「お母さん、無自覚美人です 大学生編」   作:松田義和

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番外編 ザ・松田

夏の終わり、東京の空は曇っていた。

だが、俺の胸は、妙に晴れやかだった。

 

「……行くか。白き地へ」

 

俺は一度水着写真で死んだ身。

しかし鳳凰は何度でも甦る。

 

新幹線のホームに集ったのは、俺を含めて4人。

主人公、つまり“息子くん”と、その仲間たち──高橋と剣崎。

俺はこの旅を“護衛任務”と位置づけていた。

 

そう、護るべきは一人の女性。

かつて俺の拳を沈黙させた、圧倒的な存在感──彼の母。

我々の間で密かに「女神」と称されるその人。

 

 

実家の玄関。扉が開いた瞬間、空気が変わった。

そこに現れたのは、白のエプロンに麦わら帽子、自然体の微笑み。

 

「ようこそ、こんな田舎へ」

 

……やはり女神だった。

それ以外の表現が見つからない。俺は反射的に頭を垂れた。

高橋は固まり、剣崎はフリーズ、主人公に至っては「何やってんだよ……」と小声で漏らしていた。

 

だが、これが礼儀というものだ。

 

 

夕食。戦だった。

手羽先、唐揚げ、夏野菜の煮物、出汁巻き卵に冷やし鉢。

そのどれもが完璧。まるで、肉体の奥底にまで沁み渡るような滋養。

 

「これは……栄養ではない。これは祝福だ……」

 

知らぬ間に呟いていた。

剣崎も珍しく無言で食べ続け、高橋は三杯目の白飯をよそっていた。

 

女神の慈悲、恐るべし。

 

 

翌日、散歩中の出来事がすごかった。

町人が、女神に群がる。

 

「おかえりなさい、○○くん!」

「今度また、ラジオ体操来てくださいよ〜!」

 

いや、あれはもう帰還した姫君の行列だった。

魚屋の兄貴なんて「お土産にして」と真鯛を手渡していた。

会話も記念写真も求められ、その場は一時騒然。

 

結果、支部が発足した。

「女神親衛隊・地方支部」。

俺は本部長として、責任感を新たにした。

 

剣崎「本部と支部の合同会議、必要ですね」

 

高橋「写真は、支部で共有……?」

 

──油断ならない。

女神の影響は、地元ですら想定を超える。

これが自然発生的カリスマというものか。

 

だが、俺の使命は変わらない。

守る。尊ぶ。遠巻きに支える。

 

 

最終日、女神が駅まで見送りに来た。

 

「また、いつでも来てくださいね。夏野菜、送りますから」

 

……ありがとう。俺は、また鍛え直すよ。

次に会うときは、もう少し胸を張って話せるように。

 

帰りの新幹線の中、車窓に映った自分を見ながら思った。

 

──俺は今、初めて“本気で誰かを守りたい”と思ってるのかもしれない。

 

この拳は壊すためじゃない。

あの人が、安心して笑っていられるために。

 

それが俺、松田一輝の新たな戦いだ。

 

鳳凰は炎の中から何度でも甦るのだ。

 

 

 

(了)

 

 

 

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