――ぐぅぅう……っ!!
「いでぇ゛……ッ!! ちきしょう……ッ!!」
泥に叩き伏せられ、全身の甲殻が悲鳴を上げた。ひび割れた殻の奥で骨の芯が揺さぶられ、肺が潰れるような痛みが喉を塞ぐ。呼吸のたびに胸が焼け、視界が赤黒く滲む。今ので普通なら即死――だが、俺はまだ生きている。
「……けど……何かあればって思って、作っておいて……よかった……!」
口の端から血を垂らし、泥に混ざる鉄臭さを吐きながらも、喉の奥からひきつった笑いが漏れる。痛みで歪んだ顔を隠す余裕すらない。それでも――死を避けられた事実が俺を笑わせた。
まずは皆が知っての通りの――鉱石。
俺はどういうわけか鉱石を食う癖があった。妙に美味かった。ザリリと噛み砕いたときの粉っぽさ、歯に響く重たい感触、その奇妙な嗜好が、今こうして命を救っている。齧り砕き、飲み込み続けた鉱石は、肉や骨と混ざり合い、いつしか甲殻そのものを異様に硬く変えていたのだ。もしあの味に夢中になっていなければ、今頃は粉々に砕かれていただろう。
そして――あの素材。
「ゲリョスの皮……!」
かつてハンターが仕留め、打ち捨てられていた死骸。俺はそこから腐臭漂う皮を剥ぎ取り、ネンチャク草でヤドに貼り付けた。何層にも重ね、外殻の隙間を無理やり埋めて補強した。醜い見た目は気にもならなかった。ただ生きるため、攻撃を耐えるために貼り付けた皮。そのゴム質が衝撃をわずかに吸収し、致命傷を防いだのだ。
だが――限界はある。
「あと……一、二発……! それ以上は……もう食らえねぇ……!」
ヤドの奥に罅割れの音が響き、貼った皮は裂け、粘着が剥がれかけていた。あと一度、二度。それ以上は耐えられない。生か死か、勝負は目前だった。
それでも、生きている。なら、動ける。
呻きながら、俺はヤドの奥に転がしておいた“骨瓶”を探り当てる。
――俺が自ら調合し、いつかのために大事にしまい込んでおいた回復薬だ。突進の衝撃で瓶は砕け散っていたが、底にはまだ、緑色の液体が粘るように残っている。
「……助かった……! 俺の用心深さに……ッ!」
砕けた欠片ごと、口に流し込む。破片が舌を裂き、血と薬草の苦味が混ざり合う。鉄錆のような後味、喉を焼く刺激――だがすぐに体の内側が熱を帯び、痺れた肉がわずかに震え始めた。血が通い、動きを取り戻していく。
ひび割れた脚がぐらりと震えながらも、地を掴む力を戻す。痛みは決して消えない。だが、折れてはいない。動ける。戦える。
「……はぁ……っ、はぁ……っ……。助かった……。だが……これで終わりじゃねぇ……!」
泥を蹴り飛ばし、俺は立ち上がる。鋏を構え直し、ぎらついた目で正面を睨み返す。
ドスファンゴは鼻息荒く、湿地の泥を吹き飛ばしながらこちらを見据えていた。血走った瞳、筋肉の塊のような巨体――次の突進を今か今かと待ち構えている。
「……上等だ……! こっちだってまだ、死んでねぇ……!」
声を張り上げると、巨体が唸りを返した。湿地を震わせる咆哮。互いの呼吸が、戦場の空気を灼熱に変えていく。