この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
急に寒くなったり暑くなったり…。
風邪引きそうです…。
それでは、本編どうぞ。


Episode-12

長門のカミングアウトに、全員驚愕し。

 

「「……。」」

 

本当の意味で絶句していた。

 

「な、長門…とんでもない事を隠していたな…?」

 

「いや、十年以上も前の話だ。私もやっと、思い出したところさ。」

 

雪が冷や汗をそのままに尋ねれば。

長門は涼しい顔で、あっけらかんと答えた。

 

「で?零君の記憶を消してまで、あの島に匿った理由は?」

 

五十鈴が疑問を解消するかのように、明石に投げかける。

聞かれた明石は、本題を忘れていたのか苦笑を混ぜ。

 

「元帥は、式条前元帥が深海側に就いたことを国民に悟られぬよう…。」

 

「それっぽちやあらへんやろ。」

 

明石の説明を遮り、龍驤が席を立つ。

 

「もっと大きな何かが、あるんとちゃうんか?」

 

明石は詰め寄られ、その勢いに仰け反ってしまう。

 

「あ、あの…。」

 

「大方、元帥を良く思ってない連中から、零君が狙われてるんやろ?」

 

龍驤は尚も、明石に鋭い視線を突き刺す。

 

「…大本営にいる、式条羽織(しきじょうはおり)少将が居ます。えぇ、名前の通り式条前元帥の息子です。」

 

「そいつがなんやて?」

 

「元帥の座を元より狙っていて、自分の父親が深海側となれば自ずと海軍を腐らせ、零君を人質か或いは…。それを防ぐために、私に記憶消去装置を開発させて、零君の記憶を丸ごと剥がし…柊さんと一緒にあの子を、あの島へ送ったんです。」

 

明石が身体を震わせながら説明すると、雪が榛名に手伝ってもらいながら椅子に座り。

 

「元帥は何を掴んだんだい?」

 

極めて真剣な顔で、明石に訊く。

 

「いま説明した通り、式条少将は式条前元帥と組み…この日本、いえ、世界を滅ぼそうと企んでいるんです。」

 

「手始めに日本海軍の腐敗か…ドラ息子(阿呆)の考えそうなことだな。」

 

明石の説明を聞き終えた雪が呆れたように吐き捨てると、鈴谷が目を丸くする。

 

「提督って、式条少将のこと知ってるの?」

 

「あぁ、知ってるとも。軍学校にも通わず、コネで海軍になっただけの()()()()。」

 

普段の雪では感じられない、明確なまでの殺意を込めた一言。

言葉には怒気が混じり、その目も怒りを顕にしていた。

 

「な、何か因縁でも…?」

 

鈴谷はその圧にすっかり呑まれていた。

言葉にも、余裕は無くなっている。

 

「そこまでしなければ、零君を守れない程に追い込んだ張本人というのならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「海野少将が零君に負い目を…。」

 

榛名が付け足そうとした所で、雪が制止する。

 

「榛名、()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。私情を挟むわけにいかない。」

 

「で、でも…。」

 

「良いんだよ、()()()()()()()()。」

 

「わ、わかりました…。」

 

榛名は食い下がろうとするも、雪の圧に逆らえなかった。

 

「ということは…?式条前元帥が寝返ったと知らず、助けに行ったら祥鳳さんが轟沈。式条少将の企みを知って、元帥が零君と鳴波見大佐を、あの島に避難させた上で一人単独で乗り込み失踪。そこまでしたのに、島の住民は深海棲艦に襲撃されたと…。」

 

大淀が整理し、見解を述べる。

"間違いない"とばかりに、明石は頷く。

 

「何よ、それ。巻き込まれた人達が可哀想じゃない。」

 

暁が唇を震わせる。

 

「あの時、そうでもしないと…軍とも面識のある零君がもっと酷い目に合わされていたかもしれ…。」

 

「充分、酷い目に合ってるじゃない!!」

 

明石の弁明を聞く耳を持たず、暁はその場で怒鳴る。

 

「いい?!あの日の惨劇を見たのも!そこまでされて、両親も、一緒に暮らしてた人達が居ないのも!全部、あの子が背負ったのよ!明石さんには悪いけど…あなた達の辛さより、よっぽどあの子は傷ついてるわ!」

 

暁がここまで感情的になる理由は、誰も見当などつかない。

気迫の混じる言い方に、その場で全員が押し黙ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「零君、起きて?」

 

そんなやり取りが食堂で起きている中、瑞鳳がベッドで未だ眠る零に声をかけていた。

 

「零君、起きて。」

 

負傷していない左肩を揺すり、零を起こす。

 

「ん…瑞鳳…?」

 

「あ…♪起きた!おはよ♪」

 

「おはよう…いてて…。」

 

目を覚ました零は、右肩を抑える仕草をする。

起き上がるのを手伝いながら、瑞鳳は零を覗き込み心配する。

 

「あ、まだ痛む?」

 

「うん、ちょっとだけ…。」

 

「私と一緒に食堂に来てほしくて…。」

 

「え?」

 

目覚めたばかりの零には、理解など到底追いつかない。

 

「私が背負って行くから、来てくれる…?」

 

「い、行くけど、歩けるよ?痛むのは肩だから。」

 

「ううん、私が背負いたいの。それに、痛むのに無理に連れ出そうとしてるんだし、これくらいは…ね?」

 

「わ、わかったよ…よろしく…。」

 

「もちろん♪」

 

瑞鳳の無理強いに勝てず、零は大人しく従うことにした。

それも、渋々ながらではあるが。

 

「じゃあ、行こっか♪」

 

瑞鳳が零を背負い、医務室を二人は後にした。

 

「俺が呼ばれる理由って…?」

 

廊下に出てやっと、零は自身が呼ばれた理由を訊いた。

 

「あのね、指揮を執ったこととか、本当に色々なことを説明して欲しいし、零君自身から訊きたいからかな?提督や、皆もね。」

 

瑞鳳は、自身の肩から顔を覗かせる零を気遣いながら、経緯を説明した。

 

「今ので俺でも、何となくわかったよ。」

 

零は納得しながらも、気になることがあった。

 

「そういえば、呉の榛名ってまだいるの?」

 

零が耳元で訊けば、瑞鳳の顔は瞬く間に赤くなる。

 

「い、居るよ、それから明石さんもね。」

 

照れながらやっとのことで答えるも、瑞鳳の鼓動は鳴り止まない。

 

(お、落ち着かない…うぅ…。)

 

胸中ではしっかり焦りと、恥ずかしさを晒け出していた。

 

「え?明石も?」

 

「うん、青葉さんが連れてきたのよ。」

 

キョトンとする零に、瑞鳳はそのままを説明した。

 

「そっか、二人に会うのも久しぶりだなぁ。五年振りかな?あ、榛名は海野提督を助けに来た時にも会ってるか。」

 

「そ、そうなんだ…。」

 

零が感慨深く話していると、嬉しくもつまらなくもあり、瑞鳳は複雑な心情であった。

 

「零君、訊いてもいい?」

 

「ん?」

 

瑞鳳は確かめるように。

 

「零君の一番は、私だよね?」

 

今度は、背負っている零を見ず。

 

「私が零君にとっての一番で、零君には私しか居ないといいなぁって思ったの。私には、零君しか居ないからお願い、教えて欲しいの…。」

 

唇を震わせつつ、それを悟られないよう瑞鳳はひたすら歩みを進める。

零が口を開くのを、怖さ半分で待っていると。

 

「んー、そうだなぁ…。榛名達も含めてで考えても、瑞鳳が一番かなぁ?俺をあの島に送って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。恨んでるわけじゃないけど、説明も無しに記憶まで消されてさ?俺があのまま思い出せてなかったら今頃、瑞鳳達は深海棲艦になった母さんに沈められてたかもしれない。それにさ?」

 

そこまで一息に話し、零は呼吸を整えながら。

 

「俺が大人になった時、瑞鳳みたいな奥さんが居たらいいなぁって思ってるし。」

 

零は冷静になり、自身が言い放った言葉を振り返る。

途端に恥ずかしさから、その顔が赤く染まった。

誤魔化すように、瑞鳳に悟られぬように。

目前にある、瑞鳳の肩に顔を埋める。

言われた瑞鳳は、と言えば。

 

「そ、そうなんだ…。」

 

上がる口角を必死に抑え、今度は嬉しさから唇を震わせる。

無論、瑞鳳の顔も赤いのは見るまでもなかった。

零は恥ずかしさを隠すように。

 

「た、卵焼きも美味しいし。」

 

「えへへ、ありがと…♪」

 

(胃袋は掴んだわよ♪)

 

得意の卵焼きを褒めると瑞鳳は上機嫌になり、その足取りは格段に軽く、気が付けば食堂の前だった。

 

「さ、着いたわよ。…心の準備は大丈夫?」

 

「心の準備も何も、説明して話すだけだからね。」

 

零は淡々としていた。

それだけの余裕を、何故か見せていた。

 

「零君を連れてきました♪って…え?空気が重たい気がする…。」

 

「な、なんで?」

 

零と瑞鳳がドアから入れば、そこに居た全員が何とも言えない空気を醸し出していた。

 

「あぁ、零君。傷は痛むかい?」

 

「まだ少し…。」

 

そんな空気を差し置いて、雪が零を心配する。

瑞鳳が雪の前で、零を降ろす。

苦笑気味に零が頬を掻きながら、座っている雪に訊く。

 

「俺のことで、訊きたいことがあるって聞いたんですけど…。」

 

「うん。君の生い立ち、指揮が出来た理由、あとは今後についてかな。」

 

雪が座ったまま零を見上げ、考えるような素振りを見せながら言う。

 

「わかりました、覚えている範囲で良ければ。」

 

零は、表情を硬くして頷いた。

 

「零君…その…。」

 

そこに、呉の榛名が零に声をかける。

 

「あの…今まで…。」

 

「榛名、()()()()()()()()。」

 

榛名の顔を見ず言葉を遮り、零はそのまま前に出る。

 

「えっと、みんなに説明します!」

 

零がそのまま声を出せば、全員が零を見る。

 

「俺は、全部思い出しました。うん、記憶の限りは…。」

 

零が全員を見渡せば、その全員が頷いていた。

反応を確認し、零が話し始める。

 

「俺は元帥の息子です。」

 

少年の、この一言から生い立ちが明らかになる。




いかがだったでしょうか?
それでは、また次回に。
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