――次の日。
「さて、やるか」
洞穴の一角、いつもの“作業スペース”に腰を下ろす。
ニトロダケ、火薬草。昨日の収穫分だ。どちらも腐ってはいない。
ヤドの中には素材がずっしりと詰め込まれている。少し覗けばツタの葉、ネンチャク草、ドキドキノコ、そしてブルファンゴの骨の欠片……我ながらサバイバル生活に染まりすぎてる。
「さーて、骨瓶を何本か用意して――っと」
骨の空き瓶を転がし、ニトロダケの粉末をすり潰して中に詰め込む。
その上に、乾燥させた火薬草の粉末をふりかける。
「……うん、ここまでは良い。問題は、だ」
――起爆。
これまでも何度か試しているが、安定して“爆破できる”方法が確立できていなかった。
火は無い。導火線も無い。そもそもマッチなんて便利なもの、この世界に無い。
「でもさ。あの鉱石、あの白く光るやつ――アイツ、確か火花が出たよな?」
前に採掘した白っぽい鉱石。青白い閃光を放ち、カチンとぶつけただけでバチバチ火花を散らしていた。たぶん、硫黄石か、それに近い性質のものだろう。
――なら、それを混ぜればいい。
爆発させたいなら、火をつければいい。
火が無いなら、瓶の中で火を生ませればいい。
俺はその鉱石を石の上で細かく砕いた。
霧のような粉が空中に舞い、鼻がツンとする。これは、行ける。
「よし、ニトロダケ、火薬草、そしてコイツを混ぜて……骨瓶に、封入」
カポッと蓋を閉じる。だが、ガチガチに密閉はしない。
あくまで投げる時の衝撃で、中身がぶつかり合い、鉱石が火花を散らして起爆する――そんな設計。
「つまり、導火線いらず、火種いらず――**“シェイク式骨爆弾”**ってわけだ!」
少し緊張しながら、瓶を軽く振る。――まだ大丈夫。
次に、洞穴の外へ出て、枯れ草の生い茂ったあたりへと足を運ぶ。
「さあ、いけ……!」
――ポイッ。
骨瓶がくるくると回転しながら飛び、着地する。
ゴンッ!
――ドカァン!!!
爆音とともに、枯れ草ごと地面が吹き飛んだ。
黒煙が立ち上り、土砂が宙に舞う。これは文句なし、完全な起爆成功だ。
「……やった、やったぞッ!!」
思わず跳ねる。ハサミをバチバチ鳴らす。
苦節幾日、ついに完成した。導火線も火打石もいらない、誰でも使える“振って投げるだけ”の爆弾。
「これで俺も一丁前の爆破甲殻類だぜ……」
シェイク式骨爆弾は、素材も簡単、再現性も良好。
しかも骨瓶にちょっと工夫するだけ。もはや主力兵器。実用性、抜群。
「さて、調子に乗ってもう何本か作っとくか……!」
俺はヤドを開いて、素材を再確認。ニトロダケはたっぷりあるし、火薬草も昨日の探索でかなり取った。
あの火花鉱石も、小瓶ひとつ分は残ってる。充分だ。
「よしよし……これがあれば、今度こそ狩りにも応用できるな……ブルファンゴにぶん投げて爆殺、とか……」
想像しただけでニヤける。骨爆弾を小さく撫でる。
「ふふ……ふはは……ッ! 覚悟しとけよ、モンスターどもぉ……!!」
燐晶石(りんしょうせき)
― 火と結晶の狭間に生まれた、小説オリジナル素材 ―
見た目:
乳白色で細かい結晶が寄り集まったような構造を持つ鉱石。軽く、脆い。時に内側から光を反射するような煌めきを見せる。
特性:
・衝撃や摩擦により火花を発する
・湿気に弱い
・自発的な燃焼力は無く、可燃性素材との組み合わせで真価を発揮
利用法(現状):
・骨瓶内でニトロダケ+火薬草と混ぜて使用
・投擲時に内部で砕け、火花を散らし爆発を誘発する簡易起爆装置として機能
・安定性はまだ課題だが、主人公は一定の成功を得つつある