更新速度が…リメイク前より遅れていますね…。
作者の実力不足です…。
申し訳無い限りです…。
それでは、本編どうぞ。
零が完治する二ヶ月前。
横須賀鎮守府大将、島永幸造に一本の連絡が入る。
[島永大将、海野です。]
「おぉ、海野か!どうした?」
相手は呉鎮守府大将、海野龍玄だった。。
幸造は龍玄の連絡に嬉しく思うも、"何かあるのでは"と勘繰るように訊く。
[実は、指宿が逃走しまして…。]
龍玄が申し訳無さそうに進言するも、幸造には既に伝わっており。
「そんなこと知っていようとも。何か別のことがあるんじゃないのか?」
幸造はできる限りの優しい声色で聞き出す。
そして、返ってきた龍玄の言葉が。
[元帥の息子、橘花零の完治が二ヶ月後とのことで、完治次第そちらに向かわせられないかと…海野少将より進言がありました。]
龍玄の説明に、幸造が目を丸くする。
「…
真顔になり声を低くして、幸造は威圧する。
しかし、龍玄とて伊達に大将では無い。
その圧に負けぬよう、毅然と。
[時期尚早でも、元帥からの頼みもあります。それに、奴の息子ですから…海軍として、なんとしても守らねばなりませんでしょう?]
龍玄が確かめるように尋ねれば、幸造は電話越しに頷き。
「貴殿の言うことはもっともだ、良いだろう。こちらでも受け入れる準備をしておこうではないか。」
そう伝えれば、龍玄は安堵の溜息を吐くと。
[ありがとうございます。何卒、よろしくお願いします。]
「ぷっくくく!」
感謝と共に、零のことを委ねる。
それが幸造には面白かったのか、くつくつと笑いをこぼす。
[し、島永大将…?]
龍玄の唖然とせんばかりの声に、幸造は。
「なに、貴殿の息子でもあるまいに…その必死さは、親のソレに見えてな?くっくっく。」
そう、おどけて見せる。
[お、お戯れは程々にして頂きたく…。]
「なぁ、海野よ。」
呆れつつ言葉を選ぶ龍玄を遮り、幸造は声色を真剣なものにする。
「橘花零のことは任されようとも。しかし、
尋ねる幸造の声に怒気が混じっているのが、受話器越しの龍玄には感じ取れた。
[…
「
矢継早に話す幸造の言葉をすべて記憶した龍玄は、整理しながら言葉を探す。
[式条が深海棲艦を連れて、大本営に現れました。その結果、相垣が深海棲艦の砲撃を真正面から受け、重症を負いました。それに準じて、式条が指宿を攫ったのが現状です。]
龍玄が説明するなり、幸造が低い声を出す。
「彼奴は何を考えて…いや、何を企んでいるんだ?」
[自分も一概に確信を持った事は言えませんが、式条が深海側にいる理由はおそらく、何か唆されたか…或いは本当に単なる裏切りか…何とも言えないのが現状です。沖崎・ロゼ・フリューゲルからの連絡を、自分も待っているところです。呉に至っては自分が留守の間だけ、鳴波見に任せてあります。鳴波見も佐世保があるというのに、二つ返事で承諾してくました。]
落ち着かせるような龍玄の言い方に、幸造が落ち着きを取り戻す。
「そうか。それならば、私からは何も責めるだけの打点は無いな。相わかった、その他諸々思う所はあるが…今は元帥の息子が生きていることを喜ばねばな。あの赤ん坊も、もう十二歳になっていたか。」
[…はい、本当に時が経つのは早いものです。]
零を知っている二人だからこその、会話でもある。
幸造がふと、龍玄の娘である雪のことも思い出す。
「貴殿の娘も、もう二十二を数えるのか。」
[おかげさまで、もうとっくに成人は終わってます。]
懐かしみを感じながら幸造が言えば、自身の娘のことだというのに、龍玄はただ礼を述べるだけだった。
「貴殿とここまで話したのも、久しぶりだったな。また日が合えば、呑みに行こうではないか。」
[はっ。その日をお待ちしております、島永教官。]
「うむ。」
龍玄のその言葉を聞き終え、幸造は受話器を置き。
「そうか…彼が来るのか。まだ子供だというのに、申し訳なさが勝るが…再会を心待ちにしようではないか。」
煙草に火を付け、椅子で天を仰ぐように背をもたれながら呟いた。
「失礼します…。」
「おぉ、由良ではないか。どうしたんだ?」
そんな折、秘書艦である由良が執務室のドアを開ける。
幸造は由良の何か言いたげな雰囲気を感じ取り、正面に向き直る。
「実は…北方方面に、深海棲艦の艦隊が向かっているのを確認したって情報が…。」
「何処からの情報だ?」
幸造が怪訝な顔で訊けば、由良が。
「遠征に向かった、
と、顔を歪めながら伝える。
「北方…?大湊方面か?柳中佐がおるな。」
幸造は煙草の煙を吐きながら、答える。
その目は由良ではなく、天井を見つめていた。
「そうよ。あそこ、艦娘少ないじゃない?大丈夫かしら。」
「なに、柳とて海軍中佐だ。それに私は
由良の言葉に対し、そこまで答えたところで幸造は指で挟んでいた煙草を落とす。
煙草などお構い無しに、勢いよく由良へと視線を首ごと向ける。
「待て、由良よ。この横須賀の遠征組が、大湊へ向かっている敵艦隊を見ているのか?」
「さっきも言った通りよ。」
幸造は、自身の予想を上回っている事実に気付いた。
「ま、まさか…艦娘のいるルートを堂々と…?遠征ルートを即時変更する、大湊方面にすぐに向かわせるんだ!」
「はっ!」
その命令を受け由良は返事をするなり、急いで部屋を飛び出した。
この時、幸造の頭では。
「大湊警備府を潰して、海軍の動きを弱体化させるつもりか…。しかして、そうはさせんよ。大方、
龍玄と同じく、式条の息子が絡んでいるという考えを張り巡らせていた。
「元帥、あなたの予感と予想が当たり始めておりますな…。やはり私が、あなたについて行こうと決めた事は間違っていなかったようです。」
そう呟き、床に落としていた煙草を拾う。
「このような小さい火種が、大火事を起こしかねない。しかし、あなたが託したあの子という火種は、海軍の灯火になるのかも知れませんな…式条羽織を凌駕するような何かの。」
そう言いながら未だ火種の残る煙草を、灰皿に押し付け捨てた。
遠征艦隊は、と言えば。
「敵艦隊…
遠征艦隊旗艦である、軽巡鬼怒が艦隊に通信する。
「ロスト…?見失ったの?電探の反応も?」
随伴艦の駆逐艦、霞が訊くも。
「完全に消えたのよ、完全にね…。」
「鬼怒さん…。」
同じく随伴艦の朝潮も、心配のあまり鬼怒を見る。
「本当ね、私の電探にも反応は無いわ。」
試しに霞が試みるも、同じく敵影の反応は無かった。
「すぐに提督に通達するよ、逃げられたってね。」
そう言った鬼怒の顔は、不甲斐なさ所以の険しさを醸し出していた。
遠征艦隊であり、組み込まれている艦娘自体も少ない。
いざ対峙したとしても、増援まで時間稼ぎができるかも怪しい。
そんなことは、旗艦である鬼怒もわかっていた。
「遠征じゃなければ…
鬼怒は唇を噛み締めながら、悔しさを顕にした。
諦めて帰投しようとした艦隊に、通信が入る。
[こちら大淀、遠征艦隊に通達。確認した敵艦隊を、大湊に入る前に迎撃す…。]
「大淀さん、
大淀の言葉を、鬼怒が途中で遮る。
「追ってる途中で、完全にロストしたんだよね…。
[え?]
鬼怒が説明するも、大淀には理解が追いついていないのは全員がわかっていた。
「鬼怒さんの言う通りよ?私も試したけど駄目だった。」
霞がそう言うと、大淀は少し悩んだあと。
[わ、わかりました。一度、そのまま帰投してください。]
「「了解。」」
大淀が帰投命令を出せば、全員が従った。
そして、鬼怒の率いる艦隊が帰投し、執務室で説明する。
幸造が一連を耳にすると。
「そうか、遠征だというのにご苦労だった。何とも怪しい動きを見せてくるな…。しばらくは哨戒も視野に入れよう、ゆっくり休んでくれ。」
「「失礼します。」」
全員が出た後。
幸造は考え込むように、机上をトントンと指で叩く。
「ふむ、妙なことをしてくるな。しかし、
幸造にも不可思議でしか無い出来事だった。
零の編入の話の最中での出来事。
幸造には、どうにも引っ掛ける節を拭えなかった。
「何もこの先に、起きなければいいが…。」
幸造の不安が別の形で現実となるのは、本人もまだ知らない。
「式条…。貴殿の身に一体何があったのかは知らんが、何をしようとしておるんだ?橘花元帥を奪還する為なら、容赦なく貴殿を葬るのも厭わない。」
再び煙草に火をつけ、そう呟いた。
「いずれにしても、元帥。あなたの息子をしっかりと、言伝通りに…海軍の人間として育てましょうとも。」
幸造は、零が来るのを心待ちにしていた。
「元帥の息子たるや、指揮は既に…。いや、それでも私は託された。橘花零、貴殿を私の下で…
そう笑みを浮かべ、煙を吐き出した。
「では、私も準備しようか。」
そう言って、書類を取り出し仕事に戻るのであった。
その頃、雪の執務室では。
[雪さん、元気?]
「あぁ、ミラじゃないか!私は元気さ。」
受話器越しの相手とは。
雪が通っていた、軍学校時代の同級生であり。
「それよりも、
雪が問えば。
[何よ…元帥も奪還出来ずに、尻尾巻いて逃げ出した人なんて…姉とも思いたくないわ。誰が仲直りなんてするもんですか。]
「ロゼさんにも事情があったんだろうさ。少しくらい、話をしてみた方が良いんじゃないかい?」
沖崎・ロゼ・フリューゲルの妹。
[…そんなことくらい、わかってるつもりよ。]
沖崎・ミラ・フリューゲルは、雪の提案を肯定とも取れるように、そう答えた。
「ふふっ。今度、話でも聞いてあげるよ。それより、元帥奪還作戦の詳細は、私達の知らない話さ。憶測よりも、事実が…いや、式条前元帥奪還の話は、瑞鳳から少しだけ聞いたけれども。」
[聞いたってどういう…?瑞鳳って、ロゼのとこに居た瑞鳳?]
「あぁ、そうさ。聞いた経緯は…少し複雑なのだけれどね。」
雪が呆れっぽく、されど感傷に浸るように。
「瑞鳳と喧嘩をしたのは、今回が初めてかもしれないな。あの子は…艦娘として生まれ変わった事を、
それだけ言えば。
[なんだか読み取れないけれど、零君がそっちに居るのね。それで、瑞鳳とケンカ…え…?零君?!零君がそっちに居るの?!]
ミラは取り乱したように、大声を出す。
たまらず、雪は受話器を耳から離す。
「ミラ、落ち着いてくれ…。あぁ、居るとも。しかし、怪我が治り次第、横須賀の軍学校に向かわせる予定だよ。」
[あら、そうなの?そう…。今度、舞鶴と横須賀に顔でも出そうかしら。]
「舞鶴なら、ぜひ来てくれたら歓迎するよ。」
[楽しみにしてるわ。長電話に付き合わせたわね、今度会った時にでも話しましょ?お互い、積もる話もあるでしょうから。]
「あぁ、その日を楽しみにしてるよ。」
そうお互いに通話を切るが。
この約束が、果たされることは無い。
「
受話器を置いた雪は、一人そう呟く。
その笑顔は、
大変、お待たせしました。
作者の時間と都合が、中々仕事で合わず…。
更新ペースは落ちに落ちるかと思いますが…。
今後とも、読んで頂ければと思います…。