ゴツゴツとした岩場を、俺はゆっくり歩く。
足元から立ち上る熱気が、じわじわと甲殻の内側まで染み込んでくる。
「うーん……どこだ……?」
視線を左右に走らせる。
だが、見慣れた“あの光景”はどこにもない。
「ゲームのマップと全然違うな……。ワールド基準のわかりやすい鉱脈、あの青白く光って『どうぞ掘ってください』って主張してくる親切設計は無い、と」
岩壁はただの岩。
色も形も似たようなものばかりで、目印になりそうなものがない。
「じゃあやはりポータブル基準かな? 壁の亀裂が正解パターンか?」
指先で岩をなぞる。ひび割れ、凹凸、黒ずみ。
それっぽい場所を片っ端から確認していく。
「ワールドであったヒンヤリダケとか生えてねぇかなぁ……。あれ一本でだいぶ違うんだが」
もちろん、そんな都合のいいキノコは見当たらない。
あるのは熱風と、焦げた石の匂いだけ。カサ……と小石を踏む音が、やけに大きく響く。
「まぁ外周だしな・・内部みたいなレア鉱脈は期待できんか」
ぼやきつつ岩壁沿いに進んでいると――
「・・・ん?」
視界の端の岩、縦に走る細い亀裂。
ただの傷にしては、奥がわずかに黒く沈んでいる。
「おっ・・これ、どうだ?」
少し覗いて確認してみると、内側に違う色味が見えた。
赤黒い岩の中に、金属質の光がちらりと瞬く。
「お?これはビンゴ、か?」
胸の奥がわずかに高鳴る。
俺はヤドから丸みを帯びた骨製の容器を取り出した。
「爆発骨瓶・・作ったはいいが、使う機会なかったんだよなぁ・・」
亀裂は細い。
だが中に鉱層があるなら、外側を吹き飛ばせば露出するはず。
少し距離を取る。そして腕を振りかぶる。
「頼むぞ!俺の採掘兵器!どりゃあ!!」
投擲!
骨瓶は弧を描き、亀裂の根元にぶつかる。
ガツン、と硬い衝突音。
次の瞬間。
ドゴンッ!!
乾いた爆音が火山外周に響き、亀裂周辺が弾け飛ぶ。
粉塵が舞い、破片が転がる。
「おぉ……!」
煙がゆっくりと晴れていく。
広がった裂け目の奥で、鈍い光がいくつも瞬いていた。
近づき、崩れた岩片をどける。
露出したのは、青みを帯びた鉱石と、くすんだ緑色の塊。
ひとつ引き抜く。
「この青は・・マカライトだな」
「で、こっちがドラグライト」
どちらも下位帯の定番。
派手な希少色はない。
「外周だしなぁ・・」
内部みたいな妖しい輝きは無いが、量は悪くない。
基礎強化には十分だ。
そのとき、奥に違う色が混じっているのに気づく。
「……ん?」
淡い白っぽい色。
丸みを帯びた小さな塊。
「護石か」
慎重に削り出す。
カリ、カリ、と岩が剥がれ、ぽろりと二つ転がり落ちた。
拾い上げる。
内部に走る細かな紋様。
だが、手に持っても特別な熱や冷気は感じない。
「……特にクセはなさそうだな。色的にレアリティが一番低いやつだし・・・」
火山で採れる護石だ。
もしかしたら、対火耐性が付いているものもあるかもしれない。内部へ行くなら、それはかなりありがたい。
「問題は……鑑定方法を知らんことだが」
じっと眺めるが、分かるのは“それっぽい”かいうことだけ。
具体的な効果までは読めない。
「まぁいいか」
それっぽい護石をいくつか持って内部に入れば、何かしら反応があるかもしれない。
熱の通りが違うとか、殻の感触が変わるとか。
試すのが一番早い。
今出た二つは、どうも当たりの気配はない。
だが外れとも言い切れない。
「まぁ何かしらの効果はあるだろうし、とりあえず確保だな」
裂け目の奥には、まだわずかに光が残っている。
もう一度爆破すれば、もう少し出るかもしれない。
運が良ければ、対火付きが混じる可能性もある。
俺はヤドの中の骨瓶に視線を落とした。
「……内部に行く前に、もう少し粘るか?」
熱風が吹き抜け、広がった裂け目の奥を揺らす。
準備を整えてから挑む。
焦る理由はない。