この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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明けましておめでとうございます。
大変、長らくお待たせしました。

それでは、本編どうぞ。


Episode-18

零が居なくなった舞鶴では、変わらずに任務が立て込んでいた。

それは雪だけではなく、艦娘達もだった。

 

「零君も居なくなって、すっかり鎮守府も静かになったわね。あの子はそろそろ到着した頃かしら?」

 

哨戒任務に出ている五十鈴の率いる艦隊は、大海原を駆けていた。

旗艦である五十鈴が、すぐ後ろに付いている曙に振り向きながら尋ねる。

 

「忙しいのには変わりないわね…。横須賀なら、船で六時間くらいだと思うけど?」

 

曙が顎に手を当て、空を見るように言っていた時。

おびただしい電探の反応に、曙は冷や汗をかく。

 

「電探に反応あり!何よこれ…!多数の深海棲艦よ!」

 

即座に考えるのをやめ、全艦に伝える。

それを受け、この場の艦娘達は臨戦態勢に入り、そのまま体感で数キロ走った先だった。

 

「敵艦隊見ゆ!!」

 

五十鈴が声を上げる。

深海棲艦が群れを成しているのが、全員に見えた。

砲撃の轟音まで聞こえ、暁は不審に思った。

 

(なんで()()()()()()?)

 

そのまま艦娘元来の視力を頼りに、目を凝らして見れば。

 

「見て!艦娘が一隻で応戦してるわ!」

 

艦娘がたった一隻で応戦しているとわかるなり、暁は声を上げる。

 

「一隻?!」

 

雷までもがそれに驚き、自身の目でも確かめる。

 

「本当だわ。戦艦…?あれは…山城さん!!ボロボロじゃない!急いで援護しなきゃ!」

 

その応戦していた艦娘、戦艦山城は誰の目から見ても、満身創痍だった。

雷は艦隊を置いて行くかのように、最大戦速で向かう。

 

「雷!あんただけで何をする気よ!」

 

五十鈴が追うように駆け出す。

 

「旗艦が突っ走ってどうするの!?」

 

堪らず暁が、五十鈴に怒声を浴びせる。

そんな中でも、翔鶴と瑞鳳の二隻は落ち着いていた。

 

「瑞鳳さん、爆撃機は出せますか?」

 

翔鶴が弓を構えながら後ろを振り返り、瑞鳳に目線をも向けながら訊けば、その瑞鳳は既に矢を番えていた。

 

「はい、もちろん♪」

 

その上機嫌な言葉とは裏腹に、目は真剣である。

翔鶴はそれを確認すると、自身も矢を番える。

 

「「攻撃隊!!発艦!!」」

 

二人の声が重なり放たれた矢は、爆撃機"零式艦戦六二型"へと変わる。

プロペラ機特有の飛行音を鳴らしながら、放たれた艦載機は敵艦隊に向かって、一直線に編隊を成しながら飛ぶ。

 

プロペラ音が聞こえるなり、雷を追いかけていた足を止め、五十鈴は旗艦として各自に指示を出す。

 

「翔鶴さんと、瑞鳳が発艦したわ!夾叉に注意して散開よ!」

 

「「了解!」」

 

単艦で突貫しようとしていた雷も、五十鈴の指示により隊列へと合流を始める。

 

「駆逐艦は、私が合図したら魚雷発射!それまでは、()()()()()()()()()()()()()()()()!空母の二人は、()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「「了解!」」

 

雷が合流したのを確認し、五十鈴は敵艦隊へと向き直る。

 

「五十鈴さんは?」

 

曙がふと、五十鈴を見やる。

五十鈴は既に、敵艦隊へと歩を進めていた。

その問いに振り向きざまに。

 

「私は…()()()()()()()()()!」

 

短くそう答えたかと思えば、五十鈴は敵艦隊へと、魚雷を構えながら向かった。

その速度は、()()()()()()

 

「バカね、この五十鈴から逃げられるわけ無いじゃない。」

 

魚雷ではなく、主砲を構え。

 

「こっちよ、おバカさん達…!」

 

敵艦隊を翻弄するべく、正面にまで迫った駆逐イ級を砲撃する。

 

「グオオォォ!!」

 

被弾した一隻のイ級の雄叫びを皮切りに、一斉に山城から標的を五十鈴へと移す。

 

「さぁ、かかってらっしゃい!」

 

砲撃を繰り返しながら、敵艦隊の注意を惹き付けるなり。

 

「今よ!!全艦!一斉魚雷発射!!」

 

「お子様言うなぁー!」

 

「不死鳥の名は伊達じゃない…!」

 

「これでも食らいなさい!」

 

五十鈴の合図を皮切りに、暁、雷、曙の三隻が発射する。

魚雷の影を確認した五十鈴は、()()()()()()()()()()()()()()()()()、そのまま最大戦速に切り替えて後退する。

 

それとほぼ同時、一斉に放たれた魚雷が敵艦隊を襲う。

敵艦隊のイ級を始めとする駆逐艦が、魚雷の餌食となり。

次々と黒煙と断末魔を上げながら、轟沈する。

 

翔鶴と瑞鳳の放った艦載機も爆撃を繰り返せば、群れを成していた随伴艦の半数以上が、同じく海中へと沈んでゆく。

 

更には、五十鈴の放った魚雷。

それは旗艦であるル級を、時間差で大破に追い込んだ。

爆撃に気を取られ、自身に迫る魚雷に気付かなかったル級には、為す術が無かったのだ。

 

「グゥゥゥ!!」

 

流石の戦艦でも、堪えきれずに海面で膝をつく。

これこそ、五十鈴が高速航行しなかった狙いである。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。でもね?困らない程度のスピードなら、何時でも止まれるわ。それにあの時、私が射出した魚雷は別方向だったから、旗艦のくせにル級…あんた、()()()()()()()()()()()()()()()()()()?だからあんた達、深海棲艦は頭が弱いだけ(おバカさん)なのよ。」

 

自身の計算が功を奏するなり、五十鈴は不敵な笑みを浮かべながら、腰に手を当てて語りかけるように敵を愚弄する。

 

「さすが五十鈴さんね!レディだわ!」

 

「突っ切ったかと思えば、そんな作戦を…。」

 

「だって、舞鶴の軽巡筆頭だもん。ね!五十鈴さん!」

 

「そんなに褒められるようなことしてないわよ?」

 

駆逐艦達に褒められ得意気になっている五十鈴のもとへと。

辺りの深海棲艦の残骸を見回しながら、山城はおぼつかない足取りで歩を進める。

そして。

 

「あ…あなた達は何処の…?」

 

山城が限界であろう艤装を軋ませながら、五十鈴達を見る。

目の合った五十鈴は、片目を瞑りながら。

 

「私達の所属は舞鶴鎮守府よ、山城さん。」

 

満身創痍の山城を安心させるように、落ち着いた声色で説明する。

 

「翔鶴さん、山城さんを曳航出来るかしら?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。」

 

五十鈴が山城の自力航行は困難と判断し、馬力がありそうな翔鶴に声をかければ、翔鶴は二つ返事で了承した。

 

「話はまた後でね?私たちは、残りをさっさと退治してくるわ。」

 

そう言って、随伴艦を連れて息も絶え絶えなル級を見下ろす。

 

「さてと、落とし前つけるわよ。」

 

五十鈴はそのまま、砲口を向ける。

それを合図と受け取り、暁、雷、曙は深海棲艦の残党に同じく砲塔の照準を合わせる。

五十鈴は大きく息を吐き、気合いとばかりに声を張り上げる。

 

「全艦!!一斉射!!」

 

そのまま砲撃を喰らわす。

一斉射撃により、次々と砲弾の餌食になる深海棲艦。

反撃の余地も隙も、艦娘達は与えなかった。

これもまた、五十鈴の目論見であった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

五十鈴が砲撃しながら呟く。

体感にして数十分後。

全艦が一斉射撃を止め、煙幕が落ち着くのを待つ。

 

「どうかしら?」

 

雷が目を凝らす。

 

「「グオオオォォォォ…。」」

 

視界が良好になり見てみれば、深海棲艦の残党は断末魔を上げながら轟沈していた。

その中に、ル級の姿もある。

 

「まだよ、まだ気は抜けないわ。」

 

暁は警戒を怠らないでいた。

 

「瑞鳳、念の為に彩雲を飛ばして。」

 

暁の心配を払拭する為、五十鈴が瑞鳳に索敵の指示を出す。

 

「はい♪」

 

瑞鳳が爆撃機を戻し、彩雲を飛ばす。

海上を何周か回ったあと、彩雲が瑞鳳の甲板へと戻る。

 

「敵影、ありません♪私達の勝利です♪」

 

瑞鳳が声高らかに言えば。

 

「「勝ったぁー!!」」

 

全員が、ハイタッチを交わしていた。

その一部始終を見ていた山城は。

 

「すごい連携ね…。」

 

感嘆の声を漏らしていた。

山城の呟きに気付き、翔鶴が曳航の準備をしながら。

 

「ふふっ。言うなれば五十鈴さんは、舞鶴の切込隊長ですからね。戦場での指揮も、提督からの作戦指示だけでどうにかしてしまいます。…一度だけ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()いるのでしょう。さ、準備出来ましたよ。」

 

翔鶴が笑顔を向け、山城にそんなことを口にしてみれば、山城は面食らったような顔をする。

 

「そう。舞鶴、海野少将の…。やはり驚きね…。」

 

山城は呟きながら、一人感嘆していた。

 

「舞鶴に通信するわよ。」

 

そう言って、曙が大淀へと通信する。

その間に、全員が帰投準備を始める。

 

「こちら曙よ。哨戒中に艦娘が一隻で応戦してるところを救助、敵は全滅。その艦娘を連れて、これより艦隊帰投に入るわ。」

 

[こちら大淀です。了解しました、提督にもお伝えしておきます。気をつけて帰ってきてください。]

 

曙は通信が終わり、息をつく。

五十鈴が通信の終了を確認し、帰投しながら山城に問いかける。

 

「山城さん、とりあえず話は後…と言いたいところだけど、なんで一隻なの?鎮守府所属でしょ?」

 

山城が鎮守府所属だと、断言出来た理由。

それは、五十鈴の眼前で翔鶴に曳航されている山城が、改装されているからであった。

その山城は、俯き気味に。

 

「提督から言われたのよ…。"何も聞かず、単艦での出撃をお願いしたい"。ってね…。」

 

そう悲壮とも言えるように吐けば、全員が呆気に取られる。

 

「はぁ?じゃあ、何?アンタのとこの提督がクソ提督ってことなの?そしたら、私達が乗り込んでやるわよ!」

 

曙が怒鳴れば、山城は限界であるはずの身体をもろともせずに。

 

「バカ言わないで頂戴!!提督はそんな酷い人じゃないわよ!!知ったようなことを言わないで!!」

 

曙を怒鳴りつける。

怒鳴られ、萎縮する曙は。

 

「わ、悪かったわね…。何か理由があったの?」

 

何とか言葉を続け、山城の顔を見る。

 

「理由は私にもわからない…。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

その寂しそうとも、悲壮とも言える顔に、曙は言葉を出せない。

殿を務め、山城の真後ろに居る瑞鳳が口を開く。

 

「うーん…。何かの作戦かなぁ?帰ったら提督に確認するのが、一番かもね?」

 

瑞鳳が言えば、他の全員も頷く。

 

「司令官ならきっと、()()()()()()()()()()()()()。」

 

暁が神妙な顔つきで呟く。

 

「暁?どうしたの?」

 

様子が気になり、雷が声をかける。

 

「司令官の情報網が広いのは、みんな知ってるでしょ?だから司令官なら、()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

暁が見解を示す。

 

「確かに、私一人だけというか艦娘単艦なんて、そんな作戦…今まで提督はやらなかったわ。」

 

山城がその見解を肯定するかのように、考えを巡らせる。

 

「そういえば、山城さんはどこの鎮守府なの?」

 

雷が思い出したように、山城に訊く。

 

「私は、大湊警備府所属よ。」

 

「「え?!ここ()()()()()()()?!」」

 

これには、全員が驚愕した。

 

「なんでわざわざ…。」

 

五十鈴が額に手を当て、考える。

 

「言ったでしょ?"単艦で出撃してほしい"って指示だったのよ。その向かって欲しいって言われた場所が、"()()"だったのよ。」

 

山城が腕を組みながら、面々を見る。

 

「「最初に言ってよ!!」」

 

全員がすかさずツッコミを入れる。

 

「そうね、肝心なところを忘れてたわ…。」

 

山城は反省の色を見せる。

 

「まぁ、無事で良かったわ。これは提督に会わせるしか無くなったわね。」

 

五十鈴は真剣な顔をする。

 

「良かったですね、山城さん。苦労が報われますよ?」

 

「えぇ、あなた達には感謝してるわ。」

 

翔鶴の言葉に、山城は素直に礼を述べた。

一行はそのまま鎮守府へと、帰路に着いた。




如何だったでしょうか?
それでは、また次回に。
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