湿気でジメジメ…。
どんより、げんなりしますね…。
更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
それでは、本編どうぞ。
翌日。
龍玄は早朝、それも夜明け前に目が覚めていた。
「朝…にもなっていないのか。」
胸騒ぎとまでは行かないが、鼓動が落ち着かない。
妙な感覚に苛まれていた。
気休めがてら、散歩でもしようと部屋を出る。
龍玄は、鎮守府での客間では落ち着かず。
乗ってきた船に据え付けられた、自室で一夜を過ごしていた。
「…久方ぶりの
砂浜を強く踏み締めながら、自問自答を繰り返す。
不安をその顔から、隠すこともしない。
誰も居ない、自身のみの空間。
「海軍はいつから腐敗していたんだ…元帥、お前はいつから気付いていた?何も教えないまま、一人で突っ走りやがって…祥鳳は何も、お前だけのせいでは無かっただろ…。」
龍玄は、紫雲を責めるように拳を握る。
飾りと虚影でしかない、その名称。
悩みの種でしかなく。
「俺の全力を持ってしても…限界はあるぞ?」
口にした煙草に火を付け、煙を一つ吐く。
「…ま、やれるだけのことはやる。
龍玄はそのまま、砂浜を歩き出す。
波音だけが響く海岸。
「考えるだけ無駄か。」
口元に笑みを浮かべ、海を眺める。
「夜はいいよねぇ…夜はさ。だったか?」
月がまだ輝く夜空を見上げ、呟く。
「艦娘か…お前たちは何を背負って、この時代に再び現れたのだろうな。」
龍玄は感慨深く答えも出ずに、真顔で煙を吐き出し。
艦娘への疑問を、消えゆく煙と共に闇夜へと置いた。
ひとしきり、煙草を吸った後。
「さて、もう一睡でもするか…この先は、いつ眠れるかもわからんしな。」
短く伸びをして、船へと戻った。
そして、その時がやってきた。
『総員起こーーーし!!っぽい!!』
気概ある艦娘の放送と共に、零は飛び起きる。
「うお?!久しぶりに聞いた感じがするなぁ…。」
驚きのあまり、呼吸を整えながら胸を撫で下ろす。
「おはよ♪起きた?」
すると、零の顔を横から覗き込むように、瑞鳳が優しく声をかける。
頬を赤らめ、零は目を見開く。
「ず、瑞鳳…近いよ…。」
だが、瑞鳳はそんなことなど気にも止めない。
「久しぶりの零君だからね♪見ておける時に、見ておかなきゃ♪」
表情と同じに軽々しく、口にはしてみたものの。
瑞鳳の胸中は、心配で埋め尽くされていた。
(こんな子供に…何をさせようとしてるの…。)
至極当然なことである。
なれど、自身が止めたところで。
「俺も今日から頑張る!」
こうも張り切っている零を見てしまえば、もどかしくなる。
瑞鳳は、溜息を吐きそうになるのを抑え。
起き上がり、気合を入れる零を。
(
そう思いながら、困り顔で微笑むだけで済ませた。
そして、自身も起き上がり。
「さて、今日は腕によりをかけるわよ♪」
「おっ!瑞鳳の手料理!久しぶりな感じがする!」
部屋の台所に立ち、朝食の準備へと取り掛かる。
零は隣で出来上がるのを、目を輝かせながら待った。
しばらくすれば、それも出来上がり。
「出来たよ、召し上がれ♪」
「いただきます!」
瑞鳳は得意料理である、卵焼きを振る舞う。
頬張る零を満足そうに見ながら、瑞鳳も箸を進めた。
「さ、行こっか♪」
朝食も済ませ、食堂に行けば。
「なんや、零君やないか!おぉおぉ、二人揃って
零の姿を見るなり、目を丸くしたかと思えば。
瑞鳳が後ろにいるとわかり、意地の悪さを笑みに変え。
入口に向かい、腰に手を当て二人を嗜める龍驤。
たまらず瑞鳳は、顔を赤くする。
「な、何もありませんっ!」
その返しは、非常にまずかった。
「部屋で男女が一緒に…それも、二人きり…。」
偶然通りかかった加賀が、意味深げに呟く。
零は、申し訳なさそうな顔をして。
「え?俺は別に…普通に泊まっただけで…。」
年端もいかない少年にそう言われてしまっては、加賀も龍驤も黙る他なく。
「「純粋…。」」
言えることは、たったの
他愛のない話をしていれば、他の艦娘たちも集まってくる。
「あら?三人も揃って、どうしたんですか?」
榛名が不思議そうに見つめると、龍驤が口を開こうとする。
「いやぁ、零君と瑞鳳が…むぐぅ!」
が、それを急いで龍驤の口を手で塞ぎ。
「な、何でもありません!朝の挨拶をしていただけです!」
抑え込みながら、瑞鳳は必死に取り繕う。
榛名は、"一悶着あっただろう"というのはわかっていたが。
深いことではないと踏み。
「そうですか、
そう告げ、席のある中央へと向かっていく。
龍驤は気付かれたと悟り、頬を掻く。
榛名にとっても、零という存在は大きい。
その存在が話題の中心ともなれば、容赦は薄い。
龍驤の様子からして、圧をかけたのは間違いない。
が、これは本人の意図とは程遠く。
(出撃前で呑気なのは…榛名は許せません。)
これである。
龍驤の勘違いで、瑞鳳と零は解放された。
加賀は榛名の後を追い。
「榛名さん、あんまり龍驤さんを
話しかけるが、榛名は。
「気を抜かし過ぎれば、轟沈の可能性だって出てきます。私は注意しただけですよ?怒ってなんかないです。」
真顔で返し、加賀の肩に手を置く。
「戦場において、油断は禁物です…気が抜けていれば尚更。これから、作戦要項の説明でしょう?それならば…と、思っただけです。」
榛名の意図を知り、加賀は目を見開く。
(なんて圧…元帥の艦娘というのは伊達じゃないわね。)
胸中の言葉は押し留めた。
そうする他に、言葉といえば。
"艦娘らしからぬ"、という褒め言葉であり。
"化物"という罵倒にも似た、褒め言葉しかない。
「そうね…
拳を握り、選んだ精一杯であろう。
榛名は目を丸くする。
「加賀さんが気にすることではありませんよ?榛名は大丈夫です。ただ、これから指揮を取るという零君が可哀想で…気も張ってるでしょうし。」
そう言いながら、零をふと見る。
すると、視界に入った瑞鳳と目が合う。
―――え?
榛名は思わず、加賀や龍驤に向けた以上の圧を瑞鳳に向けた。
それは、またしても自身の意図とは関係なく。
極自然に、無意識に。
疑問は、榛名自身が感じた。
それ程に、瑞鳳は異様であった。
(
榛名が見た瑞鳳の目。
まるで、黒を濃くしたような瞳。
元来の瑞鳳の目ならば、琥珀に近い茶色。
垣間見えたのは一瞬。
なれど、一瞬。
その一瞬は、榛名を大きく揺さぶった。
それも束の間、その威圧感を瑞鳳が消し去り。
「…?榛名さん、どうかしたんですか?」
身に覚えがないばかりの、白々しさ。
決して白々しいわけではない。
瑞鳳自身も、
零の事となれば、否が応でもそうなってしまう。
「いえ…別に…榛名は大丈夫です…。」
榛名が俯き気味に返すのも、また然り。
「瑞鳳。」
助け舟とばかりに、雪が瑞鳳の元へと現れる。
榛名は横目でやり過ごし、その場を後にする。
だが、雪はその様子が気になったのか。
「ん?榛名、どうかしたかい?」
声をかけるが、榛名は気にせずとばかりに席に座った。
「…何かあったのかい?」
加賀も零も、瑞鳳も龍驤も。
一体何だったのか、結局わからず。
「「…わかりません。」」
口を揃えて言われては、雪も言えることはなく。
「そ、そうか…。」
消化不良に苛まれながらも、用意していた自席へと向かう。
(しかし…瑞鳳の目はあんなに黒かったか?)
思い直し。
雪が再び見れば、同じように席についた瑞鳳の目は。
(気のせいか。)
見慣れた瞳へと戻っていた。
「何やら、怪しい感じを醸し出すね?雪ちゃんの瑞鳳。」
長机に腰掛けると、隣に座る燐火が耳打ちする。
燐火とて、見逃していなかった。
「一部始終、見てたけどさ。元帥の艦娘なだけあって、榛名は真面目だねぇ。ちょっちばかり、龍驤と加賀が悪ふざけしただけなのに…。ま、瑞鳳に至っては
横目で瑞鳳を見やりながら、燐火は事の
しかして、つまらないわけではない。
燐火としては、艦娘の嫉妬心を見れたのだ。
(ま、イイもの見れたかな。)
それだけを胸中で呟き、ドアが開いた方向を見る。
「お、来ておったか。」
「二人とも早いな…。」
開いたドアから、幸造と龍玄が現れる。
「女同士、
燐火が雪の肩に手を回し、雪の頬に自身の頬を擦り付ける。
雪は真顔で何も気にせず…。
否、心ここに在らずといった表情で、されるがままである。
「嫌がって…いや、あの顔は喜んでいる…。」
父である龍玄が止めようとするも、雪の表情は見知っている。
(あれで喜んでおるのか…。)
幸造も、これには驚いた。
目を丸くしながら、口も開け。
さながら、面食らっている。
「では、揃ったことですし。」
燐火を引き剥がし。
言いながら雪が見れば、艦娘たちが既に集まっていた。
「そうだな、始めるか。岬ノ宮が居ないのは…仕方ない。」
龍玄が溜息混じりに、机上に書類を広げる。
そして、咳払いを一つ織り交ぜる。
その場の全員が、固唾を飲む。
「よし、では始めるぞ。まずは、大湊へ雪を迎えに行った艦娘達はご苦労だった。おかげで、海野少将はこの場にて会議に参加が出来ている…この場で感謝する。しかし、大湊は柳中佐も、艦娘も居ない状況だ。この最中での敵の侵攻…よって、佐世保、舞鶴、佐伯湾、横須賀、目が覚めれば、柳中佐…大湊が加わる。これは、橘花元帥奪還の先駆けともなる作戦だ。いいか、心して挑め…作戦名を――」
――北方海域奪還作戦及び、舞鶴正面海域防衛戦とする。
「「はっ!!」」
龍玄の激励に、艦娘も提督達も敬礼を見せる。
すると、ドアが開け放たれる。
「私を加えて頂いても、よろしくて?」
声の主は。
「沖崎!」
沖崎・ロゼ・フリューゲルである。
龍玄は思わず名を呼んだ。
「ブルネイから遥々来ました…という
薄金の髪を靡かせ、前へと出る。
零が、その所作を凝視する。
その視線に気が付き、ロゼが微笑みかける。
「赤い…目…。」
零が物珍しさから呟く。
その呟きは、本人に届いた。
そのまま立ち止まり、零へと訊く。
「気になるかしら?私、アルビノなのよ。」
「あるびの?」
アルビノとは、生まれ持って色素が薄いのが特徴である。
だが、そんな言葉を零は知らなかった。
「綺麗な目ですね。」
率直なまでの感想。
零としては、
よって、深い意味では言っていない。
「あなた、
心底不思議そうな顔で、ロゼは見る。
その少年の歪さたるや。
ロゼには、不思議でならない。
「今回の作戦で、少佐の階級を頂きました!橘花零です!」
零が頭を下げながら自己紹介をする。
「橘花…零…。そう、生きていて何よりよ。」
名を聞くなり、ロゼは手を腰に当て。
「敬礼は出来るのかしら?」
「はっ!」
零は"忘れていた"とばかりに、敬礼をする。
堅苦しい表情と、敬礼との合わなさで。
思わず、吹き出してしまう。
「ふふっ!面白い子に
それだけ言い残し、ロゼは前に立つ。
「沖崎・ロゼ・フリューゲル、現時刻から加勢いたします。」
深々と頭を下げ、凛とした立ち振舞いのまま。
少しばかり見渡したあと、開いている席へと座る。
「作戦の詳細は、各自で確認するように。総出撃となることだけは、念頭に入れておいてくれ。では、これよりヒトマルマルマル、作戦開始!」
「「はっ!!」」
龍玄による鶴の一声。
それが合図ともなり、全員が敬礼の後で。
一斉に、出撃の準備に取り掛かる。
龍玄達もまた、各艦娘のもとへと向かう。
「いよいよ…か。」
歩きながら、雪は一人呟く。
執務室に着き。
「祥鳳さん、仇は取りますから。」
そう言って、ネックレスを握る。
雪は軍刀をそのまま、デスクに立てかける。
「さてと、作戦か。上手く流れに沿ってくれるといいな。」
編成を今一度、確認しようとした時。
「雪ちゃん。」
雪を名指す声に、ドアへと急いで目を向ける。
そこには。
「ろ、ロゼさん!」
ロゼが立っていた。
「私も来たわよ、大湊ではご苦労さま。大湊での話、詳しく聞かせてくれるかしら?」
ロゼが来客用の椅子に座りながら、雪の出方を伺う。
「は、はぁ、わかりました…。」
雪は説明を始める。
如何だったでしょうか…。
スランプに悩まされ、更新が遅くなりました…。
それでは、また次回に。