魔法科高校の任侠妖怪   作:椿℃

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どうも。
12月になりました。


少し原作の内容をいじりました。


第参話

 

 射撃場を離れた後、俺たち3人は気になる授業を2つ3つほど見学した。気になる授業とはいっても、”ほのかと雫が”だが。俺は特にこれといって見たい授業はなく、ただ魔法の授業がどのようなものかを知ることができれば良かったので、ほのかたちに任せることにした。

 見学をしたというより2人に付き添ったといった方が正しいのかもしれな

い。

 「リア充爆発しろ!」とでも思われているのかもしれないが、俺に言わせればこの学校にいる奴は皆リア充ではないだろうか。

 毎日毎日食べ物に困ることなく、学校にもこうして通えている。このような現実(リアル)が充実していないなら、何をもってしてリア充というのか。生きることに余裕があるからそのようなことが言えるのだ。

 

 

 あっという間に放課となり、さて帰るかと思い席を立ったら、雫に「一緒に帰ろう」と言われ 、一緒に帰ることになった。

 女の子からの誘いを断るわけにはいかない……と紳士の真似をしたわけではない。最初から”一緒に帰る”という選択肢しか用意されてなかった。

 何故なら、断ろうと思っていたら雫にブレザーを掴まれたからだ。雫いはく、「嫌そうな顔をしていて、こうしないと昨日みたいに逃げそうだから」だそうだ。

 似たようなセリフを昼前にも聞いた気がする。それに昨日のことを引きずりすぎだ。

 

 

 というわけで、雫と一緒に帰ることになった。また、ほのかとも一緒に帰ることになった。

 ここまでは何の問題もない。しかし問題はここからだ。

 例にもよって、司波(女)に取り巻き連中が群がっており、ほのかもそいつらに混ざってしまったため、不本意ながら取り巻き連中と一緒に帰っているようになってしまった。

 司波の少し後ろに取り巻き連中がぞろぞろと。その後ろに俺と雫がついていっている。

 まるで大名行列ではないか。司波が大名で取り巻き連中や俺たちが家来のように見える。俺たちは参勤交代でもしているのか? 今から江戸にでも向かうのか? ……なんとも馬鹿馬鹿しい話だ。

 そう言えば、参勤交代というのは幕府が大名の財力を減らすのを目的で行ったわけではなく、戦のない平和な世の中になったため、兵役を持って忠誠を誓えなくなった大名らが、将軍に謁見をするという目に見える”礼”を尽くして忠誠を誓うために行っていたらしい。

 「参勤交代の人数多すぎて民が困っているから人減らせ」なんて言われているしな。

 

 閑話休題。

 

 ほのか、雫と帰るのは構わない。昼のやりとりを見る限り、司波は二科生とも比較的仲良くやっている用ようである。

 俺が嫌なのは、司波は一科生と二科生のことについて特にこだわってもいないというのに、特に勝手なことを言って本人の意思を尊重しない取り巻き連中と同じ奴であると思われることだ。

 それに昼のことがあるため、また何かがあると今度こそキレてしまいそうだ。

 どうか何事もなく無事に帰れますように……

 

 

             ◇ ◇ ◇

 

 

 早速、問題が発生した。

 誰だ無事に帰れるようにとか祈った奴は…………俺だった。

 校門近くまでいくと、司波(男)らがいた。おそらく司波(女)を待っていたのだろう。司波(男)を見つけた司波(女)は「お兄様!」と嬉しそうな声をだし駆け寄った。

 司波(男)が兄で司波(女)が妹のようだ。司波(妹)は兄と一緒に帰るようだ。これでもう取り巻き達とはお別れだ。

 しかし事はそう上手く進むことはなく、取り巻きの中にいた一人の女子が難癖をつけ始めた。

 一向に司波(妹)を諦めず、理不尽な行動をしている取り巻き達に、意外なことに眼鏡ボブがキレた。

 

 

「別に深雪さんはあなた達を邪魔者扱いしてないじゃないですか。一緒に帰りたいなら、ついてくればいいんです。達也さんと深雪さんの仲を引き裂く権利はあなた達にはありません」 

 

 

 思いっきり正論である。司波兄妹の方を見ると眼鏡ボブの言葉に妹が反応し、「仲を引き裂くだなんて……」などと言って照れている。

 あいつもしかしてブラコンなのか?

 眼鏡ボブの正論を聞いてもなお引き下がらず、激昂した馬鹿共は、「俺たちには彼女に相談することがあるんだ!」だの「司波さんには悪いけど少し時間を貸してもらうだけだもの!」だの、見苦しいことこの上ない。その馬鹿共のなかには、司波(妹)もとい司波深雪にお熱なほのかも興奮して同調している。

 相談があるったならさっき言え。時間あっただろう。

 眼鏡ボブとは違う二人も同じようなことを言った。勿論彼らの言っていることは正論である。何も間違ったことは言っていない。

 それでも馬鹿共は諦めない。……いい加減にしろよ。

 すると、名前の知らない(というか知りたくもない)一人の男子生徒がこう言った。

 

 

「うるさい! 他のクラス、ましてやウィードごときが僕達ブルームに口出しするな!」

 

 

 この言葉を聞いた瞬間、入学式前に聞いた上級生の会話、昼の騒動、そしていまここで起こっていることに対しての怒りや苛立ちの歯止めが効かなくなった。。

 

(もう我慢ならん)

 

「同じ新入生じゃないですか。あなた達が今の時点で一体どれだけ優れているのというのですか?」

「……どれだけ優れているのか、知りたいのなら教えてやる!」

「ハッ、おもしれぇ! 是非とも教えてもらおうじゃねぇか」

「だったら教えてやる!」

 

 眼鏡ボブがまたもや正論、体育会系が煽るようなことを言い、その挑発に馬鹿が乗る。

 そして、馬鹿の手が動いた瞬間にはもう歩き始め、銃型のCAD(おそらく特化型)を構えた馬鹿と体育会系の間に割り込む。そして、すぐさま馬鹿の手を掴む。

 ついでに何処から取り出したのか分からない伸縮警棒を振り上げようとしている栗色ショートの手首も掴む。

 二人は突然現れた俺に驚いている。

 

 

「ちょっと、何あんた。邪魔しないでよ」

 

 

 栗色ショートは文句を言ってきた。だがお前に用はない。

 

 

「ちょっと、聞いてるの?」

「うるせぇ、黙れ」

 

 

 自分でも驚くほどの低い声が出た。

 静かになった栗色ショートの方の手を離し、もう片方の手を掴んでいる方へ体を向ける。

 すると、我を取り戻したらしく目の前の奴が、

 

 

「そうだ! そのウィードの言うとお……がはっ」

 

 

 またしてもウィードと言ったこいつの胸ぐらを掴み、持っていたCADをはたき落とす。

 

 

「ふざけたことを言うのもいい加減にしろよお前。どれだけ優れているかだと? ただ200人の中の100以内で入学したってだけだろうが。力どうこう言う以前に人間として劣っているんだよお前は! 差別をしている奴が優れているわけあるか!」

 

 

 俺は掴んでいた手を離した。

 すると、呼吸を整えた名前も知らない馬鹿が言い返してきた。

 

 

「いきなり出てきて何だお前!」

「あ? 同じ一科生で同じクラスだから口出ししているんだよ。さっき自分が言ったことも忘れたのか? それにウィードと呼ぶのは校則で禁止されているだろうが。……校則にも従えない奴が偉そうなことを言うな、ましてや他人を見下すな。他人を見下しているような奴と同じクラスだなんて御免だ」

 

 

 責めるような口調で言っていると、何やら小さい声でぶつぶつ言っている。

 言い終わると、感情が昂って思考が働いていないせいか、

 

 

「うるさい! 黙れ!」

 

 

 としか返ってこなかった。

 

 

「うるさいのはお前たちの方だ。さっきから訳のわからんことばっか言いやがって。こいつらは正論しか言っていないだろうが。正論を言われてキレてんじゃねぇ。

 何が一科生と二科生のけじめだ。一科生、二科生以前に家族だろうが。家族と一緒に昼食もとれないのか? 家族と一緒に家に帰ることも出来ないのか? お前たちが家族の行動に茶々をいれる権限などあるわけないだろうが。

 もしそんなに司波に取り入りたいのなら、司波の意思を尊重してやれよ。司波はお前たちの所有物なんかではないぞ。お前たちの勝手な言動のせいで司波を困らせているのが分からないのか?

 お前たち何か? おもちゃを取られまいと善悪の判断もつかず、頑なに離さないガキなのか?」

 

 

 これまでのこいつらへの怒り等を吐き出した。当然、ここまで言われた相手は黙っていられるはずがない。俺に攻撃しようと落ちているCADを拾おうとする。

 横目で見ると、ほのかが拾うのを止めるためだろうか、魔法を発動しようと汎用型の腕輪型CADに手を持っていく。

 俺が止めろと言うより先にほのかの手首が少し揺れ、発動するはずだった魔法は発動しなかった。

 

 

「やめなさい! 自営目的以外の魔法による攻撃は、校則違反である以前に犯罪行為ですよ!」

 

 

 突然声が聞こえた。

 ほのかは声を発した人物の顔を見てよろめいた。慌てて雫がほのかを支える。

 そこには上級生らしき二人の女子生徒。

 どのとなく、何らかの組織の長であるような風格がある。

 

 

「あなた達、1-Aと1-Eの生徒ね。事情をききます、ついてきなさい。」

 

 

 言ったのはもう一人の上級生。彼女らの登場により、この場の空気が固まった。

 誰も動かないなかで、司波兄妹が前に出た。何をするのかと思いきや何と、兄の方が「悪ふざけだった」とか言い出した。

 それはさすがに無理があるだろう……上級生も訝しげな目で見ている。

 

 

「森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見学させてもらおうと思っていたのですが、流石一科生とでも言いましょうか。迫力がありました」

「そこの彼は?」

 

 

 まだ司波(兄)の説明(というか嘘)に納得していない様子で、俺のことを聞いてきた。

 

 

「おそらく彼は自分達のやりとりを途中からしか見ておらず、あなた方と同じように止めようとしたのでしょう」

「……では、その後1-Aの生徒が攻撃性の魔法を発動しようとしたのは?」

「彼女は彼らの気を落ち着かせようとしたのでしょう。攻撃性の魔法といっても目眩まし程度の閃光魔法でした」

「君は展開された起動式を読めるのか?」

「実技は苦手ですが分析は得意です」

「……誤魔化すのも得意のようだ」

 

 

 現代の魔法というのは少々複雑である。以前、俺は魔法の仕組みについて書かれた本を読んだ。説明の横に例えがあった。

 それによるとCADによる魔法の仕組みというのは、自分が持っている9割完成している設計図を取り出して業者と一緒に完成し、その完成した設計図を業者が工場に持っていって道具を作ってもらう。その道具を業者を通じて手に入れる。そしてその道具が魔法である、と。

 この例えだと、ライターの設計図だとしたら炎系統の魔法、懐中電灯の設計図だとしたら光系統の魔法になる。

 言うなれば、この仲介する業者がCADだ。この業者の営業を別の設計図を紛れさせるなどして邪魔すると業者は混乱して流れが止まり、道具は完成しない。

 先ほどほのかがやられたように……

 さらに、設計図というものは複雑なものであり、魔法を使用する当人でさえ完璧には理解できない。だが、司波(兄)は他人の設計図を見ることができ、加えてそれが何の設計図なのかが読み取れるらしい。

 何だお前、ハッカーなのか? 工場のパソコンでもハッキングしたのか? とんだ化物だなこいつは……

 

 

「兄の申したとおり、ちょっとした行き違いだったんです。申し訳ありませんでした」

 

 

 今度は妹が丁寧に詫びた。

 

 

「摩利、もういいじゃない。達也くん、本当にただ見学だったのよね?」

 

 

 どうやら知り合いのようだ。達也くんは頷いた。

 摩利と言われた上級生は今回は不問にすると言った。そして、以後気を付けるようにとも。

 そう言って、二人は校舎の方にへ去っていった。一瞬、長い髪の方の上級生が俺のことをちらっと見た気がした。

 

 

            ◇ ◇ ◇

 

 

「僕の名前は森崎駿。君の見抜いたとおり、森崎の本家に連なるものだ。……借りができたな」

 

 

 二人の影が消えてから、馬鹿改め森崎が司波達也に言った。何が『森崎の本家に連なるものだ』だよ偉そうに。

 

 

「見抜いたわけでもないし、貸しを作ろうとしたわけでもない。模範演技を見ただけだ。それに騒ぎが大きくならないようにあのようにしただけに過ぎない。別に借りを返そうとかは思わなくていい」

「……わかった。だが僕はお前を認めないぞ、司波達也。司波さんは僕達と一緒にいるべきだなんだ」

 

 

 捨てゼリフを吐き司波達也に背を向けて歩き始め、他の連中もそれに続く。

 まだそんなことを言うのか、と言おうとしたがさすがに自粛した。すれ違い様に鼻でわらうと、森崎が睨み付けてきたが負け犬の目など全く恐くない。

 残っていたほのかは司波兄妹の方に行き、自分の名前と詫び、礼を言い、加えて駅までの同行の了解をとった。

 

 

 一件落着。ほのかも司波深雪(って言ってたか?)と知り合えそうで何よりだ。

 さて帰るか、と校門へ向かい始めたら雫にブレザーを掴まれた。

 本日3回目である。

 

 

 その後、ほのか、雫、司波達也、深雪兄妹、栗色ショート改め千葉エリカ、眼鏡ボブ改め柴田美月、体育会系改め西城レオンハルトらと駅まで一緒に行くことになった。

 一応庇ってもらったことになったので、司波兄妹に礼と詫びを言ったら司波(兄)逆に礼を言われた。

 

 

「あまり深雪は迷惑だからやめろとか言わないからな、ああ言ってもらって助かった。俺が言うよりも同じ一科生が言った方が効果があるしな。それと俺のことは達也でいい」

「了解、じゃあ俺も鯉斑でいい」

 

 

 駅に着き、プラットホームでキャビネットを待つ。

 待っている間、俺は千葉に声をかけた。 

 

 

「千葉、」

「ん? なーに奴良くん」

「さっきはいきなり睨んで悪かったな、手首は痛くなかったか?」

「何だそんなこと? 大丈夫よ気にしないで。まぁ、ちょっとビビったけどね。あ、それと私のことはエリカでいいから」

「分かった」

「それにしても奴良くんって謝る人だったのね。てっきり俺様系で『俺は絶対謝らない』って人かと思ってたからちょっと意外」

「俺は悪いと思ったらちゃんと謝るぞ? 俺は自分のした行動は思い返して反省する、常に2回かえりみる男だ」

「ふーん」

 

 

 エリカと別達れ、俺は自分の乗り場に並び、キャビネットの到着を待つ。

 少し経って、キャビネットがプラットホームに入ってきた。いつの間にか麗羽が隣にいた。

 麗羽を隠しながらキャビネットに乗り込む。

 キャビネットが動き出してすぐ、俺は麗羽に話しかけた。

 

「麗羽、」

「何ですか?」

「朝も思ったが、お前もうキャビネットに乗るな。護衛とか要らないから明日から飛んでかえれ」

「えー、何ですかー?」

「キャビネットに乗るたびにお前を隠さないといけないのが面倒だから」

「別にいいじゃないですかそんなこと、乗らせてくださいよ。これ乗っていて楽しいんですよ」

 

 

 乗り物乗って楽しいとか子供かお前は。何年生きているんだよ。

 

 

「カラスを乗せてることが見つかったときに説明するのが面倒」

「じゃあ、姿消しますから」

 

 

 消せるのかよ。だったら最初からやれよ。

 

 

「消せるなら最初から消せよ」

「だって若が私を見えないように乗せてくださるので……そのご好意に甘えさせていただきましたっ!」

 

 

 ……苛つかせる奴だな。

 

 

「じゃあ明日から姿消して乗ってくれ」

「分かりました。

 それにしても若、入学2日目で友達ができるなんてどうしたんですか? 中学生のときなんて友達ゼロだったじゃないですか」

 「あれは影が薄くて誘われなかっただけだ。ちゃんと友達はいた」

 

 

 失礼なことを言うカラスだ。その羽根抜いてやろうか。

 

 

「あ、それにしてもあの雫って子の若に対するなつき具合は何でしょうね?」

 

 

 言われてみれば、雫は俺に構いすぎだ。おそらく原因は昨日の件だろう。

 恋愛感情……ではないなあれは。兄に甘えていると言った方が近いか。

 

 

 俺が一人で考えていると、麗羽が「若ー、若ー、無視しないでくださいよー」と言ってくる。

 うるさいカラスを放っておき、俺は鞄から本を取りだし読み始めた。

 

 

            ◇ ◇ ◇

 

 

 高校生活3日目の朝。教室に入り、自分の席へと歩く。少し視線が気になる。まぁ昨日の今日だから仕方がないか。

 俺は本鈴が鳴るまで本を読んで時間を潰すことにした。鞄から本を取りだそうとしていると、

 

 

「おい、奴良鯉斑」

 

 

 誰かに名前を呼ばれた、ご丁寧にフルネームで。今思ったが、ぬらりひょんと奴良鯉斑って似ているな。

 それはそれとして何だか聞いたことのある声だ。顔をあげるとあらびっくり、昨日の森……森某がいた。

 

 

「何だ、森……すまない名前を忘れた」

「森崎駿だ」

「あぁ、森崎か。すまない、俺は忘れっぽくてな。昨日のことでも忘れてしまうことがあるんだ。それで、何かようか?」

 

 

 どうでも良いことを、という言葉が前につくがな。

 

 

「昨日も言ったけど君はウィード……いや二科生に肩入れするのか?」

 

 

 昨日のことがあるからか、森崎はウィードを二科生と言い直した。

  

 

「森崎、お前そんな下らない質問をしに来たのか? 肩入れするとかしないとか……一科生と二科生は敵同士なのか? 同じ学校の生徒だろうが。

 昨日はお前たちが意味不明なことを言っていたか注意したまでだ。

 注意といっても、さすがにあれはやり過ぎた。少し八つ当たりも含まれていたしな。胸ぐら掴んだのは悪かった」

 

 

 昨日家に帰った後、自分の行動を思い返して見たら少々冷静さの欠けた行動であったという結論になった。

 謝られるとは思っていなかったのか、森崎は驚いていた。

 

 

「でも、僕たちは……」

「確かに俺たちは二科生より優れているのかもしれない。いや、実際問題そうなのだから俺たちは一科生なんだ」

 

 

 二科生は劣っていると言うのは不本意だが、森崎を説得するためには仕方ない。

 

 

「だからといって彼らを蔑んだり、ウィードなどと言って差別するのは駄目だ。昨日も言っただろう、他人を見下す奴は力や才能どうこうよりも人間として劣っている、それに差別すること自体間違っている。俺はそういう奴が許せないだけだ。

 森崎、お前には力があるのだから自分の価値を下げるようなことはするなよ、もったいないぞ?

 それに俺は司波深雪と関わるなとは言っていない。あいつの意思も尊重してやれと言っただけだ。後で謝罪でもしとけ。

 それだけだ、もういいか?」

 

 

 お前のせいで貴重な読者タイムがなくなるだろう。

 

 

「ああ、君の言ったことを少し考えてみるよ」

 

 

 森崎は自分の席へと戻っていく。

 やっと本が読めると思った矢先、別の人物に声をかけられた。

 

 

「あの、奴良くん少しよろしいですか?」

 

 

 今度は誰だと思ったら、司波深雪だった。

 

 

「何だ、司波か」 

「何だとは何ですか。それに私のことは深雪で良いですよ?」

 

 

 雫、ほのか、エリカときてこいつもか。最近の女子って下の名前で呼ばれたい奴ばっかりなのか?

 

 

「別に呼ぶのは構わないが、達也の許可をとらないと」

「何故お兄様の許可を?」

「それはあれだ、大切な妹が自分以外の男に呼び捨てにされるのだからな」

「そんな、まるでお兄様と私が恋人同士みたいではありませんか……」

 

 

 からかったはずなのだが、司波は頬を染めて満更でもない様子である。

 それぐらい仲が良く見えたのだ。兄妹と知らなかったら恋人と言われても納得してしまうぞあれは。

 

 

「で、用件は?」

「そうでした。朝、校門の近くで会長にお会いしましたところ、お兄様と私がお昼に誘われたのです。そのとき会長が私に『奴良くんも一緒に誘っておいてください』とおっしゃいましたので」

 

 

 ……は? 俺はまだ会長と面識がないはずだが……もしかして昨日の髪の長い方の上級生か? だとすれば早速嫌な予感が的中してしまった。

 さては聞き間違いだな。おそらく『ニウライ=ヒアン』と早口で言ったのが『ぬらりはん』と聞こえたのだろう。……誰だよニウライ=ヒアンって。

 

 

「会長って昨日の騒ぎを止めた二人の髪の長い方だろ?」

「ええ、そうです」

「会長が言っていたのは本当に俺の名前だったのか?」

「はい、はっきり『1年A組の奴良鯉斑くんも』と」

 

 

 なるほど……待てよ、諦めるのは早いぞ。まだ望みはある。

 

 

「ちなみに聞くが、俺以外にここに奴良鯉斑という奴はいるか?」

「そんな珍しい名前は奴良くんしかいませんよ」

「じゃあニウライ=ヒアンという奴は?」

「知りませんね。誰ですか その方は」

「ん? 俺も知らん」

 

 

 くそ……やはり俺だったか。

 司波が首を傾げている。一つ一つの動作が様になっているというべきか。司波は冗談抜きで飛び抜けた美少女だと言える。これなら取り入りたくなる気持ちが分からないでもない。

 

 

「それで、会長のお誘いはどうしますか?」

「ああ、受けさせてもらう。断ったらどうせ後で直接向こうから来るだろう。その方が面倒そうだからな」

「分かりました、では後で一緒に生徒会室に行きましょう」

「了解。でも昼食はどうするんだ?」

「生徒会室にはダイニングサーバーが置かれているらしいので大丈夫ですよ」

 

 

 何だと? 生徒会室に自販機があるのか、そんなもの高校の生徒会室にあるようなものではないだろう。

 「では」と言って司波が席に戻り、さて本を読もうかと思ったら予鈴がなってしまった。

 俺の読書時間を返せよ……

 

 

            ◇ ◇ ◇

 

 

 昼休みになった。雫に一緒に昼食をとろうと誘われたが、生徒会室に行くと言って断ったら残念そうな顔をした。あまり表情は変わっていないが……

 すまない、とお詫びに頭を撫でたら嬉しそうな顔をしたように見えた。すると気恥ずかしくなったのか顔を背けた。まるで猫のようだった。

 

 

 留守番を任された猫……ではなく、雫と別れて司波と生徒会室へ向かう。途中、司波から森崎が昨日のことを謝ってきたことを聞いた。

 生徒会室の前には既に達也がいた。

 司波がドアホンを鳴らし、応対している間に達也に小声で話しかける。

 

「なぁ、お前の妹に名前で呼ぶよう言われたんだが、呼んでも構わないか?」

「深雪が良いなら良いんじゃないのか? 何故俺に聞く」

「一応な」

 

 

 達也お兄様の許可がおりたので、司波のことを深雪と呼ぶことにした。

 やりとりが終わったようで生徒会室の扉を開けて中に入る。中にはすでに何人かの生徒が座っていた。全て女子で男子はいない。一人見知った顔がいるが幻に違いない。

 俺たちは彼女らの机を挟んで向かい側に座った。会長の位置はというといわゆるお誕生日席だった。

 まず食べるものを決める。自販機のメニューは肉、魚、精進の3種類。達也たちが精進を選んだので俺も便乗した。

 待っている間、会長が話し始めた。

 

 

「入学式で紹介した人もいますが、紹介していない人もいるのでもう一度紹介します……」

 

 

 俺は入学式に出席していないのでこれは有り難かった。向かい側に座っている4人は、会長の左側手前から会計で三年の市原鈴音先輩、昨日いた風紀委員長、三年の渡辺摩利先輩、書記で二年の中条あずさ先輩。

 会長は市原先輩はを『リンちゃん』、中条先輩を『あーちゃん』と呼んでいる。……呼んでいるのは会長だけらしい。

 生徒会のメンバーはここにはいないが、あと一人『はんぞーくん』という人がいる。

 そして……

 

 

「最後に、三年の奴良六花、通称『りっちゃん』。彼女は生徒会役員ではありませんが時々助っ人として生徒会業務を手伝ってもらっています。名前を聞いてわかるとおり、奴良くんのお姉さんです」

「初めまして 、達也くんに深雪さん。そこに七草真由美生徒会長の言ったように、私はお手伝いさんみたいなものだから”入学式”では紹介されなかったの」

 

 生徒会室に入ってきたときに見たのは残念ながら幻ではなかった。

 姉貴は入学式を強調し、俺に視線を向けた。

 なるほど、入学式に出席していない俺のために会長の名前を教えてくれたわけか。

 気が合いそうだとか言っていたが案外検討外れというわけでもなさそうだな。

 姉貴の紹介が終わったところで自販機の料理ができたので、自分の分が乗ったトレイを取りに行った。トレイが一つ足りなかったが、渡辺先輩が弁当持参だった。

 運んできた料理、炊き込みご飯やいんげんの胡麻和えなどが綺麗が器に盛り付けられてあった。機械がやったのだから当たり前だろう。さらに、これらの料理は機械の自動調理であるからレトルトというわけだ。

 

 

 

「いただきます」

 

 

 最近のレトルト食品は手作りのものとあまり変わらなくなった、と親父は言っていた。何でも昔は見るからに『これは加工食品です』という感じだったらしい。

 

(しかしやはり手作りの方が美味いな、何か物足りなさを感じる。何が足りない?)

 

 隣の会話が少々盛り上がっていたが、《話しかけられない限り黙って食事をする》がモットーな俺は会話に参加せずにただ食べることに集中していた。

 

 

 皆が食べ終わったところで、会長が「本題に入りましょう」と言った。会長の話は生徒会のことだった。

 簡単にまとめると、第一高校の生徒会は生徒会長だけ選挙で選ばれ、他の役員は会長が選任し、自由に任免できる。そして毎年新入生の総代は生徒会に入ってもらっているとのこと。

 つまり深雪への生徒会加入のお誘いというわけか。会長の説明と勧誘の言葉を言い終わり、深雪の回答はというと

 

 

「会長は、兄の入試の成績をご存知ですか?」

 

 

 ……そこで何で達也の話になる? 達也の入試の成績? 突然自分の話題になったものだから達也だって驚いているではないか。

 それにしても入試の成績か……この学校の入試は実技と筆記の2つだったな。実技の成績が凄いのだとしたら達也は一科生だから、深雪が言っているのは筆記の成績のことか。とはいっても俺は達也の成績なんて知らないので蚊帳の外である。

 ふと誰かの視線を感じ、そちらの方に顔を向けると姉貴が俺のことを見ていた。何だと思っていたら達也の方にちらっと目をやり、人差し指を立てた。

 どうやら俺の考えていることは姉貴にはお見通しのようだ。伊達に10年以上も一緒に暮らしていないというわけか。

 達也の筆記の成績は1番だと言いたいらしい。まったく、姉貴には敵わないな。

 

 

 深雪は達也の成績を理由に、生徒会というのはデスクワークが多いので達也も生徒会に入れてもらえないかと言っている。

 しかし、現実はそう上手くはいかない。何でも、生徒会に選ばれるのは一科生のみという規則があり、生徒総会で全校生徒の2/3の制度改定賛成の票が必要とのこと。

 深雪は達也の件を諦め、生徒会書記として加わることとなった。

 

 

「ちょっといいか? 風紀委員会の生徒会選任枠のうち、前年度卒業生の一枠がまだ埋まっていない。それについてだが真由美、達也くんを指名してくれないか?」

 

 

 突然渡辺先輩が話を切り出した。

 渡辺先輩が委員長を務める風紀委員会は部活連、教職員、生徒会がそれぞれ1名ずつ推薦し、委員長は風紀委員会の中で選ばれる。

 生徒会役員以外は”一科生だけ”という決まりはないので、達也が二科生だろうが問題はない。

 渡辺先輩の考えに会長もそれに気が付いたようで、

 

 

「摩利、ナイスよ! 生徒会は司波達也くんを風紀委員に指名します」

 

 

 と言った。

 当の本人の達也はというと絶賛困惑中である。

 いくつか反論をしているが、先輩方は一向に達也を風紀委員にいれるという考えは覆さず、このままでは埒があかないので達也は抵抗することを諦めた。

 話が全て済んだのか、皆が解散する空気となっている。そのようなところで申し訳ないのだが、俺は今朝から今の今まで抱き続けていた『何故ここに呼ばれたのか』という疑問を解消せねばならない。

 

 

「七草会長、」

「何でしょうか、奴良くん」

 

 名前を呼ばれた会長は俺の方に顔を向けた。俺は疑問解消のため、会長に尋ねた。

 

 

「今さらなのですが、俺は何故ここに呼ばれたのでしょうか?」

「へ? あ、」  

 

 

 ……今「あ、」とか言わなかったか?

 

 

「もしかして俺がいることを忘れてました?」

「そっそんなことはないのよ? こっこれから話そうと思っていたの……本当よ?」

 

 

 焦っているのが見え見えである。威厳が全く感じられない。明らかに忘れられていたようだ。ずっと近くにいたというのに忘れられるというのはなかなか悲しいものだ。

 隣の方を見ると、姉貴が吹き出していた。それにつられるように皆が笑い始める。深雪や市原先輩まで肩を震わせていた。達也は笑わず、同情でもするかのような目で俺を見ていた。……やめろ、そのような目で俺を見るな、余計哀れになるではないか。

 

 

「では会長、話していただけますか? 最後の最後まで残しておいた案件でしょうから、さぞかし重要なお話ですよね? 会長が何をおっしゃるのか俺には検討もつきませんので早くしていただかないと午後の授業に支障をきたしてしまいます」

 

 

 少し苛めるような言い方をして催促した。

 会長は「コホンッ」と咳払いをし、落ち着きを取り戻したのか、話し始めた。

 

 

「えー、奴良くんには深雪さんと同じ様に、生徒会に加入してもらいたいと考えています」

 

 

 俺は先程のことはなかったかのように振る舞っている会長を責めるような眼差しを向けたが、会長は惚けて微笑んでいる。何を言っても無駄のような気がしたので諦め、質問をする。

 

 

「何故俺何ですか?」

 

 

 はっきり言って疑問しか生まれなかった。会長との関わりは全くないはずだ。何をもってして俺が生徒会に入るべきという結論に至ったのだろう。

 すると会長の口から思いがけない言葉が発せられた。

 

「奴良くんの入試の成績を見させてもらったところ、実技、筆記共に2位でした。なので、是非奴良くんも生徒会役員にと思ったからです」

「え、俺ってそんなに成績良かったんですか?」 

「はい、深雪さんに後一歩のところでした」

 

 

 これには達也と深雪の二人も驚いていた。俺だって今知ったことで驚きを隠せないのだ、他人が驚かないわけがない。

 とはいっても俺の驚きと司波兄妹のそれは微妙に違うかもしれない。彼らは単に俺の成績の良さ、深雪に後一歩だったということに驚いているだろう。だが俺はあれで実技が2位なのか、と思ったのだ。実技試験はそれほど難しいものではなかったが、あのときの俺は全力を出していない。いや、正確には出せなかったと言う方が正しい。

 理由は試験時間が昼だったからだ。俺の体には約半分の妖怪の血が流れている。つまり約半分は妖怪なのだ。妖怪は日の出ている時間は行動が鈍る。だから試験のときも全力は出せなかった。

 

 

「奴良くんどうですか? 生徒会に入っていただけますか?」

 

 

 ……正直生徒会とか面倒である。だが、生徒会に入った方が、一科生と二科生の差別をどうにかするときに行動しやすくなる。

 生徒会の加入の件を承諾しようと、「分かりました」と言おうとしたらまた渡辺先輩が

 

 

「ちょっといいか、私も奴良くんに話がある」

 

 

 と言い、続けて

 

 

「先程、生徒会選任枠で達也くんに風紀委員に入ってもらうことになったが…………ん? どうした達也くん、私の顔に何か着いているか? ……何も着いていないではないか。話を続けるぞ?

 今、教職員選任枠の件で問題とは言うまでもないことだが少し予想外のことが起きた」

 

 

 と言った。

 達也は風紀委員の件にまだ納得がいかない様子である。

 

 

「待って摩利、今年の教職員選任枠って森崎くんじゃなかったの?」

 

 

 会長が渡辺先輩の発言に眉をしかめた。

 ………へぇ、あいつが。昨日一丁前に『どれだけ優れているか教えてやる』などと偉そうなことを言っていたが、教師たちに認められる程の実力はあったということか。

 渡辺先輩が持っている端末を見ながら会長の質問にこたえる。

 

 

「そうだ。しかし、その森崎だが昼休みが始まってすぐ『僕より適任者がいるからそいつに譲っていただけないか』と言いに来たと連絡が入った」

 

 

 発せられた言葉に俺は少し驚いている。まだ知って2日も経っていない森崎だが、あいつは恐らくプライドが高く、自分が一科生であることを誇りに思っているだろう。そんな奴が易々と”風紀委員”という”選ばれたもの”にならないで他人に譲るとは考えにくい。一体誰が奴をその気にさせたのだろうか。

 どうか俺の思っていることが当たりませんように……

 

 

「森崎が言う適任者というのはだなぁ、なんと奴良鯉斑くん、君だそうだよ」

 

 

 ……当たってほしくない予想が的中してしまった。

 

 

 




森崎くんが改心しました。



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