IS インフィニット・ストラトス 武器を憎む琥珀の少年 作:八神刹那
地図に載っていないとある島。美涼・アラーニャの朝は島の海岸を散歩することから始める。
「うん。今日もいい天気」
鮮やかな薄い金髪をなびかせながら大きく伸びをする。
「やっぱ、抜けてよかった」
彼女の今の肩書は世界最強の兵器ISを開発するための技術者。元は欧州やアジアのどこかの国でISの操縦者をやっていたのだが、逃げると言う置手紙だけを残して逃亡した問題児であった。
「自由って最高」
そんなことを呟きながら歩いていると、
「あれは・・・・・・」
視線の先、浜辺に倒れているモノ、いや、人が見える。
「人?」
美涼が近づくと、まだ二十歳にもならない少年が倒れている。
「ちょっと! 大丈夫⁉」
声をかけるが少年は眠っている。そんなことよりも
「これって・・・・・・」
美涼の目に留まったのは少年が首に下げているアクセサリー。まるで天使の羽をモチーフにしたような奇妙な形だ。
「まさか」
脳裏に先日起きたとある出来事が過ぎる。
「とりあえず、運ばないと!」
朝早くからとんだものを拾ったと思いながら、美涼は少年を自分の研究所まで運び始めた。
真っ暗な暗闇のなかソランの前には2人の男が立っている。男たちは不気味な笑みを見せながら
『君はただの道具だ。それも君の憎い武器を使うための』
『僕は悪くない。だって僕のしたいことは全部、正しくなるんだから』
何を言っているんだお前らは・・・・・・! お前たちみたいな人間がいるから世界は! この世界は!
こんなにもどうしようなないんじゃないか!
「ふざけるなぁ!」
その言葉を発し、ソランは目を覚ました。目を開け、汗でぬれた体をゆっくりと起こし、辺りを確認する。どうやらどこかの部屋のベッドの上らしい。
「確か、俺は・・・・・・」
記憶を辿ろうとするが、あの悪夢が、呼び起こされる。最凶最悪の敵、仇。いや、そんな言葉では生温い。どんな言葉を使っても表現できない敵。
「なんでだよ・・・・・・!」
嫌な起き方をした。自分が生きていることよりも悪夢の方がソランにとっては嫌なことのようだ。
「どうしたの? 叫び声が聞こえたけど」
開けっ放しのドアから1人の女性が入ってくる。薄い金髪が特徴の東洋人のようだ。
「いやな夢でも見た? とりあえず、水飲みな。それからわたし特製のコーヒをどうぞ」
女性はベッドの近くの椅子にやんわりと腰をかけ、テーブルに2人分のマグカップを置く。
「・・・・・・」
ソランは警戒しながらも女性の言うとおりにペットボトルのミネラルウオーターを飲み、女性が淹れたコーヒーの入ったマグカップに手をかける。
「さて、わたしは美涼・アラーニャ。この島でISの研究をしているモノだよ。君は?」
女性、美涼の問いかけにソランはコーヒーを一口飲んでから
「俺はソラン・S・ストラディス。ただの・・・・・・」
「少年兵だったけど、今は傭兵?」
言葉を遮った美涼を睨む。すると、彼女は
「悪いと思ったんだけど、君のISを調べさせてもらったんだ。びっくりしたよ。男でISを動かせる2人目の人物がいるなんて。それよりも、ソランくん。聞き慣れない言葉があるって顔してるけど、質問はあるかな?」
「・・・・・・」
ソランは美涼を見ながらさらにコーヒーをすする。不思議な空気を纏った女性だ。飄々としているというより、自然体のまま人を話にのめり込ませる。
「IS。あなたがさっきから言っているISとはいったいなんだ」
ソランが思っていたことを言うと美涼は得意げに、それもそら来たという表情を見せた。
「やっぱり、訊くと思ってていたよ。君のことを少々調べさせてもらうおうと思ったけど。ISからは拒否反応。だから世界中のPCハッキングして君のことを調べてみようとしてもまったく引っかからない。そこで私は1つの可能性を考えた。そして、さっきの君の言葉がそれを肯定した」
彼女が何を言っているのか意味が分からない。経過しながら美涼を見ていると
「君の存在を言ってしまうと君は、異世界から来た人間ということになってしまうんだ」
「は? どういう意味だよ」
「君がさっき私に訊いた質問。ISとはいったいなんだ? これはこの世界の住人ならまず聞かない質問。答えはあとで教えるよ。それなのに君は疑うことなくこの質問をした。つまり、そこから導出せるのは君がこの世界の住人ではなく。別の世界から来た人間という推察が正しいということを証明している」
不思議な空気をまとった女性だと思っていたが、彼女の言っていることにはまるで信憑性を持てない。だが、不思議と彼女のいていることが嘘のようには思えない。
「・・・・・・あなたの推測があっているとして、俺が異世界の人間。なら、俺にこの世界のことを教えてくれないか?」
「良いだろう。まず、君はこの世界の兵器がどこまで発展していると思う?」
「兵器・・・・・・。まだ、無人機が軍事的に利用されて間もないころだと思うが」
そらんが適当に答えると、美涼は
「残念。そんな時代はかなり前だ。といっても兵器なんてたった1、2人の天才がとんでもないものを作ってしまえば風潮とかはガラリと変わってしまう」
笑いながら答える。本当につかみどころのない女性だと思いながら、ソランは質問を続ける。
「その言い方だと、天才がとんでもない兵器を作ったといっているようだが」
「正解。作ったんだよ。とんでもない天才がとんでもない兵器を。それも世界の情勢をガラリと変えるようなね。それが――――インフィニット・ストラトス。通称ISなんて呼ばれる平気だ」
それからソランは美涼からISのことを聞いた。篠ノ之 束という科学者が作ったこと。白騎士事件のこと。コアのこと。そして、女性にしか使えず、世界が女尊男卑の風潮になってしまったこと。できる限りの情報を取り込んだ。
「それがこの世界のことだよ。どう? 感想は?」
「異世界って言っていたから少しは変わるのか思っていたが何も変わらないのか。世界はどうしようもなく歪んでいる。それよりもあなたの言い方だと俺がISを持っているようなことを言っていたが」
「そうだよ。君はなぜか知らないけど。ISを持っていた。それも絶対数467機とは違うコア。だから、調べさせてほしい」
美涼は1人の研究者として機体を調べたいと思っているようだが、ソランは
「断る」
とはっきりといった。
「なせ? 君がこの世界にいることを知るチャンスかもしれないのに」
「勝手な理由かもしれないが俺は兵器が嫌いだ。それも話を聞く限りだとこの世界は生物として種を絶滅させる一歩前の段階に近い。そんな兵器を俺は・・・・・・」
「憎んでいる?」
「ああ。俺は傭兵だが、兵器が嫌いだった」
「うーん。なんで聞きたいけど。聞かないでおくよ。地雷を踏みくないからね」
「・・・・・・」
ソランは黙ってしまう。この美涼という女性はただの研究者ではないというのは傭兵時代の感から察すことができるがそれ以上に危険な何かをにじませている。
「まあ君が拒否するならいいとして、これは返しておくよ。一応君のものだからね」
美涼はポケットから取り出した天使の羽のようなアクセサリーをソランに渡す。その時だった。
「何かくる・・・・・・」
「え?」
「伏せろ!」
何か危険を感じたソランは美涼を押し倒す形で床に伏せた。同時にとてつもない衝撃が走り、警報が鳴り響く。
「RPG? いや・・・・・・! ロケット?」
「ソランが警戒しながら窓の外から空を見ると人型の何かが3機、飛んでいる。
「あれは・・・・・・」
「IS。さっき話した。この世界最強の機動兵器よ」
空から見下ろす起動兵器。ソランはただそれを見上げているしかなかった。