「お母さん、無自覚美人です 大学生編」   作:松田義和

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第十七章 集結

学園祭が終わり、静寂が戻ったキャンパス。

だが、ボクシング部には静寂など訪れていなかった。

 

「はぁ……」

 

「……尊い……」

 

「うーん……あの構え……もう一度見たい……」

 

松田、剣崎、高橋。三人三様に“抜け殻”モード。

母さんの学園祭来訪のインパクトが強すぎて、完全に魂を持っていかれていた。

 

僕も、あの日のことを思い出しては、胸がなんかこう、もわっとする。

 

──そのとき。

 

「ここにいたか……貴様ら」

 

部室の引き戸が「ガララッ」と音を立てて開いた。

 

その場にいた全員が、ゆっくりとそちらを向く。

 

「お、お前は……!」

 

「藤堂……!」

 

学園祭で剣を抜きかけた、剣道部の猛将・藤堂さんが立っていた。

いつもの黒い剣道着。額には鉢巻き。妙に気合いが入っている。

 

「俺もだ」

 

「えっ?」

 

「俺も……あの時からずっと、抜けていた。魂が……」

 

突然、藤堂さんが壁に手をついて俯いた。

 

「……最初はただの“強者の香り”だと思った。だが違った。あれは“慈愛”……いや、“聖域”……?」

 

みんなが黙って頷いた。

 

「……俺は、決めた。今日からこの部に“転属”する」

 

「“転属”?!」

 

「心を鍛えるには、剣より拳だ。道場から部室へ、剣道からボクシングへ。魂の再構築を誓う……!」

 

松田「……つまり、入部?」

 

剣崎「……入るの?」

 

高橋「えっ、なんで剣道部やめてまで来んの?」

 

僕「ええと、じゃあ、ようこそ……ボクシング部へ?」

 

「うむ。よろしく頼む。“女神”の拳を再現する日まで、我が拳は折れぬ」

 

なんかまた一人、変な方向に覚醒してしまった。

 

こうして、ボクシング部に“修羅”藤堂が加わり、

母さんの余韻に浸る“女神ラバーズ”が一人増えたのであった。

 

 

 

 

──と、その時。

 

僕のスマホがブルッと震えた。

 

「……っ!」

 

その瞬間、部室の空気が一変する。

 

高橋がぴくりと反応し、松田さんが身を乗り出し、剣崎さんが「これは……」と呟く。

藤堂さんだけが「ん?」と首を傾げている。

 

 

僕のLINEに画像が一枚、送られてきた。

 

──「今日の夕飯、肉じゃがにしました 」

 自宅の台所、自撮りの母さん、エプロン姿。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

高橋「……うわ、だめだこれ、だめなやつ」

 

松田「……保存。永久保存」

 

剣崎「画面の解像度が足りない。もっと鮮明なバージョンは?」

 

藤堂さん、硬直。無言で目を見開いている。

「お前たち、今までこんなものを、いや、こんな尊いものを・・・」

 

母さん。

 

学園祭は終わったのに、

あなたのせいで、僕らはまだ“日常”に戻れません──。

 

 

 

 

 

 

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