ハサミをぐいっと引かれ、俺は思わず体を揺らした。小柄なガミザミの力に抗うほどでもないが、妙に真剣なその仕草に好奇心が勝つ。――どこに連れて行くつもりなんだ?
骨塚の影を回り込むと、岩の裂け目のような横穴が現れた。普段なら見落としてしまうだろう。骨の山に埋もれるように口を開け、昼なお暗い洞穴の奥へと続いている。俺は思わず目を細めた。
「こんなところに……?」
まるで秘密の抜け道だ。
先導するガミザミはためらいもなく暗がりに潜り込み、俺のハサミをぐいぐいと引き続ける。足元の岩肌は湿り気を帯び、わずかな水滴の音が奥から響いてくる。何だか妙に胸がざわつく――恐怖ではなく、好奇心と少しの疑念。
やがて洞穴は広間に変わり、目の前に並ぶ光景に俺は思わず目を見開いた。
岩棚にずらりと並ぶ、数々の頭骨。
それはただの骨ではなく、まるで誰かが丹念に集め、飾り立てた“コレクション”だった。
鋭い嘴と王冠のような棘を残したリオレウスの巨大な頭骨。
顎の牙が鈍く光るドスファンゴの頭骨――俺の洞穴に転がるものよりもずっと古く、乾いた色をしている。
眼窩の奥が空洞を映す、ねじれた形のゲリョスの頭骨。
他にも見覚えのない小型モンスターの骨が数えきれないほど。
「おいおい……お前、よくこんなもの集めたな……」
呆れを通り越して、感心の声が漏れる。自分より小柄なくせに、この収集癖と腕力は一体どこから来るのか。
唖然としている俺の背後に回り込むと、ガミザミは岩棚から一つの頭骨を抱え、俺の背中に押し当てた。
カコン、と乾いた音が響く。
……どうやら試しているらしい。俺に似合うヤドを。
しかし、リオレウスの頭骨はあまりにも大きすぎて、背中からずり落ちた。
次に持ってきたのはケルビの小さな頭骨。だがこれは逆に小さすぎて、甲殻の隙間をかすめて落ちてしまう。俺は思わず「いやそれは無理だろ」と言いたくなるが、熱心なその姿に言葉を飲み込む。
次々と取り替えられ、背中にカポッ、ガコッと音が鳴る。まるで着せ替え人形にされている気分だ。
だが――やがて程よい大きさの頭骨が背中に収まると、ガミザミは「これだ」と言わんばかりに甲殻を鳴らし、満足げに俺を一瞥した。
そのまま俺を洞穴の外へと押し出すと、くるりと背を向けた。
どうやら、これで“作業完了”ということらしい。再び頭骨を探しに行くのだろう。
「……さんきゅー!」
俺は思わず声を張り上げ、ハサミを振り上げてバンザイポーズ。
小さな影は立ち去りながらも、後ろを振り向きざまに同じバンザイを返してきた。
……可笑しなやつだ。本当に。
今度出会ったときは、何か肉でも分けてやるか。そう思いながら、俺は新しいヤドの感触を背中に確かめた。
このガミザミは主人公より少し小柄。会うたびにバンザイポーズで挨拶してくるどこか愛嬌のある存在。頭骨を集めてコレクションするのが趣味で、自分の住処の岩棚にきれいに並べている。小柄なのに、大きな頭骨を運ぶ力を持ち、主人公よりも力持ち