洞穴の薄暗がりに、今日の戦利品を一つずつ並べていく。
アオキノコ、薬草、ネンチャク草に、なんか見るからに毒って顔してる赤いキノコまで。にしても──これ全部、食べたら死ぬやつなんじゃないか……?
「さて、と……まずは、だ。調合ってやつを、やってみるか」
“調合”──それはゲームではおなじみの、素材を掛け合わせて新たなアイテムを生む、魔法のような技術。
だが現実(いや異世界だ)では、当然、マニュアルなんてない。レシピもなければ、ガイドもなし。
あったのは、俺の中に残るゲーム知識だけ。
「アオキノコと薬草で回復薬、だったよな。うん……」
だがそれが実際、どんな比率で混ぜられていたのか。すり潰すのか?煮るのか?乾燥させるのか?そんな詳細まで知る由もない。
ひとまず──やってみるしかないか。
すり鉢代わりに使うのは、例の小型モンスターの頭骨。くぼみの形がちょうどよく、すりこぎ棒にちょうどいい骨も以前拾っていた。
まぁ、すりつぶすことくらいはできるだろ。やってやろうじゃねぇか。
「まずはアオキノコひとかけら……いや、まるごと一個でいいか?うん、ぶち込んで──」
──ゴリゴリ。
乾いた音が洞穴の中に響く。
……ちょっと湿っててぬめりもあるけど、まぁ潰れてはくれた。
続いて薬草。緑の葉と茎をちぎって投入し──ゴリゴリゴリ。
「……なんか……ねちょねちょしてきたな。これでいいのか?」
見た目は、ちょっと青っぽい緑の、なんとも言えないペースト。
匂いは──まあ、うん。草だな。ほんのりきのこ。
でも、これで効果あるのか……? 俺、ガミザミだけど、毒の抗体とかあるのかも知らんのに。
一応、別の骨片に少し塗りつけ、様子を見てみる。虫が近づいてきて、ちょっと舐めて──逃げた。
いや逃げた……効くのか? それともヤバいやつか?
「……まあ、保存もできんし。お試しで少し、塗ってみるか……。って、どこにだよ」
しばらく悩んで、ヤドの裏──甲殻の隙間に少し塗り込む。
冷たい。湿ってる。匂いがこもる。
「これは……どう判断すればいいんだ……?」
とりあえず、どこも痛くないし、熱くもない。つまり“成功かどうか不明”という最悪に近い中立結果。
おまけに薬の比率もまったく不明瞭。キノコ半分の方が良かった?薬草を刻んだ方がよかった?
知らん!わからん!なんでゲームの通りで済ませようとしてんだ俺!
「もう少し調合して、何種類か試してみるしかないな……アオキノコ多めのやつ、薬草多めのやつ、1:1のやつ──」
骨のすり鉢を使いながら、俺はしばしの“実験”に没頭する。
洞穴の中には、草とキノコの青臭い匂いが、次第に強く広がっていった。