バサルモスは低く唸り声を上げると、こちらへ身体を向けた。
「お、来るか?」
次の瞬間、ズシンッ、ズシンッと地面を揺らしながら突っ込んでくる。
「うぉっと! 早速突っ込んできやがったな!」
迫ってくる巨体を見ながら、俺はギリギリまで引きつける。
そして――。
「っと!」
身体を横へ滑らせるようにして回避。
バサルモスの巨体が、すぐ目の前を通り過ぎていった。
「ふむ……やはり鈍重よのぉ」
動きそのものはかなり遅い。
俺はそのまま距離を取りつつ、後ろを確認する。ベイビーも少し遅れて横へ飛び退いており、どうやら問題なく避けられたようだ。
「ベイビーも問題ないな」
しかし、バサルモスは巨体ゆえに、そう簡単には止まれない。
そのままズズズッと進み――
ドゴォンッ!!
「うおっ!」
頭から思いっきり岩壁へ突っ込んだ。
衝撃で地面までビリビリと揺れる。
「……」
さすがに今のは効いただろ。
そう思って見ていると、バサルモスはしばらく壁に頭を突っ込んだまま動かない。
やがて――
ブルブルブルッ。
「……おお」
何事もなかったかのように顔を振った。
「マジかよ……」
あれだけ勢いよくぶつかったってのに、平然としている。まぁ少しはふらついたと思うけど。
ゲームじゃ壁に激突なんてことはなかったけど、実際にこうして見ると、やっぱり重量級がぶつかるとすげぇな。
「伊達に岩みたいな身体してねぇなぁ……」
感心している場合じゃない。
バサルモスがこちらへ向き直る前に、一気に距離を詰める。
狙うのは無防備な背中。
「そこだぁ!」
ガキンッ!!
「くぅぅっ!!」
鋏を突き刺した瞬間、硬い感触と衝撃が腕まで伝わってきた。
「シビれるねぇ! やはり背中はまだ弾かれるか!」
すぐに鋏を引き抜き、そのまま横へ回り込む。
そして――腹へ向けて鋏を振り抜いた。
ザシュッ!
「おっ!」
背中とは明らかに違う手応え。
深々とまではいかないが、ちゃんと傷が入った。
「やっぱ腹だな!」
バサルモスが身体をひねる。
「っと!」
深追いはせず、すぐに距離を取った。
そのままベイビーへ声を飛ばす。
「ベイビー! あいつの弱点は腹だ! あそこをこう――」
ドカンッ!!
「……」
振り返るとベイビーがバサルモスの背中を殴っていた。
ボンッ!!
「…………」
「あぁ、そう言えばお前って爆破だから、硬いとか関係ないもんな……」
ベイビーはさらに一発。
ドンッ!
ボンッ!!
「こう思うと便利やなぁ、爆破って。肉質無視っていいよなぁ。」
壁を相手に散々練習してきた成果が、こんなところで発揮されている。
バサルモスの硬い身体だろうと、爆発そのものはしっかり通るらしい。
「よーし、その調子だベイビー!」
ベイビーはすっかり調子に乗り、さらに距離を詰めていく。
ドンッ!
ボンッ!
ドンッ!
ボンッ!
オラオラオラオラ!と殴りまくり爆破しまくってる
「おお……勢いあるなぁ」
だが、攻撃に夢中になりすぎるのはちょっと怖い。
そう思った矢先だった。
バサルモスが身体を大きく横へ振る。
「ベイビー! 避けろ!あの構えは横タックr・・・」
ゴォンッ!!
「ガァッ!?」
ベイビーの身体が横から弾き飛ばされた。
地面を何度か転がり、少し離れたところで止まる。
「おい!」
俺はすぐに駆け寄った。
ベイビーはしばらく伏せていたが、やがてムクリと起き上がる。
そしてバサルモスを睨みつけた。
「グルルル……!」
「いやいや、怒る前に自分の動き見ろって」
俺はベイビーの身体を軽く確認する。
大きな傷はなさそうだ。
「攻撃ばっかりじゃ駄目だって。相手の動きもちゃんと見ないとな」
ベイビーは俺を見ると吠える。
「グォッ!」
……まぁ、本人が大丈夫って言ってるならいいか。
「これに懲りたら、今後は相手の動きも見るんだぞ? もしハンターとか、別の大型モンスターに出会ったら、攻撃してる間にやられるからな」
ベイビーは少し不満そうに、
「グルル……」
と唸った。
「伝わったのか伝わってないのかわからんが」
「まぁいいさ。あいつは今後の練習だ」
俺は再びバサルモスへ視線を向ける。
「これから覚えていけばいい!」
まだベイビーは小さい。
こうやって実際に戦って、痛い目を見て、少しずつ覚えていけばいい。
俺だって、最初から何でもできたわけじゃないんだからな。
「さて、もう一回いくぞ、ベイビー!」
「グォォッ!」
二匹の声が、火山の岩場に響いた。