気になっていました、メモ帳のあの子が亡くなられました。
血溜まりしか発見されていないようですので、「君だけのハッピーエンド」の仕業でしょうね。
それと同時に現場から「死に顔カメラ」も見つかっているようで、徒花事案同士……と言えるのかは分かりませんが、彼女の死因が発覚したことで皆さん大忙しです。
というのも、彼女の日記が発見されたことで複数の徒花事案の関与が分かったのです。
彼女の部屋の整理がありますから、クラスメイトのかたがお部屋の掃除をすることになっていたらしいのですが、日記がそのときに見つかりまして、あまりに厳重にロックがかかっていたことと、そして彼女の行動が少々不審だったということで、調査が入りましたの。
日記となると「覗き込む影」のこともありますし、定期的に教員に見せてチェックを入れなければならないのですが、彼女は提出をしていらっしゃらなかったようですし。
魔力によるロックは通常開くのが困難ですが、亡くなられてしまったので血液の残留魔力を利用した方法で開くことになったのですね。
そしたら、なんと! この学院のことを調べている記者だというじゃないですか!
驚いてしまいました。おとなしくて勉強熱心な子だったらしいですもの。
この件を受けて教師の皆さんは記憶洗浄魔法の儀式についての穴を指摘されたようなもので、頭を抱えていらしました。彼女の先輩が残した文章で記者を呼び込むことになってしまいましたからね。
おかわいそうに、あれほどの儀式魔法の陣を組み直すのは大変でしょう。もしかしたら実現不可能な可能性もあります。文章までもとなると、書き換える条件が緩くなりすぎてどんな不具合が出るかも分かりません。校内安全マニュアルにまで影響が出たら目も当てられませんから。
わたくしは古代魔法陣学や魔道工学分野には明るくないのでどちらも遠くから応援することしかできませんが。
その日記の記述によって判明しているのは、以前の実験室での事故で彼女がマッチ……「幻惑売りの女」のマッチによる影響を受けていたことです。
彼女の先輩というかたは該当者がおりませんから。それに、「死に顔カメラ」が現場に落ちていたことと、先輩というかたが遺体の写真を何度も撮っているらしき記述がありましたから、恐らくその先輩さんは「死に顔カメラ」になってしまった魔導カメラの元の持ち主でしょう。
極め付けに、幻覚で日常的に先輩を見ていた記者の子が、先輩さんに誘われて森に足を踏み入れて……会いたくてたまらなかった先輩の姿を模倣した「君だけのハッピーエンド」の擬似餌にそっと抱きしめられ、そして、食べられてしまったのでしょう。
最後まで彼女は幻覚を見ていて幸せだったかしら。そうだったのなら、いいのですけれど。
問題なのは、マッチはともかくカメラが現場に落ちていたことです。幻覚は確実にあったはずですが、実体を伴ってハッピーエンドの元へと誘引した疑いがかかっております。でなければカメラが現場に落ちていることはないでしょう。
今までは徒花事案同士の協力関係なんてもの、ありえませんでした。
あのものたちは概念ですから、お互いを認識して人のように協力をして悪いことをするなんてことはなかったのです。なのに、今回の出来事が起こりました。
徒花事案の変質に良いことなどひとつもありません。
わたくしは徒花事案報告ファイルに新たな記述が刻み込まれる瞬間に出会ってしまったのかもしれません。
まさか在学中にこのようなことが起こるだなんて。
青薔薇棟寮長のお姉様も最近は落ち込んでいらっしゃる様子で心配ですし、神聖魔法学科内では不安が広がっております。
先生がた、この日記を提出した際には皆様の精神面へのご配慮をお願いいたします。