◯ T-08-03
・分類①恐怖
・分類②不定形
・発生場所◇神聖魔法学科校舎内の異界
・危険度 ◇A
・詳細
夜間の午前0時から午前2時までに神聖魔法学科の校舎内を移動している際、いずこかの扉を潜った際にランダムでこの遺殻の竜が存在する異界に迷い込むことがある。
午前2時までにこの異界から脱出できなかった場合、閉鎖されて脱出が不可能になる。取り残されると多くの場合生死不明のままだが、遺殻の竜に遺体が取り込まれている状態で発見されることもある。
異界に侵入した際に経路となった扉は消失するが、異界のどこかに別の扉が出現しており、その扉を発見し、通ることで脱出が可能。
遺殻の竜は多数の遺体をツギハギに殻とした不定形生物である。基本的に竜のようなシルエットになるように遺体を付着させており、多数の骨で構成された巣を守るように見張っている。
巣の中には収集したばかりと思われる真新しい遺体が保管されているが、これに近づくと竜が激怒し攻撃的になるため回収は困難である。
しかし、この竜がリアルな遺体の模型を収集したことが過去にあるため、視覚的に遺体を認識しているわけではなく、遺体を冷たい塊として見ており、実は本物の遺体とイミテーションの区別がつけられないのではないかともされている。
巣に保管されていた遺体は一週間程度で殻として利用され、白骨化が進んだ古い殻は巣の一部として外される。
この事実から、あくまで冷たい肉の塊を殻として好んでいるのではないかと推測されている。
・補遺
攻撃性が高く、巣の範囲も異界全体と言っていいほど広いため、異界に踏み入れたら最後執拗に攻撃をしてくる巨大な竜種のモンスターと同義です。
戦闘行為で勝利することは非常に難しく、肉の殻で本体らしき不定形の流動体を傷つけることもできません。
できるのは精々攻撃をして殻を外し、竜の気を引くことくらいでしょう。
もし、夜の校舎で異界に侵入してしまったら、常に周囲を警戒しながら移動を続けて脱出口を探すしかありません。
遭遇しないことが一番なので、夜の校舎には行かないというルールをきちんと守って生活をしてください。
中略
・異世界からの来訪者の遺体奪還作戦について
音声記録一部抜粋
(粘着質な液体が震えるような咆哮)
おーほっほっほっほ!
わたくしはこっちでしてよーーーー!! ハイ・イルフィールノォォォ!!
ちょっ、マルガレーテ副寮長! 大規模火炎魔法はまわり巻き込みかねないからダメですって!!
お姉様ったら本当にもう、火炎魔法がお好きなんですから〜!
これくらいしなくちゃあのおデカブツは足止めできなくってよ! それに、浄化の炎は徒花事案に効く万能属性ですわ〜! サラマド! サラマド! ハイ・イルフィールノ!! ヴォーパルくん、今ですわ!
ォォォラアッ!
オレの聖剣を喰らえ!!
ひゅ〜! ヴォーパル副寮長のなんかいい感じの枝な聖剣かっちょいい〜!
なんでも聖剣にできるとはいえ、卒業したらさすがに普通の剣使ってもらわんとな……。
(不快な絶叫)
ヒッ、ボロボロ肉が剥がれ落ちてる……気持ち悪……。
透明ローブ使って巣の中心へ向かってる人たちはあと……五十メートルほどで到着するようです。
副寮長方、もう少し巣の中心から引き離さないと。
分かっていますわ!
君達派手にやりすぎではないかね?
命懸けで陽動するのに派手もなにもありませんよ、先生。それとも先生があれ引きつけてみますか?
……わ、私は出口を確保しなければならないから。
なら早く撤退用の出口を探してくださいまし! 口っぽいところを大きく開けてますわね。なにか遠距離攻撃が来ますわ! 皆様、防御障壁の展開準備を!
はい!(複数人の返事)
(大きな破裂音と骨が砕ける音。なにかが溶ける音)
本当にどうしてこんなふざけ倒している生徒が副寮長なのかね……。
あら、指揮を取っているものが余裕でなくては指揮下の人々は不安に思ってしまいますのよ? わたくしたち上に立つものは余裕を保つことこそが義務なのです。
うわ、副寮長が珍しくお貴族様っぽいこと言ってる。
誰がエセお嬢様ですって!?
言ってません! 言ってませんから!
副寮長はちゃんとお貴族様です! 見えないけど!
家ではお行儀良くしていますから問題ないのです!
あ〜、ところで副寮長? 今音声記録を撮ってるんですけど、現在の役割分担をおっしゃってくださる余裕はありますか?
えっ、記録を撮っているのかね。
先生〜、さっきのザコザコ発言残っちゃうね! いつもマニュアルじゃ教員を頼れ頼れってしつこいくらい書いてある癖に肝心の先生がこんなんだと幻滅しちゃうナ!
働け〜。
大丈夫ですか?これ。
大丈夫じゃないかしら?
部隊構成は前衛の男女副寮長のわたくしたちを中心とした五人。隠れて遺体の奪還に向かっている男寮長を中心とした五人。援護魔法や防御魔法に集中して前衛を防衛する役割を持った五人に、記録係が一人。それから、竜に構わず空間内を歩き回って脱出口を探す教員含む十人といったところです。
脱出口を探すチームも攻撃が飛んでくることがございますので、守りの魔法をかけながら警戒しつつの移動ですので人数多めですわね。
竜のブレスは皮膚がドロドロに溶けるタイプの酸性の毒ですから、当たったらジ・エンド。詰みなんです。
犠牲者が出ないように立ち回っているので時間はかかりますが、今のところ透明ローブをまとった方々に気づく様子はないので、懐に飛び込むのだけでしたら簡単かもしれません。
ただ、大事に守っている遺体が消えたら、さすがに気づく恐れがありますわ。
(怒りに震えているような咆哮)
噂をしていれば、気づかれました!
遺体をローブに包むことには成功しているみたいなので、場所の特定はできていないようですが、暴れるだけで彼らの危険になりますわ。
ローブで隠していたダミーの冷凍巨大肉を設置するまでは竜の意識を逸さなければなりません。さすがに見ているところですり替えるとバレますからね! ではみなさん、全力で気を引きますわよ!
おー!(チームメンバーの返事)
記録の停止。
以上が遺体奪還作戦中のやりとりです。
作戦の成果は大成功。犠牲者なしで奪還を成功し、無事全員が脱出口から避難することができたことを報告いたします。