魔法科高校の任侠妖怪   作:椿℃

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明けましておめでとうございます。

そしてお久しぶりです、自動ドアが開かなくて顔をぶつけそうになった椿℃です。

前回から約1ヵ月あいてしまいました。


年が変わる前に投稿したかったなぁ




第肆話

 

 時は経って放課後となった。

 俺は司波兄妹と生徒会に来ていた。深雪と達也はそれぞれ生徒会と風紀委員会の詳しい説明を受けるため、俺は生徒会と風紀委員会のどちらに入るかを報告するためである。

 先輩方に、今すぐには決められないと言って放課後までもらったのだ。

 

 

 生徒会室に入ると見知らぬ顔が一人いた。姉貴は見当たらないので帰ったのか。

 ……あれが会長の言う『はんぞーくん』か。 名前は服部刑部と言うらしい。玉章さんの隠神刑部と同じ刑部だろうか。何ともおかしな名前だな。 

 

 

 隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)/刑部狸

 《久万山の古い岩屋に住み、松山城を守護し続けていたという伊予松山の狸の総大将。八百八匹もの眷属を従えることから「八百八狸(はっぴゃくやたぬき)」とも呼ばれる。四国最強の神通力を持っていたとも伝わる。

 名称の「刑部」は松山城の城主の先祖から授かった称号。城の家臣や松山の民たちから信仰され、土地の人々と深い縁を持っていた》 

 

 

 俺は早速自分が決めた選択を報告しようとしたのだが、服部先輩に出鼻をくじかれた。

 

 

「少しよろしいですか、渡辺先輩」

「何だね、服部刑部少丞範蔵副会長」

「フルネームで呼ばないでください!」

 

 

 服部先輩の本名は 服部刑部少丞範蔵だそうだ。やはり刑部は官職名だったか。

 その後のやりとりで、服部先輩は名前にこだわりを持っており、会長に恋心を抱いているらしいことが分かった。…………どうでもよい。

 服部先輩は落ち着きを取り戻し、

 

 

「渡辺先輩、風紀委員の補充の件ですが……」

 

 

 服部先輩は達也の風紀委員への加入は反対のようだ。達也のことで色々と否定的な意見を並べているが渡辺先輩はそれを軽くあしらう。彼女は、達也が起動式を読み取れることが違反者の罪を決める際に有利に働くこと、また一科生が二科生を取り締まるがその逆はないという現状が彼らの間にある溝が深まっていると言い、自分が指揮をとる委員会が差別を助長するのは好まないと言っている。

 生徒会長も風紀委員長も、特に一科生だからこうだ、二科生だからこうだなどと差別はしない人のようだ。

 渡辺先輩とでは話にならないと思ったのか、服部先輩が会長の方を見て言った。

 

 

「会長、私は副会長として司波達也の風紀委員就任に反対します。

 もし、渡辺委員長のおっしゃるとおりに彼が展開中の起動式を読み取ることが出来たとしても、風紀委員ルールに従わない生徒を実力で取り締まる役職です。魔法力の乏しい二科生(ウィード)に風紀委員は務まりません。

 さらに、過去二科生(ウィード)を風紀委員に任命した例など聞いたことがありません。これは異例のことです。一科生からの反発は目に見えています。

 この誤った決断は会長の体面を傷つけることになります。どうか考え直していただけないでしょうか」

 

 

 服部先輩のウィードという言葉の使用に渡辺先輩が眉を寄せた。

 

 

「おい服部副会長、二科生をウィードと呼ぶのは禁じられているだろう。風紀委員会による摘発対象だ。委員長である私の前で堂々と使用するとはいい度胸だな」

 

 

 服部先輩は、渡辺先輩の脅しに近い警告を物ともせずに言い返す。

 

 

「取り繕っても仕方がないでしょう? それとも、全校生徒の3分の1以上を摘発するおつもりですか?

 一科生(ブルーム)と二科生(ウィード)の区別は、魔法実技の試験結果を元に学校が決めた正当なものです。

 現に彼らは結果が芳しくないから二科生(ウィード)となっているのです。ですから……」

 

 

 ……服部先輩は先程からふざけたことを言っているが一応先輩というのもあり、初対面の後輩である俺がしゃしゃり出て発言をするというのは場違いであろう。なので、俺はこの場を渡辺先輩に任せようと一歩引いて静観することにしていた。しかし、先程から発せられる服部先輩の達也を含め二科生に対する暴言に、俺はそろそろ耐えることができなくなっていた。

 入学してまだ3日しか経っていないが、毎日何かに苛立ちを覚えている。もしかしたら、単に俺の気が短いだけなのかもしれない。

 俺は深雪の方を見た。中条先輩による生徒会の仕事の説明は既に終わっていたようで、こちらのやりとりを見ている。説明を受けている最中であっても、同じ部屋にいるのだ。聞き耳をたてるような真似をせずとも、こちらの話は嫌でも聞こえてくるだろう。自分の身内、ましてや仲の良い兄が貶されているのだ、面には表れていないが深雪は俺以上に相当腸が煮えくり返っているはずである。

 そして遂に服部先輩に反発をした。

 

 

「お言葉ですが、副会長。魔法実技の成績だけで判断されては困ります。テストの評価方法が兄に合っていないだけで、実戦では誰にも負けません」

 

 

 それを聞いた服部先輩は深雪に体を向けた。彼の目からは「何を言っているのか、この後輩は」と呆れた感情が感じられる。

 

 

「司波さん、魔法師とは物事を冷静にそして論理的に判断、対処しなければなりません。魔法師を目指す者の身贔屓などは言語道断です」

 

 

 服部先輩の口調は深雪を責めているというわけではなく、諭そうとしているようだ。

 だが、それで大人しくなるどころか、身贔屓と言われたことで更に深雪に火をつけてしまった。

 達也は深雪を抑えようとしたが間に合わなかった。

 

 

「私は身贔屓などしておりません! 兄の本当の力は……っ!?」

 

 

 彼らの会話を止めさせ、興奮している深雪を落ち着かせるためには、ただ止めろと言うより何か大きな変化が起きた方が効き目があるだろうと思い立ち、俺は『畏』を発動させた。

 俺が『畏』を発動すると、深雪は言葉を途中で止めて顔を強張らせた。他の先輩方も深雪と同じように顔を強張らせている。

 この場にいる全員が、俺が発動させた『畏』で部屋の空気が変わったことに気付いたようだ。

 

 

 俺たち妖怪は古くから人をおどかしてきた。恐がらせる、威圧する、または尊敬の念を抱かせる妖怪の力が『畏』だ。

 『畏』の発動とは怪談話でよくある”ひんやり”とまわりの空気が変わることだ。

 ぬらりひょんは『畏』を発動すると周囲から認識されなくなる。母さんが雪女であるため雪女の『畏』も含まれており、空気が”ひんやり”となる程度が大きい。

 俺の師匠が住んでいる所では、ただの『畏』の発動は”鬼發”、『畏』を武器等に移動させることを”鬼憑”というらしい。

 

 

 認識されなくなった俺は堂々と正面から服部先輩に忍び寄り、目の前まで来たところで『畏』を解く。

 周囲が俺を認識できるようになった。

 

 

「初めまして、服部副会長」

 

 

 服部先輩は突然目の前に現れた俺に驚きを隠せず、目を見開いている。やはり、妖怪は人を驚かしてなんぼだな。

 しかし、すぐさま落ち着きを取り戻す。流石生徒会副会長と言うべきだな。 服部先輩は咳払いを1回して、

 

 

「君は確か1-Aの奴良鯉斑くんでしたね?」

「はい。お話中申し訳ありませんが、俺の生徒会か風紀委員のどちらかに加入する、という話を先に済ませたいのですが…… 。宜しいですか? 直ぐに済みますので」

「……分かりました、いいでしょう」

 

 

 服部先輩は渋々了解してくれた。先程の深雪に対する態度から見ても、この人は一科生の後輩にはきちんと”良い先輩”のようだ。

 俺は服部先輩から離れ、会長の方を向き頭を下げた。

 

 

「俺は風紀委員に入ることにします。会長、折角のお誘いでしたのにすみません」

「そう、それは残念ですね……。頭をあげてください、ところで先程の現象はあなたの仕業ですか? 魔法……ですよね?」

 

 

 予想していた通りの質問だった。

 ……魔法ではないが。

 

 

「はい、副会長と司波のを落ち着かせようと思いまして。あのままですと感情論に発展しそうでしたので」

「ちょっと待て、今君の姿が突然現れたのだが、あれは一体どのような魔法だ?」

 

 

 渡辺先輩は誰もが頭に浮かべている疑問を聞いてきた。

 ぬらりひょんの『畏』である『明鏡止水』は魔法ではないので、どのように説明すれば彼女を含め、この場にいる全員に納得させられるだろうか。

 生半可な説明ではこの人達は誤魔化せないだろう。

 ……面倒だな。

 

 

「あまり言いたくないのですが……」

 

 

 すると渡辺先輩は、何か悪い悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。

 

 

「そういえば、君は風紀委員に入ると言っていたな? では奴良鯉斑くん、君は今から風紀委員だ。では奴良くん、先程の現象を説明してくれ。これは委員長命令だ」

 

 

 ……これは従わなかったら後で痛い目を見るやつだ。仕方ない、諦めるか。 俺は現代の魔法の知識を照らし合わせ、何とか誤魔化せる説明を考える。

 

(ぬらりひょんの『畏』は周囲から認識されなくなるから、意識操作すると言っても構わないだろう……。ということは系統外魔法と言っておけば良いか)

 

 

「先程の魔法は、自分を周囲から認識されなくする系統外魔法です」

 

 

 こんな感じか? 

 

 

「そのような魔法は聞いたことはありません。『インデックス』には収録されていない魔法ですね?」 

 

 

 声の主は市原先輩だった。今まで黙っていたのだが、自分の疑問点を解消せずにはいられなかったのだろう。

 そう簡単には誤魔化せないか。それに『インデックス』とは……話が大きくなってきたな。一番手っ取り早い手段だからと『畏』を発動したのは失敗だったな。

 

 

「ええ、他人の前で使用したのは初めてですので、『インデックス』には収録はされていません。先輩がご存じないのは当然だと思います。

 ……もう宜しいでしょうか? 質問があれば後ほどお応えします。

 見たところ、服部先輩も司波も冷静になったようですし、取り敢えず先程の続きをした方が良いと思います」

 

 

 強引過ぎだとは思う。しかし、そうでもしないとどこで襤褸が出るかは分からない。

 まだ疑いの念が消えていないであろう市原先輩から会長へと視線をうつし、「話を切り出してください」と目で懇願する。

 会長は俺の思いを汲み取ってくれたようで、にっこりと笑った。その顔は貸し1つね、と言っていた。

 

 

「リンちゃん、奴良くんの言うとおり達也くんの件を済ませることの方が優先よ?」

「……会長がそうおっしゃるなら仕方ありませんね」

 

 

 市原先輩は渋々引き下がった。

 会長は服部先輩に向き合い、

 

 

「はんぞーくん、いえ服部副会長。もし達也くんが風紀委員に加入したことで何か問題が起こったとしたら、私が全て責任を取ります。体面が傷つく傷つかないの問題は関係ありません。私は達也くんが風紀委員にふさわしいと思ったので渡辺委員長の提案に賛成しただけです。何と言われようと考えは変えません」

「ん? ただ達也くんが気に入っただけだはないのか?」

「ちっ、違うわよ摩利、変なこと言わないでくれる?」

 

 

 その反応だと肯定しているようにしか聞こえないのだが……

 服部先輩も感づいたようで、顔をしかめている。

 

 

「会長、先程も申し上げましたが……」

「お言葉ですが服部先輩、いい加減に諦めたらどうですか?」

 

 

 平行線を辿っている議論など当の本人たちより見ている側の方が苛々する。

 

 

「奴良くん、君までそう言いますか」

「ええ言いますよ、別に司波達也という人物と知り合いではなかったとしても俺は同じことを言うでしょう」

 

 

 先輩の顔は「何故だ」と言っていた。俺は続けて

 

 

「先輩は人を1つのデータでしか判断しないのですか? あの実技試験に関しても、必ずしも全ての項目を測れるわけではありません。どこかに穴があるはずです。

 ですから、彼にはまだ何かあのテストでは測定できない才能があるかもしれない。

 単に二科生だから、というのではなく、実際に彼の実力を測って判断をした方が良いと思います。

 先輩は陸上競技がてんで駄目な人は、金槌であるとでも思っていらっしゃるのですか? もしかしたら水上では誰にも負けないかもしれませんよ?

 会長の判断に納得がいかないのなら、先輩が自分で彼の実力を目にしたらどうです、その後で決めれば良い。

 達也、お前もそれでいいだろう?」

 

 

 今まで一言も発言しないで空気になっていた達也に話をふる。

 

 

「……ああ、俺は構わない。別に風紀委員になりたいわけではないが、妹への誤解を晴らさなければならないから丁度いい。

 服部先輩、俺と模擬戦宜しいですか?」

「ふん、二科生(ウィード)の貴様に身の程を弁える必要性を教えてやる」

 

 

 服部先輩は不本意ながらも承諾してくれた。

 すかさず、会長が口をはさむ。

 

 

「私は生徒会長の権限により、2年B組・服部刑部と1年E組・司波達也の模擬戦を正式な試合として認めます」

「生徒会長の宣言に基づき、風紀委員長として、二人の試合が校則で認められた課外活動であると認める」

「時間はこれより45分後、場所は第三演習室、試合は非公開とし、双方にCADの使用を認めます」

 

 

 これは模擬戦をただの暴力行為にしない措置のようだ。彼女らの宣言を受けて、中条先輩が慌ただしく端末を叩き始めた。

 ……取り敢えず何とか解決に近づいた。

 それにしても達也の奴、妹のために戦うとはどんだけシスコンなんだか。

 

(だが……)

 

 俺は恐らくCADの準備をするべく、生徒会室のドアへと歩いている服部先輩に声をかけた。

 

 

「服部先輩、」

「今度は何ですか?」

「模擬戦には関係ありませんが、1つ忠告しておこうと思いまして」

「忠告、ですか?」

「黙っていましたが、先程の発言はいただけないです。

 俺が風紀委員になったからには、今後ウィードという単語の使用は見逃しません。例え全校生徒の3分の1が使用していたとしても、”副会長が使用していたとしても”問答無用で摘発しますので、以後気を付けて下さい。

 それに……」

 

 

 俺は先程までの苛立ちを次の言葉に思いっきり込める。

 

 

「定められた規則も守れないような副会長がいる方が風紀委員に二科生を登用するよりも、会長の体面が傷つきけますよ?」

「何だと貴様? 先程から上級生に対する態度がなっていないぞ」

「れっきとした事実ですよ。それにこんなことで心を乱して、この後の模擬戦に支障をきたさないでくださいよ? 魔法師は冷静を心掛けるべき、でしたよね?」

「くっ!」

 

 

 先輩は反論せず、踵を返して生徒会室を出ていった。

 少し時間を空けて、達也のCADを事務室に取りに行く付き添いで深雪も一緒に退出する。すれ違い様に達也が何か言いたげな目でこちらを見ていた気がした。

 俺は生徒会のドアへ向かっていたところ、

 

 

「「「では奴良くん、続きといきましょう(こう)か」」」

 

 

 待っていましたと言わんばかりに、中条先輩を除く3人の三年生に引き留められた。それぞれ無表情、好奇心の溢れた顔、意地悪そうな笑みを浮かべた顔と三者三様であった。

 中条先輩に目で助け船を求めたが、「わっ、私には無理です」と涙目の訴えが聞こえてきた。そして、「先に第三演習室に行ってきま~す」と小声で言い、小動物のような動きでささっと出ていってしまった。

 万策つきた。

 

 

「何のですか?」

 

 

 俺は惚けた振りをした。

 

 

「先程奴良くんは言いましたよね? 『質問は後で答える』と」

 

 

 と市原先輩。

 ……逃げるか、説明するの面倒だし。

 そんな思考はお見通しのようで、

 

 

「おや、まさか逃げようと思っているのではあるまいな? 真由美の狙撃から逃れられるとでも思っているのか?」

「ごめんね?」

 

 

 そう言って腕輪型CADに手を持っていく会長。可愛く謝られても何も嬉しくない。

 いくらCAD携帯が認められているからって職権濫用ではないか。……それに顔は笑っているが目が本気だぞあれ、ふざけるな。

 まぁ撃たないだろうが、ここは従うべきか。

 いくら大人びている先輩方とはいえど、まだ高校三年生。好奇心なには勝てないというわけか。それにしても女子の団結って恐いくらいに息ぴったりだな。

 『鏡下水月』なら何とか切り抜けられそうだが、これ以上根掘り葉掘り聞かれそうなことを増やすべきではない。

 ……待てよ? 

 

 

「他の魔法師が使用した非公開の起動式の仕組みを詮索するのはマナー違反ではないのですか?」

 

 

 そうだ、これがあった。先輩方は痛いところを突かれたようで、先程までの余裕が消えた。

 何だか、ここで何も言わないのは可哀想なので、少しだけならと知られても問題ないことを話すことにした。 

 

 

「それに質問にこたえると申したのは、あの場を切り抜けるために口から出任せを言ってしまっただけですし、”全てに”とは申していません。

 ですが1つだけ先輩方に伝えられることがあります。

 それは、この魔法が奴良家の秘伝の魔法であり、この魔法は奴良家の血が流れている者にしか使用出来ない、ということです」

 

 

 会長が顔をしかめた。

 

 

「待って、それはおかしいわ奴良くん。周囲から認識されなくなる、なんてそんな珍しい魔法を使う家なんて十師族会議で話題に出てもおかしくない、いえ必ず出るわ。

 これまでの十師族会議では奴良家なんて単語は一切出ていないわよ?

 それに私も”奴良”なんて名前はりっちゃんに会って初めて知ったわ」

 

 

 会長が知らなくて当然だろう。

 俺たちは妖怪であるが故になるべく表舞台には立たないようにしている。それは魔法が認められている魔法師の世界であっても例外ではない。

 

 

「詳しくはお話し出来ませんが、奴良家はとある事情によりあまり世俗と関わらない方針でいます」

 

 

 魔法が普及してきたこの世の中、何故かCADの携帯が往来で認められている。魔法は便利かもしれないが、使い方を間違えればいくらでも凶器になる。

 いつ犯罪が起きてもおかしくはないのだが、幸い今のところ特に街中では魔法に関する問題は起こっていない。

 そこにいきなり自分達と次元の違う生き物、妖怪が現れたらどうなるだろうか。人々は混乱し、妖怪を悪だと判断して攻撃してくるだろう。

 俺たちが表舞台に上がるにはまだ早すぎる。国の上層部では何人かが妖怪という存在を認知しているが、まだ土台が十分ではないのだ。

 

 

「世俗と関わらない? だから、生徒会よりは目立たないであろう風紀委員を選んだのか?」

「それもありますが、主な要因は副会長と一緒に仕事をしたくなかったからです」

「はんぞーくんと?」

「それは何故ですか?」

「単純ですよ、市原先輩。俺は差別をするような人と一緒にいたくない。ですが副会長はそういう人だった、ただそれだけの理由です」

「ごめんなさい、それがはんぞーくんの欠点なの。他は申し分ないのよ?

 ……では、奴良くんは一科生と二科生の差別については良く思っていない、ということですか?」 

「ええ。同じ学校の生徒であるのに差別するなんて間違っていると思いますから……」

 

 

 こんなことを言ったが、実は建前であって本音ではない、親父という大きな存在があり、その背中を見て育ったのが一番の理由だ。

 小さい頃から、親父の武勇伝を組の奴らから沢山聞かされた。何でも、それまで相容れない関係であった妖怪と陰陽師が共闘したとか。

 人だろうが妖怪だろうが関係ない。全て守るべきものである。そんな親父の生き方に俺は強く憧れを持っていた。

 

 

 それと、この俺のこの『鯉斑(りはん)』という名前。

 

 

『鯉斑に”斑(まだら)”っていう字が使われているよね?

 それは鯉斑の体には色々な種類の血が流れているからなんだ。簡単に言えば、人間と妖怪の血が流れているってだけで済んじゃうけれど……。それを細かく分ければ、ぬらりひょんの血、傷を治すという特別な力を持っていた人の血、ごく普通の人の血、そして雪女の血の4種類になる。

 斑とは違う色や同じ色でも濃淡が入り交じっているって意味なんだけれど、色々な血が入っている鯉斑にぴったりでしょ?

 だから”斑”って字を使ったんだ。

 お前には斑のようにどんな者でも受け入れられるような人間になってほしい、という願いを込めた。

 それと、"りはん"という名前にしたのは、お前が俺の親父に似ていたからだ。

 赤ん坊のお前を見てじじいが、ちと鯉伴に似とるのぅ、とか言ってな。

 俺やじじいは髪が黒ではなかったから、何だか2代目が帰って来たような気がしたよ。

 2代目のときに奴良組が全盛期だったというのはお前も知っているだろう? だが、2代目が死んで奴良組は徐々に衰退してしまってな。俺の代で何とか持ち直したが、まだ全盛期のときの奴良組には及ばないかもしれない。

 それで、俺の憧れであった2代目のような奴良組に、いやそれ以上にしていってくれという期待を込めて”りはん”と付けた。』

 

 

 中学生のときに、自分の名前の由来を親に聞いてこい、という可笑しな課題が出された。親父に聞いたらこのように言われた。

 この話をされたとき、親父が途中で昼の姿から夜の姿に変わったからよく覚えている。

 俺は先代たちが守ってきたものを、貫いてきた信念を引き継ぐ。奴良組4代目として、彼らに胸を張って向き合えるように。2代目の名前に傷をつけないように……

 

 

 まぁこんなことを言えば、さらに問い詰められる恐れがあったため、在り来たりな回答を言ったのだが……。先輩方は俺の言葉に何の疑問も抱かず、むしろ好印象を与えたようで、会長は1つため息をつき、

 

「奴良くんのような人が生徒会に入ってくれたら色々と助かるに……

 達也くんは仕方がないとしても、奴良くんまでも風紀委員になっちゃうなんて摩利が羨ましい。私って魅力がないのかしら……」

 

 

 と拗ねているような口調で言った。

 恐らくわざとやっているのだろうが、生徒会長の威厳が全く感じられない。まるで年下を相手にしているように思えてしまう。

 

 

「いえいえ、会長は魅力的な女性ですよ? 会長に迫られたら男子は皆イチコロだと思いますが……」

「イチコロ?」

 

 

 会長は何故か首を傾げている。すると、

 

 

「イチコロとは『一撃でコロリと倒す』という意味の言葉です。最近の会話では見られない言葉です」

 

 ……蔵にあった本の中に出てきたのだが、イチコロって廃語になっていたのか。どうりで誰も使っていなかったわけだ。

 ご丁寧に説明文ありがとうございます、市原先輩。

 

「じゃあ、私に近づかれると男の子達は倒れちゃうっていうの?」

「いえ、恐らく奴良くんは『簡単に悩殺される』という意味で使ったのかと思います」

「奴良くん、そうなの?」

「勿論ですよ。会長は魅力的な女性です」

「そう……ありがとう」

 

 

 ……満更でもない様子である。

 会長ならこういう言葉を何度も言われ続けているだろうが、面と向かって言われると照れるらしい。

 

 

「それに、会長なら近づかなくても射撃系の魔法で倒せますでしょう?」

「奴良くん、それは一言余計ですよ?」 

 

 

 会長はわざとらしく頬を膨らませた。

 ……外見を度外視しても、仕草などが本当に子供っぽい。こんなことを言ったら余計にぐちぐち言われそうなので、心の中にしまっておこう。

 

 

「はっはっは。奴良くん、君は面白いやつだな。真由美とのやりとりをもう少し見ておきたいが、そろそろ演習室に行かないと間に合わん。それに、中条の気が持たんだろう」  

 

 

 委員長の言う通りだな。涙目でおろおろしている『あーちゃん』の姿がはっきりと目に浮かんでくる。

 

 

「そうね、じゃあ行きましょうか」

 

 

 会長がそう言うと他の二人も頷き、観音開きの扉へ歩き始める。

 俺は一足先に生徒会室の扉を開けて先輩方を待つ。

 

 

「あら、ありがとう」

 

 

 会長たちは感心した顔でこちらを見た。

 

 

「奴良くんは紳士なのですね」

「それは買いかぶり過ぎですよ、市原先輩。俺は全ての女性にこのように振る舞うわけではありません。レディファーストをするにあたらない人にはしない冷たい男です」

「では私たちはそれに値するということか? それだと遠回しに口説いているように聞こえるぞ?」

「いや、本当のことを言ったまでですよ」

 

 

 そう言うとまた感心した顔をしているお三方。だが、ここで悠長に時間を潰している暇はない。

 

 

「早く行きましょう、本当に間に合わなくなります」

「そうね。はんぞーくん達に怒られちゃうわ」

 

 

 先輩三人一行はやっと生徒会室から出て第三演習室へと歩きだした。すかさず俺も後ろについていく。

 

(さて、どちらが勝つのかね……)

 




間があいた割にはそんなに上手い文章ではないという残念な結果に終わりました。

副会長のところなど、今回展開がおかしいとか思うかもしれません。批判や感想、その他意見はどうぞご自由にお書きください。
心が折れるかもしれませんが、しっかりと受け止めたいと思います。
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