UAを確認したら、3400を突破していて驚きました。
読んで頂いてる皆様、本当にありがとうございます。
それでは、本編どうぞ。
艦隊帰投の五十鈴達が港に入れば。
「あぁ、お帰り。ご苦労さま。」
雪が既に、出迎えで姿を現していた。
「あら、提督が出迎えなんて珍しいじゃない!どうしたの?」
これに驚いた五十鈴が、目を丸くしながら訊く。
「これと言って、大した理由じゃないよ。艦娘を一人救助したって聞いたから、どんなものかと思ってね。」
雪が山城を見る。
「山城、君だったか。取り敢えず、話は後にしよう。随分と派手にやられたみたいだし、先に入渠しておいで。」
山城の被害状況を確認し、雪が入渠を促す。
しかし、その山城は艤装を解除したかと思えば。
「そんな暇はありません!早く提督を...!」
山城は目的地である舞鶴に到着し、安堵はしたものの。
胸中は、焦燥に苛まれていた。
雪は落ち着かせるように、軍帽を取り。
「心配はしなくていい。話は聞かせて貰うし、その後の対応策も考えるよ。まずは、
山城の肩に手を置き、笑顔ながらに片目を瞑る。
物を言わせぬ雪の言葉に、山城は口を噤む。
「...わかりました。では、お言葉に甘えさせて頂きます。」
「あと入渠が必要なのは、
雪が曙を見る。
「え?私?」
雪に言われ、曙は全身を見回すように確認する。
「ほんとね、脚から血が出てるわ。」
見れば曙の右太腿は、足の甲にかけて血を伝わせていた。
「いつ怪我したのかしらね…。」
皆目見当も付かない曙は、考える。
すると、思い当たる節が一つだけ思い浮かんだ。
「あ、魚雷一斉発射のときに艤装が引っ掛かったんだった。」
曙は舌を出して、戯ける。
それを隣で聞いていた暁は。
「…撃たれたんじゃなくて良かった。」
俯きながら、ポツリと呟いた。
「それならついでに、山城さんをドックまで案内するわ。」
暁の呟きを掻き消すように、曙が山城の腕を引きながら声をかける。
「クソて…提督、それでいいでしょ?」
"クソ提督"と言いかけ、途中で何とか誤魔化す。
その進言に、雪は頷き。
「うん、それでお願いしようかな。それと、"クソ提督"で申し訳ないね…
雪にはしっかり聞こえており、曙は顔を青くして。
「ち、違うのよ!これは…クセというか…勝手に…!」
曙の慌てる様子がおかしいのか、雪は微笑む。
「それだけの元気があれば、大丈夫そうだね。さ、二人で入渠しておいで。その後で、執務室に来るように。」
「了解よ。」
「お言葉に甘えますね。」
雪が曙と山城に促せば、2人はそれぞれ返事をして、ドックに向かった。
「さて、他は出撃報告…の前に、夕食を済ませてくれ。話はそれからにしよう。」
「「はっ!!」」
雪の指示に全員が敬礼をして、港を後にする。
「最近は何かと忙しいなぁ。」
考えるように額に手を当てながら、雪は何とも言えない表情でボヤき、艦娘達の後に付いて行った。
「舞鶴のドックって、広いのね?」
曙とドックに来た山城は、その広さに驚いていた。
「うちのクソ提督が頑張ってる証拠ね。」
そう言いながら曙は、浴槽から桶に汲んだ湯を肩にかける。
山城は首を傾げ不思議そうな顔をする。
「あなた達だって頑張ってるじゃない。海野少将は確かに、凄い人かもしれないけど。」
言葉を返しながら、同じく桶の湯を肩に流す。
ふと、曙を見る。
山城が見た曙は、神妙な顔をしていた。
「どうしたの?」
気になり、山城は曙の顔を覗き込む。
「私が前まで居た鎮守府では、入渠もまともに出来ないくらい戦況が圧迫していたの。」
曙は湯に浸かりながら、ため息混じりに話し始める。
話の続きが気になり、山城も曙の隣で湯に浸かる。
(きっと私が、口を挟めるはずないわね。)
山城はそう悟り、静かに耳だけを傾けた。
「あの鎮守府は、艦娘がとにかく足りなかった。それなのに…その時のクソ提督は、建造もしないで開発にばかり力を入れてたわ。」
曙は遠くを見るように、天井を見上げる。
「空母にばかり負担が掛かって、
山城は閉じていた口を開き、ふと気になることを訊く。
「曙さんの居た鎮守府って…?」
山城には、思い当たる節があった。
曙は隣の山城を見やりながら、ぶっきらぼうに答える。
「
「私が来る前に居たんですね…。」
山城は自身の予感が当たったことに、焦りすら覚える。
曙と目が合うも、気まずさから山城は逸らす。
「別に、山城さんが気に病むことは無いわよ。今はどんな人がやってるの?」
曙が訊けば、山城は笑顔で。
「少ない艦娘の中ででも、戦術をしっかり編み出した上で作戦指揮をしてくれるような人よ?最近だけど、艦娘も増えたわ。」
そう告げれば、曙は目を見開く。
「今の提督の名前は?」
曙の心配そうな声に、山城は尚も笑顔を見せる。
「
これに曙は、心底驚いた。
「これは驚き。山城さんは、扶桑さんにしか興味ないのかと思ってた。」
「私だって艦娘よ?そんな四六時中だなんてことは無いわよ…。」
その悪態に呆れ混じりで、山城が仕返しとばかりに訊く。
「
曙は、風呂の湯を手に掬いながら。
「…
そこまで言い終え、手に掬った湯を顔にかける。
「大将だからって、ふんぞり返ってた記憶しかないのよね。
そこまで言って、山城の顔を見る。
「私の時とは違ってまともな今の提督が、山城さんを単艦で出撃させるなんてどういうワケなの?ほんとに何も知らないの?心当たりは?」
険しい顔で問いかけられ、山城はたじろぐ。
曙の剣幕に圧され俯き、目を逸らしながら。
「道中で説明した通りよ…。ほんとに、私は何も聞かされてない。ただ、切羽詰まっていたのだけわかったわ。それも、
ありのままを伝えた。
「そう…。うちのクソ提督なら、話を聞く以上のことをしてくれるわ。そこだけは確実に約束できるから、安心して頂戴。落ち着いたら、出て来てね?高速修復材が混ざってるから、とっくに傷は癒えてるはずよ。」
曙は一足先に湯船から出るなり、振り向きざまに教えた。
1人になり、山城は考える。
しかし、思考は冷静なれど考えは纏まらない。
こればかりは、大人しく雪に頼ろうと考えた。
『山城、ごめん。曲がりなりにも戦艦のお前なら、単艦でも耐えられるはずだ。とにかく、舞鶴に向かってくれ。低速で辛いだろうが、無事に辿り付けたら…海野少将に、大湊に向かうよう伝えて欲しい。』
「瑞鶴さんの偵察機は一体…何を見つけたのかしら…。」
砂紋の言伝を胸中に刻みながら、山城も湯船を出た。
着替えも済み、ドックを後にした山城は執務室を探す。
「こっちよ。」
廊下で待っていた曙が、山城に声を掛ける。
「居てくれたのね。」
「当たり前でしょ?他所の鎮守府を自由に歩けるなら、逆に驚きよ。こっちは案内も兼ねてるんだから。」
曙は腰に手を当て、溜息を吐く。
「クソ提督にちゃんと話すのよ?」
歩きながら、そう口にする。
山城は小さく頷き。
「頑張るわ…なんて不幸なのかしらね…。」
「何を今更、不幸気取ってるの?今の山城さん、安心してるように見えるわよ?」
山城は言われて初めて、自身が安堵していることに気付いた。
隣を歩く曙に、視線を向ける。
「何よ?」
その視線を曙は不思議に思い、不満を漏らす。
山城が歩みを止め、立ち止まり。
「ありがとう。」
膨れっ面の曙に、笑顔で感謝する。
「へ?!べ、別に、わ、私は!お礼を言われることなんて、し、してないわよ!」
顔を赤くし、曙は照れ隠しに大声で捲し立てた。
再び二人は歩き出し、しばらくして執務室が目前に迫る。
「山城さん、行ってらっしゃい。」
「えぇ、提督の言伝をしっかり伝えてくるわね。」
曙はそれだけを言うと、右手を振りそのまま踵を返した。
その背中を山城は見送り、ドアをノックする。
「海野少将、山城です。」
「うん、入っていいよ。」
雪の返事を確認し、山城は固唾を呑んでから入る。
「失礼します。」
山城の姿を見るなり、雪は軍帽を取り。
ゆっくりと、デスクから立ち上がる。
「
「はい、おかげさまで。」
「そうか。さて、会った時は焦っていた君も、落ち着きを取り戻しているようで安心したよ。」
山城に近づき、その頭に雪は手を置く。
そして眼差しを強いモノへと変える。
山城は貫かれたような感覚に陥り、鋭い眼光を見れば見るほどに。
「…っ。」
――
否、全てを語らねばならないと、艦娘の第六感…もとい、本能が訴える。
(私を殺そうとでも思ってるかのようね…。)
"これは穏やかじゃない"、そう山城の生存本能が騒音のように脳を響かせる。
「何があったのか、私に詳しく教えてくれ。勿論、君の知っている範疇でいい。」
そんな山城のことなどお構いなしに、未だ眼光はそのままの雪。
にも関わらず、声は優しさを纏っている。
故に、山城は。
「あ、あの…その…。」
言葉を詰まらせる
追い詰められている、そう感じた山城は思考を放棄していた。
「
雪は山城を試すように、尚も殺気をそのままに訊く。
「私は柳砂紋中佐の預かる、大湊警備府所属です。」
山城は額の汗を拭い、話し始めた。
如何だったでしょうか?
更新が遅くて、申し訳ありません。
何とか、今月中に仕上げられました…。
それでは、また次回に。