立派なショウグンギザミ目指します!   作:ルミナリー

65 / 67
ガミガミの粘菌考察

 

 さっぱりしたのか、ベイビーは満足そうに水辺から上がってきた。

 身体についた水をぶるぶると振り払うと、そのままこちらへ戻ってくる。

 

「うーむ……」

 

「どうやって育てるか、だよなぁ……」

 

 ブラキの子育てなんて、もちろん知らない。

 粘菌の扱いだってしらないし。

 

「うーん……」

 

 ベイビーを見る。

 ベイビーも不思議そうに俺を見る。

 

「…………うーん」

 

 やっぱり何も思いつかない。

 そもそも俺自身、ブラキディオスじゃない。

 ただの蟹だし……。

 

 考えても答えは出てこない。

 そんな中、ふと粘菌での今までのことを考える。

 

 緑色の粘菌。

 俺のハサミに残っているものも、今は緑色のままだ。

 だが、あのときは――。

 

「腕を舐めてるだけじゃ、確か爆発しなかったよな?」

 

 ゲームで見たブラキディオスの動きを思い返す。

 舐める。

 そして殴る。

 その間に粘菌の色が変わっていく。

 

「……。」

 

 もしかすると。

 緑色はまだ眠っている状態なのかもしれない。

 そこへ唾液が加わることで活性化して、衝撃を受ければ――。

 

「爆発する……のか?」

 

 仮説。

 ただの思いつきだ。

 

「まぁとりあえずこれ……試してみるか?」

 

 俺は自分の身体を少し見下ろした。

 昨日からベイビーに散々舐められたせいで、ヤドの内側にはブラキの唾液が染み込んでいる。

 

 なら、それを使えば――。

 

「よし」

 

 少しだけ覚悟を決める。

 左のハサミをヤドの隙間へ突っ込んだ。

 

「うわ……」

 

 なんとも言えない感触が伝わってくる。

 

「やっぱ自分からやると変な感じだな、これ」

 

 それでも気にせず、少し動かす。

 染み込んだ唾液を粘菌へ着けてみる。

 

「……これでいいのか?」

 

 ハサミを引き抜いて、じっと眺める。

 緑色。

 

「見た目は何も変わらんなぁ」

 

 ハサミを振ってみたり、角度を変えてみたりする。

 

「うーん……」

 

 やっぱりわからない。

 

「……まあ、試してみるしかないか」

 

 俺は近くの岩壁へ向き直った。

 もし本当に活性化しているなら、衝撃を与えれば何か起きるはずだ。

 逆に何も起きなければ、また考え直せばいい。

 

「……よし」

 

 ハサミを構える。

 

「おらっ!」

 

 ガチンッ!

 岩壁へ突き刺した。

 

「…………。」

 

 何も起こらない。

 

「うーむ……?」

 

 俺はハサミを見る。

 緑色。

 

「やっぱ違うのか?」

 

 少し肩を落とす。

 ところが――。

 

「……ん?」

 

 緑色だった粘菌が、ほんの少し色を変えている。

 

「お?」

 

 じわじわと色が変わっていく。

 緑から、オレンジへ。

 

「……お、おい」

 

 さらに濃くなっていく。

 そして――赤。

 

 嫌な予感がした。

 

「これ……昨日見たやつ――」

 

 ドゴォォォンッ!!

 

「だぁぁぁぁぁっ!!」

 

 爆発。

 身体ごと吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がる。

 

「いってぇぇぇぇ!!」

 

「爆破したぁぁぁ!!」

 

 やっぱり痛い。

 わかっていたつもりだったが、実際に自分の身体で食らうと洒落にならないなこれ。

 

「くっそぉ……!」

 

 慌てて回復薬を取り出し、身体へかける。

 しばらくして痛みが引いてくる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 俺は左ハサミを眺めた。

 緑からオレンジ、そして赤。

 そして爆発。

 

「……ちゃんと使えるじゃねぇか」

 

 思わず苦笑する。

 痛い。

 めちゃくちゃ痛い。

 それでも、これが使えるなら戦い方は変わる。

 

「……練習するしかねぇな」

 

 そう呟いて、立ち上がった。

 その直後だった。

 

 ドゴォォォンッ!!

 

「――!?」

 

 今度は、さっきとは違う方向から爆発音が響いた。

 

「なんだ!?」

 

 俺は慌てて振り返る。

 そして――目を見開いた。

 爆風に吹き飛ばされ、宙を舞う小さな青い身体。

 

「…………え?」

 

「お、おい……。」

 

 その身体が地面へ落ちていく。

 

「ベイビィィーーッ!?」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。