立派なショウグンギザミ目指します!   作:ルミナリー

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ガミザミ、容器を作ってみる

 

 

 薬草とアオキノコの比率は一対一。ゲーム知識ではそうだった。が、現実?のこの世界は、当然ながらそんなに都合よく出来ていない。調合の結果は三種三様――ドロドロの軟膏、水のような液体、そして固形化したものまで出来た。使ってみればそれぞれに効き目があり、口に含めばふわりとした回復感が身体に染みわたる。が――問題は保存だ。

 

 今の俺には、瓶がない。栓付きの容器なんて、都合よく転がっているわけもなく……。

 

「……骨、だな」

 

 そこで俺は、新たな造語を思いつくことになる。『骨瓶(こつびん)』。

 

 意味はそのまま、骨で作った瓶――というより、水筒、薬筒、薬骨器とでも言えばいいか。口をふさげるように蓋もつけて、中に液体を貯めることができる構造。もちろん精度は落ちるが、湧き水に浸して冷やしておけば、ある程度の保存も利くだろう。

 

「んじゃ、材料探しといこうか……!」

 

 螯をパキンと打ち合わせる。新たな目標は、骨――ただの骨ではない、用途に合う骨だ。頭に描くべきは、形状。曲がりの少ない管状の骨、ある程度の中空構造を持ち、蓋が作れそうな突端の骨。皿のような骨は今は不要、使うのはあくまで液体保存のための“器”なのだ。

 

 洞穴を出て、ぬかるむ沼の縁を通り抜ける。目指すは、前に見つけた骨塚。何体もの小型モンスターの死骸が風化し、静かに眠っているあの場所へ。

 

 

 

 ぬかるみの水音をかき分け、森の合間を縫うように進む。地面に大きく口を開けた骨塚が見えてきたそのとき――

 

 「!?」

 

 先客がいた。

 

 甲殻のきらめき、青と白がまだらに混ざった装甲。ハサミを器用に操り、骨の山をまさぐっている……同族。

 

 まさか、こんな場所で会うとは。しかも相手もこっちに気づいたようで、ぴた、と動きが止まる。

 

 そして――

 

 ――ばんざーい!――

 

 まるでそう言ってるように、両方のハサミを高々と持ち上げた。

 

 ……なんだこいつ、可愛いな?

 

 俺も、とりあえず真似して両螯を上げてみる。カチン、と空気を切る乾いた音。相手は嬉しそうにカシャカシャと挟みを鳴らし、また骨塚の発掘作業に戻った。……どうやら、敵意はないらしい。よかった。

 

 その後ろ姿はどこかのんびりしていて、俺は自然と肩の力が抜けていく。

 

「さーて、こっちも漁らせてもらうとしますか」

 

 どの骨が使えそうか、目を凝らす。アプケロスの頭骨――でかすぎる、却下。ブルファンゴの牙っぽい何か――硬そうで直線的、これは……削ってスプーンにした方が早いかも。あばら骨――これは悪くない。肋の細いところを切り取って、蓋の材料に使えそう。真っ直ぐな骨――きた、コレ! 小型モンスターの脚か尻尾骨だろうか、中空で真っ直ぐ、長さもほどほど、理想的な骨瓶素材だ。

 

 カチン、カチンと螯で慎重にくり抜いていく。中を覗けば、時間経過で髄が抜け落ち、自然と空洞になっている。うむ、加工しやすい。

 

 隣の同族も、なんだか得意気にハサミを振って見せてきた。――まさか、お前も骨瓶職人なのか? いやそれはないか。

 

 こうして小一時間、使えそうな骨を10本ばかり集めてヤドと甲殻の間に詰めて、再び沼を目指す。

 

 洞穴に帰って、俺はさっそく制作に取り掛かった。

 

 まずは骨の内側を綺麗にする。中に詰まっていた泥やら苔やらを、湧き水と螯でゴリゴリ洗い流す。指のような脚で支えながら、片方の螯で細かく傷を削る。削りすぎれば割れてしまう、加減が難しい。

 

 乾かして、次は蓋だ。肋骨の先を細く切り落とし、骨の口にぎゅっと押し込む。簡単には抜けない、密閉とまではいかなくても、保存には耐えられそうだ。

 

「……ふふ、これで“骨瓶”一号の完成ってわけだ」

 

 まだ中に入れる薬は少ししかないけど、それはまた後の話。ひとまず保存容器を確保したことは、大きな一歩だった。なにより――

 

「俺、今めっちゃサバイバルしてる感あるな……」

 

 もはや自分が人間だったころの感覚は、遠い夢みたいに思えてきた。螯を眺める。ぎらりと光るその曲線に、どこか愛着すら湧いてきて――

 

「よし、次は……もう少し骨を集めて、補強パーツを作ってみるか。二重構造の瓶も面白いかもな……?」

 

 こんな風に、俺の“ガミザミ生活”はまた一歩、妙な方向へと進化していったのだった――。

 

 

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