この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
UAを確認したら、3400を突破していて驚きました。
読んで頂いてる皆様、本当にありがとうございます。

それでは、本編どうぞ。


Episode-19

艦隊帰投の五十鈴達が港に入れば。

 

「あぁ、お帰り。ご苦労さま。」

 

雪が既に、出迎えで姿を現していた。

 

「あら、提督が出迎えなんて珍しいじゃない!どうしたの?」

 

これに驚いた五十鈴が、目を丸くしながら訊く。

 

「これと言って、大した理由じゃないよ。艦娘を一人救助したって聞いたから、どんなものかと思ってね。」

 

雪が山城を見る。

 

「山城、君だったか。取り敢えず、話は後にしよう。随分と派手にやられたみたいだし、先に入渠しておいで。」

 

山城の被害状況を確認し、雪が入渠を促す。

しかし、その山城は艤装を解除したかと思えば。

 

「そんな暇はありません!早く提督を...!」

 

山城は目的地である舞鶴に到着し、安堵はしたものの。

胸中は、焦燥に苛まれていた。

雪は落ち着かせるように、軍帽を取り。

 

「心配はしなくていい。話は聞かせて貰うし、その後の対応策も考えるよ。まずは、()()()()()()()()()()...ね?」

 

山城の肩に手を置き、笑顔ながらに片目を瞑る。

物を言わせぬ雪の言葉に、山城は口を噤む。

 

「...わかりました。では、お言葉に甘えさせて頂きます。」

 

「あと入渠が必要なのは、()()。」

 

雪が曙を見る。

 

「え?私?」

 

雪に言われ、曙は全身を見回すように確認する。

 

「ほんとね、脚から血が出てるわ。」

 

見れば曙の右太腿は、足の甲にかけて血を伝わせていた。

 

「いつ怪我したのかしらね…。」

 

皆目見当も付かない曙は、考える。

すると、思い当たる節が一つだけ思い浮かんだ。

 

「あ、魚雷一斉発射のときに艤装が引っ掛かったんだった。」

 

曙は舌を出して、戯ける。

それを隣で聞いていた暁は。

 

「…撃たれたんじゃなくて良かった。」

 

俯きながら、ポツリと呟いた。

 

「それならついでに、山城さんをドックまで案内するわ。」

 

暁の呟きを掻き消すように、曙が山城の腕を引きながら声をかける。

 

「クソて…提督、それでいいでしょ?」

 

"クソ提督"と言いかけ、途中で何とか誤魔化す。

その進言に、雪は頷き。

 

「うん、それでお願いしようかな。それと、"クソ提督"で申し訳ないね…()()()()()()()()。」

 

雪にはしっかり聞こえており、曙は顔を青くして。

 

「ち、違うのよ!これは…クセというか…勝手に…!」

 

曙の慌てる様子がおかしいのか、雪は微笑む。

 

「それだけの元気があれば、大丈夫そうだね。さ、二人で入渠しておいで。その後で、執務室に来るように。」

 

「了解よ。」

 

「お言葉に甘えますね。」

 

雪が曙と山城に促せば、2人はそれぞれ返事をして、ドックに向かった。

「さて、他は出撃報告…の前に、夕食を済ませてくれ。話はそれからにしよう。」

 

「「はっ!!」」

 

雪の指示に全員が敬礼をして、港を後にする。

 

「最近は何かと忙しいなぁ。」

 

考えるように額に手を当てながら、雪は何とも言えない表情でボヤき、艦娘達の後に付いて行った。

 

 

 

 

 

「舞鶴のドックって、広いのね?」

 

曙とドックに来た山城は、その広さに驚いていた。

 

「うちのクソ提督が頑張ってる証拠ね。」

 

そう言いながら曙は、浴槽から桶に汲んだ湯を肩にかける。

山城は首を傾げ不思議そうな顔をする。

 

「あなた達だって頑張ってるじゃない。海野少将は確かに、凄い人かもしれないけど。」

 

言葉を返しながら、同じく桶の湯を肩に流す。

ふと、曙を見る。

山城が見た曙は、神妙な顔をしていた。

 

「どうしたの?」

 

気になり、山城は曙の顔を覗き込む。

 

「私が前まで居た鎮守府では、入渠もまともに出来ないくらい戦況が圧迫していたの。」

 

曙は湯に浸かりながら、ため息混じりに話し始める。

話の続きが気になり、山城も曙の隣で湯に浸かる。

 

(きっと私が、口を挟めるはずないわね。)

 

山城はそう悟り、静かに耳だけを傾けた。

 

「あの鎮守府は、艦娘がとにかく足りなかった。それなのに…その時のクソ提督は、建造もしないで開発にばかり力を入れてたわ。」

 

曙は遠くを見るように、天井を見上げる。

 

「空母にばかり負担が掛かって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

山城は閉じていた口を開き、ふと気になることを訊く。

 

「曙さんの居た鎮守府って…?」

 

山城には、思い当たる節があった。

曙は隣の山城を見やりながら、ぶっきらぼうに答える。

 

()()()。大湊警備府よ、今は提督も代わったみたいだけどね。」

 

「私が来る前に居たんですね…。」

 

山城は自身の予感が当たったことに、焦りすら覚える。

曙と目が合うも、気まずさから山城は逸らす。

 

「別に、山城さんが気に病むことは無いわよ。今はどんな人がやってるの?」

 

曙が訊けば、山城は笑顔で。

 

「少ない艦娘の中ででも、戦術をしっかり編み出した上で作戦指揮をしてくれるような人よ?最近だけど、艦娘も増えたわ。」

 

そう告げれば、曙は目を見開く。

 

「今の提督の名前は?」

 

曙の心配そうな声に、山城は尚も笑顔を見せる。

 

柳砂紋(やなぎさもん)中佐。意外といい人よ?」

 

これに曙は、心底驚いた。

 

「これは驚き。山城さんは、扶桑さんにしか興味ないのかと思ってた。」

 

「私だって艦娘よ?そんな四六時中だなんてことは無いわよ…。」

 

その悪態に呆れ混じりで、山城が仕返しとばかりに訊く。

 

()()()()()()()?」

 

曙は、風呂の湯を手に掬いながら。

 

「…帆潟荒峰(ほがたあらみね)大将。今は引退したのかしらね?名前も聞かないわよ。」

 

そこまで言い終え、手に掬った湯を顔にかける。

 

「大将だからって、ふんぞり返ってた記憶しかないのよね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

そこまで言って、山城の顔を見る。

 

「私の時とは違ってまともな今の提督が、山城さんを単艦で出撃させるなんてどういうワケなの?ほんとに何も知らないの?心当たりは?」

 

険しい顔で問いかけられ、山城はたじろぐ。

曙の剣幕に圧され俯き、目を逸らしながら。

 

「道中で説明した通りよ…。ほんとに、私は何も聞かされてない。ただ、切羽詰まっていたのだけわかったわ。それも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()…ね。」

 

ありのままを伝えた。

 

「そう…。うちのクソ提督なら、話を聞く以上のことをしてくれるわ。そこだけは確実に約束できるから、安心して頂戴。落ち着いたら、出て来てね?高速修復材が混ざってるから、とっくに傷は癒えてるはずよ。」

 

曙は一足先に湯船から出るなり、振り向きざまに教えた。

1人になり、山城は考える。

しかし、思考は冷静なれど考えは纏まらない。

こればかりは、大人しく雪に頼ろうと考えた。

 

『山城、ごめん。曲がりなりにも戦艦のお前なら、単艦でも耐えられるはずだ。とにかく、舞鶴に向かってくれ。低速で辛いだろうが、無事に辿り付けたら…海野少将に、大湊に向かうよう伝えて欲しい。』

 

「瑞鶴さんの偵察機は一体…何を見つけたのかしら…。」

 

砂紋の言伝を胸中に刻みながら、山城も湯船を出た。

 

 

 

 

 

着替えも済み、ドックを後にした山城は執務室を探す。

 

「こっちよ。」

 

廊下で待っていた曙が、山城に声を掛ける。

 

「居てくれたのね。」

 

「当たり前でしょ?他所の鎮守府を自由に歩けるなら、逆に驚きよ。こっちは案内も兼ねてるんだから。」

 

曙は腰に手を当て、溜息を吐く。

 

「クソ提督にちゃんと話すのよ?」

 

歩きながら、そう口にする。

山城は小さく頷き。

 

「頑張るわ…なんて不幸なのかしらね…。」

 

「何を今更、不幸気取ってるの?今の山城さん、安心してるように見えるわよ?」

 

山城は言われて初めて、自身が安堵していることに気付いた。

隣を歩く曙に、視線を向ける。

 

「何よ?」

 

その視線を曙は不思議に思い、不満を漏らす。

山城が歩みを止め、立ち止まり。

 

「ありがとう。」

 

膨れっ面の曙に、笑顔で感謝する。

 

「へ?!べ、別に、わ、私は!お礼を言われることなんて、し、してないわよ!」

 

顔を赤くし、曙は照れ隠しに大声で捲し立てた。

再び二人は歩き出し、しばらくして執務室が目前に迫る。

 

「山城さん、行ってらっしゃい。」

 

「えぇ、提督の言伝をしっかり伝えてくるわね。」

 

曙はそれだけを言うと、右手を振りそのまま踵を返した。

その背中を山城は見送り、ドアをノックする。

 

「海野少将、山城です。」

 

「うん、入っていいよ。」

 

雪の返事を確認し、山城は固唾を呑んでから入る。

 

「失礼します。」

 

山城の姿を見るなり、雪は軍帽を取り。

ゆっくりと、デスクから立ち上がる。

 

()()()()()()()()()。傷は癒えたかい?」

 

「はい、おかげさまで。」

 

「そうか。さて、会った時は焦っていた君も、落ち着きを取り戻しているようで安心したよ。」

 

山城に近づき、その頭に雪は手を置く。

そして眼差しを強いモノへと変える。

山城は貫かれたような感覚に陥り、鋭い眼光を見れば見るほどに。

 

「…っ。」

 

 

――()()()()()()()()

 

 

 

否、全てを語らねばならないと、艦娘の第六感…もとい、本能が訴える。

 

(私を殺そうとでも思ってるかのようね…。)

 

"これは穏やかじゃない"、そう山城の生存本能が騒音のように脳を響かせる。

 

「何があったのか、私に詳しく教えてくれ。勿論、君の知っている範疇でいい。」

 

そんな山城のことなどお構いなしに、未だ眼光はそのままの雪。

にも関わらず、声は優しさを纏っている。

故に、山城は。

 

「あ、あの…その…。」

 

言葉を詰まらせる

追い詰められている、そう感じた山城は思考を放棄していた。

 

取って食おう(処罰を与える)というわけじゃないさ。単刀直入に聞こう…君の鎮守府で何が起きていて、君は何処の所属なんだい?」

 

雪は山城を試すように、尚も殺気をそのままに訊く。

 

「私は柳砂紋中佐の預かる、大湊警備府所属です。」

 

山城は額の汗を拭い、話し始めた。




如何だったでしょうか?
更新が遅くて、申し訳ありません。
何とか、今月中に仕上げられました…。

それでは、また次回に。
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