ゴロォッ!!!!
「うわ来たぁぁぁっ!?」
――と、見せかけて。
カチン、とハサミを鳴らす。
「……ってな!」
迫る赤い弾丸を正面から見据える。
「お前ごときには負けんよ!」
転がるラングロトラ。だが俺は知っている。ゲームで何度も見た。転がり中のあいつは背中側が柔らかくなる。そして、なぜか近接攻撃がよく通る。
「だったら狙う場所は決まってるよなぁ!」
迫る巨体。
俺はその場から動かない。
ギリギリまで引き付ける。
そして――
「喰らえやぁっ!!」
ガギィッ!!
突き出したハサミが、転がってきたラングロトラの背中へ深々と突き刺さった。確かな手応え。硬い甲殻じゃない。
肉へ食い込む感触。
「おっ!?」
ラングロトラ自身の勢いも加わり、衝撃がハサミの根元まで伝わってくる。
ビリビリと痺れるような反動。
「いてててっ!?」
だが効いている。明らかに効いている。
ラングロトラは予想外の反撃に悲鳴を上げ、そのまま吹き飛ばされた。
ゴロゴロと地面を転がり、盛大にひっくり返る。
「よっしゃ!」
チャンスだ。見逃す理由はない。
俺は全力で駆け出した。
転倒したラングロトラとの距離を一気に詰める。
その最中。
口の奥で毒腺が熱を持った。
「さぁて!こいつの出番だなぁ!」
カッ、と口を開く。
紫色の毒液を吐き出し、左右のハサミへ擦り付ける。
ぬらりと光る紫。
俺が鍛え続けてきた、もう一つの武器だ。
「たっぷり味わってけよぉ!」
転倒したラングロトラへ飛びかかる。
「ほらほらほらぁっ!!」
ズブッ!ズブッ!ズブッ!
柔らかい腹へ、毒をまとったハサミを次々と突き立てる。
ラングロトラが苦悶の声を上げる。
血が飛び散る。
「おらおらぁ!!」
さらに追撃――
しかけたところで。
ラングロトラの身体が大きく動いた。
「おっとと!」
俺は即座に飛び退く。
「深追いはしないよぉ!」
起き上がりモーション。
ゲームで何度も見た。
欲張ったやつが反撃を食らうやつだ。
「学習してるんでね!」
距離を取る。そして案の定。
ラングロトラは立ち上がった。
傷だらけの身体を震わせながら怒りを隠そうともせず。
後ろ脚で立ち上がり、両前脚を掲げる。
あの特徴的な威嚇だ。
「おぉ?」
思わず笑う。
「何だ何だぁ?」
カチカチとハサミを鳴らす。
「自慢の転がりを真正面から叩き潰されて激おこですかぁ〜?」
完全に煽りである。
当然。
ラングロトラも面白くない。
ギャォッ!!
怒声と共に――
ビュンッ!!
「うおっ!」
長い舌が鞭のように飛んできた。
だが。
「危ないねぇ!」
横へ飛ぶ。舌は空を切った。
「そのモーションも知ってんだよなぁ!」
ラングロトラがさらに怒る。
地面を掻く。頭が下がる。
口が開く。
「ん?」
見覚えのある姿勢。
「あっ」
黄色い麻痺液が喉の奥へ溜まっていく。
「麻痺液か」
なら――
行く。
俺は地面を蹴った。
「残念でしたぁ!!」
吐く前に懐へ飛び込む。
ラングロトラの目が見開かれる。
もう遅い。
紫色の毒をまとったハサミが迫る。
「もう一度だぁっ!!」
ズブッ!!
脇腹へ深々と突き刺さる。
悲鳴が火山へ響いた。
毒が傷口へ流れ込む。
ラングロトラの身体が大きく震える。
「おっ、効いてる効いてる!」
思わず笑みが漏れた。
だが油断はしない。
まだ終わっちゃいない。
むしろここからが本番だ。