この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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読んで頂き、ありがとうございます。
もう殆ど覚えてなくて…。
ほぼ改変かと思われますが…。
ご勘弁ください…。

それでは、本編どうぞ。


Episode-2

提督に言われた通り、長門たちは食堂に向かった。

 

「さて、食事といこうじゃないか。」

 

食堂に着き。

長門が腹が減ったとばかりに言えば、瑞鳳がカウンターに向かう。

 

「間宮さーん!焼き魚定食五人前お願いしまーす!」

 

「はーい!少々お待ち下さいね!」

 

瑞鳳が頼めば、厨房から間宮の元気な返事が返ってくる。

五人は、テーブル席に座る。

 

「長門?なんだか、腑に落ちないって顔してるわよ。」

 

五十鈴が長門に話しかける。

 

「あ、あぁ、すまない。いや、島での一件がどうにもな。」

 

長門は未だ腕を組み、考える素振りを見せる。

 

「で?"安全地帯"って誰が名付けたのかしらね。」

 

五十鈴がぶっきらぼうに言い放つ。

 

「さぁ?確か()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

響が呆れ半分に答え、五十鈴を見る。

 

「まったくだ。あれだけ電磁波で囲まれた島に、深海棲艦がどう入ったのだろうな。」

 

一連を聞いていた長門が、至極真面目な顔で呟く。

五十鈴も先程までとは変わり、神妙な顔になる。

 

「あの少年も安全地帯で暮らしてたところに、深海棲艦に襲われて。きっと、母親ももう…。あの子の行く末が心配よ…。」

 

五十鈴の"心配"という言葉に、今まで黙って話を聞いていた瑞鳳が、無言で目を見開く。

 

「瑞鳳さん?」

 

翔鶴が様子が変わった瑞鳳の肩に手を置き、声をかける。

 

「あ、いや、何でも無いですよ?」

 

瑞鳳は首を振り、困ったような笑顔を浮かべる。

 

「それならいいのですが…。」

 

翔鶴は何処か、腑に落ちなかった。

 

(何かしら?この言いようのない違和感は。)

 

瑞鳳を見つめ、胸中では不思議さが募る。

しかし、思い詰め過ぎだろうと気にしないことにした。

 

「お待たせしました、定食五人分です。」

 

そんな会話をしていれば、間宮が食事を運んできた。

 

「「ありがとうございます。」」

 

艦娘なれど、感謝は忘れない。

 

「では、まずは頂こうか。」

 

「「頂きます。」」

 

長門の号令で、全員が食事に手を付ける。

 

 

 

 

一方その頃。

瑞鳳の部屋では、零が目を覚ましていた。

 

「あ、あれ?ここは?」

 

零は考えが追いついていない。

 

「あ、母さん!」

 

我に返り、母を探しにベッドを出る。

しかし。

 

「痛っ!!」

 

数時間も走っていた上に、腕のケガ。

満身創痍とまではいかなくとも、その身体には重いものである。

 

「身体もだるいし、腕も痛い…ん?このハチマキ、あの人が着けてたやつ…。」

 

零が腕を見れば、巻かれた鉢巻が目に映る。

 

「あとでお礼言わなきゃ。先に母さんを探さないと。その前に、ここ何処だろ?」

 

零は考えるも、自身のいる場所がわからない。

 

「とりあえず、外に出よう。」

 

考えても仕方ないと、ドアを開け、廊下に出る。

 

「うわー広いな。歩いてれば、わかるかな?」

 

そう呟き、歩みを進める。

廊下は入り組んでおり、零が迷子になるのは必然。

 

「完全に迷子だ、ここ広すぎる。出口もわかんないや。誰か居ないかなぁ…。」

 

そうして辺りを見渡しながら歩いていると、後ろから声をかけられる。

 

「ん?君、迷子っぽい?」

 

「うおぉ!?」

 

「あ、驚かせちゃったかしら?」

 

そこには、金髪の艦娘がいた。

 

「え?艦娘?」

 

零はやっとのことで声を出す。

 

「そうっぽい!私、夕立よ。よろしくっぽい!」

 

「た、橘花零(たちばなれい)です、よろしくお願いします。」

 

零は夕立と名乗った艦娘に、頭を下げる。

 

「夕立に敬語なんていらないっぽい!君、長門さん達が連れてきた少年っぽい?」

 

夕立の問いに、零は頭を悩ませる。

 

「えーと、そうなのかなぁ…。俺は母さんを探してて…。」

 

零はそう言って俯く。

夕立が腕を組み、考えるも。

 

「んー、夕立にはわからないから、提督さんに聞くっぽい!」

 

「て、ていとく?」

 

夕立が提督という言葉を口にすれば。

 

(ていとく…。なんか、()()()()()()()()()()()()()()()…。)

 

零は朧気な何かを、思い出せそうで思い出せない。

そんな最中。

 

「提督さんの居る執務室に案内するっぽい!ついてきて!」

 

「あ?え?」

 

元気に零を引っ張っていく夕立。

引っ張られている本人は、考えが追いつかずにいたが。

程なくして執務室に着き、夕立が執務室のドアをノックする。

 

「提督さん、駆逐艦夕立、入ってもいいっぽい?」

 

「夕立かい?いいよ、入っておいで。」

 

「失礼しますっぽい!」

 

零と夕立が中に入れば。

 

「おや?長門達が連れてきた少年じゃないか。目が覚めたようで、何よりだよ。」

 

提督が零を見て、微笑む。

 

(綺麗な人だなぁ。)

 

零はそんなどうでもいい感想を、胸中で述べていた。

それを察してなのか。

 

「どうしたんだい?私に見惚れたのかな?」

 

「あ、いや、その…。」

 

図星を突かれ、零がしどろもどろになるも。

 

「ふふっ、冗談だよ。さぁ、ソファにでも座ってくれ。」

 

提督は、軽口を混ぜたあと、零に座るよう促す。

 

「夕立、案内ご苦労さま。もうヒトフタフタマルだから、長門達と食堂で合流しておいで。」

 

「了解しましたっぽい!」

 

提督はそれとなく夕立を下がらせ、反対のソファに座り、零と対面する。

 

「さて、目覚めて早々に申し訳ないけれど、私はこの舞鶴鎮守府を預かっている、海野雪(うみのゆき)だ。今回の件については、我々の到着が遅くなって申し訳ない。不甲斐なさでいっぱいだよ…。」

 

雪は頭を下げる。

すると、零が恐る恐る尋ねる。

 

「あ、あの母さんを探していて…。知りませんか…?」

 

雪は尚も頭を下げたまま。

 

()()()()()()()…申し訳ない…。」

 

雪はわかっていた。

島民が全員、助からなかったと。

零が唯一の生き残りであると。

調べずとも、考えずとも。

そんな希望があるはずがないと。

 

「だって…艦娘達が来てくれて…あっという間に深海棲艦を倒してくれたんですよ…?」

 

零の震える声に、頭を下げたまま雪は目を瞑り。

 

「…本当に申し訳ない。」

 

それしか言葉を出せなかった。

 

「そんな…そんな…。」

 

零は声だけでなく、身体をも震わせる。

 

「あの島の人たち、全員助からなかったんですか…?」

 

零の問いに、雪は首を振るしか出来ない。

 

「う…っ…ぐっ…。」

 

零は声を出さずに、堪えるように涙を流す。

 

「俺…も、無力…だったんです。母さんに言われて…ただ、逃げるだけしか…出来なかったん…です…。」

 

そう言いながら、零は膝の上で拳を固く握る。

 

「少年…。」

 

雪も顔を歪ませながら、零を見る。

 

「わかってるんです…。目の前で母さんが…砲弾で吹き飛ばされるのを…見てましたから…。」

 

零の独白とも、後悔とも取れる言葉に。

雪は再び俯く。

そんな折、勢いよくドアが開け放たれる。

 

「夕立さんから、あの子が目覚めて、執務室に居るって聞いて来ました!」

 

「ず、瑞鳳…。」

 

雪が突如現れた瑞鳳に、呆れ半分、驚き半分で目を向ける。

 

「って…泣いてるじゃない!」

 

そう言って零に近づき。

 

「もう大丈夫。安心していいんだよ?」

 

そう優しく言って、零を抱きしめた。

 

「お、俺…。」

 

零は、自身が何を伝えたいのか。

何を言いたいのか。

考えが、まとまらない。

そんな零に、何も言わず、瑞鳳はただただ、抱きしめたまま。

 

「何も言わなくていいし、泣いてても良いんだよ。それだけの事に、君は巻き込まれたんだから。だから…ね?もう…我慢なんてしないで。」

 

瑞鳳の言葉に、零は堰を切ったように泣いた。

この短時間で全てを理解した零にとっては、優しすぎる言葉だった。

雪は気を利かせ、軍帽を深く被り、顔を隠す。

 

零が落ち着いたのを見計らって、瑞鳳が尋ねる。

 

「君、名前は?」

 

「橘花零です。」

 

「零君!いい名前ね!」

 

その名前に、雪が目を見開き、軍帽を被り直して訊く。

 

「たちばな…字はどう書く?」

 

「きっかって書いて、たちばなです。」

 

雪は驚愕の色を隠せない。

 

(ま、まさか。い、いや、同姓同名ということも…。)

 

何故ならば、その名前に聞き覚えがあった。

否、見たことすらあるかもしれないのだ。

 

「一つ聞きたいのだけれど、橘花君の()()()()()()()()?」

 

零はその問いに、少々困るも。

 

「父さんは海で仕事をしているとしか…。どうしてですか?」

 

「い、いや…もしかしたら…。」

 

雪は額に汗を流しながら。

 

「君のお父上だが…数年前に行方不明になった、この日本海軍最高指揮官である、元帥かもしれないんだ。」

 

雪の語る憶測は、この少年の。

始まりであり、行く末を決める序章になる。




如何だったでしょうか?
それでは、また次回に。
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