カードゲーム世界にTS転生したら、初戦敗退したヴァンプデッキ使いでした 作:銀層
昨日の予選突破を祝った日から、空気は明らかに変わった。
まるで別世界のように――集うメンバーは、明らかに“本編以上”の実力を持つ者たちばかりだった。
原作のラインは、とうに超えられている。
龍ヶ崎レイは、原作よりも強く。
氷堂霞は、既に「一線級」の読みを持っている。
榊原機子も、ユニゾンを主軸とした機巧デッキ
その上――
天上院涼音とつぼおじ。
原作では、舞台袖から微笑んでいた存在が、いま目の前に立っている。
そして、彼らが本気で参戦したことで、大会全体の温度が一段、いや二段も上がった。
参加者たちは自然と鍛えられ、磨かれ、強くなろうとする空気に呑まれていった。
そんな中で――
黒羽ルナは、異質だった。
原作では、わずか1話で退場したキャラクター。
勝ち残る予定すらなかった、ヴァンプデッキの端役にすぎない。
だが――今、彼女は本選のステージに立っている。
周囲が強くなるたびに、自分も強くならなければならない。
置いていかれないためじゃない。
勝ちたいからだ。
強くなった彼らに勝ちたい。
ネームドたちに勝ちたい。
しかし、原作の知識を持っている。
ファンブックで補完された裏設定も、
スピンオフで描かれた短命なイベントも、
コアなファンしか知らないバグまがいの強化手順も――すべて知っている。
だからこそ、私には見える。
普通のプレイヤーが素通りする、地味で意味のなさそうなフラグ。
イベントの背景に隠された、“強くなるための道筋”。
その道筋をしっかりと使っていき、不遇のヴァンプを活躍させたい
~~
ルナは烏丸神社へと向かっており、自分の強化イベントをしっかりとうけとめるためだ。
都市の片隅にひっそりと残る、時代から取り残されたようなその場所は、
原作でもほんの一瞬しか触れられなかった小さなキーワード。
けれど、私は知っている。
スピンオフで語られた、カードゲームの“本当の起源”を。
今やエンタメとして隆盛を極めるカードバトル。
だが、それは本来、神事や結界に使われる術式だった。
遥か昔、「お札」として存在していた時代。
カードには、本物のエネルギーが宿っていた。
自然災害を封じるために――
悪霊や災厄を祓うために――
選ばれた巫女や修験者が“カード”を扱っていた。
その記録は、政府によって長らく封印されている。
現代においてカードが「ただの娯楽」として扱われているのは、
真実を隠すためのベールに過ぎない。
だが、スピンオフの第3巻。限定冊子にだけ掲載されたあの設定。
烏丸神社に足を踏み入れた瞬間――
視界の先に、異様な気配を纏った少女が立っていた。
黒髪は艶やかに、腰まで届く長さで整えられている。
伝統的な巫女装束に身を包んでいるはずなのに、どこか“柄が悪い”。
眼光が鋭く、立ち姿には不遜な威圧感すらあった。
「……あなたが、烏丸千歳さんですよね?」
ルナが一歩踏み出しながら問うと――
「てめぇ……なんで私の名前を知ってやがる?」
低く、喉を鳴らすような声音。
凛とした外見に反して、どこかヤンキーめいた口調。
その場の空気が一気に緊張を帯びた。
すかさず、背後からふわりとした声が割り込む。
「こら~だめでしょう、千歳。お客さんにそんな言い方しちゃ」
緩やかなウェーブのかかった髪、ゆるふわ系のニットをまとった少女が姿を現した。
糸繰 ひより。千歳の友人であり、性格は真逆の柔らかさを持つ存在だ。
「ごめんね、びっくりしたよね。ネットで応募してくれた子でしょ?」
その一言で場が少し和らぐ。
「……ああ、あの強いカードゲーマー募集ってやつ」
千歳は目を細めながら、ルナを改めて値踏みするように見つめる。
「お前、プロか?」
「違います。アマチュアですが……天上院杯の予選は突破しました」
その言葉に、千歳の眉がぴくりと動いた。
「……天上院杯? あの育成目的の大会か。なんだ、雑魚じゃねぇか」
毒のある言葉が、真正面から飛んでくる。
だが、それは“試している”ようにも聞こえた。
「精霊は持っているし、実績もそこそこあるし……」
「頭数は、あった方がいいでしょう? ダンジョン攻略はしやすくなるよ」
「最悪、千歳一人でクリアすればいいし」
糸繰ひよりは、千歳の背後からそっとルナのプロフィールを覗き込むように眺めていた。
目をぱちぱちと瞬かせながら、控えめに口を開く。
この世界では、まれに「ダンジョンチケット」という特殊なアイテムがカードパックから現れることがある。
古代の霊場や未踏の土地が、異空間として保存された“神域ダンジョン”に行ける鍵
ごく一部のプレイヤーだけが、それを入手できる。
中でも千歳は特別だった。
彼女の血筋。かつて国家直属の陰陽師として封印と調伏を担った、「元祖陰陽家・烏丸家」の末裔。
霊的な因子を強く持つ彼女のもとには、異常な頻度で“神域ダンジョンの鍵”が集まってくる。
運というより、宿命が引き寄せている血すじのだ。
烏丸千歳は、境内の苔むした石段に腰を下ろすと、ふてくされたように頭をガシガシとかいた。
「……そろそろ、ダンジョンでいいアイテムを集めねぇと、政府から補助金おりねぇんだよなぁ……」
「この《冥府の鍵》も今日中に消えるし……使うなら、今しかねぇ」
ぶつぶつと独り言のようにこぼす。
腰に差していた古びた鍵が、ぼんやりと淡い紫の光を放っていた。夜までに使わなければ消えてしまう、時限式の“冥府の鍵”。
ひよりが、千歳の隣で小さく手を合わせるような仕草をしながら口を開いた。
「だったら、ちょうどいいじゃない。ルナさんも一緒に――ね? ヴァンプ使いだし、私たちと同じ“闇”の使い手」
「ダンジョンの条件の闇の使い手に一致するじゃない」
「ふざけんな。そいつが雑魚だったら足引っ張るだけだろ」
千歳の表情がピリリと尖る。
「てめぇ……勝負しろ」
勢いよく立ち上がり、ルナに向き直る。
「その結果次第で決めてやる。ダンジョンに連れてくかどうか」
「ひより、これでいいだろ」
「うん、十分だよ。千歳らしいね」
「雑魚には興味ねぇ。実力で黙らせてみろよ」
千歳の目には、明確な挑発が宿っていた。
~~
お互い、最初のターンはコストチャージのみで終える。静かに立ち上がる戦場――だが、次のターンで空気が変わった。
千歳の2ターン目。
「コストチャージ……2コスト使用」
手札からすっと一枚のカードを掲げる。
「【式神転写】、発動!」
結界に似た陣がフィールドに広がり、禍々しい紋様が淡く浮かび上がる。その中央から、しなやかな体躯の狐面の式神が現れる。
「【式神 イヅナ】、召喚――2コスト、2/2」
白銀の毛並みと鋭い爪。何よりも、その体から漏れ出す淡紫の気配が、ただの下級ではないことを示していた。
「さすが、陰陽師デッキ……」
ルナは小さくつぶやいた。
「【式神転写】で呪術カウントを稼いでいくのね――」
呪術カウント。
それは、手札に潜んでいるに力を与えていく見えない数字。
他の呪文を発動するたびに、じわじわと溜まっていき、いつか“力”に変わる。
「呪術カウントのこと知っているのか」
「ただの道に落ちてる石じゃねぇ〜みてぇ〜だ」
わずかに目を細め、獰猛な笑みをこぼす。
「少しは楽しませてくれよ、雑魚だったらがっかりするからよ」
ルナの2ターン目
「コストチャージ。そして、私はまずフィールド魔法を発動!」
《夜の狩場》――発動。
紫がかった霧が、フィールド全体を包み込む。月明かりが陰を落とし、どこからともなく蝙蝠の羽ばたきが聞こえてくる。
地面を這うようにして現れたのは、闇に生きる者たち――バッドたちの縄張りだ。
《夜の狩場》:
このカードが場にある限り、自分のバッド系モンスターは“突進”を得る。
つまり、召喚されたターンでも相手モンスターに攻撃が可能になる。
「あんたも、コントロールヴァンプか。いい度胸だな」
「私の爆発力はすごいぞ。ばかみてぇ〜なアグロにしなかったことを後悔させてやる」
ルナは微笑んだ。静かな自信を感じさせる笑み。
彼女は知っている――このフィールド魔法が張られた瞬間から、自分の戦場は整い始めている。
“突進”を得たバッドたちが、場をコントロールしながらライフも削り取っていく。
そして回復で生き延びる。じわじわと相手の息の根を止めるのが、ルナの戦法――。
「こっちも、ただの雑魚じゃないって証明してあげる」
ルナも挑発に乗っている
千歳の3ターン目
「ドロー……コストチャージ。ようやく、ドローカードきたか」
千歳は鼻を鳴らした。
「来るのが遅くてイライラするぜ」
叩きつけるように、呪文カードを場に置く。
《神託の一筆》――3コスト呪文。2枚ドロー。
「焦らせるなよ、こっちの手札はまだ“呪”の力で育ててる途中なんだ」
口調こそ荒いが、千歳の戦法は極めて計算されている。
盤面を取るのではなく、“手札に溜めて”“カウントを進め”“一気に決める”。
「まずは、お前のライフをいただくぜ」
【式神 イヅナ】――2コスト/2/2
狐面をつけた小さな式神が地を駆ける。鋭い爪が闇を裂く。
ルナのライフを2点減らす。
ルナのライフ:20→18
ルナの3ターン目
「ドロー……コストチャージ」
静かにカードを置くルナ。その手には確かな意志がこもっていた。
「2コスト、《蝙蝠二重召喚術》、発動!」
闇が二筋、フィールドに奔る。
低くうごめく黒影――1/1のバッドが2体、キィと甲高い声を上げて現れた。
※《夜の狩場》の効果により、突進(召喚ターンでも攻撃可能)を得る。
「バトルフェイズ」
ルナの瞳がわずかに鋭くなる。
「バッド1体目、イヅナに攻撃」
「続けてバッド2体目、同じくイヅナに攻撃!」
――相打ち。
1体目のバッドがイヅナの注意を引き裂き、
2体目がその隙を狙って飛びかかる。
式神・イヅナは2体目のバッドを道連れにしながら、式符の光と共に霧散した。
バッド①&② → 墓地へ
式神イヅナ → 墓地へ
ルナのライフ:18→20
「ライフが満タンに戻ちまったか……」
「こっちは呪文カウントを稼いでいるんだよ!!雑魚が!!」
千歳が苦々しい顔で舌打ちした。
千歳の4ターン目
「ドロー……そして、コストチャージ」
淡々とカードを置いた千歳だったが、目元に浮かぶ笑みは獣のように鋭い。
「《幽世ノ囁き》を発動。」
彼女の指先から、淡い紫の式符が空へ舞う。
薄ら寒い風がフィールドを吹き抜け――そして、
背後に浮かぶ式符たちが、ぱちん、と音を立てて弾けた。
「この呪文は、呪術カウントを2稼ぎ、さらに1ドロー」
《幽世ノ囁き》
4コスト/呪文
発動時、手札の呪術カウント持ちカード全てが+2される。
そして1ドロー
呪文自体の発動で、合計3カウントが進む。
たった1枚で3カウントだと!?
ルナの口元がわずかに引き締まる。
「これで準備は完了。次のターン、てめぇは消し飛ぶ。覚悟しとけよ」
千歳はにやりと笑った。
ルナの4ターン目
「私のターン! コストチャージ――そして、」
ルナの指が力強く、1枚のフィールド魔法を場に叩きつけた。
「――《絶命の翼》、発動!!」
黒紫の風が吹き荒れ、夜の狩場ともに並んでしまう。
即死突進のバッドにとって最強の除去するためのフィールドができている。
代わって、地面に無数のコウモリの羽根が舞い、空には禍々しく広がる漆黒の翼の紋章。
《絶命の翼》
2コスト/フィールド魔法
【維持コスト】:自分のライフを毎ターン1支払う(支払わない場合、破壊)
【常時効果】:バッド系モンスターに“即死”を付与する。
→即死:このモンスターがダメージを与えたモンスターは、与えた時点で即破壊される。
「てめぇ……! 即死のバッドで、こっちの式神を狩るつもりか!?」
「正確には、“お互い相打ち”で片付けるわ」
ルナは静かに答える。
「こっちの方が数は多い。小型で即死なら、コスト差なんて意味をなさないのよ」
ルナのヴァンプデッキは、序盤でバッドを大量展開し、中盤以降は即死や吸血で押し切る戦法。
《夜の狩場》→《絶命の翼》への展開は、コントロールヴァンプにおける“毒牙の完成形”。
千歳の6ターン目。
「コストチャージ!! まずは小手比べだ」
奴が出してきたのは――《式神 アラガミ》。
しかも2体同時展開。
《式神 アラガミ》 コスト:8 3/1 速攻
・このカードは、呪術カウント1につき、コストが1軽減される。
・【破壊時】:このカードが破壊されたとき、手札にある「呪術カウント」対応カード1枚に、現在のカウント数をすべて移す。
……つまり、呪文を5回撃ってたってことね。
5カウント分でコスト8が3コストまで落ちる。
「てめぇ~が悪いんだよ」
千歳が睨みながら叫ぶ。
「もっと楽に勝とうと思ったのに。お前が回りくどいカードばっか出すからだろうが!」
おそらく、手札に高打点のモンスターを握っているのだろう。
ただ、バッドの即死突進を警戒して。今温存している感じか。
しっかりとケアって来る辺り、言葉が荒いが冷静なプレイができている。
「6点、食らえ!」
2体のアラガミが一斉に突っ込んできた。
ルナのライフ:20 → 14
少しライフを削っておくことで、次のフィニッシャーでとどめやすくするための下準備だろう。
ルナの6ターン目。
《絶命の翼》の維持コストで、ライフを1支払う。
ライフ:14 → 13
「コストチャージ。そして――」
私の指先がカードを弾いた。
「《蝙蝠ドクター ジェレス》、召喚!」
《蝙蝠ドクター ジェレス》
6コスト 0/1
【召喚時効果】:バッド系モンスター(1/1)を5体場に出す。
【常時効果】:自身が場に存在する限り、全バッドモンスターに“速攻”を付与する。
黒衣を纏ったコウモリ医師が杖を振ると、影から次々に小さなバッドたちが飛び出してくる。
「お前……こざかしいカードを出してきやがって……」
千歳が舌打ちする。
「じゃあ――ぶつけるよ」
2体は式神アラガミ2枚と相打ち
3体はライフを削る。
――そして、残ったバッド3体が一斉に千歳に襲いかかる。
千歳のライフ:20 → 17
バッドの攻撃がヒットした瞬間、私の体に力が流れ込む。
5体すべてが攻撃に参加したので5点回復。
ルナのライフ:13 → 18
回復の光が、体を巡る。
やっぱり、この一撃一撃が私の“命綱”だ。
アラガミ2体をバッドで相打ちにしたのはいい。
でも——
(破壊時効果が、こわすぎる……)
この効果。つまり、倒した瞬間に呪術カウントを5ずつ誰かに引き継げる。
2体合わせて10カウント。
千歳が、どのカードに乗せたかは分からない。
でも、間違いなく次のターンに爆発する。
「お前……後悔しても遅ぇ~からな……」
千歳の声が、わずかに楽しそうに聞こえるのは気のせいだろうか。
(ヤバい。とんでもないのが来る……)
呪術カウントは、ただの数字じゃない。
この世界じゃ、カウントの蓄積は“召喚されるモンスターの圧”そのもの。
千歳の7ターン目。
「コストチャージ……そして、術札《雷雨》を発動」
——来た。
《雷雨》/術札/4コスト
【効果】:相手モンスター全体に1ダメージ。
さらに、呪術カウントをすべて1ずつ乗せる。
場に出ていたバッドたちが、雷鳴とともに全滅した。
「……!」
息を呑むしかなかった。
バッドたちが、まとめて雷で焼き払われる。
原作でもあった。場を焼いてからの強襲。
その“原作の千歳”の凶悪さを、今まさに体験している。
「てめぇの小細工なんて関係ねぇんだよ」
千歳が、乱暴にもう一枚カードを叩きつける。
《式神 雷迅ノ猛虎・ライカ》/9コスト/5/2/速攻
【効果】:呪術カウント1につき、召喚コストを1軽減。
呪術カウント:6。
3コストで出てきた。
しかも、速攻持ち。
「行け、ライカ!!」
雷光のような一閃が駆け、私の体力を5点削っていく。
ルナのライフ:18 → 13
(この感覚……強い。あまりにも強すぎる……)
アラガミ2体の呪術カウントはライカには乗っていない。
つまり、アラガミ2体から受け継いだ10カウントは、別の“なにか”に乗せられている。
ルナの7ターン目。
《絶命の翼》の維持コストで、ライフを1支払う。
ライフ:13 → 12
痛みはある。けれど、制御できている。
その痛みが、今の私を戦わせてくれる。
「コストチャージ」
そして、カードを叩きつける。
《赤き贖罪者 ヴァルミナス》/7コスト/3/3
【召喚時効果】
バッドが2体以上フィールドに存在する場合、バッドをさらに2体召喚。
墓地にバッドが5体以上存在する場合:相手に5点ダメージ、自分は5点回復。
バッドの墓地は、雷雨で焼かれた分も含め、余裕で5体を超えている。
2つの条件を同時に満たした——。
「喰らいなさい」
一瞬の赤い光。罪を贖う者の炎が、フィールドを照らした。
千歳のライフ:17 → 12
ルナのライフ:12 → 17
——カードゲームの理屈じゃない。
これは私の意志。私の選択。
相手の強さに呑まれるだけじゃない、戦いを支配する力。
ヴァルミナスの効果で、さらにバッド2体を召喚。
「……がちでやばいな」
千歳が、苦笑ともとれるような声を漏らす。
そして——
場に残っていた《式神 雷迅ノ猛虎・ライカ》に、バッドをぶつけた。
即死突撃。相打ち。
制御された、冷たい刃を突き立てる。
「せいぜい、うなされて」
——静かに、冷たく。
それが私の“ヴァンプ”の戦い方。
ライカを倒したことで、バッドが攻撃を行い、バディースキルが発動。
ルナのライフ:17 → 18
千歳の8ターン目。
その声色には、確かな勝利の確信があった。
「ファイナルターンだ」
「これでてめぇ~の終わりだ」
口調は荒いが、そのカードを出すに相応しい空気を作り上げていた。
そして——
千歳は、一枚のカードをフィールドに叩きつけた。
《万象纏いし霊獣・ヒツギノカガチ》/13/13/コスト50
【召喚条件】:呪術カウント15以上で、8コストで召喚可能。
【召喚時効果】:墓地の式神と“合体”可能。
【合体】:墓地の式神の攻撃力と体力を合算し、その能力値を加える。
【合体効果】:墓地の式神の持っていた能力も継承する。
(やばい、これは……)
——墓地の式神:
《イヅナ》 2/2
《アラガミ》 3/1 ×2
《雷迅ノ猛虎・ライカ》 5/2
攻撃力:13+(2+3+3+5)=26
体力:13+(2+1+1+2)=19
しかも、ライカの速攻を継承している。
さらに、千歳のバディースキル発動——
「私の式神の攻撃はブロックされることができない」
ブロック不可。
速攻持ち。
攻撃力26点。
ライフの上限を超える火力。
(……終わった、じゃない。終わらせない)
千歳が叫ぶ。
「雑魚は失せろ!!」
——その瞬間、私は静かに一枚を裏向きに発動する。
「……防御ストライク《バッド》を発動」
《防御ストライク:バッド》/罠/0コスト
【条件】:墓地に“バッド”が5体以上存在している。
【効果】:相手のモンスターの攻撃1回を0ダメージにする。
雷に焼かれ、式神に倒され、爆発に巻き込まれたバッドたち。
その犠牲と共に積み重ねられた墓地こそ、私の盾。
カガチの攻撃が、大地を割るような衝撃と共に襲いかかる——
防御ストライクは、かなり先の弾のカード。未来の知識を持ったチートカード。
転生前もこのカードにかなりお世話になった。
まじで、このカードだけはバッドの中で一番輝いている。
けれど、
それは“虚空”に吸い込まれるように、かき消えた。
「……この攻撃を、防いだと……?」
千歳の声がかすかに揺れる。
ルナの8ターン目。
私は静かにライフを1支払う。
《絶命の翼》の代償だ。
ライフ:18 → 17
「……コストチャージ」
盤面には、《赤き贖罪者 ヴァルミナス》(3/3)
そして、《バッド》が2体(1/1×2)。
合計5点。
千歳の残りライフは12点。
このままじゃ届かない。
——あと7点足りない。
(これが私の……ラストターン)
このターンを逃せば、再びヒツギノカガチが動き出す。
次のターンで、26点のノンブロック圧倒的パンチ。
どんな理屈をつけても、生き残る道はない。
「良くも悪くも……これが私のラストターンね」
「あなたのことだから、逆転されるかもしれないけど」
「最後のヴァンプのあがきを、見て頂戴」
私は、最後のカードを場に叩きつける。
《血蝕の従魔師 ディアラン》/7コスト/2/2
【召喚時効果】:ライフを5払うことで、
・場の闇属性モンスター全体に+2バフ
・バッド系であればさらに+1、合計+3
ライフを削ることに、もはや迷いはなかった。
「ライフを……5、支払うわ」
ライフ:17 → 12
バフ計算:
ヴァルミナス:3 → 5
バッド①:1 → 4
バッド②:1 → 4
合計:5+4+4=13点
私は、迷いなくアタック宣言をした。
「アタック——全部、通してもらうわ」
千歳は何も言わなかった。
いや、言えなかったのかもしれない。
——ルナの攻撃:13点
——千歳のライフ:12 → 0
圧倒的猛攻を受け流して、ルナの勝利をしっかりとつかみ取っていた。
その事実を千歳は受け入れてしまうことしかできなかった。
悔しいという気持ちというよりも惨めな気持ちであふれそうになった。
一族としてのプライドが傷ついてしまって、どこか申し訳なかった。
その気持ちでたくさんだった。