しばらくして――。
ゴロゴロと響いていた轟音もすっかり遠ざかり、火山内部には再び静けさが戻っていた。
「……もう大丈夫、かな?」
岩陰からそろーっと顔を出す。
辺りを見回す。
ウラガンキンの姿はもうない。
俺は警戒しながら、さっきラングロトラが吹き飛ばされた場所へ近づいていった。
「ありゃりゃ……」
思わず苦笑いが漏れる。
「甲殻が散らばってらぁ……」
赤い甲殻はあちこちへ砕け散り、岩肌に突き刺さっているものまである。
さっきまで威勢よく転がっていた面影なんてどこにもない。
「だから後ろ見ろって言ったのに……」
思わず手を合わせたくなる。
……いや、そこまではしないけど。
さらに近づく。
「うへぇ……」
鼻をしかめた。
潰れた内臓が飛び出し、熱気でじわじわと焼け始めている。
血の匂い。
焦げた肉の匂い。
そして内臓特有の生臭さと麻痺毒が混ざった匂い。
全部が混ざって鼻をぶん殴ってきた。
「ひっでぇ匂いだなぁ……」
思わず後ずさる。
だが。
「……まぁ。」
カチン、とハサミを鳴らした。
「もったいないし、今日の飯だな。」
火山じゃ獲物は貴重だ。
食える時に食っとかないと損である。
周囲を警戒しながら、ラングロトラの肉へハサミを立てる。
ズブリ。
切り分けた肉を口へ運ぶ。
もぐ。
もぐもぐ。
「…………」
もう一口。
もぐ。
「うーん。」
首を傾げる。
「あんまり美味くねぇなぁ……」
期待していた味ではない。
「虫ばっか食ってるやつだからかねぇ?」
肉質もどこか筋張っていて、独特の臭みがある。
不味くはない。
だが、美味くもない。
「まぁ、贅沢言える立場じゃないか。」
そう呟きながら、黙々と食べ続ける。
火山に響くのは、俺が甲殻を噛み砕く音だけだった。
しばらくして。
「ふぅ……」
ほとんど食べ尽くしたところで、ラングロトラの頭へ目を向ける。
「うーん。」
少し考える。
「頭骨は……小さいな。」
今の俺のヤドに被せても、たぶん見栄えはしない。
小さすぎて、背負ったら確実に急所がはみ出る。
「それなら……」
散らばった赤い甲殻を見渡す。
「こっちだけ貰っていくか。」
丈夫そうな破片を拾い集める。
「前みたいに粘着草でヤドに貼り付ければ、防御力も少しは上がるだろ。」
大きめの破片。
形のいい骨。
使えそうな甲殻。
それらを次々とヤドの中へしまい込んでいく。
「よし。」
荷物も増えた。
腹も満たされた。
俺は満足そうに大きく息を吐く。
「ふぅ~……食った食った。」
思ったより量があった。
「意外とペロリといけたな。」
ハサミを軽く鳴らし、周囲を見渡す。
いつまでもこんな開けた場所にいるわけにはいかない。
「さて、と。」
ヤドを軽く叩く。
「どっか安全な住処でも見つけますか。」
そこで拾った甲殻を貼り付けて、ヤドも少しずつ強化していく。
火山で生き抜くなら、それくらいはしておかないと話にならない。
「仮拠点探し、開始だな。」
そう呟くと、俺は熱気の立ち込める火山をゆっくりと歩き始めた。