落としながら後ろをついてくる。

 

 キャロルはララの手をしっかりと握りながら、魔力の気配が薄い方向に向かって歩みを進めた。

 

「あとでちゃんと説明してあげてね」

「……うん」

「よし。…………ほいっと」

「わわっ?」

 

 キャロルは元気のないララを再び抱えると、曲芸のような動きで背中へと彼女を落ち着かせる。

 

「ちょ、ちょっとキャロルお姉ちゃん……⁉︎」

「おんぶってやつ、してみたかったんだよね。されたことしかなかったから」

「恥ずかしいよ……」

「これ」

 

 ララを背負いながら、空けた手を彼女の眼前まで持っていって指先でつまんだものを見せる。

 白い粘土のような歪な固形物。

 先ほどの迷宮で回収した、邪神ナラクの遺物だ。

 

「これを食べれば魔術が使えるようになる。どう? 魔術師になりたいと思う?」

「……思わない、かも。気持ちわるかったし……」

「そう」

 

 返答を聞いてすぐに遺物を懐へしまう。

 

「すぐに決断する必要はないよ。聖騎士とちがって、魔術師はなろうと思えばいつでもなれるものなんだし。重要なのは魔術でなにをしたいか、自分をどう変えたいかってことだと思う」

「…………そういうのはわからない、けど」

 

 考えるように一拍黙ったあと、細い声でララは続けた。

 

「でもやっぱり、ララには魔術がかっこいいものに見えたよ。怖がる人も多いけど……少なくともキャロルお姉ちゃんは、かっこいい魔術師だって思えた。本にでてくる大魔術師と同じくらい!」

「そう」

 

 満足げに笑ったララにつられてキャロルの口元からも笑みがこぼれる。

 いまはそれくらいで十分なのかもしれない。

 十歳の女の子が魔術師に憧れるなんて、それが本心かどうかもほとんどは判別がつかないのだから。邪神の生まれ変わりでもない限り。

 

「……でもちょっと気になるんだけど」

「なに?」

 

 ふとララが吐露した疑念に耳を傾ける。

 

「お姉ちゃん、ララのお願いすぐに聞いてくれたよね。どうして?」

「ああ、そんなこと」

 

 それは取るに足らない雑談。

 しかしキャロルほど個人で強大な力を持つ存在であれば決して些事とは呼べない、人生の舵取りにも関わってくる事柄だった。

 

 

「わたしのこと、綺麗って言ってくれたから」

 

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