この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
更新速度が…リメイク前より遅れていますね…。
作者の実力不足です…。
申し訳無い限りです…。

それでは、本編どうぞ。


Episode-17

零が完治する二ヶ月前。

横須賀鎮守府大将、島永幸造に一本の連絡が入る。

 

[島永大将、海野です。]

 

「おぉ、海野か!どうした?」

 

相手は呉鎮守府大将、海野龍玄だった。。

幸造は龍玄の連絡に嬉しく思うも、"何かあるのでは"と勘繰るように訊く。

 

[実は、指宿が逃走しまして…。]

 

龍玄が申し訳無さそうに進言するも、幸造には既に伝わっており。

 

「そんなこと知っていようとも。何か別のことがあるんじゃないのか?」

 

幸造はできる限りの優しい声色で聞き出す。

そして、返ってきた龍玄の言葉が。

 

[元帥の息子、橘花零の完治が二ヶ月後とのことで、完治次第そちらに向かわせられないかと…海野少将より進言がありました。]

 

龍玄の説明に、幸造が目を丸くする。

 

「…()()()()()()()()()?」

 

真顔になり声を低くして、幸造は威圧する。

しかし、龍玄とて伊達に大将では無い。

その圧に負けぬよう、毅然と。

 

[時期尚早でも、元帥からの頼みもあります。それに、奴の息子ですから…海軍として、なんとしても守らねばなりませんでしょう?]

 

龍玄が確かめるように尋ねれば、幸造は電話越しに頷き。

 

「貴殿の言うことはもっともだ、良いだろう。こちらでも受け入れる準備をしておこうではないか。」

 

そう伝えれば、龍玄は安堵の溜息を吐くと。

 

[ありがとうございます。何卒、よろしくお願いします。]

 

「ぷっくくく!」

 

感謝と共に、零のことを委ねる。

それが幸造には面白かったのか、くつくつと笑いをこぼす。

 

[し、島永大将…?]

 

龍玄の唖然とせんばかりの声に、幸造は。

 

「なに、貴殿の息子でもあるまいに…その必死さは、親のソレに見えてな?くっくっく。」

 

そう、おどけて見せる。

 

[お、お戯れは程々にして頂きたく…。]

 

「なぁ、海野よ。」

 

呆れつつ言葉を選ぶ龍玄を遮り、幸造は声色を真剣なものにする。

 

「橘花零のことは任されようとも。しかし、()()()()()()()()()()()()()。」

 

尋ねる幸造の声に怒気が混じっているのが、受話器越しの龍玄には感じ取れた。

 

[…()宿()()()()()()()?それとも、()()()()()?]

 

()()()()()。何処で何を間違えたら、攫われただけの式条が深海側に就くんだ?指宿を仲間に引き込もうなどと、どうして考えたんだ…?沖崎が調べている最中だとは聞いたが…まさか、大本営に居る貴殿の隙を見るとは、厄介極まりないな。…呉は大丈夫なのか?」

 

矢継早に話す幸造の言葉をすべて記憶した龍玄は、整理しながら言葉を探す。

 

[式条が深海棲艦を連れて、大本営に現れました。その結果、相垣が深海棲艦の砲撃を真正面から受け、重症を負いました。それに準じて、式条が指宿を攫ったのが現状です。]

 

龍玄が説明するなり、幸造が低い声を出す。

 

「彼奴は何を考えて…いや、何を企んでいるんだ?」

 

[自分も一概に確信を持った事は言えませんが、式条が深海側にいる理由はおそらく、何か唆されたか…或いは本当に単なる裏切りか…何とも言えないのが現状です。沖崎・ロゼ・フリューゲルからの連絡を、自分も待っているところです。呉に至っては自分が留守の間だけ、鳴波見に任せてあります。鳴波見も佐世保があるというのに、二つ返事で承諾してくました。]

 

落ち着かせるような龍玄の言い方に、幸造が落ち着きを取り戻す。

 

「そうか。それならば、私からは何も責めるだけの打点は無いな。相わかった、その他諸々思う所はあるが…今は元帥の息子が生きていることを喜ばねばな。あの赤ん坊も、もう十二歳になっていたか。」

 

[…はい、本当に時が経つのは早いものです。]

 

零を知っている二人だからこその、会話でもある。

幸造がふと、龍玄の娘である雪のことも思い出す。

 

「貴殿の娘も、もう二十二を数えるのか。」

 

[おかげさまで、もうとっくに成人は終わってます。]

 

懐かしみを感じながら幸造が言えば、自身の娘のことだというのに、龍玄はただ礼を述べるだけだった。

 

「貴殿とここまで話したのも、久しぶりだったな。また日が合えば、呑みに行こうではないか。」

 

[はっ。その日をお待ちしております、島永教官。]

 

「うむ。」

 

龍玄のその言葉を聞き終え、幸造は受話器を置き。

 

「そうか…彼が来るのか。まだ子供だというのに、申し訳なさが勝るが…再会を心待ちにしようではないか。」

 

煙草に火を付け、椅子で天を仰ぐように背をもたれながら呟いた。

 

「失礼します…。」

 

「おぉ、由良ではないか。どうしたんだ?」

 

そんな折、秘書艦である由良が執務室のドアを開ける。

幸造は由良の何か言いたげな雰囲気を感じ取り、正面に向き直る。

 

「実は…北方方面に、深海棲艦の艦隊が向かっているのを確認したって情報が…。」

 

「何処からの情報だ?」

 

幸造が怪訝な顔で訊けば、由良が。

 

「遠征に向かった、()()()()()()()。」

 

と、顔を歪めながら伝える。

 

「北方…?大湊方面か?柳中佐がおるな。」

 

幸造は煙草の煙を吐きながら、答える。

その目は由良ではなく、天井を見つめていた。

 

「そうよ。あそこ、艦娘少ないじゃない?大丈夫かしら。」

 

「なに、柳とて海軍中佐だ。それに私は()()()()()()()()()()()()()()()()()…。」

 

由良の言葉に対し、そこまで答えたところで幸造は指で挟んでいた煙草を落とす。

煙草などお構い無しに、勢いよく由良へと視線を首ごと向ける。

 

「待て、由良よ。この横須賀の遠征組が、大湊へ向かっている敵艦隊を見ているのか?」

 

「さっきも言った通りよ。」

 

幸造は、自身の予想を上回っている事実に気付いた。

 

「ま、まさか…艦娘のいるルートを堂々と…?遠征ルートを即時変更する、大湊方面にすぐに向かわせるんだ!」

 

「はっ!」

 

その命令を受け由良は返事をするなり、急いで部屋を飛び出した。

この時、幸造の頭では。

 

「大湊警備府を潰して、海軍の動きを弱体化させるつもりか…。しかして、そうはさせんよ。大方、()()()()。貴殿も()()()()()()()()()()()()。」

 

龍玄と同じく、式条の息子が絡んでいるという考えを張り巡らせていた。

 

「元帥、あなたの予感と予想が当たり始めておりますな…。やはり私が、あなたについて行こうと決めた事は間違っていなかったようです。」

 

そう呟き、床に落としていた煙草を拾う。

 

「このような小さい火種が、大火事を起こしかねない。しかし、あなたが託したあの子という火種は、海軍の灯火になるのかも知れませんな…式条羽織を凌駕するような何かの。」

 

そう言いながら未だ火種の残る煙草を、灰皿に押し付け捨てた。

 

 

 

 

 

遠征艦隊は、と言えば。

 

「敵艦隊…()()()。」

 

遠征艦隊旗艦である、軽巡鬼怒が艦隊に通信する。

 

「ロスト…?見失ったの?電探の反応も?」

 

随伴艦の駆逐艦、霞が訊くも。

 

「完全に消えたのよ、完全にね…。」

 

「鬼怒さん…。」

 

同じく随伴艦の朝潮も、心配のあまり鬼怒を見る。

 

「本当ね、私の電探にも反応は無いわ。」

 

試しに霞が試みるも、同じく敵影の反応は無かった。

 

「すぐに提督に通達するよ、逃げられたってね。」

 

そう言った鬼怒の顔は、不甲斐なさ所以の険しさを醸し出していた。

遠征艦隊であり、組み込まれている艦娘自体も少ない。

いざ対峙したとしても、増援まで時間稼ぎができるかも怪しい。

そんなことは、旗艦である鬼怒もわかっていた。

 

「遠征じゃなければ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。」

 

鬼怒は唇を噛み締めながら、悔しさを顕にした。

諦めて帰投しようとした艦隊に、通信が入る。

 

[こちら大淀、遠征艦隊に通達。確認した敵艦隊を、大湊に入る前に迎撃す…。]

 

「大淀さん、()()()()()()()()()()。」

 

大淀の言葉を、鬼怒が途中で遮る。

 

「追ってる途中で、完全にロストしたんだよね…。()()()()()()()()()。電探にも反応無し。」

 

[え?]

 

鬼怒が説明するも、大淀には理解が追いついていないのは全員がわかっていた。

 

「鬼怒さんの言う通りよ?私も試したけど駄目だった。」

 

霞がそう言うと、大淀は少し悩んだあと。

 

[わ、わかりました。一度、そのまま帰投してください。]

 

「「了解。」」

 

大淀が帰投命令を出せば、全員が従った。

そして、鬼怒の率いる艦隊が帰投し、執務室で説明する。

幸造が一連を耳にすると。

 

「そうか、遠征だというのにご苦労だった。何とも怪しい動きを見せてくるな…。しばらくは哨戒も視野に入れよう、ゆっくり休んでくれ。」

 

「「失礼します。」」

 

全員が出た後。

幸造は考え込むように、机上をトントンと指で叩く。

 

「ふむ、妙なことをしてくるな。しかし、()()()()()()()()()()()…これまた面妖な。」

 

幸造にも不可思議でしか無い出来事だった。

零の編入の話の最中での出来事。

幸造には、どうにも引っ掛ける節を拭えなかった。

 

「何もこの先に、起きなければいいが…。」

 

幸造の不安が別の形で現実となるのは、本人もまだ知らない。

 

「式条…。貴殿の身に一体何があったのかは知らんが、何をしようとしておるんだ?橘花元帥を奪還する為なら、容赦なく貴殿を葬るのも厭わない。」

 

再び煙草に火をつけ、そう呟いた。

 

「いずれにしても、元帥。あなたの息子をしっかりと、言伝通りに…海軍の人間として育てましょうとも。」

 

幸造は、零が来るのを心待ちにしていた。

 

「元帥の息子たるや、指揮は既に…。いや、それでも私は託された。橘花零、貴殿を私の下で…()()()()()()()()()()()。」

 

そう笑みを浮かべ、煙を吐き出した。

 

「では、私も準備しようか。」

 

そう言って、書類を取り出し仕事に戻るのであった。

 

 

 

その頃、雪の執務室では。

 

[雪さん、元気?]

 

「あぁ、ミラじゃないか!私は元気さ。」

 

受話器越しの相手とは。

雪が通っていた、軍学校時代の同級生であり。

 

「それよりも、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

雪が問えば。

 

[何よ…元帥も奪還出来ずに、尻尾巻いて逃げ出した人なんて…姉とも思いたくないわ。誰が仲直りなんてするもんですか。]

 

「ロゼさんにも事情があったんだろうさ。少しくらい、話をしてみた方が良いんじゃないかい?」

 

沖崎・ロゼ・フリューゲルの妹。

 

[…そんなことくらい、わかってるつもりよ。]

 

沖崎・ミラ・フリューゲルは、雪の提案を肯定とも取れるように、そう答えた。

 

「ふふっ。今度、話でも聞いてあげるよ。それより、元帥奪還作戦の詳細は、私達の知らない話さ。憶測よりも、事実が…いや、式条前元帥奪還の話は、瑞鳳から少しだけ聞いたけれども。」

 

[聞いたってどういう…?瑞鳳って、ロゼのとこに居た瑞鳳?]

 

「あぁ、そうさ。聞いた経緯は…少し複雑なのだけれどね。」

 

雪が呆れっぽく、されど感傷に浸るように。

 

「瑞鳳と喧嘩をしたのは、今回が初めてかもしれないな。あの子は…艦娘として生まれ変わった事を、()()()()()()()()()()()()()()。零君との一件で、二人で言い合えたのは、いい経験だったと言えばそうかもね。」

 

それだけ言えば。

 

[なんだか読み取れないけれど、零君がそっちに居るのね。それで、瑞鳳とケンカ…え…?零君?!零君がそっちに居るの?!]

 

ミラは取り乱したように、大声を出す。

たまらず、雪は受話器を耳から離す。

 

「ミラ、落ち着いてくれ…。あぁ、居るとも。しかし、怪我が治り次第、横須賀の軍学校に向かわせる予定だよ。」

 

[あら、そうなの?そう…。今度、舞鶴と横須賀に顔でも出そうかしら。]

 

「舞鶴なら、ぜひ来てくれたら歓迎するよ。」

 

[楽しみにしてるわ。長電話に付き合わせたわね、今度会った時にでも話しましょ?お互い、積もる話もあるでしょうから。]

 

「あぁ、その日を楽しみにしてるよ。」

 

そうお互いに通話を切るが。

この約束が、果たされることは無い。

 

()()()()()()()()…ね。」

 

受話器を置いた雪は、一人そう呟く。

その笑顔は、()()()()()()()()()()()

 




大変、お待たせしました。
作者の時間と都合が、中々仕事で合わず…。
更新ペースは落ちに落ちるかと思いますが…。
今後とも、読んで頂ければと思います…。
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