この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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前に投稿していた一切合切が…。
作者の手違いにより、完全削除してしまったので、リメイクとして改変込みでの再投稿を致します。
読んで頂いていた皆様には、多大なるご迷惑と、ご心配をお掛け致しました。

それでは、本編どうぞ。


プロローグ

「行ってきまーす!」

 

「気を付けて行くのよー!」

 

少年は家を出る前に、母に声をかけて学校に向かう。

 

「はぁ、今日も学校かぁ。しかも算数のテストかぁ。嫌だなぁ…。」

 

家からの道中、少年は学生ならば、誰もが感じる愚痴を吐きながら歩いていた。

ふと、海を見る。

少年の住む島は、あたりが海に囲われている。

よって、通学路からも海が見渡せる。

 

「こんな綺麗な海で、深海棲艦と艦娘が戦ってるっていうんだから、驚きだよなぁ。」

 

少年は何も考えずに、海を眺めていた。

いつの頃からか現れ始めた、"深海棲艦"。

それに対抗しうる存在、"艦娘"。

少年は、不思議と艦娘に親近感を持っていた。

 

「…()()()()()()なんだけどなぁ。」

 

そう呟いたのも束の間。

 

「あっ!学校!遅刻しちゃうじゃん!」

 

そう思い直し、通学路を歩き始めた瞬間。

 

 

 

――ウウウゥゥゥゥ!!

 

 

サイレンの音が島中に響き渡る。

それは、緊急車両などではなく。

 

「え?!深海棲艦の襲撃!?」

 

けたたましく鳴り響くサイレン音を耳に受けながら、家の方向に少年は駆け出す。

 

「ここからなら、家のほうが近い!」

 

このご時世である。

避難訓練等の成果で、少年の身体は反射的にすぐに動いた。

家に着けば、母は既に支度を終えていたところだった。

 

「急いで地下シェルターに向かうわよ!」

 

母に連れられ、地下通路のある裏山へと向かう。

 

「ここは安全って聞いていたのに…なぜ?」

 

母の疑問は拭いきれない。

それもそのはず。

この島は、"安全地帯"として作られたのだ。

 

「母さん…。」

 

「そうね、それよりも急がなくちゃね。」

 

息子の不安そうな顔を見て、母は余裕を装う。

 

(なんとしても、この子を生かさなきゃ。あの人達に顔向けできないもの。)

 

胸中こそ、穏やかでは無かった。

しかし、通路への入口が見えてくると。

 

「なんとかなりそうね。」

 

「う、うん。」

 

幾分か落ち着きを取り戻し。

二人が顔を見合わせた、その時。

 

 

――ドォォオオン!!

 

 

砲弾が直ぐ側で、轟音を響かせた。

 

「零!走って隠れなさい!」

 

「え?」

 

母の怒声に、零と呼ばれた少年は呆然としていた。

突然のことに、萎縮してしまっているのである。

母は更に怒鳴る。

 

「今のは砲撃よ!ぼーっとしてたら、死ぬわよ!」

 

「あ、うん!」

 

少年は、やっと我に返り、地下通路に繋がる入口の真反対を走る。

 

「入口は塞がれた…か。」

 

母も走り、物陰に隠れれば。

土砂で塞がれた入口が目に入った。

 

「どうしようか…。」

 

必死に思考を張り巡らせるも。

 

「それより、あの子との距離が出来てしまった…。」

 

母は、自身の正面で岩陰に隠れ、震えている零を見る。

 

「何があっても、あなただけは守るから。」

 

そんなことを呟いている間も、砲撃が止む気配はない。

 

「これじゃ、近づけないじゃない…!」

 

様子を伺うも、埒が明かない。

砲撃音と、焦りで苛立ちが募る。

 

「どうすれば…。」

 

そう見ていた時だった。

 

「え?」

 

母の目に映ったのは、自身の息子に迫る砲弾。

 

「なんでよ…!冗談じゃないわ…!」

 

母は、既に走り出していた。

全てがスローモーションに見えるような感覚。

そして叫ぶ。

 

「零!急いで屈んで!」

 

「え?」

 

「早く!!!!!」

 

そう言って息子の前に立つ。

 

 

――同時、自身の身体が吹き飛ぶ。

 

 

「か、母さん!」

 

零が母に駆け寄る。

 

「か、母さん…?」

 

零の眼前には。

 

「が…ゴフッ…!うぅ…。れ、零…。無事…?」

 

砲撃により、腹を抉り抜かれた母の姿があった。

 

「それよりも、母さんだよ!」

 

母は零の顔を見て、無理にでも微笑む。

 

「いいの…っぐ…あなたが…生きていれば…。さ…。は、早く…行きなさい…。」

 

「そ、そんな!い、嫌だよ!母さんを置いていくなんて!」

 

零は必死に母に寄り添おうとする。

しかし。

 

「あなたは…お父さんと一緒で…強いから…。大丈夫…ゴフッ…よ…。」

 

「で、でも!」

 

そう駄々を捏ねている間も、砲撃音は鳴り止まない。

 

「母さん!」

 

「いいから…!!っ生きなさい…!!」

 

母は口から血を吹き出させながらも、零に怒鳴った。

 

「っ…!ぅぐぅ…!」

 

零は目に涙を浮かべ、声にならない嗚咽を上げ。

 

「う…うあぁ…。」

 

泣きながら必死に走り出した。

その様子を見て。

 

「あぁ…零。あなたはそれでいいの…。お願いだから…どうか…生きていて…。生きていれば…ゴフッ…あなたを守ろうとしてくれる人達が…きっと…。」

 

そう一人呟いて、母は意識を手放した。

 

 

 

零は走っていた。

闇雲に。

ただひたすらに。

先程の砲撃で、零自身も無傷とはいかず。

 

「母さん…ひぐっ…っ!痛っ!」

 

見れば、右腕から血が滴り落ちている。

 

「なんだろ…これ…破片?」

 

立ち止まり、右腕に刺さった破片を抜き取る。

 

「っ…!!痛い!!」

 

貫通こそしていないが、深海棲艦の砲弾の破片。

決して小さい破片ではない。

 

「…母さんに比べたら。」

 

零は、気概を見せる。

更に走り続ければ、高台に辿り着いた。

 

「はぁはぁ…。海か…。」

 

そして、海を見渡せば。

 

「深海棲艦…!!」

 

深海棲艦の大群が、その目に映った。

 

「あいつらだ…。あいつらのせいで…母さんは…!」

 

零に宿ったソレは、恐怖でも、悲壮でもない。

復讐心という憎しみだった。

 

「俺が殺してやる…!」

 

そう言って、海岸へと再び走り出す。

 

 

――ドォォオオン!!

 

 

「また砲撃!?」

 

高台を駆け下りている途中で、轟音が聞こえる。

反射的に、身を屈ませるも。

 

「あれ?違う…?」

 

その轟音を響かせたのは、艦娘達だった。

 

 

 

「この島だ!全艦!砲撃の手を緩めるな!」

 

「「了解!!」」

 

一人の艦娘の号令で、次々と砲弾の雨に晒される深海棲艦。

或いは、戦闘機による攻撃で深海棲艦は沈んでいく。

零は、その姿を見て。

 

「すげー…。」

 

先程までとは打って変わって。

感嘆の声を出していた。

 

そのまま眺めていると、深海棲艦はあっという間にその姿を消していた。

 

「艦娘って…すげーなぁ…。」

 

そんな、語彙力を失った言葉を口にすると。

帰投準備を始める艦娘達が目に映る。

 

「あ!帰っちゃう!!」

 

零は駆け出した。

何故か、向かわなければならない気がしたのだ。

 

「待って!待って!」

 

零は必死に呼び止めながら、海岸へと走る。

 

すると。

 

「アイツ…。生キテル…。殺ス…。」

 

一隻の深海棲艦が沈みながら、照準を合わせる。

艦娘を追いかけることで精一杯な零は、気付いていない。

しかし、艦娘の一人がその状況に気付く。

その艦娘が、振り返れば。

 

「あ!気付いてくれた!」

 

否、気付いていないのは零である。

 

 

――ドォォオオン!!

 

 

「え?」

 

とうとう、その凶撃が零を襲った。

しかし、沈みゆく最中の砲撃。

軌道は大きく逸れ、一本の大木に当たる。

 

「あ。」

 

零は何が起きているのか、理解が追いつかない。

大木は、零を目掛けて倒れてくる。

 

 

が。

 

 

 

「六五三空!発艦!始めてください♪」

 

その声と共に、戦闘機が繰り出され。

大木に向けて、爆撃する。

間一髪、零は大木の直撃を免れた。

 

「危なかった…。」

 

発艦した艦娘は、胸を撫で下ろす。

それは、零もだった。

 

「す、すげ…。た、助かった…。…痛っ!」

 

そう呟くと、先程まであった腕の痛みがぶり返す。

それを気にせず、艦娘の所へと急ぐ。

 

「お、俺も一緒に!!」

 

海岸へと走れば、艦娘達は零を待たんばかりに留まる。

 

「…この島の生き残りか。」

 

零が辿り着けば、艦娘の一人が零を見る。

 

「長門さん、あまり怖がらせないであげてくださいね?」

 

「あ、あの…母さんを…。」

 

零は、意識が朦朧とするのを必死に堪える。

紅白の鉢巻をした艦娘が、零の腕を見て、目を見開く。

 

「っ!腕、怪我してるじゃない!」

 

そのまま鉢巻を取り、零の腕に巻き付ける。

 

「ありがとうございます…。」

 

「お礼なんて…。あなただけでも生きていた。今はそれで充分よ。」

 

「俺…。」

 

「心配しないで。ちゃんと、私達の鎮守府へ連れていくから。」

 

「瑞鳳さん、提督には通信で説明しましょう。」

 

白髪の艦娘が、紅白の鉢巻の艦娘、瑞鳳に提案する。

 

「そうですね、長門さん。お願いします。」

 

「あぁ、任された。」

 

瑞鳳に通信を頼まれた長門は、二つ返事で了承する。

その会話を聞いていた零は、霞む目を開こうと努力する。

 

「でも…俺…。」

 

零は必死に何かを伝えようとするも、意識をいよいよ手放した。

その零を、瑞鳳が支える。

 

「良かった…。寝ただけみたい。これだけの怪我…。この島の惨状…。子供には辛すぎるよ…。」

 

それだけ言って、そのまま零を背負う。

 

「とりあえず、任務完了ね…。この島を後で見たら、この子はなんて思うかしら…。」

 

「五十鈴さん…。」

 

ツインテールを揺らし海に向かう五十鈴は、憂いを帯びた目で零を見る。

 

「きっと、大丈夫ですよ。」

 

瑞鳳の言葉に不思議そうにする艦娘がいた。

 

「ハラショー。瑞鳳、その確信は何処から来るんだい?」

 

「響さん…。私にもわからないけど…。予感としか…。」

 

()()…かい?うん、嫌いじゃない。」

 

響は、自身の帽子を被り直し。

 

「ふふっ、あの瑞鳳とは思えないね。」

 

「なっ!?」

 

と、そこに制止をかける艦娘。

 

「はいはい、そこまでにしましょう?提督も待ってることですし。」

 

「そうですね。」

 

「ハラショー。翔鶴の言う通りだね。」

 

翔鶴が弓を構え。

 

「発艦始め!」

 

その合図で放たれた矢は、偵察機"彩雲"に変わる。

 

「敵影、ありません。航路は大丈夫そうですよ?」

 

敵影の確認を終え、翔鶴は微笑む。

それを聞いた長門が頷き。

 

「では、帰投を開始する。」

 

「「了解!」」

 

長門の号令に、艦娘達は敬礼する。

 

「ふふっ。帰ったら、卵焼き作ってあげりゅね。」

 

海上を駆けながら、瑞鳳は自身の背で眠る零を見て、微笑む。

 

 

後に、この少年が彼女達から"提督"と呼ばれるようになる。

この時、少年は12歳。

まして、この少年が少年である内に提督になるなどと、誰が予想したであろう。




如何だったでしょうか?
消えてしまったので…。
完全改変です…。(作者が自分で書いていたものを覚えていない。)

それでは、また次回に。
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