カードゲーム世界にTS転生したら、初戦敗退したヴァンプデッキ使いでした 作:銀層
ついに、決勝まで来た。
あの天上院涼音を打ち破り、私は“あの場所”へと辿り着いたのだ。
龍ヶ崎レイに認めてもらえた。ただ、それだけで――本当に、うれしい。
レイの願いを預かって、私は決勝のステージへと登った。
会場の空気が、これまでとは違う。
視線も、期待も、歓声も――全部が、この瞬間のために注がれている。
なのに、不思議と怖くはなかった。
むしろ、こんなに心が高鳴ったのは、初めてかもしれない。
私は今――“原作”の中にいる。
ずっと憧れていた、あの世界で。
アニメやカードで追い続けたあのキャラクターたちと、本気の勝負ができている。
推しの世界で、こんなにも熱くなれている自分が、今は誇らしい。
そして、私が使っているのは――《ヴァンプカード》。
かつては“ネタ枠”や“不遇”と呼ばれ、構築から外されていた。
誰からも注目されず、日陰に置かれた存在だった。
だけど、そんなカードたちを信じて、工夫して、何度も立ち上がって……
ここまで来たんだ。
《ヴァンプカード》で、私はここまで登り詰めた。
誰にも期待されていなかった。
だけど、私は勝ち続けた。
カードたちと一緒に、仲間と一緒に――。
この決勝戦が、私たちの物語の証明になる。
私は、私自身の“物語”を、このステージに刻む。
【レイ VS ルナ】
決勝戦。
ここまで勝ち残った者同士にしか許されない、火花と狂気と歓喜が交錯するステージ。
「ガイレンの効果発動!」
山札の上から、カードが5枚めくられていく。
そして──その中に、またしても新たな“召竜”の姿があった。
「《竜刃騎エンザイル》、召喚!」
突如として降り立ったのは、炎を纏った槍を携える竜騎士型のドラゴン。
姿は人に近いが、その背に大きく広がる竜翼と燃え盛る闘気は、まさに竜の権化。
《竜刃騎エンザイル》:コスト6、ステータス2/2
【召喚時効果】:味方のドラゴンが3体以上いる場合、即座に攻撃可能。
「いくよ――エンザイル!」
グリヴァルド、ガイレン、エンザイル。
三体の召竜が並び立ち、レイの指示と同時に、黒き蝙蝠軍を押し返すように攻め立てる。
「っ……この圧は……!」
ルナのフィールドは、瞬く間に火に呑まれた。
だが、ただの焼野原にはならない。
炎の中から、再び、影が這い上がってくる。
「バディースキル……《蝙蝠の報復》、まだ生きてる……!」
「バッドたち、立ち上がって!」
消えたはずの1/1たちが、また立ち上がる。
《蝙蝠ドクター・ジェレス》の効果で蘇るバッド。
その小さな影が、巨大な竜の爪に噛みついては、蝕んでいく。
バッドの攻撃が通るたびに、ルナのライフは回復し、レイのライフは確実に削られていく。
──まるで、強者に喰らいつく小さな獣。
だが、レイは止まらない。
「私も楽しいよ、ルナ!」
次のターン、グリヴァルドが再び攻撃。
山札の上からまた1枚、また1枚と召喚されていくドラゴンたち。
フィールドは、完全に火と竜に支配されていた。
それでも、ルナの表情には笑みがあった。
(これが……“決勝”……!)
(ただ、楽しいだけじゃない。命を削り合う、ギリギリの駆け引き)
(でも、そのすべてが……たまらなく、愛しい)
バッドたちの影が、レイの竜軍の隙を縫って飛び回る。
竜の咆哮と、蝙蝠の悲鳴。
炎と闇。
秩序と混沌。
二人の魂が、フィールドでぶつかり合っていた。
勝敗はまだわからない。
どちらが勝ってもおかしくない、そんな異常な密度のデュエル。
「来なさい、レイ! あなたに認められるために、私はここに来た!」
「認めてるよ。だから、全力で来て!」
このデュエルは、ただのゲームじゃない。
これは、絆であり、物語であり、そして何より“証明”だった。
――推しのデッキで、ここまで来たこと。
――このキャラと、本気でぶつかり合えたこと。
そのすべてが、プレイヤーとしての“誇り”そのものだった。
推しデッキを手に。
胸を張って、晴れ舞台へと上がる。
対峙するのは、主人公――あこがれであり、ライバルであり、物語の中心に立つ存在。
自分のすべてをぶつけるに、これ以上の相手はいない。
カードを引く音。
モンスターを場に出す衝撃。
魂をぶつけ合うようなバトル。
すべてが、今、この瞬間だけの特別な物語になる。
「私は……このデッキと、ここまで来た」
「不遇だって? 弱いだって? そんなの、関係ない」
「私は――このヴァンプと一緒に、最高の景色を見に来たんだ」
どんなに強い相手でもかまわない。
勝ちたい。けれど、それ以上に――
この瞬間を、全力で楽しみたい。
カードがひとつ、場に置かれるたびに実感する。
ああ、本当に私は、ここまで来たんだと。
主人公と戦える。推しデッキで。観客の視線を浴びながら。
仲間の声援を背に受けながら。
これが、最高じゃなくて、何だっていうの?