「あ、もしかして……?」
そう呟いたところで、俺は岩をじっと見つめた。
いや、待て。
なんだろう、この既視感。動く岩。
しかも、さっきから妙に気になるあの特徴的な背中。
「うーん……?」
頭の中で記憶を掘り返す。
そして――。
「……そうか!」
ポンッとハサミを鳴らす。
「バサルだ! バサルモス!」
思わず声が大きくなった。
「うわぁっ! 懐かしい! 2G以来だ!」
間違いない。
あの岩にしか見えない擬態。
知らない奴が見れば、ただの岩にしか見えないだろう。
だが俺には欺けんぞぅ?
「ふっふっふ……残念だったな、バサルモス。俺はその擬態を知っている!」
岩は当然、何も答えない。
「……まあ、岩のフリしてるんだから答えないよな」
改めてバサルモスらしき岩を見る。
さて、どうするか。
正直、今まではウロコトルやドスファンゴみたいな小、中型寄りの相手ばかりだった。
もちろん、それだけでも十分戦いにはなっている。
だが――そろそろ大型ともやり合ってみたい。
「やっちゃう?」
俺は自分のハサミを見る。
これまで何度も脱皮して、鉱石も食べて、粘菌まで使えるようになった。
自分が今どのくらい強くなっているのか。
それを確かめる意味でも、そろそろ挑んでみるべきだろう。
「強くなるためにも、ある程度は挑まんとなぁ」
それに――。
俺は後ろを振り返る。
「今の俺には相棒もいるしな」
少し離れたところでは、ベイビーが座って休んでいる。
「おーい! ベイビー!」
「……?」
呼ばれて、ベイビーが顔を上げる。
「仕事の時間だぞぅ!」
「ガァ?」
「俺もやるけど!」
そう言うと、ベイビーは何事かと立ち上がった。
トコトコとこちらへ近づいてくる。
「さぁ、やつを仕留めるぞ!」
俺は再び岩――いや、バサルモスへ視線を向ける。
「こいつも鉱石ばっか食ってるから、身体には色々と鉱石が染み出してるはず!」
「それに硬い甲殻のなかには肉が詰まってる!。一石二鳥ってやつだ!」
ベイビーは俺の言葉を聞いているのかいないのか、隣で首を傾げている。
「よし、行くぞ!」
俺たちはバサルモスの擬態している岩へ近づいていく。
ベイビーも俺の後ろについてくる。
たぶんこいつからすれば――。
……また岩殴るのか?
くらいにしか思っていないんだろう。
まあ、いつも岩壁を殴って爆破してるからな。
「さぁベイビー! いつも通り、ドカンとやっちゃって!」
「……ガァ?」
ベイビーが岩を見る。
それから俺を見る。
もう一度、岩を見る。
「ガァ……?」
「いいからいいから!」
俺が促すと、ベイビーは少し首を傾げながらも拳を構えた。
いつもの爆破訓練。
いつもの採掘。
そう思ったのだろう。
そして――。
「ガァッ!」
ドゴッ!
小さな拳が、擬態しているバサルモスの背中へ叩き込まれた。
緑色の粘菌が付着する。
「よし!」
次の瞬間。
ドゴォォンッ!!
爆発が岩場に響き渡った。
「おっ」
ゴゴゴゴ……!
地面に埋まっていた大きな身体が、ゆっくりと持ち上がっていく。
「おお……」
そして次の瞬間。
地面からバサルモスが勢いよく飛び出してきた。
「グォォォッ!」
突然目の前に現れた巨体に、ベイビーもびっくらこいたように後ろへバックステップする。
「ガァッ!?」
目を丸くしながら、バサルモスを見る。
そして俺を見る。
もう一度バサルモスを見る。
「……ガァ?」
明らかに、何こいつ……!?という顔をしている。
「まあ、初見はそうなるよなぁ」
俺は思わず苦笑する。
一方のバサルモスは、自分の擬態していたところをいきなり爆破されたことが気に入らないらしい。
身体を起こし、こちらへ向かって大きく威嚇する。
「グォォォォッ!」
「おお、怒ってる怒ってる」
ベイビーはそんなバサルモスと俺を交互に見ながら、まだ状況を理解できていない様子だった。
「大丈夫だ、ベイビー」
俺はハサミを構える。
「こいつは――ただの岩じゃない」
「今日の昼メシだ」
目の前の岩竜が、低く唸った。