ラングロトラを食べ終えたあと、俺は火山の中を歩き回っていた。
「うーん……。」
左右を見回しながら小さく唸る。
「どっか住めそうな場所、ないかねぇ。」
採掘で手に入れた鉱石や護石も増えてきたし、ラングロトラの甲殻まで背負って歩くのもそろそろ面倒になってきた。
せっかく火山まで来たんだ。
しばらく腰を据えられる場所くらい欲しい。
そんなことを考えながら歩いていると、不自然に岩壁がえぐれた場所が目に入った。
「……お?」
思わず足を止める。
ぽっかりと口を開けた横穴。
入口はそれほど広くないが、俺がヤドを背負ったままでも十分通れそうだ。
「おー、手頃じゃん。」
中を覗き込み、ゆっくり奥へ進む。
入口こそ狭かったが、中は思った以上に広い。
天井には裂け目があり、そこから差し込む光が洞窟の中をほんのり照らしている。
隅には灰色っぽい草が生え、その中に少しだけ緑色の草も混じっていた。
「へぇ……。」
思わず辺りを見回す。
「火山なのに、こんな場所もあるんだな。」
ハサミを軽く鳴らしながら一周する。
「これなら大型モンスターも入ってこれないだろ。」
「よし。しばらくここを拠点にするか。」
ヤドを下ろし、中から鉱石や護石、ラングロトラの甲殻を一つずつ取り出して並べていく。
荷物を出し終える頃には、ヤドもすっかり軽くなっていた。
「ふぅ……。」
ようやく一息つき、近くに生えていた草へ腰を下ろす。
──ぬちゃっ。
「……ん?」
ふと左のハサミに、何かが触れた。
ねっとりとした、嫌な感触。
「うわっ! きったな!」
反射的にハサミをブンブンと振り回す。
「うぇぇ……なんだこれ。モンスターのフンでもあったのかぁ?」
だが、なかなか落ちない。
恐る恐る近づけて見てみる。
緑色の、ねっとりとした粘つく物質。
「…………。」
嫌な予感が、背筋を走る。
その緑の粘つく物資の色がオレンジ色に変わる
「……いや。」
「待て。」
「これって……。」
そう呟いただ瞬間――
ドゴォォォンッ!!
「ぎゃあああぁぁぁっ!!」
爆風に吹き飛ばされ、岩肌を何度も転がる。
「いってぇぇぇ!! なんでぇ!? なんでこんなところブラキの粘菌があんだよぉぉ!!」
左のハサミを押さえ、痛みにのたうち回る。
必死にヤドを探り、回復薬を引っ張り出して傷口へぶっかける。
「はぁ……はぁ……。」
焼けるような痛みは少しずつ引いていったが、左のハサミには細かな亀裂が入り、その隙間には緑色の粘菌がまだねっとりと入り込んでいた。
「ひぇぇ……これ絶対ダメなやつじゃん……。」
思わず振り払おうとして、慌てて止める。
「いや待て……また爆発したら笑えん……。」
恐る恐る、爆発した場所へ視線を向ける。
「てか……なんでこんなところに粘菌が……。」
そう思い粘菌のあった場所に目を向けてみると、そこには一匹の生き物が横たわっていた。
独特の濃い青色の身体。
俺と同じくらいの大きさ。
片方の腕は半ば砕け、いびつに歪んでいる。
「…………。」
思考が止まる。
「……は?」
目を疑った。
「まさか……。」
喉が、ごくりと鳴る。
「ブラキディオス……!」
その小さな身体を見つめたまま、思わず呟く。
「……の、ベイビー?」