火山内部へ踏み込んでしばらく。
熱気にはまだ慣れきらないが、前みたいに入った瞬間ゆでガニは回避できている。これなら探索くらいはできそうだ。
赤黒い岩肌を眺めながら歩いていると、不意に視界の端へ“不自然な線”が映り込んだ。
「おっ!」
縦に走る細い亀裂。
「早速亀裂みっけ!」
思わずハサミがカチカチ鳴る。
「頼むぞぉ〜? レア鉱石出てくれよなぁ!」
暑さも忘れて駆け寄る。覗き込めば、暗い裂け目の奥でキラリと何かが反射した。
やっぱりガミザミの目はこういうのに向いてるらしい。普通の岩肌に紛れてても、鉱石の光だけ妙に目につく。
「へへっ、これは当たりっぽいな」
ヤドの隙間から爆破骨瓶を取り出し、慣れた手つきで亀裂の奥へ放り込む。
数歩下がる。
「それじゃ採掘ターイムっと」
――ドゴンッ!!
爆音が火山内部へ響き、岩壁が弾け飛ぶ。
「おぉっ!」
転がり落ちてきた鉱石へ飛びつく。
青みがかった鉱石。
緑色の筋が入った鉱石。
「マカライトにドラグライト……まぁまずはこんなもんか」
とりあえず口へ放り込む。
ゴリ、ゴリ、と砕きながら飲み込めば、身体の奥へ熱と重みがじわりと広がっていく。
「んで次は――」
再び爆破。
砕けた岩の奥から、今度は少し色味の違う鉱石が転がり出た。
「お?」
紫がかった鉱石を持ち上げる。
「なんか紫っぽいなぁ……たぶんカブレライト鉱石か?」
さらにその奥には、淡くピンク色をした鉱石。
「こっちはユニオン鉱石かな?」
思わずハサミを鳴らす。
「うわっ、上位鉱石ゴロゴロ出るじゃん! 火山すげぇ!」
もちろん食う。
ガリッ、と噛み砕けば、今までの鉱石よりも濃い力が身体へ流れ込んでくる感覚があった。
「んぐ……おぉ、なんか効いてる感じするな……!」
調子に乗ってさらに採掘。
爆発。
採掘。
捕食。
ただ黙々と繰り返していく。
すると――
「……ん?」
転がり出た鉱石の中に、妙に赤いものが混ざっていた。
拾い上げた瞬間、ハサミ越しでも伝わる熱。
「うおっ、アッツ!?」
赤熱した鉱石。内部がじんわり赤く光っている。
「これ……紅蓮石か?」
持ってるだけで熱い。
だがここまで来て、食わないという選択肢はない。
「……い、いったれ!」
意を決して口へ放り込む。
――瞬間。
「ッッッッッ!?!?!?」
熱い。
とにかく熱い。
小籠包の肉汁を延々と口の中へ流し込まれてるみたいな灼熱感が、口内いっぱいへ広がる。
「アッッッヅ!!! 待っ、熱ッ!? 熱ぅぅぅぅ!!」
その場をぐるぐる回る。
吐き出したい。
だがなんか悔しい。
「んぐっ……ぐぅぅぅぅ……!」
涙目になりながら、なんとか飲み込む。
身体の奥へ、ドロリとした熱が落ちていった。
「はぁっ……はぁっ……」
しばらく硬直。
「……食い物じゃねぇだろあれ」
口の中がまだヒリヒリしている。
だが不思議と、身体の芯はさらに熱を帯び、力が増したような感覚があった。
「……まぁ、強くなってるならヨシ!」
気を取り直して、再び採掘へ戻る。
爆破骨瓶を投げ込み、岩を砕き、鉱石を拾って食う。
ひたすらその繰り返し。
そんな時だった。
ゴロ……ゴロゴロ……
「……ん?」
妙な音が響いた。
岩が崩れる音じゃない。
もっと重く、何かが転がるような音。
「なんだぁ? この音……」
ハサミを止め、音のした方向を見る。
すると――
「……は?」
赤い球体が転がってきていた。
ゴロゴロゴロゴロ、と勢いよくこちらへ近づいてくる。
「な、なんだぁ!?」
一瞬困惑する。
だがすぐ、その特徴的すぎる姿へ見覚えが繋がった。
「あっ、もしかしてラングロトラか!?」
思わず叫ぶ。
「あの爆丸みてーなヤツ!!」
丸まったまま転がる赤色の身体。
確かに火山にもいた。
「うわ懐かし……いやゲームの記憶だけど!」
ラングロトラは転がるのを止め、勢いよく身体を起こした。
ずん、と後ろ脚で立ち上がる。
短い前脚を振り上げ、腹を見せつけるように身体を反らす
「おぉ……なんか威嚇してる……」
ゲームでも見たことある動きだ。
妙に偉そうというか、自己主張が激しい。
だが――
「……ん?」
ふと違和感。
「なんかあいつ、小さくね?」
もちろん俺よりはデカい。
だが、記憶の中のラングロトラより圧迫感が薄い。
「いや……違う?」
少し考える。
そして、ふと思い至った。
「あ」
カチン、とハサミが鳴る。
「もしかして、あいつが小さいんじゃなくて……」
視線を自分の身体へ落とす。
「俺がデカくなってんのか?」
脱皮。
鉱石の捕食。
何度もの成長。
考えてみれば当たり前だった。
「そういやドスランポスとかドスイーオス見た時も、最初“普通のランポスか?”って思ったんだよな……」
火山のガミザミたちも、心なしか小さく見えた。
「おぉ……ちゃんと成長してたんだな俺……」
ちょっと感動する。
その場で妙に納得しながら頷いていると――
ベチャッ!!
「うぉっ!?」
黄色く粘ついた液体が、放物線を描いて飛んできた。
慌てて横へ飛び退く。
液体はさっきまで俺がいた地面へ落ち、じゅるりと糸を引いた。
「うわっ、麻痺液!?」
ツンと鼻を刺すような妙な臭いが漂う。
「きったねぇな!? うへぇ……!」
思わず顔をしかめる。
ラングロトラは低く唸りながら、前脚で地面を掻いた。
どうやら完全に戦闘モードらしい。
「いや待て待て、今ちょっと感動してる最中だったんだけど!?」
当然、そんな事情は通じない。
ラングロトラが再び身体を丸める。
「あ、これ絶対来るやつ――」
ゴロォッ!!!!
「うわ来たぁぁぁっ!?」