この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

10 / 30
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
9月も後半ですね…。
全然進んでなくて、申し訳ないです。
なんとか、今年中には完結できるように…。
出来ないなぁ…。

それでは、本編どうぞ。


Episode-9

瑞鳳の姿を見た雪は戦慄した。

 

「瑞鳳…まさか、彼にそこまでとは…。」

 

額から汗を流し、やっと絞り出した言葉がソレだった。

 

最早、全員が動きを止めていた。

 

「カエセ、カエセ、カエセ、カエセ!!」

 

そう連呼したかと思えば、瑞鳳は複数の矢を放った。

 

「瑞鳳!落ち着きなさい!」

 

状況を飲み込めないまま、我に返った五十鈴が機銃でその矢を弾く。

 

「瑞鳳さん!そこまでなのです!」

 

「そうよ!司令官を助けに来たんでしょ!?」

 

雷と、電が身を挺して瑞鳳の腕を掴み、その動きを止める。

 

指宿はといえば。

良くも悪くも、人間である。

 

「な、なんだ…アレは…。」

 

瑞鳳の変わり果てた姿を見るなり、絶句した。

 

「あんた、それでも海軍の人間なの?!」

 

五十鈴が呆れ半分で、指宿に怒鳴る。

 

「うるさい!お前たち、艦娘だろう?!どうにか出来ないのか!?」

 

これでは、責任転嫁である。

それを良しとしないのが、海野大将だった。

 

「貴様が!!事の発端だろうが!!」

 

ドカドカと近づき。

海野大将が乱暴に、指宿を掴み上げる。

 

「俺は…!」

 

「黙れ!問答は無用だッ!」

 

指宿の言い訳を聞かず、そのまま背負投げをかます。

 

「グフッ!」

 

床に叩きつけられた指宿は、肺に酸素を送り込めず、そのまま失神した。

 

「零君、気をしっかりしてください!!」

 

その隙を見て、榛名が声をかけながら、急いで零を担ぐ。

しかし、零は気を失ったままである。

その間も、瑞鳳の暴走は止まらない。

 

「カエセェェェェェ!!」

 

「どうしたらいいのよ!!」

 

瑞鳳の絶叫に。

傍らで見ていた暁は、顔面蒼白で声を上げる。

 

「ず、瑞鳳…。」

 

榛名の背で、息も絶え絶えに響く声。

 

「零君!」

 

思わず、榛名が勢いよく零を見る。

 

「は、榛名…。」

 

名を呼ばれた榛名は、目を見開く。

 

「き、記憶が戻ったんですか?!ッ…急いで医務室に向かいますからね!」

 

「そんなことよりも…瑞鳳のところに…。」

 

「で、でも!」

 

榛名は思わず立ち止まり、目を泳がせる。

現状の瑞鳳に近寄らせるのは、危険だと本能が悟っている。

 

「いいから…お願い…。」

 

意識も朦朧としているであろう零に、そう言われてしまっては。

 

「わ、わかりました。危なくなったら、すぐに離脱させますからね?!」

 

榛名も不承不承、頷いた。

 

「ありがとう、榛名。」

 

零が感謝するが、その身体からは血が止めどなく溢れている。

 

(こんな状態なのに…医務室ではなく、瑞鳳さんの所なんて…。)

 

榛名の思っていることは、もっともである。

当の零は、そんなこと気にも留めていない。

 

(瑞鳳を…止めなきゃ…。)

 

これだけである。

たった、これだけの思いで。

自身のことなど、後回しにしているのだ。

 

「瑞鳳…俺は生きてる…だから…。」

 

榛名が零を抱えながら、瑞鳳のもとに急ぐ。

 

「何をする気だ!榛名!」

 

海野大将が、自身の目を疑う。

 

「榛名さん!零君を先に、医務室に連れて行かないと!」

 

雷が瑞鳳にしがみつきながら、榛名に怒声を飛ばす。

 

「零君本人が望んでるんです!榛名には…止められません。」

 

海野大将も、雷も。

榛名の何処か悔いるような言葉に、何も言えなくなった。

 

「…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。」

 

そんな中、電だけは理解を示していた。

 

「瑞鳳さんは零君を返して欲しいとしか、言ってないのです。私と雷ちゃんで抑えておくのです…だから、零君を瑞鳳さんに、渡してあげて欲しいのです。」

 

電の言葉は、雪をも驚かせた。

 

「電…。そうか、瑞鳳が来た時から気にかけてくれてはいたが…。」

 

雪は、感慨深いモノを感じる。

それも束の間、瑞鳳の雄叫びで現実に引き戻される。

 

「ウガァァァァ!!」

 

「瑞鳳さん!!」

 

榛名が大声を上げ。自身に注意を惹かせる。

振り向きざまに暴れ、二人の拘束を解こうとする瑞鳳の動きが止まった。

瑞鳳のその双眸に、榛名の背で息を荒げ、苦しむ零が映る。

 

「アァ…。」

 

雷と電も、抑えていた腕をゆっくりと放す。

 

「生キテル…ノ?」

 

榛名に近づき、背にいる零に声をかける。

 

「瑞鳳…俺は生きてるよ…。」

 

零は出血が酷いあまり、血の気が引いたように白い。

 

「零君が、生きてる。」

 

榛名は"落ち着いた"と見計らい、零を瑞鳳に預ける。

 

「零君、良かった、生きてて…。」

 

「瑞鳳…俺のために、ありがと…。」

 

そんな会話をする瑞鳳は、目の色は普段の琥珀に戻ったが。

髪は白いままである。

 

「ごめんね、零君…。私…ううん、その前に医務室に行かなきゃね。」

 

「頼んだよ…瑞鳳…。」

 

瑞鳳が零を担ぎ、執務室を出る。

目前の艦娘と、少年の姿に。

誰もが言葉を失っていた。

 

 

 

 

――()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

これが、指宿を除く、この場の全員が感じたことである。

二人が去れば。

 

「榛名は…何もしてあげられませんでした…。」

 

榛名は一人、自責の念に囚われていた。

 

「榛名、お前が気にすることじゃない。」

 

海野大将が、榛名の肩に手を置く。

 

「で、でも…。」

 

「でもも、何もない。俺とて、何も出来なかった。」

 

海野大将は俯き、続ける。

 

「娘を助けることで、精一杯だった。瑞鳳は、あの少年に何を思ったのだ…。」

 

海野大将が拳を握った。

 

 

その時。

 

 

 

「ふざけやがってぇぇ!!!!」

 

指宿が目を覚ました。

 

「しぶとい奴め!!」

 

海野大将が駆け出す前に。

 

「お前ら、全員!死んでしまえ!!」

 

指宿は、銃を乱射し始めた。

 

「全員屈め!!」

 

海野大将が、怒号を飛ばす。

 

しかし。

 

「ぐっ!!」

 

「「提督!?」」

 

雪の腿を銃弾が貫く。

艦娘達は、驚愕した。

 

「雪!!」

 

海野大将は、娘が撃たれ即座に駆け寄る。

 

「誰か!雪を医務室へ連れて行くんだ!」

 

「はっ!」

 

赤城が雪を担ぎ、医務室へと急ぐ。

撃ち抜かれ、赤城に背負われる雪を見て、指宿は歓喜した。

 

「俺を馬鹿にするからだ!因果応報だ!」

 

唾を撒き散らし、これでもかと罵倒する。

 

「馬鹿じゃないの?」

 

五十鈴が怒りを顕にする。

 

「あ?」

 

先程までの余裕から一変して、五十鈴を指宿は睨む。

 

「こんなふざけたことをして!あまつさえ、因果応報ですって?!冗談じゃないわ!」

 

五十鈴は指宿に近づき、胸ぐらを掴む。

 

「あんたなんかを、提督が選ぶわけないじゃない!この、クズ外道!」

 

五十鈴の渾身たる怒鳴り声に。

 

「艦娘のくせに…生意気な…!()()()()()()()()()()…!()()()()()()()()()()()()()()()()()…!」

 

拳を固く握り、歯を食いしばるように、指宿は声を絞り出す。

一体、何を言っているのか、五十鈴には見当もつかない。

思わず、胸ぐらを掴んでいた手を放してしまう。

 

「俺をどれほど蔑ろにすれば気が済むんだ…!どいつもこいつも…!」

 

その言葉に、海野大将が憤慨する。

 

「いい加減にせんか!!この大馬鹿者がッ!!!!」

 

そのまま飛び膝蹴りを、指宿に喰らわす。

 

「ごえっ!!」

 

喉元に喰らった指宿は、吹っ飛びながら意識を手放した。

海野大将が指宿をそのまま担ぎ、指示を出す。

 

「こいつは大本営に連れていく、修繕費は書類を出しておくように。」

 

「大淀さんに伝えておくわ!」

 

暁が元気に返事をする。

 

「それと、榛名を置いていく。…瑞鳳のこともあるからな。」

 

「「はっ!」」

 

それだけを言い残し、執務室を後にしようとすると。

 

「「船まで見送ります。」」

 

海野大将の後に続き、艦娘たちが港まで、見送りに出る。

 

(利口だな。さすが、雪の艦娘と言ったところか。)

 

その進言には、歩きながら本人は感心していた。

 

「港までとはな、ご苦労。言い忘れていたが、ゆ…ん”ん”、海野少将に目が覚めたら連絡をするよう、伝えてくれ。」

 

「はっ!!」

 

海野大将が船に乗り込む直前に、咳払いを入れながら伝えれば、艦娘達は敬礼した。

船が見えなくなると、ようやく鎮守府に戻った。

二人を除いては。

 

「なんだか、散々というか、驚くことばっかりだったね。」

 

響が言うと、五十鈴が暗そうな顔をする。

 

「瑞鳳のことかい?」

 

響が尋ねれば、静かに俯くように、五十鈴は小さく頷く。

 

「舞鶴に来るまでの瑞鳳に何があったのか知らないし、今まで暗かったのに、急に明るく振舞い始めた理由もわからない…でも…。」

 

五十鈴の目から、涙が落ちる。

 

「零君の為だけに、あそこまでなるってことは…。きっと、思い詰める何かがあったのだけはわかるわ…。あの二人に…私達、ううん、他人が近寄り難いだけの…縁が出来たのも…。」

 

響が五十鈴を見つめ。

 

「瑞鳳のことを、()()()()()()()()()?」

 

その言葉に、五十鈴は俯かせていた顔を上げ、響を見る。

 

「響…ひょっとして、瑞鳳の生い立ちを知ってるの?」

 

「まさか。私は舞鶴で建造されたんだ、知るわけがないじゃないか。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

響は海を見つめ。

 

「阿武隈さ。」

 

この名前を出した。

 

「阿武隈って、元大本営直属だったじゃない。」

 

五十鈴が目を見開きながら尋ねれば、響は頷く。

 

「阿武隈ならきっと、瑞鳳のことも知ってるんじゃないかな?」

 

「なんで阿武隈なのよ?」

 

五十鈴が問うと、予想外の言葉が耳に入る。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。そこに当時、大本営所属だった阿武隈と、瑞鳳が居たって話を聞いたんだ。当時の瑞鳳が、何処の鎮守府だったのか、そこまでは知らないみたいだけどね。最初は、私も耳を疑ったさ。この話の出所は他でもない、阿武隈本人から聞いたんだ。聞いてみる価値はあると思うよ。」

 

響の話を聞き終え、生唾をごくりと飲み込み。

 

「阿武隈が遠征から戻ってきたら、聞いてみるわ。」

 

額から汗を流しながらも、真剣な表情で響に言って、五十鈴は港を後にした。

 

「瑞鳳…君には仲間も居るんだよ、零君だけじゃないんだ。…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

誰も居なくなった港で、一人呟いた。

 

「五十鈴がどう出るかによってだけどね…。」

 

そう付け加え、響も港を後にした。

 

 

 

 

 

 

「零君…ごめんね…。」

 

病室で瑞鳳は、処置を終えベッドで眠る零に謝っていた。

 

「私…零君が撃たれた後、何も見えなくなって…。」

 

返事などあるわけもない。

それでも、瑞鳳は話し続ける。

 

「なんで、あのとき提督を庇ったの?私だって、他の艦娘だって、海野大将だって居たじゃない。」

 

瑞鳳は服の裾を、目一杯に握る。

 

「零君がいま死んだら、私はもう…海を駆ける理由が…。」

 

裾から手を離し、零の頭を撫でる。

 

「こんなに身も心もボロボロで…それでも、提督と私を助けて…ちゃんと生きてる…。約束は守ってくれてるんだね。」

 

そして、零のベッドに入り込み。

 

「ありがと…♪」

 

そのまま零を抱きしめると、瑞鳳も眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 

隣のベッドでは。

瑞鳳の独り言とも取れる独白で、雪が目を覚ましていた。

瑞鳳が寝たのを確認すると、天井を見上げながら。

 

「瑞鳳、本当に後戻りが出来なくなってるじゃないか。彼に何を思ったんだ?何をして欲しいんだ?いや、私も女だからね、わかってはいるとも。」

 

深呼吸をして。

 

「独占欲だろう?愛情もあるだろうさ。でもソレ以上に、君の生きる理由とはね。…年端のいかない彼には、()()()()()()()()()()()()?」

 

返事のないまま、時が過ぎ。

 

()()()()()()()()()()()。今回みたいなことがないようにね。」

 

聞こえていないであろう説教とも取れる、感想を連ねて。

雪もまた、再び眠りに就いた。




如何だったでしょうか?
書き始めて、4日も経過してました…。
構成と内容って…難しい。
リメイクで尚更、試練に合ってます…。

それでは、また次回に。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。