立派なショウグンギザミ目指します!   作:ルミナリー

62 / 62
ガミザミとブラキベイビー

 

俺はその場で固まったまま、小さく息を呑んだ。

 

「……ブラキディオスの、ベイビー?」

 

 目の前に横たわる小さな身体を、まじまじと見つめる。

 ゲームでは何度も見てきた。

 だが、こんな幼体なんて見たこともない。

 特徴的なリーゼントもまだ小さい。

 

「ていうか……なんでこんなところに?」

 

 思わず周囲を見回す。

 物音はしない。

 親らしき気配もない。

 そもそもここじゃあ狭すぎて入ってこれないし。

 

「いやいや……。」

 

 警戒しながら一歩、また一歩と近づいていく。

 

「……生きてんのか?」

 

 恐る恐るハサミの先で肩をつついてみる。

 反応はない。

 だが、じっと見つめていると、小さく胸が上下していた。

 

「……生き、てるのか。」

 

 苦しそうではあるが、確かに息をしている。

 その姿を見ているうちに、頭の片隅にぼんやりとゲーム外の設定資料で読んだ記憶が浮かんできた。

 

「そういえば……ブラキって、生まれた時から粘菌との共生が始まるんだっけ。」

 

 視線は自然と砕けた前脚へ向く。

 いびつに割れた甲殻。

 まだ成長しきっていない柔らかな外殻。

 

「確か……幼いうちは外殻がまだ柔らかくて、自分の爆破に耐えきれず死ぬ個体も多い、とか何とか。」

 

 だからなのか。

 砕けた腕の周りには、緑色の粘菌がこびり付いていた。

 

「……でも。」

 

 俺はもう一度辺りを見回す。

 

「親はどこ行った?」

 

 子どもがいるなら、普通は近くにいてもおかしくない。

 

「もう助からないと思って置いてったのか?」

 

「それとも、ブラキって放任主義だったりするのか?」

 

「……うーん。」

 

 考えても答えは出ない。

 目の前のベイビーは、小さく苦しそうな呼吸を繰り返すばかりだった。

 

「えぇ……どうしようかなぁ、これ。」

 

 頭を抱える。

 

「ここで仕留めちまうのが、一番安全っちゃ安全なんだろうけど……。」

 

 ちらりとベイビーを見る。

 

「でも、もし親がいたらさ。」

 

「『お前、うちの子やったな?』って匂いでバレそうじゃね?」

 

 想像しただけで背筋が寒くなる。

 

「いや、それ以前に……。」

 

 もう一度、小さな身体を見る。

 

「モンスターとはいえ、ベイビーだしなぁ。」

 

「襲ってくるなら返り討ちにするけどさ……。」

 

「こんな衰弱してる相手にトドメ刺すのは、なんか気が引けるんだよなぁ……。」

 

 腕を組み、うーん、うーん、と唸る。

 考えれば考えるほど、わからなくなる。

 やがて俺は、大きくため息を吐いた。

 

「あぁーーっ! もう知らねっ!」

 

 勢いよくヤドを開ける。

 中から回復薬を何本か取り出し、ベイビーの砕けた腕や傷口へ惜しみなく振りかけていく。

 

「もう後のことは知らん!! 助けてやるからな!」

 

「だから目ぇ覚ましたら襲うなよ!? 頼むぞ!? マジで!」

 

 回復薬が傷へ染み込むたび、小さな身体がぴくり、と震える。

 飲めそうな分は口元へ流し込んでやる。

 ベイビーは抵抗する力も残っていないのか、されるがままになっていた。

 

 薄く開いた瞳が、ぼんやりと俺を映す。

 敵を見るような目ではなかった。

 

 ただ、不思議そうに。

 あるいは安心したように。

 

 そんな曖昧な視線を向けたまま、ゆっくりと瞼が閉じていく。

 苦しそうだった呼吸は少しずつ落ち着き、やがて静かな寝息へと変わっていった。

 

「……寝た、のか。」

 

 俺はその場にしゃがみ込んだまま、小さく頭を掻く。

 

「ったく……面倒なもんに出会しちまったなぁ……。」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生ラージャンぶらり旅(作者:黒木箱 末宝)(原作:モンスターハンター)

 子供の頃に読んだ漫画の影響でサバイバル技術に興味を惹かれて三十年の少し。キャンプ中の事故によりこの世を去った俺は、気がついたらラージャンに転生していた。▼ 未知の現象によって転生し、未知だが馴染みあるモンスターハンターの世界に転生した俺は、ラージャンに転生した幸福を噛み締めながら、今日も焚き火を眺めていた。▼ これはラージャンに転生した男が、チートも無しに…


総合評価:3081/評価:8.63/連載:13話/更新日時:2026年02月28日(土) 19:11 小説情報

レジギガスで行くアリウス生活物語(作者:強酸性のTKG)(原作:ブルーアーカイブ)

目が覚めたらレジギガスになっていた主人公がアリウスで頑張るお話▼レジワロス要素もアリ


総合評価:1638/評価:8.03/連載:22話/更新日時:2026年08月07日(金) 02:00 小説情報

マガメスになった元ヒトが怨嗟を慰める話(作者:バンバ)(原作:モンスターハンター)

 怨嗟を慰める。▼ 響めく悲嘆を慰める。▼ 白き虎は、悲嘆に狂う雄を、慰める。▼ 完結に伴い、匿名を解除しました。(童貞マガド)


総合評価:9181/評価:8.98/短編:8話/更新日時:2025年04月14日(月) 23:44 小説情報

デッッッッカ……グラマトンのTS少女によるブルーアーカイブ(作者:冴月冴月)(原作:ブルーアーカイブ)

 デッッッッカ!(身長が)▼ しっっっっろ!(肌が)▼ うっっっっす!(身体が)▼ なデカグラボディに転生した奴の話。


総合評価:1339/評価:8.4/短編:5話/更新日時:2026年04月25日(土) 17:10 小説情報

進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(作者:感謝君)(原作:進撃の巨人)

信じられないと思うが聞いてくれ ▼俺は昨日までしがない大学生としてベッドに転がりながらいつも通り動画を見て惰眠を貪っていたんだ▼別にトラックに轢かれたとか、手違いで殺しちゃったから転生させるね!おじいさんにあった訳でもない▼気付けば俺はだだっ広い平原の真ん中で全裸で突っ立っていて▼鋼のような肉体に転生していたんだ▼……進撃の巨人の世界に……▼


総合評価:5859/評価:7.27/連載:223話/更新日時:2026年08月07日(金) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>