遊戯から貰ったふたつの切り札を無駄遣いするだけのアカデミア生活   作:新参似非デュエリスト

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経緯とかはちょくちょく出します。
まずは入学試験から

(後書き書き換えました)


竜騎士ガイアの進化

 かつて日本のヨハネスブルグと呼ばれていた都市「童実野町」。

 不良のたまり場、ボーイスカウト10名が殺害された湖、5年前殺人施設を娯楽の舞台に偽装したことのあるアミューズメントパークなどこの世のありとあらゆる悪徳の集合体といっても過言ではないこの町だったが、現在ではM&W(マジック・アンド・ウィザーズ)から発展したカードゲーム「デュエルモンスターズ」を世界的競技に変えた町として知られるようになった。

 

 そのアミューズメントパーク「海馬ランド」の一角にあるデュエルスタジアムをすべて貸し切って、エリート決闘者(デュエリスト)を養成するデュエルアカデミア高等部の入学試験が行われている。

 試験としては筆記と実技、つまり決闘(デュエル)によるものがあるわけだが、デュエルモンスターズの基礎知識(なお「対象」と「選択」)やカード効果に関する理解(【精霊の鏡】については出題者すら匙を投げた)などの筆記試験を突破した者120名だけが、この海馬ランドデュエルスタジアムに足を運ぶことができる。

 つまり、である。

 

 「リバースした【レッグル】の効果により君に直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 「ううっ……」

 

翔 LP:2700→2400

 

 これしきのデッキ(試験用のチュートリアル)に苦戦するような受験者であっても、あの意味不明な難易度の筆記試験を最低限の成績で突破した実技試験挑戦資格者である、ということだ。

 

 

 

 

 

 

―――

 

 実技試験の模様を、欠伸をかきながら眺めていた男がひとり。

 開場してから長いこと居座っている彼―黒野彪流(たける)―の試験番号は7。筆記試験を軽々クリアできるくらいにルールや用語を理解できている……とは言い難い彼は、ギリギリまでデッキ編成を詰めながら他の受験生のタクティクスなどを呑気に見物していたが、目ぼしい決闘者がいないとみて自分の世界に引きこもることにした。

 

 「ま、一桁台になるまで気長に待ちますか。僕は気が長い方なんだ」

 

 面倒臭そうにあたりを見回してみると、上級生や中等部からの内部進学と思しき連中が文字通りの上から目線をかましているのが分かる。もっとも自身も受験者でありながらそこにいるわけだが。

 

 デュエルコートを横目に、かつて魔道騎士族と呼ばれた分類で最強のモンスター【暗黒騎士ガイア】のホログラム付きカードに若干まとわりついた埃を払っていると、いつの間にか20番台のデュエルが終わってしまったことを知る。

 

 「……これ行かないと遅刻になるじゃん?」

 

 思ったより早くデュエルが消化されてしまったことに落胆し、態度相応に重い腰を上げて急いでデュエルコートに向かう彪流を、より上から興味深そうに見ていたものが二人いたことに彼が気付くことは永久になかった。

 

 

 

 

 

 

―――

 

 デュエルコートに着くと、すでに前の受験者とのデュエルを終えた試験官が待ち構えていた。その決闘盤(デュエルディスク)はどうやらアカデミア用の汎用ディスクで、彪流ら受験生が用いる市販品と違い全体的に丸みを帯びている。

 

 「試験番号7黒野彪流。満足させてみせます」

 「ほう、今度はえらく威勢のいいのが来たな。試験用デッキとはいえ手加減はしないぞ」

 「了解です」

 

 ドス黒い内心を隠しつつ爽やかに応えた彪流は、腰のベルトに着けられたケースからおもむろにデッキをひとつディスクに差し込む。試験官も応じるようにディスクを展開し、これが決闘の合図だ。

 

  『デュエル!!』

 

 

彪流 LP:4000

試験官 LP:4000

 

 「先攻はそちらからだ。試験の仕組み上そうなってるんでな」

 「ではお言葉に甘えてドローカード」

 

 ドローした瞬間、苦虫を噛み潰したような面をわずかに見せながらしばし思考し、やっと動いた。

 

 「モンスターとカードを1枚ずつセットしてターンを終了します。……チッ」

 「手札事故か?だが気にしてる暇はない。私のターン、ドロー」

 

 対照的に、試験官の方はドローした瞬間にカードをディスク上のパネルに設置する。

 

 

 「魔法カード【手札断殺】を発動。お互いに手札を2枚捨てる」

 (今はありがたがるしかないか。仕方がないが…)

 

 試験官がモンスターカードを2枚、彪流はモンスターと魔法カードを墓地に移動させる。

 

 「その後、それぞれ2枚ドロー。続いて永続魔法【炎舞―「天璣(テンキ)」】発動!効果処理として、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスターを1体手札に加える。この効果で手札に加えた【ルイーズ】を攻撃表示で召喚!」

 

ルイーズ

地属性・獣戦士族・レベル4

攻撃力:1200→1300

 

 「攻撃力が上がった?」

 「炎舞―「天璣」が魔法・罠ゾーンに表側表示で存在する限り、自分フィールド上の獣戦士族は攻撃力が100上がるんだ。さらに永続魔法【炎舞―「天枢」】を発動!」

 

ルイーズ

攻撃力:1300→1400

 

 「このカードも獣戦士族の攻撃力を100上げるが、もうひとつの効果としてこのカードが魔法・罠ゾーンにある限り、私は通常召喚に加えて1度だけ獣戦士族を1体召喚できるのだ」

 「なにっ?」

 

 この後に起こるであろう展開を瞬時に導き出した彼の驚きを無視し、試験官はおもむろに上級モンスターカードを手札から取り出す。

 

 「ルイーズを生け贄に捧げ、【ミノケンサテュロス】を召喚する!」

 

 ネズミの戦士が光に包み込まれて消えたと思えば、今度は長い両角を象った筋骨隆々のケンタウルスが姿を現す。知力が低いのか、今にも暴れたくて仕方がないという身振りからの主張が激しい。

 

ミノケンサテュロス

地属性・獣戦士族・レベル6

攻撃力1800→2000

 

 「ミノケンサテュロスの効果を発動。このカードを生け贄に捧げる事で、デッキから獣戦士族・レベル4の通常モンスター2体を特殊召喚する。いでよ【ジェネティック・ワーウルフ】!【ブラッド・ヴォルス】!」

 

ジェネティック・ワーウルフ

地属性・獣戦士族・レベル4

攻撃力:2000→2200

 

ブラッド・ヴォルス

闇属性・獣戦士族・レベル4

攻撃力:1900→2100

 

 『おいおい、あっという間に獣戦士族下級モンスターの最強枠が2体…』

 『7番マジでヤバくないか?』

 『ヤバいなんてもんじゃねえだろ!あんだけ立ち回ってあの試験官、手札あと2枚あんだぞ』

 

 ギャラリーが騒ぐところを見るに、驚くポイントはやはり高火力モンスターを一気に2体揃えられたところだろうか。目の前の敵を戦斧で切り刻まんとする獣魔人に、戦意に満ち溢れている四本腕の怪人。確かにセットモンスターがいなければ完全に彪流も終わっていたかもしれない。

 そんなことは億が一ありえないことだが。

 そんなこととは露知らない試験官は、ここで追い打ちをかけていく。

 

 「装備魔法【メテオ・ストライク】をジェネティック・ワーウルフに装備。バトル!ジェネティック・ワーウルフでセットモンスターを攻撃!」

 

 思考の暇なく、敵からの攻撃宣言。彪流は焦燥の顔を変えることなく受け入れる。

 ソリッドビジョンで現れたカードが破壊されると、その衝撃波が余すことなく彪流の体に浴びせられる。

 

彪流 LP:4000→2200

 

 破壊された場所に赤い髪の女魔術師が亡霊として現れると、光となって彼の墓地に降り注いでいく。

 

聖なる魔術師(セイント・マジシャン)

光属性・魔法使い族・レベル1

守備力:400

 

 「【聖なる魔術師】のリバース効果で、墓地の魔法カード、【混沌の場(カオス・フィールド)】を手札に加えますッ」

 「手札断殺のときに捨てたカードか……。だが今は関係ない。ブラッド・ヴォルスでダイレクトアタック!」

 

 今度は戦斧が一直線に振り下ろされ、その衝撃が重くのしかかる。

 

 「ぐぅッ……、少しは罠カード警戒しろっての

 

彪流 LP2200→100

 

 呻きながら、彼はわずかに口角を鋭く吊り上げた。

 

 

 『なんだよ、拍子抜けじゃねえか』

 『活路エグゾにしてもライフポイントが100じゃなあ…』

 『本当に筆記試験一桁なのかよ』

 

 「果たして、本当に追い詰められているのか?」

 「え?」

 

 あまりにも一方的に彪流が追い詰められていく様に侮蔑をぶつける者達の後ろで、本校で現在(・・)唯一の特待生・丸藤亮が訝し気に口を開く。

 聞いた金髪の少女・天上院明日香が少しばかばかし気に首を傾げる。

 

 「このデュエル、おそらくあの7番は相当に試験官を嘗め切っているとしか言いようがない。まるでこのターンしのぎ切れることが分かっているかのような」

 「さすがに買いかぶりな気がするわ。現に攻撃妨害のカードを」

 「それだ、それなんだ。間違いなく次のターンで勝てる算段がなければ、こんな真似をするのはただのバカだ」

 

 

 「……ふう、もう終わりですか?」

 「なに?」

 

 試験官が首を傾げると、先程とは打って変わって彪流の声が明るくなる。

 

 「このあとカードを伏せ、エンドフェイズには攻撃力が2500まで上がる【暗黒のマンティコア】が先生の場に現れる。違いますかね」

 「……ッ、残ったカードを伏せ、ターンエンド」

 「エンドフェイズになりましたので、ここで(・・・)罠カードを発動します」

 

 次に焦りを浮かべたのは、なぜか試験官の方だった。

 

 「罠カード【砂塵の大竜巻】を発動し、先程伏せたカードを破壊します」

 

 カードから竜巻が巻き起こり、次の瞬間には伏せカードが彼方へ吹き飛ばされていく。

 一瞬見えた限りだが、カード名は【炸裂装甲(リアクティブアーマー)】だった。

 

 「くっ……」

 「そしてこちらは手札から魔法または罠カードを1枚伏せますね」

 「しかしこちらも、墓地に送ったターンのエンドフェイズ、フィールド上の獣族・獣戦士族・鳥獣族1体、今回はブラッド・ヴォルスを墓地に送り暗黒のマンティコアを墓地から特殊召喚する!」

 

暗黒のマンティコア

炎属性・獣戦士族・レベル6

攻撃力:2300→2500

 

 しかしまだ壁は厚い。攻撃力2500を超えるモンスターをこの次のターンに出せるものはそうそういない。

 いない、はずだった。

 

 「それでは僕のターン、ドロー。スタンバイフェイズ、メインフェイズ」

 

 いちいちフェイズ確認してくる彼を誰もが訝しんでいる間にカードは発動された。

 

 「先程手札に加えたフィールド魔法・混沌の場を発動します!多分大したソリッドビジョンエフェクトはないので効果を説明します。発動時の効果処理として、デッキから「暗黒の騎士ガイア」モンスターを1体手札に加える。僕が選ぶのは、暗黒騎士ガイアだ!」

 「暗黒騎士ガイア!?あの伝説の決闘王(デュエルキング)、武藤遊戯の……」

 「でも今回は手札でお留守番。続いて伏せカードとして先程のエンドフェイズにセットした【リビングデッドの呼び声】で、手札断殺のときに捨てた【呪われし竜―カース・オブ・ドラゴン】を墓地より特殊召喚します」

 『か、カース・オブ・ドラゴン!?』

 「これも武藤遊戯が使った上級モンスターだ…」

 

 試験官も、ギャラリーも、リメイクモンスターとはいえ決闘者の王国(デュエリスト・キングダム)で武藤遊戯が使用したモンスターを目の前の男が平然と使っている様に驚愕する。

 それを尻目に、翼竜が姿を現す。

 

呪われし竜―カース・オブ・ドラゴン

闇属性・ドラゴン族・レベル5

攻撃力:2000

 

 「このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから「竜騎士ガイア」のカード名が記された魔法・罠カード1枚を手札に加える効果があるので発動します。【螺旋融合(スパイラル・フュージョン)】を選択し手札に加えます」

 「……ッ、まさか!」

 「そしてこれを発動!このカードはドラゴン族専用融合カード。手札の暗黒騎士ガイアと場の呪われし竜―カース・オブ・ドラゴンを融合!出でよ融合召喚【竜魔道騎士ガイア】!!!」

 

竜魔道騎士ガイア

闇属性・ドラゴン族・レベル7

攻撃力:2600→5200

 

 黒馬に騎乗する戦士がそのまま飛び上がると、それに合わせ下降したカース・オブ・ドラゴンに飛び乗り騎乗。そのとき、彼らの全身からすさまじいほどの魔力が沸き上がり、強大な力を持つ竜騎士として生まれ変わったのだ。

 その姿は、まさに【竜騎士ガイア】そのものであった。

 

 「私はもう驚かんぞ…。しかし攻撃力が倍化しているのは螺旋融合の効果なのか?」

 「はい。この効果で「竜騎士ガイア」を特殊召喚した場合、そのモンスターの攻撃力は2600ポイントアップします。そして竜魔道騎士ガイアはモンスターゾーンにいる限り、カード名を「竜騎士ガイア」として扱います」

 「な、なんということだ……」

 「ではバトルフェイズに移りますね。竜魔道騎士ガイアでジェネティック・ワーウルフに攻撃。魔道一閃、螺旋魔槍殺(スパイラル・メイジ・シェイバー)!!」

 

 魔力を穂先に込めて放った刺突が、獣人の全身に不思議な螺旋状の切れ込みを与え、数秒後に切れ込みに沿うように全身がズレを起こし爆発。

 しかし余波の風が少し大きい気がする。

 

 「ぐうぅぅッ!!」

 

試験官 LP:4000→1000

 

 「し、しかし!1体だけではこのようにライフポイントが残る!次のターンはどうするつもりだ?」

 「フフ、御心配なく。螺旋融合で特殊召喚された「竜騎士ガイア」は1度のバトルフェイズに2回までモンスターに(・・・・・・)攻撃できますから」

 「なん、だと!?」

 「さらに1ターンに1度だけ竜魔道騎士ガイアが戦闘で相手モンスターを破壊した時、攻撃力がさらに2600ポイント上昇しますので…」

 

竜魔道騎士ガイア

攻撃力:5200→7800

 

 「こうげきりょく……、ななせんはっぴゃく……。編入試験でこんなことは初めてだ……」

 「そうですか。では記念すべきダブルアタック最初の被害者は暗黒のマンティコアになりそうですね」

 

 若干幼児退行しかかっている試験官を尻目に、ガイアの魔力はより強大になり、その槍は暗黒のマンティコアに向けられていた。

 

 「螺旋融合と竜魔道騎士ガイアの効果による2回目の攻撃は、暗黒のマンティコアに対し行う!」

 

 攻撃宣言とともに、カース・オブ・ドラゴンが一気に加速し、敵に迫る。

 そしてそこから飛び降りた騎士の2本の槍が暗黒のマンティコアに一直線!

 

 「二槍決死、螺旋魔重槍殺(スパイラル・ダブル・メイジ・シェイバー)!!!」

 

 そして2本ともが敵の体を貫き、螺旋状の傷をつけて大爆発を起こした。

 

試験官 LP:1000→-4300

 

 

 「あ、あ……」

 「当然合格ですよね。ありがとうございました」

 

 試験デュエルは試験番号7の勝利に終わった。7番はどもる試験官に深く一礼して、反応を待つことなく立ち去ってしまった。

 その次が隣のデュエルコートで試験番号1、つまり筆記試験首席合格の三沢大地のデュエルであることを忘れてしまうほど、試験官陣やギャラリー・特に中等部内部進学組や上級生達は大騒ぎであった。

 

 

 

 

 

 

 「……まだまだ分からないな、来年のことは」

 

 ただ一言、隣の明日香にも聞こえないような小声で、亮は嬉しそうにつぶやいた。

 

 

 その夜、一件のメールが彼のPDAから送られた。

 

 

From ヘボガイア

宛先 武藤遊戯

件名 入学試験

 

勝ったで

ついでにウッツが名古屋軍に移籍だってよ

まあベ・リーグじゃいくらホームラン打っても仕方ないわなw

 

あ、あとガイアと磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)のデッキありがとう。生涯ずっと使わせてもらいます




彪流「今日の最強カードは『竜魔道騎士ガイア』!
攻撃力守備力は竜騎士ガイアに同じ」
亮「まさか相手モンスターを戦闘で破壊した時に攻撃力を上げる効果を持っているとは…、恐ろしいカードがまだまだあるのか」
彪流「…ところでどなた?」
亮「!?」
彪流「…まあいいや、入学までアディオス・アカデミア!」
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