UAがリメイクにして、1500を突破しました。
皆様、いつもありがとうございます。
作者は本日、また一つ歳を取りました…。
それでは、本編どうぞ。
その日の夜、瑞鳳がベッドで先に目を覚ました。
「おはよう…零君…って、まだ寝てるよね。」
そう言いながら、隣で眠る零を見る。
瑞鳳のその目に映るのは、肩に包帯を痛々しく巻かれた少年。
「ほんとに、段々と怪我が増えてくね…。」
そこに割って入る声。
「少年だと言うのに、これでは歴戦の軍人だな。」
声の主は、隣のベッドにいる雪だった。
見れば、脚を吊られながら上体を起こしている。
「て、提督?!起きて大丈夫なの?!」
「大丈夫だから、落ち着いてくれ。彼が目を覚ましてしまうだろう?」
「あ、うん、そうね…。」
瑞鳳は雪に宥められ、俯く。
そんな瑞鳳に、雪は尋ねる。
「瑞鳳、少し聞きたいことがあるんだ。」
「え?」
キョトンとする瑞鳳を、雪が真剣な表情で見る。
「そんなに髪を白くするほどに、深海棲艦化するほどに、彼に執着する理由はなんだい?」
雪の問いに、瑞鳳は。
「
(やはり言ってることはそのままか。しかし、なんて目を…。)
雪が見た瑞鳳の目。
そこに、普段の琥珀はない。
黒く染め上げられた、瞳があった。
「生きる理由…か。」
「提督が教えてくれたんだよ?」
「私が?」
雪は瑞鳳の言葉に、訝しげな表情をする。
「提督が、"この海を駆けていたら、いずれわかるさ"って。」
瑞鳳が笑顔のようで、何処か異様な雰囲気を醸し出す。
その姿と、雰囲気に。
雪は知らぬ間に、呑まれていた。
「
雪が確認すれば、瑞鳳は笑顔のまま答える。
「勿論♪
瑞鳳から発せられた、その一言。
されど、一言。
雪の怒髪天を衝くのには、充分だった。
呑み込んでいた空気と雰囲気が、一気に消し飛ぶ。
「
「え?」
瑞鳳の服を、掴み引き寄せ、雪は鬼の形相で睨む。
勢いそのままに、怒鳴り続ける。
我に返った瑞鳳は、力なく腕を下ろす。
「その言葉は…!何かに憂いて、先を見据えることの出来ていない君に!艦娘として生まれたことの後悔と!抱えているモノを!払拭して貰いたくて言ったんだ!
怒鳴り声が響いた後、室内が静かになる。
言い切った後で、悲壮に歪む雪のその顔。
瑞鳳は、下ろしていた腕を伸ばし。
自身の服を千切れんばかりに掴んでいる、雪の腕に手を添えて。
「…提督。」
手を握り、ゆっくりと口を開く。
「わかってるよ、そんなことくらい。でもね、駆けても駆けても…見つからなかった。なんでかな…わからなかったし、見つからなかったの…。でも、あの島で疲れ切って寝ちゃったこの子を背負って…その時に、"見つけた"って、そう思ったの。"この子の為に生きてみるのも、良いかもね"って。
一息で話す瑞鳳と、半ば固まるように聞いている雪。
瑞鳳の胸中は読み取れない。
しかし、次の一言で雪は驚愕する。
――
「な…?!」
雪の声を無視するように、瑞鳳は続ける。
「だから…私は零君の側で、零君の隣で、零君の為に生きるの。提督は…知らないよね?"南方海域奪還作戦"。
話を聞きながら、雪は掴んでいた瑞鳳の服から手を離す。
「まさか…君がその作戦に…居たのか?」
顔は青褪め、額に汗を浮かべながら訊く雪に。
「
肯定した瑞鳳は、唇を強く噛む。
そして、呼吸を整え。
「でもね…この子のお母さんを守れなかった…ううん、敵の砲撃が何発も、私に直撃したの。大破して鎮守府に撤退せざるを得なくなって、戦線離脱。他の皆も中破、大破してたからね…。高速修復材も底を尽きてて、長い入渠が終わった後、いざもう一度出撃しようとした私に…鎮守府へ戻ってきた艦隊の皆から聞かされたのは、作戦の失敗と、この子の母親であり、数ある鎮守府の中の一人と言えど、私の姉妹艦である…。」
――"祥鳳"の轟沈だったの。
「この子の名字を聞いた時、知らないフリをするのが精一杯だった…。元帥と、大本営に居た祥鳳との子供だったなんて、罪悪感で押し潰されそうだった…。それでも、生きる理由には間違いなかったの。"この子の為に、艦娘になった"。あの時に感じた予感は、紛れもなく本物よ。だから、提督から何を言われても、私はこの子の傍を離れるつもりなんてない。これが"贖罪"だなんて、
雪が再び、口を開く。
「それなら、私の言葉と関係無いじゃないか…。」
そう言われた瑞鳳は。
雪を真っ直ぐに見つめ、頭を振る。
その目に、黒を更に濃く浮かばせながら。
「ううん、提督のおかげだよ。偶然にも、あの島に私の居る艦隊を向かわせてくれたから、零君に会えた…!提督の言っていた、"この海を駆けていれば、いずれわかるさ"。この言葉は!間違いなかった!巡り会えた!見つけられた!私の!私だけの生きる理由!やっと!私は見つけた!探し出せた!海を駆けて!尽くしてあげるの!この子に!エンガノ岬のようにはいかないように!私はこの子の為に沈まないの!今度こそ!ずっと!見守るの!」
狂気にも感じ取れる、瑞鳳の歓喜する姿。
雪は気づかぬ間に、自身のその身体を震わせていた。
「ず、瑞鳳…。」
(それは私の言葉ではない…。)
(君が持つ
胸中の率直な思いを、今この場で瑞鳳に聞かせられるのなら。
雪はどれほど、楽なのだろうか。
これは、雪のみが計れるところである。
「提督。」
「な、なんだい?」
瑞鳳に名を出され、雪は震える身体を必死に抑えつける。
「私と零君を引き離そうとなんて、絶対にしないでね?」
「あ、あぁ、一緒に居られるだけ、居たら良い。本人が受け入れられる範疇でね。」
軽口を必死で返すも。
「もし、引き離したりなんてしたら。」
――絶対に赦さないから。
(あぁ、瑞鳳。)
(明るくなった、というわけでもなく。)
(様子が変わった、というわけでもなく。)
(君のソレは。)
「
「え?」
呟かれた雪の言葉を、聞き取れなかった瑞鳳が訊き返すも。
「いや、なんでもないさ。わかった、なるべく一緒に居るといい。でも、遠征や出撃は頼むよ?サボりは厳禁だからね。」
「勿論♪提督、ありがと♪」
困ったような笑顔を浮かべ、雪は瑞鳳に釘を刺す。
肝心な部分は上手く反らし、真相は瑞鳳の耳には届かなかった。
「さて、彼が起きてしまう前に食事でも済ませておいで?」
「いいの?」
「あぁ、彼と居たいんだろう?ならば、早めに済ませて早く戻って来ると良い。」
「わかりました♪」
先ほどまでの空気から一変、普段と変わらぬモノになった。
瑞鳳が去ったあと。
「これは…先が
そう一人呟き、隣で未だ意識を戻さぬ零を見て。
「君が大きくなるわけだ。そうか、十年か。君と離れ、元帥と再会しても…
その呟きはまだ続き。
「深海棲艦を、殲滅せねばな。
雪は一人、零に聞こえるはずもない意気込みを披露した。
「瑞鳳さん、その後悔は私にもあります。」
医務室の外で、影に隠れ瑞鳳を見送る艦娘。
その艦娘もまた、復讐という概念に囚われている一人だった。
如何だったでしょうか?
リメイクで相当に変更点が増えております…。
御愛嬌ということで、多めに見てください…。
それでは、また次回に。