序文
◯
咲いても実を結ばずに散る花。転じて、
徒花事案(※1)とは、魔法や魔導科学では説明のつかない未知の生物、現象、物体、存在していても世の中になんらかの影響を与えない物事についての総称である。
本書は徒花事案の詳細な情報をまとめることとし、これを徒花事案報告ファイルと呼称する。
※1 旧名称「怪異」
分類表
分類1 由来
・U(ユニーク) 固有
・R(ルーモア) 噂
・F(フェアリーテール) 御伽話
・C(チェンジ) 変質
・T(テラー)恐怖
分類2 姿
・01人型
・02植物
・03動物
・04無機物
・05現象
・06未知
・07融合
・08不定形
・09自然
・10侵蝕
分類3 シリアルナンバー
◯番号の例題
U-02-01 薔薇園の赤い花
→U(固有)-02(植物)-01(シリアルナンバー)
◯危険度
高――――低
S-A-B-C-D-E
※分類1・C(変質)は元人間にも適応されるが、単純に変化の存在する徒花事案にも付与されることがある。
中略
U-02-01 薔薇園の赤い花
◯U-02-01 薔薇園の赤い花
・分類①固有
・分類②植物
・発生場所 ◇神聖魔法学科校内、青薔薇棟両者に存在する薔薇園
・危険度 ◇C
・詳細
通常はポピュラーな青薔薇のみが生育されているが、たまに幻の赤い薔薇が見つかることがある。赤い薔薇を発見したら速やかにその場を離れなければならない。
でなければ、Sランクの徒花事案『真紅の貴婦人』のお茶会に強制的に招かれてしまうことがある。
もし、逃げようとした際に茎に手を囚われてしまったのなら、指先を棘に当てて血を少量吸わせることで逃れることができるため、即時の判断が必要。
花の中心に歯が生えているものは別の徒花事案なので注意。
・補遺
見て回避することができるのと血を吸わせることで比較的穏便に事故を防ぐことが可能だが、血を吸わせる際の貧血、軽傷程度の怪我には注意。
遭遇して怪我をした場合は事故報告書を提出。
事案1
薔薇園の園芸委員が水やりの際、青薔薇の奥から現れた茎によって怪我。青薔薇に紛れた赤薔薇による被害は最も多く、注意が必要。
事案2
青薔薇を魔法で赤く塗ることは禁じられています。
生徒Aがふざけて薔薇を赤く塗ったところ、通常の青薔薇がU-02-01に変異し、血液の代わりに魔力を根こそぎ吸われて魔力が恒久的に0になる事故が発生しました。
神聖魔法学科校内だけでなく、一般学科や貴族学科校内でも同様の事例が起きる可能性があります。
他学科の生徒には事故が起こらないよう、赤薔薇は死と復讐の女神クリムローズの象徴であるため、青薔薇を赤く塗る行為は不敬に値し、神罰がくだることがあると注意してください。
C-01-56 嚙みつき薔薇
◯C-01-56 嚙みつき薔薇
・分類①変質
・分類②人型
・発生場所◇神聖魔法学科校内、青薔薇棟両者に存在する薔薇園
・危険度 ◇D
・詳細
U-02-01と同じく赤い薔薇の形をしており、薔薇園内でランダム発生する徒花事案である。花の中心に不揃いの歯が生えていることが特徴。U-02-01とは違い、茎を自在に操る力はない。
しかし花にものを近づけると円周30センチほどの距離内であれば食いつきに動くことが可能であり、不揃いの歯はその見た目からは想像もつかないほどに丈夫でなんでも噛み砕く。指や腕を欠損する事態にもなるので近づくのは禁じる。
食いつかれる直前であれば「おいしいものをあげるから口を開けて待っていて」と頼むことで食いつき行動をやめ、静止することがある。
ただしこの静止中になにも口の中に入れないでいると、目に見えない魔力や記憶、才能や知恵などの概念を食害することが明らかになっているため、菓子を口の中にひとつ入れる必要がある。包み紙などはそのまま口の中に放り込めば満足をして姿を消すため、校内安全マニュアルに記載してあるとおり、校内では菓子を持ち歩くのが対策として最も効果的である。
・補遺
甘味、もしくは肉食嗜好です。
・不確定情報
噛みつき薔薇に遭遇し、菓子を与えた生徒が数日いかなる徒花事案にも遭遇しなかった。
故に噛みつき薔薇は菓子の対価になんらかの加護を授けているのではないかという考察がされています。
データ量不足により不確定情報。
・注意事項
食物以外を口に放り込む行為は禁止です。
ゴミ処理に利用するのはやめてください。
実験目的に一度に多くの食物を与える行為も禁止です。
徒花事案を元にした自主レポートでは内申点を与えることはありません。
噛みつき薔薇の好きな肉ベスト5などの実験記録は不要です。
無力化実験と偽って徒花事案で遊ばないでください。
・補遺2
分類番号01は間違いではありません。
・訂正情報
聖ベルローズ学院創立10年度の死亡者の遺品書架にて、真紅の貴婦人へのインタビュー記録が発見されました。
インタビューを行った当該生徒Rと真紅の貴婦人との間で行われた契約事項、会話などにより、噛みつき薔薇は生徒Rの変質した姿であると推定されます。
よって、対価(菓子)を与えることによる数日の高度清浄状態による徒花事案遭遇件数の低下は真実であると確定しました。
インタビュー記録については真紅の貴婦人の項を参照してください。
・注意事項2
噛みつき薔薇に浄化措置は禁止されています。真紅の貴婦人との契約において、彼に安らぎを与えてやることはできません。