魔法科高校の任侠妖怪   作:椿℃

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お久しぶりです。

生存報告を兼ねてプロローグの改訂版を投稿しました。



プロローグ
新第零話 ぬらりひょんの孫と日常


 西暦1999年に魔法というものが初めて記録されてから約80年が過ぎた。魔法が記録された当初は、それを技術体系化することは不可能と思われていた。しかし、時が経つにつれて科学技術が発達し、魔法は技能となった。

 そんな近代化した世界に住んでいるのは人間だけではない。もちろん、ネコやイヌなどの動物たちとは今も変わらず共存している。しかし、人間に属さず、生物学的に動物とは言えない者たち、古来から人々が恐れられてきた『妖怪』もいる。彼らは人間に気付かれないように、ひっそりと暮らしていた。

 関東地方のとある街、浮世絵町の住宅街には、一際目立つ大きな屋敷が場違いのように建っている。この屋敷は二階建て建築で、立派な塀が小さな野球場ほどの広さのある敷地をぐるりと囲んでいる。屋根は瓦葺きが施され、庭をもち、その庭には小さな池、その近くに大きな桜の木なが植えてあるなど風情を感じられる。また、塀には、所々傷んでいる箇所が見られ、この建物が随分前に建てられたということが塀を通りすぎる人々に分かるだろう。

 今の時代、ほとんど全ての家が洋式を採用しており、このような造りをしている家はめったに見られない。日本全土を調べてみても、おそらく100棟もないだろう。

 ここに住んでいるのは、『関東任侠妖怪総元締 奴良組』の組員達だ。組の名前を見れば分かる通り、彼らは皆妖怪である。今から1000年程前、一体の妖怪ゆらりひょんが始めたものだが、現在は三代目である奴良リクオが頭となり、奴良組を引っ張っている。

 

 

*

 

 

「さて、見回りがてら夜の散歩にでも行くかね」

 

 

 21世紀も後半に差し掛かった辺りから、科学技術が急速に発達してきた。屋敷から少し歩いてみれば、至る所に防犯カメラがあるのが目にとまる。本当、前より妖怪が生活しにくい世の中になったものだな。しかし、先の大戦とその弊害によって人口が減ったことで、山奥等に行けば昔のような生活を送れる。今まで都会で人の世に紛れ込んで生活していた妖怪は徐々にその生活圏を移動していった。けれども、そう簡単にいかない場合もあるのが妖怪なのだ。

 土地神を始めとする、その土地と密接な関係にあるもの。都会(、、)という場所でしか畏を集められないもの。そんな彼等に「世の中の情勢が変わったから今の土地から出て行け」などと言われるのは、自分の存在意義を失うことに等しい。

 そのような彼等の生活の為、俺は奴良組の3代目の役目を果たさねばならない。幸い、彼等は上手く人の世に紛れているので何もなければ問題ない。

 しかし、そうも言っていられない問題がある。

 

 ────魔法だ

 

 魔法というものが容易に使えるようになり、犯罪を抑制する為に以前より大量に設置された。魔法が容易に使えるようになった、ということは街ですれ違う人の中で魔法が使える魔法師を見つけることはそう難しくはない。そうなれば必ずと言っていいほど、魔法を悪用する輩がでてくるだろうし、昔なら殴り合いで済んでいた一寸した喧嘩も魔法の撃ち合いに発展しかねない。

 

 ────そんな今の社会で妖怪が見つかったらどうなる?

 

 答えは簡単だ。一般人(、、、)には秘匿されている俺達妖怪の存在が明らかになったら明らかに混乱が生まれる。パニックに陥った人間は、妖怪を退治しよう──治安維持の為か面白半分か──と攻撃してきたり、科学者等に捕らえて研究の材料にされたり等、こちらの被害は甚大なものとなるだろう。その被害を真っ先に受けるのは、対抗する力の持たないただ単に人を脅かす妖怪なのだ。

 

 

「ふむ、だからこうして毎日頻繁に出かけているわけだが……」

 

 

 今日も見回り玄関にへ向かう途中に明かりについた部屋の前を通ろうとして足を止める。この部屋は俺の妻である氷麗とまだ幼い子供達がいる筈。

 氷麗に出かける旨を伝えなければ。そう思い、静かに障子を開けると彼女は子供たちと仲良く布団を敷いていた。普通(人間)ならもう寝る時間であるが、同時に俺達(妖怪)の時間の始まりだ。

 障子を開けて吹き込んできた風が不思議に思ったのか、子供達が振り返り、それに釣られた氷麗も此方に視線を向けた。

 

 

「「あ、おとーさんだ」」

「あら、今から外へお出かけに? 見回りでしょうか?」

 

 

 眠いだろう何時もより覇気のない声と、昔と比べて大人びて落ち着いた声音に答える。

 

 

「ああ」

「「おとーさん、行っちゃうの?」」

「そうだ。お父さんこれからお仕事しに行ってくる。六花、鯉斑、お母さんの言うことをちゃんと聞くんだぞ」

「はーい、いってらっしゃい!」

 

 

 六花は眠い目を擦りながら返事をした。しかし鯉斑はじっと自分を見たままだった。心なしか、鯉斑の眠気眼が輝いて見える。彼の目からは、特撮ヒーローに向けるような憧れの感情が読み取れる。

 まぁ俺もこいつと同じくらいの歳のとき、親父の出入りのときの背中に見蕩れていたのだから、おおよそ似たような感情を抱いているだろう。なかなかどうして、やはり親子は似るものなんだと改めて感じさせられる。

 

 

「どうした、鯉斑」

「あ、あのね、おとーさん、どうしたらおとーさんみたいにつよくてかっこよくなれるの? ぼくもおとーさんみたいになりたい」

 

 どうやら考えていたことは的を射ていたようだ。

 

「鯉斑、鯉斑の言う”強い”ってどういうことだ?」

「えーっと、わるいやつらをバシバシたおせるような人かな」

 

 眠たいながらも、頭を振り絞った鯉斑から返ってきた答えは子供らしいものだった。

 

「……そうか。確かにそういう奴の持っている力は強い。でもな鯉斑、ただ強い力を持っているだけで、その力を自分の為だけに使って、他の人になにもしない、そんなのは本当に強さではなく、強いとは言えない。その力を誰かを守るために使える奴 、使った奴が持っているものこそが本当に強さってことだ。強くなるっていうのは、誰かのために使える力をつけることだ」

「???」

「今は分からないだろうが、すぐに分かるようになる。とりあえず、今日はもう寝なさい」

「……はーい」

 

 

 なんだか不満そうな表情の鯉斑を布団に促す。六花の方は、もう布団に入っていた。先程の様子からもう寝たのかと思ったが、俺の見送りをしたいのか重そうな瞼を無理やり開けてまだ起きていようとしていた。その近くでは微笑ましそうに座っている氷麗。

 しかし、さすがに耐えられなかったらしく、鯉斑と話をしていた一瞬の隙にもう寝てしまった──それとも寝つかせられた──。その寝顔を見ていると気持ちが穏やかになった。やはり、子供の寝顔とは見ていて安心するものだな。

 

 

「さて、それじゃあ行ってくる。そろそろ出ないと青や黒達に見つかってしまいそうだ」

「ふふ、毎回毎回誰にも告げずにふらっと出かけるものですから、皆リクオ様がいないって困っていますよ?」

「仕様がないだろう、あいつら絶対私達、『私達も行きます、3代目』とか言うだろう? せっかくの散歩が楽しくない。それにな、和服が何人もいたら目立つだろう?」

 

 過保護なのは今でも変わらない。本当、あいつらは俺が出かけようとすると、今だに『どこに行かれるのですか? 一人で勝手に出ていかれると困ります、どこかに行かれるなら私達も』とか言ってくる。特に首無とか烏天狗一家とか。

 過保護過ぎるだろあいつら。もういい加減止めて欲しい。もうそんな歳ではないのだ。

 首無の奴、俺に構ってないで毛倡妓と仲良くやっていれば良いのだ。早く仲を進展させろ、ヘタレ。

 烏天狗はまた少し小さくなったか? あいついつか、親指くらいになるんじゃないか? 昔は普通の大きさだっったらしいが、どうなったら体があんなに小さくなるんだ。もしかしたら、黒羽丸達も将来小さくのだろうか……小さいささ美は可愛いかもしれないな。

 

 

「楽しむのは良いですけれど、気を付けてくださいね?」

 

 心配そうに此方を見てくる氷麗。その目を見ていると氷麗が過保護だった昔を思い出す。

 

「分かっている、大丈夫だ、俺一人なら人間には気付かれない。流れている血は1/4とはいえ、俺も一応ぬらりひょんだ。ぬらりひょんはどんな妖怪か知っているだろう?」

 

 “ぬらりひょん”、『誰にも気付かれずに勝手に家に上がり込んで飯とか食って帰る妖怪』ね。

 一体なんでこんなやつが妖怪の総大将なんだろうか。人間に見つかっても、(こいつは家の主なんだ)と思ってしまい、家から追い出せないらしい。そこらへんから主繋がりで妖怪の主に発展していったのか?

 また、ぬらりひょんは認識されにくい。俺一人なら並大抵の人間には気付かれないだろう。あいつらがいると逆に目立ってしまいそうだ。結構派手な格好をしている奴らが多いし、最近魔法とかで余計に気付かれやすくなってきているっていうのもある。それに、見えるものには見えてしまう(、、、、、、、、、、、、)からな、俺達妖怪は。

 

 

「勿論です。何年リクオ様にお仕えしてきたと思っているのですか? リクオ様のことなら何でも知っていますよ? そうですね、あれは小学生のときに……」

「ちょっと待て、いきなり何を言おうとしている、やめろ」

「ふふ、冗談ですよ。実のところ、私もご一緒したいところですが、子供たちがいますから。それに、妻は夫の帰りを黙って待つものですからね」

「……そうか、ではこうしよう。今度子供たちを烏天狗に任せて夜の散歩デートへ行こう」

「はい! 楽しみにしていますね」

「任せろ。それじゃあ、行ってくる、氷麗。なるべく早く帰ってくるようにする」

「分かりました、行ってらっしゃい。お気をつけて」

 

 座りながら頭を下げながら見送られ、俺は子供たちの寝室を後にした。

 しばらく長い廊下を歩き玄関ではなく庭の方へと向かう。前まではいつも玄関から出かけていたのだが、この前の出かけの際に首無達に待ち伏せされたのだ。それ以降毎回、夜に出るときは抜け出す場所を変えている。

 

「……玄関の方に2人、二階に1人。は、毎度毎度ご苦労なこったぁ」

 

 そう独りごちりながら草履を履いて塀を超えようとしたとき、池に映った月が見えた。白く輝く月を見れば無性に酒が飲みたくなってきた。

 

「確か今日は九重寺の方に行くんだったな……酒買って彼奴んとこでも行って月見酒でも楽しむとするか。あぁでも彼奴は酒飲めないか。ん? 家の達磨は飲んでた気がする……細けぇこたぁいいか。決めた、無理矢理でも飲ます」

 

 方針が決定したので、早速近くの酒場に向かおう。

 塀を越えて歩き出してすぐに屋敷の中が騒がしくなり、「リクオ様ぁぁぁぁぁ」と声が聞こえてきたが当然無視した。

 夜中の喧噪を背に受けていると、何故だか笑いがこみ上げてきた。

 

「は! は! は! やっぱりいいねぇ、平和ってのは。……そうだろ、皆」

 

 

 

 

 

 

 そう言う彼の背中に広がる夜空とそこに浮かぶ一つの月。それの周りには、いくつもの星が輝いていた。 

 

 

 

 

 

*

 

 

 リクオ様は夜の散歩に行ってしまいました。六花と鯉斑は気持ち良さそうに眠っています。可愛いです。いったいどんな夢を見ているのかしら。

 

「おかーさん」

「あら鯉斑、まだ起きていたのですか? もう寝たのかと……ん?」

「すぅ……すぅ……」

 

 鯉斑から返事が返ってきません。不思議に思って顔を覗いて見ると、目は閉じていて、小さな寝息の音が聞こえてきました。どうやら寝言だったようです。隣の六花も気持ち良さそうに寝ています。

 

「んー、おかーさん、ぼく」

 

 また鯉斑が寝言を言っています。甘えん坊さんですね。

 そういえば昔、リクオ様が熱を出されてうなされているときには、「つららー、つららー」っておっしゃっていましたっけ。そして、私が「どうされました?」って言って近付いたら……熱で精神的に弱ってらしたからなのでしょうか、リクオ様が私の手を握って、「氷麗の手って冷たくて気持ち良いね」って! キャー! リクオ様ったらもう! 庇護欲をそそられるあの笑顔! 今のリクオ様も素敵ですが、中学生のリクオ様は可愛かったですね! ……はっ! 取り乱しては駄目よ、氷麗。騒がしくしたら子供たちが起きてしまうわ。それには今はリクオ様の世話係でも側近頭でもなく妻なのだから、淑やかな女にならなくてはいけません。

 

「……ぼくは、おとーさんみたいな4代目に……」

 

 先ほどから寝言が多いですね。ふふ、鯉斑なら大丈夫ですよ。あなたの名前は、奴良組の全盛期を築いた鯉伴様と同じですから。それに何といってもあなたはリクオ様の子どもなのですから。

 

「それにしてもお母様ったら鯉斑を特に可愛がりますね。そんなに小さい頃の2代目に似ているんでしょうか?

 私は大人になった2代目しか知りませんから、この子がどのような成長をするのかが楽しみです」

 




 
こんな感じになります。

改訂前のものは削除しました。

これから、第壱話から手をつけて以前投稿したところまでの修正が終わったら続きを投稿します。
 
修正した話は「新第〇話」です
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