カードゲーム世界にTS転生したら、初戦敗退したヴァンプデッキ使いでした 作:銀層
天上院杯――その本選が、ついに幕を開けた。
予選の喧騒を越えた仲間たちが、再び顔をそろえる。
「やぁ~今日は大会だね~」
機子は変わらずの調子でニコニコしていた。
その柔らかな口調の裏に、場慣れしたプレイヤーの余裕がにじんでいる。
「ショップ大会は何度も出て、優勝も何度かしたけど……やっぱり、カメラがあると緊張しちゃうよね」
「これでもアマの大会だからさ、変に肩に力入っちゃう」
その言葉に、思わずルナも頷く。
少し前までの自分たちからは想像もつかないような舞台に、いま立っている。
レイと霞も、そこへ姿を現した。
「ひさびさ……だね」
レイは照れくさそうに笑いながら、もじもじと近づいてきた。
どこか寂しげな表情が混じっているのは、再会の嬉しさゆえか。
「一週間ぶりだから、許してよ~」
ルナは笑顔で返した。
この一週間で、自分は確かに変わった。
ダンジョンを攻略し、バディーとさらに絆を深め、新たなスキルまで手に入れた。
もう、あのときの自分じゃない。
「私だって強くなったよ」
レイが、珍しく語気を強めた。
「すごいカード、手に入れたんだ……」
その表情は、まるで誰かに追いつきたいと願うように、まっすぐだった。
「私だって、強くなりましたよ」
霞が静かに口を開いた。どこか自信を帯びたその声には、予選突破者としての矜持がにじんでいる。
「ここにいる中で、予選で戦ったのは……レイさんだけでしたね」
「でしたら、氷翼龍デッキの恐ろしさ、今度は本選でしっかり教えてあげます」
氷翼龍デッキは本当に強く、原作本編ではレイをしっかりと苦しめてきた。
俺の転生前の環境でも最低でもティア2にいたほど強い。
「ふふ、それなら――」
機子がにこにこしながら一歩前に出た。
「私のゼファリオンが返り討ちにしてあげるよ!」
口調はやわらかいが、その眼差しは真剣そのものだった。
ニコニコ笑いながらも、きっとその裏で新しい戦術を何重にも張り巡らせてきたのだろう。
言葉の応酬のなかに、互いの成長と決意が見えた。
それは単なる牽制や煽りではなく、次に待つ激戦への期待と信頼の表れだった。
和やかな空気のなか、次第に緊張感が満ちてくる――
そしてその空気を、一発でぶち壊すような、ギャリギャリと軋むような機械音が響き始めた。
「……え?」
金属が擦れるような耳障りな音が近づいてくる。
振り返った視線の先、会場の隅からひとつの電動台車が走ってきた。
その上に――巨大な壺。
誰よりも目立つ、異形の存在。
壺の中から、ひょっこりと顔を出したのは、
まぎれもなく――あの男だった。
「つぼおじだ~~~」
機子がつい声に出してしまった。
異様な登場に、会場がざわつく。
「……つぼおじじゃない。壺謀斎だ」
誰もがそう呼ぶその異名を、本人は一貫して否定し続けていた。けれど、そう名乗る姿さえも“つぼおじらしさ”の一部だった。
壺の縁から身を乗り出した彼――壺謀斎は、会場を見回すように視線を巡らせた。
「それにしても、一週間前とはまるで別人のようだな、お前たち。オーラが違う。カードに触れ、戦いの中で成長した証がにじんでいる」
「つぼおじ~、またてきとうなこと言ってる~」
機子がにこにこと笑いながら、軽く茶化す。
だが、彼は表情ひとつ変えずに返した。
「……つぼおじじゃない。壺謀斎だ」
そして、ぴたりと機子に視線を定めた。
「榊原機子。新しいサブユニットを手に入れたな」
「ちょっ……!! それ、まだ誰にも言ってないやつ! 企業秘密~~!」
慌てふためく機子を、壺謀斎は目を細めて見下ろす。
「私を馬鹿にしたからだ」
「ツボおじのくせに生意気だぞ!」
「……つぼおじじゃない。壺謀斎だ」
返す言葉は、どこまでもブレない。
その異様な存在感に、周囲の空気が少しだけ引き締まった気がした。
「真のカードゲーマーなら、すでに“その判断”に至っている。だが、お前さんの状況を考えれば、それで正しいよ」
その口調には皮肉もなく、ただまっすぐな言葉の重みがあった。
「では――試合を楽しみにしているよ」
壺をゆっくり回転させながら、つぼおじは静かに去っていった。
残された者たちは、誰も言葉を発さなかった。
まるで、風が通り抜けたかのような静けさのあと。ルナがふと、呟いた。
(……若いっていうのは、本当に恐ろしい)
短期間でまぶしいほどの成長を見せる仲間たちの姿に、壺謀斎の言葉が妙に沁みた。
(天上院さんにも――その光が届いてくれたらいいんだけど)
壺謀斎は物思いに耽っており、高揚感ともにどこか切ない思いに包まれていた。
「あいかわらず、個性的な人ですね」
霞が、半ばあきれたように、けれどどこか楽しそうに呟いた。
「そろそろトーナメントの発表ですわね」
霞が時計を確認しながら、静かに口を開いた。
その声音には、どこか張りつめた気配が漂っていた。
「はやく、会場に行きましょう」
彼女の言葉に、ルナたちも頷く。
ざわつき始める控室。各地から集まった猛者たちが、次第に一点へと歩を進めていく。
大型モニターのあるホールでは、すでに人が集まり始めていた。
「ついに始まるんだね……」
レイがポツリと呟いた。
その声には、緊張とわずかな震えが混じっていた。
「さあ、行こう」
――天上院杯本選、開幕。
~~
「1回戦は全員違っているみたいだね」
機子がモニターの組み合わせ表を見つめながら、安堵したように笑う。
「ただ、進めば当たるけどさ。少しほっとした」
その表情には、仲間同士での潰し合いにならなかったことへの、素直な喜びがにじんでいた。
「そして、1試合目は――私か」
彼女の名前が、トップに表示されている。
「ここで戦ったことあるのってルナしかいないからさ」
「私のゼファリオンの強さ、ちゃんと見ててくれると嬉しいな」
そう言って、彼女は軽くウィンクしてみせる。
その仕草に、場がふっと和んだ。
ルナは頷きながら微笑む。
「もちろん。あの時より、さらに強くなってるはずだしね」
「えへへ、期待してて~」
機子は少し照れくさそうに笑ってから、ふっと表情を引き締める。
「じゃ、ちょっと行ってくる」
その声には、すでにスイッチの入ったプレイヤーの気配が宿っていた。
機子が足早に対戦席へと向かっていく背中を、ルナたちは静かに見送る。
その背中は、以前よりも確かに大きく、頼もしく見えた。
「……あの人、楽しんでるのが伝わってきます」
霞が呟いた。
「プレイも、雰囲気も、全部ひっくるめて“自分のステージ”にしてる感じ」
レイも続けるように言った。
どこか悔しそうでもあり、でもそれ以上に――尊敬があった。
「うん。きっと、あの人なりの戦い方があるんだよ」
ルナはそう返しながら、自分の胸にもそっと手を当てる。
(私も……やらなきゃ)
その思いは、確かに胸に宿っていた。
大型モニターに、機子の対戦が映し出される。
そして、アナウンスが響き渡る。
「天上院杯・第一試合――開始!」
再び、戦いの幕が上がる。
仲間たちが、それぞれの道を歩み始める――。
~~
機子の対戦相手は――霧島まどか。
原作本編にもスピンオフにも記述がない。
初見の選手。それだけに、何を使ってくるのか読めない。
(……どんなデッキか、ちょっと楽しみだな)
機子はいつも通りの笑顔で構えながら、静かに手札を確認する。
そして――
「バディースキル、発動」
その瞬間、場の空気がピリリと引き締まった。
《蒼穹覇装・ゼファリオン》が青白く輝き、
新たなサブユニットが自動的にゲームに組み込まれていく。
《鋼弾翼ユニット・光閃翼(セイリュス)》が、初期手札に追加された!
「えっ……! ゲーム開始時に、サブユニット!?」
ルナが目を見開いた。
「どうしたの?」
レイも、その驚きに反応する。
「バディースキルが追加されているの。今、明らかに“2つ目”が発動した」
「ええっ!? そんなこと、できるの?」
レイの声には明らかな動揺がにじむ。
「2種類以上のスキルを持つカードバトラー……本当に存在したんですね」
霞が目を細め、戦術家らしい興味を示した。
その瞬間、彼女の中で何かが切り替わったのが、誰の目にも明らかだった。
「とりあえず……試合、見ていきましょう」
霞が一歩前に出て、仲間たちの視線を引き戻す。
静かに始まる、未知の相手との戦い。
だがそれは、確かな“成長の証”でもあった。
~~
1ターン目は、お互いにコストチャージのみ。
特に動きのない序盤、観客席では仲間たちが静かに息を飲んでいた。
だが、2ターン目――機子がついに動く。
【機子・2ターン目】
「コストチャージをおこない、フィールドカード、発動!」
彼女が場に差し込んだのは、銀白に煌めく回路のような文様が描かれたカードだった。
《機装創域ゼリアード》/2コスト/フィールド
【効果】:自分のターン終了時、デッキから“サブユニット”をランダムに1体生成し、手札に加える。
ターン終了後、《機装創域ゼリアード》によりサブユニットα《エアリア》を1枚、手札に加えた
【まどか・2ターン目】
「コストチャージをおこない、フィールドカードを発動」
《霧の森 キリシュ》2コスト/フィールド 【効果】:フィールド上の霧獣の攻撃力を1上げる。
【機子・3ターン目】
「コストチャージして、コスト3」
機子は迷いなくフィールドに1枚のカードを差し出した。
「《旋工支機・ギアロット》を召喚、2コスト!」
《旋工支機・ギアロット》 2コスト/1/1
召喚時:サブユニットα《エアリア》を1枚、手札に加える。
「前のターンにも、エアリアを1枚加えてある。だから、今で2枚」
機子はにっこりと微笑んでから、手札を1枚ずつ差し出した。
「この2枚を――ユニゾン!」
「ユニゾン完了っと。《エアリア》は+2させるのサブユニットになったよ」
「ゼファリオンのバディスキル発動!!」
「バディスキル――《ユニゾン・クラッシュ》、発動!」
《ユニゾン・クラッシュ》
【スキル】
ユニゾンが成立したとき、相手モンスター1体に1ダメージまたは相手プレイヤーに1ダメージを与える。
「対象は……君! 1点、削らせてもらうね」
軽やかな笑みと共に、ゼファリオンの機構が一点に集束する。
鋭い光線が撃ち出され、俺のライフポイントを直撃した。
まどかのライフ:20→19
「バディースキルが……2つ!?」
「もしかしたらさ、10個くらい持ってるかもよ~」
機子は悪戯っぽくウインクする。
「この反応……2つだな」
「なんでバレるのよ~!?」
機子がぷくっと頬を膨らませた。
ターン終了後、《機装創域ゼリアード》によりサブユニットα《エアリア》を1枚、手札に加えた
【まどか・3ターン目】
「コストチャージ……ふむ、3コストね」
まどかは手札を軽く見てから、小さく溜息をついた。
「ライフを削られるのは面倒。……なら、出しておこうか」
静かに、カードをフィールドに差し出す。
《霧獣ミズク》 3コスト/2/1
【破壊時】:このカードは手札に戻る。
投影されたミズクは、霞がかった水霧の中にふわりと浮かぶ小型の霧獣。
その姿は儚げで、しかし確かな存在感を放っていた。
「ターンエンド」
無駄な動きも台詞もなく、まどかは静かに手番を終えた。
【機子・4ターン目】
「コストチャージ。これで、4コスト」
機子は手札から一枚のカードを差し出した。
「2コスト――《整備支機・フォルザイン》を召喚!」
《整備支機・フォルザイン》/2コスト/1/1
【召喚時】:サブユニットβ《クレノア》を1枚、手札に加える。
フォルザインの起動と同時に、背中の整備アームがせわしなく動き出す。
それに呼応するように、カードから光の粒子が走り――新たなユニットが手札に。
「《クレノア》――体力強化タイプのサブユニット。いい子だよ」
サブユニットβ《クレノア》
【効果】:ユニゾンしたモンスターに体力+1。
「じゃあ、合体いくよ」
まず、手札から1コストを支払い、
《エアリア》+《エアリア》――2枚のサブユニットαがユニゾン。
続けて、先ほど合体したそのユニットと、
新たに加えた《クレノア》をユニゾンさせる。
「《エアリア》の速度と、《クレノア》の防御性能……両方を乗せて、バランス良く強化!」
合体が完了した瞬間――銀のラインが走り、装甲の形状がさらに変化。
背部からは安定用のスラスターが噴射される。
「そして――バディスキル、《ユニゾン・クラッシュ》を発動!」
ゼファリオンが咆哮し、振動するフィールドに閃光が走る。
「対象は……《霧獣ミズク》!」
鋭いビームが一直線に放たれ、ミズクを直撃。だが――
「破壊時効果で手札に戻るか」
霧の中へと姿を溶かすように、《ミズク》が消える。
「でも、もう1点、プレイヤーに通しておくね」
《ユニゾン・クラッシュ》が突き刺さり、まどかのライフがわずかに削れる。
まどかのライフ:19→18
だが――その直後。
「その瞬間だよ」
まどかが静かに声を乗せた。
「バディースキル、《霧獣の戯れ》を発動」
《霧獣の戯れ》
【条件】:自分の隷従(霧獣)が手札に戻ったときに発動
【効果】:
①戻った霧獣の召喚コストを-1(最低1)
②自分のコストを1ブースト
「ミズクの再展開コストを軽くして……さらに、次ターンの動きも加速させてもらうよ」
「やるねぇ~!」
機子は楽しげに笑う。互いのスキルが連鎖し合う、その状況こそがカードバトルの醍醐味だった。
「でも、せっかくだから――ギアロットでも攻撃、通させてもらうよ」
残った小型ユニットが突進し、再びまどかのライフを一撃。
まどかのライフ:18 → 17
ターンの終わりとともに、再び空気に熱が満ち始める。
ターン終了後、《機装創域ゼリアード》によりサブユニットα《エアリア》を1枚、手札に加えた
試合は中盤に差しかかり、徐々に盤面の攻防が鮮明になっていく。
まどかは、《霧獣ミズク》のような手札に戻る効果を持つモンスター――通称「レイ中(戻る中型霊獣)」を繰り返し展開しつつ、着実にコストを積み上げていた。小回りの効く霊獣たちを出し、戻し、また出す。その単調とも思えるループが、まるで呼吸のように自然で効率的だった。
一方の機子は、バディである《蒼穹覇装・ゼファリオン》のスキル、《ユニゾン・クラッシュ》を活用して相手の小型霊獣を確実に処理していく。
ユニゾン成立ごとに発動される1点のダメージは、相手のテンポを崩すには十分な制圧力があった。
――だが、それでもまどかの霊獣は少しずつ盤面に残り始めていた。処理しきれなかった1体、また1体と霧の中から姿を現し、いつの間にか数で機子を圧倒しつつある。
「……機子のバディースキルで盤面をコントロールできる効果は強いけど、盤面……巻き返されたね」
ルナの隣でレイがそう呟いた。語尾には焦りよりも、静かな分析がにじんでいる。
「霊獣、リソースを減らさないですからね」
霞が落ち着いた声で応じる。彼女の眼差しは冷静そのもので、まどかのデッキの本質を見抜いていた。
「ただ、一番最初に追加したサブユニット……《光閃翼(セイリュス)》を、機子はまだ使っていない。あれは――」
ルナがふと声を潜めるように口にする。
「勝機はそこにあるかな」
「……そうですね。そこから逆転がありますね」
霞もまた、その可能性を見逃していなかった。
【機子・10ターン目】
機子のライフは12点。対するまどかは10点。
一見すると僅差だが、盤面の状況は逼迫していた。まどかのフィールドには霧に包まれた霊獣たちがずらりと並び、まるで反撃の牙を研いでいるかのようだった。
次のターン――霊獣たちが一斉に牙を剥けば、機子のライフなど容易く吹き飛ぶ。
このターンで仕留めきれなければ、逆に飲み込まれる。まさに、土壇場。
それでも、機子は静かに笑った。
この瞬間のために、すべてを積み上げてきた。勝負を託した一枚が、いま手元にある。
「どうやら、ここで決めないといけないみたいだね」
そう呟きながら、彼女は1枚のカードを差し出した。
ユニゾンの対象となったのは、盤面に残っていた機巧モンスター。
《鋼弾翼ユニット・光閃翼(セイリュス)》が、白銀の閃光とともにその背に接続される。
装甲が変形し、展開する光の翼がフィールドを照らす。
多重に組み込まれたサブユニットが、機構音を鳴らしながら次々に起動。空中で重なるように連結され、戦闘機のような機体へと再構築されていく。
――10体のサブユニット。
「《鋼弾翼ユニット・光閃翼》、ユニゾン完了……」
機子は静かに言葉を落とす。
「ユニゾン時効果、発動」
カードが輝きを放ち、スキルが処理される。
《鋼弾翼ユニット・光閃翼》――その効果は、ユニゾンされたサブユニットの数だけ、相手のライフを直接削るというもの。
「ユニゾン数は――10。つまり……」
彼女の指がまどかのライフカウンターを静かに指し示す。
「10点、ダメージ!!」
霊獣の群れを飛び越え、まどかのライフに一直線に突き刺さる光の一閃。
弾丸のようなエネルギーが収束し、一直線にまどかのスコアをゼロへと貫いた。
~~
試合が終わった直後、控え室へと戻ってきた機子を、ルナたちが迎えた。
その表情には、どこか誇らしげな余韻と、まだ熱の残る手応えがにじんでいる。
「ルナと戦った前回より、少し強くなったけど……どうだったかな?」
そう言って笑う機子の目は、どこかまっすぐだった。
ルナは頷きながら微笑を返す。
「本当に……すごく強くなったよ。光閃翼(セイリュス)、あんな使い方ができるなんて思わなかった」
「たぶんね、君と戦ったおかげで、ここまで来られたんだと思う」
少し照れたように笑う機子の姿に、レイも感心したように目を丸くする。
「ただユニゾンしただけで、相手のライフを一気に削るって……ほんとに強いんだね、セイリュスって」
「はい。あそこまで飛ばせるのは異常です」
霞が淡々と口を開く。冷静な視線は、すでに次を見据えていた。
「それに、あの巨大なユニゾン先――切り札機巧モンスターを出していないですよね」
言われてみれば、その通りだった。
普段なら、機子はユニゾンしたサブユニットを機体へと合体させ、フィニッシャーで盤面を一掃する戦術を取っていた。
だが今回は、それすら必要なかった。
「来なかったからね~」
機子は肩をすくめる。
「でも、もし来てたら……もう1ターンくらい早く、とどめ刺せたかな~」
さらりとした口調の中に、確かな自信が覗く。
霞はそんな機子をじっと見つめ、そしてふっと笑った。
「……私たちも、これに負けない試合をしないとですね」
ルナもレイも頷いた。
本選は、まだ始まったばかり。
熱を帯びたトーナメントの幕は、今まさに上がったばかりだった。