徒花事案報告ファイル   作:時雨オオカミ

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エピローグ
夢見る少女の提言


 外の世界の人達へ。

 

 こんにちは、うまくこっちの文字でお手紙を書けているかしら?

 知り合った人を通じて私はこの本を作ってもらいました。

 

 私たちの世界はどうだったでしょうか?

 とても悲惨だと思うわ。そうじゃないかしら?

 あなたたちにはどう映ったのかは分からないけれど、私はあの世界を変えるために世界を飛び越えることにしたの。

 

 チェシアがね、話してくれたのよ。

 「まばたきする月」や「誰かの視線」はまるで、私たちの世界を誰かが物語のように眺めているみたいだって。それに気がついてから、異穴のヒビについて調べ始めて、この世界があることが分かったの。

 

 私がノートを捨てたり、誰かがクリスタルのドクロ型魔力ランプを落としてしまったみたいに、この世界から流れ落ちてくるものが私たちの世界にも時々来ていたらしいの。

 その中には、私たちの世界で徒花事案として存在している子たちと似た物語の絵本も含まれるわ。

 

 だからね、仮説を立てたの。

 私たちの世界は、穴の向こう側では虚構に限りなく近い位置にあるってことを。

 

 荒唐無稽だと思うでしょう? でもおもしろいじゃない!

 だって、私たちの世界が、この穴の向こうの世界では虚構に近い存在だっていうなら、きっと観測するだけじゃなくて干渉もできるってことでしょう?

 

 そう、本の余白に字を綴ったり、絵を描き加えたりして続きを書いたり、物語を終わらせる言葉を書き加えたりできるんじゃないかしらって!

 

 私たちの世界を観測しているこの世界の人たちなら、あなたたちなら、きっと本に干渉することができるわ!

 だからね、最初に落とされた徒花事案報告ファイルを見つけた人に協力してもらって、この本を作ったのよ。

 

 「ペンは剣よりも強し」って、この世界の言葉よね? とても素敵だと思うわ!

 

 徒花事案報告ファイルは、R分類。つまり、噂分類なの。なら、神聖魔法学科で強く認識されている情報よりも、この世界の人たちが書き換えられたこの物語を広く認知することで本を構成してる「噂」は変えることができる。

 

 そうすれば、私たちの世界もきっと変われるはずなの!

 

 物語が終わって、ページが追加されなくなったら、きっとあの学院はもっと平和になって悲しいことが減るはずよ。

 悪い部分を捨てていたゴミ箱がなくっても、みんな自分で悪いものを持ち帰って、受け入れて、そのうえで生きていくことだってできるはずなの。

 

 この本が続く限り悲劇が書き加えられていくなら、ページが追加されないように変質させて、それ以降の未来はみんなに託す。それでもきっと大丈夫だって信じてる。

 

 もしかしたら、バッドエンドばかりの世界に、救いがひと匙加えられるだけで終わってしまうかもしれない。

 

 この本が広まって世界が変わる前に、私たちが徒花事案として完全に取り込まれてしまうだけに終わるかもしれない。

 

 それでも、私はチェシアにこのことを教えてもらって、やる価値があると思ったわ。

 

 さっきも書いたけど、私たちの手で物語が完全に閉じられたら、その先は未確定の世界になるわ。

 本に載っていない部分は観測しない限り幸せが待っているか、悲劇が待っているか分からない。でも、それって未来は自分たちの手で選べるってことよ!

 

 寮長だって、きっとあのままデュークさんと結ばれて幸せになるって信じてる!

 

 だから、私は変なルールを強いてくる元凶をぶっ飛ばしてやるつもりで挑むわ!

 みんなで幸せでいてほしいって願うこと自体に、罪なんてないはずだもの。

 

 この世界だと、私の名前(アリス)はヘンテコなルールをぶち壊すのに一番相応しい名前でもあるみたいだし……こんな素敵な偶然、利用するしかないでしょう?

 

 私は私とチェシアの可能性を信じてる。だから真紅の貴婦人との勝負もきっと勝てる!

 

 だからね、これを読んでいる皆さんにはお願いがあるの。

 この話を知ったみんなには、私たちの世界のために「最強」な呪文を一緒に唱えてほしいの!

 もちろん、心の中で唱えるだけでも効果はあるから心配しないでね。

 

 え、魔法が使えない世界の人間が呪文を唱えて意味があるかって?

 

 この世界には、確かに私たちの世界みたいに魔法はないけど。

 

 でも、認識が力になる以上、魔力がなくったって使える魔法はあるのよ!

 

 だから呪文を唱えて!

 最後の最後に物語を終わらせる最強の呪文を!

 

 本の末尾にめでたしめでたしで閉じれば、きっとそれ以上の悲劇は起こらず、世界は平穏を迎えるはず!

 

 だからね、私はこの本の最後にこう書き足して終わらせるの。

 

「そこで、突然現れたオオカミ猫とアリスが本の内容を変えてみんなを幸せにすることができました」

 

 さあ、みなさんご一緒に!

 

 誰も傷つかない!

 怖い思いをしない!

 なにもおかしなものが夢に出ない!

 誰も死なない!

 みんなが良いところも悪いところも受け入れて前へと進んでいくことができる!

 

 そんな、なんでもない日におめでとう!

 

 これは魔力のいらない魔法の呪文。

 せーの!

 

『めでたしめでたし!』

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