今回も難産でしたが、なんとか投稿出来ました。
それと、UAがいよいよ6500を数えようとしています。
皆さんのおかげです、本当にありがとうございます。
それでは、本編どうぞ。
雪が再び、舞鶴へと到着する前。
金剛、霧島を建造したあとの話である。
先に出撃した山城達を、雪を乗せた船を曳行しながら翔鶴が追う。
「なんとか追いつくかしら?」
そんな呟きは、波音に攫われる。
しかして、自身の提督は後ろの小型船。
不安ばかりが募る。
建造したと言えど、練度の足りぬ二隻。
何かあっても、対応には苦しむであろうと踏んでいる。
「提督も無茶ばかり…。」
苛つきすら見せ、唇を噛み締める。
雪の無茶振りには、散々なまでに合わせてきた。
そんな翔鶴だからこその愚痴。
脳裏に浮かぶのは、ある日の瑞鳳と雪のやりとり。
――『私はあの子の為に生きるの!』
「瑞鳳さん、その後悔は私にもあります。」
その日、翔鶴はドアの影に隠れ。
音を立てぬよう、盗み聞きしていた。
自身と瑞鳳を重ねながら。
だが。
徹底的な違いがあると、翔鶴は内心に渦巻かせた。
「瑞鳳さん、
弓を強く握りしめ、思い出すのは。
「前元帥奪還作戦のあの日、瑞鶴は…。」
後悔が余程強いのか、翔鶴は目を伏せる。
海上にも関わらず、そんな悠長とも言える状態。
なれど、翔鶴にはそんな事は関係ない。
「
覚悟を決めたと同時。
「翔鶴さーん!提督ー!」
「「翔鶴さーん!」」
声のする方向を見れば。
「阿武隈さん!それに、六駆の皆さん!随分早いですね?!」
六駆を連れ、眼前の方向から来る阿武隈に。
遠征直後でよく動けるものだと、心底驚いた。
「心配要りません、あたし的には平気です!」
「ハラショー、阿武隈はむしろ急かしてきた。」
阿武隈と響に、そんなことを言い出され。
返す言葉も思いつかず、翔鶴は困り顔で微笑む。
「そうですか…あ、山城さんは見かけましたか?」
気になり聞いてみれば。
「金剛さん、霧島さんと一緒に舞鶴まで向かってました!」
それを聞くと、翔鶴は胸を撫で下ろす。
「ですって、ていと…あら?」
雪に声を掛けようと、振り向くが。
「余程、お疲れなのね。」
寝息を立てる自身の上官。
提督と呼ぶ、その女性。
だが、翔鶴の目には。
「やっぱりそうしていると、まるで本当にただの女の子ですね。」
年端もいかぬ、女性とは程遠く感じる少女と見えた。
「相当疲れているみたいね。」
阿武隈は、寝息を立てる雪を起こさぬよう。
「取り敢えず、報告です。道中の敵は、あたし達で撃破進軍しました。ここまで来たので、この先は心配いりません。」
「レディである私も頑張ったわよ!」
「暁ちゃんは、魚雷が中々当たらなかったのです!」
「な、何よ!」
電が、暁に釘を刺したところで。
「しー!司令官が起きちゃうわ!」
「「ご、ごめんなさい…。」」
雷の一声で、二人は謝罪する。
そのやり取りを、翔鶴は微笑みながら。
「ふふっ、元気なのはいいことですよ。そうですね、提督はお疲れのはずですから…撃破して頂けたのなら、このまま起こさぬよう、最速で舞鶴まで戻りますね。」
気にする様子もなく、笑顔で流す。
「わかりました。あたし達はこのまま、遠征も済ませてから舞鶴に戻ります。」
「了解です。」
そう交わすと、それぞれの役目へと戻った。
「…父上…。」
道中、聞こえた雪の寝言に。
「…随分、大きくなりましたね。ふふっ、私は提督が
海上を駆けながら、翔鶴は感傷に浸る。
「かの作戦で、私が異動になるとは思いもしませんでした。舞鶴…当時の潮梛提督から、引き継ぐなんて…ですが、提督の手腕は私たちを驚かせるものでした。元帥もきっと、わかっていた上で舞鶴を任せたのでしょうね。」
俯きがちに、言葉を紡ぐ。
なれど、それは。
「提督が…あの時、もしも私の提督だったなら…私たち姉妹を、今も一緒に居させてくれたのかも知れませんね…。」
怨嗟でありながら、後悔の念。
タラレバでもあろう、その無念。
それらは、波音と。
自身の風切り音、潮風と共に。
残り香もなく、言葉を掻き消していく。
「”幸運艦”なんて
翔鶴の覚悟ほど危険なモノは無い。
自身の身体など、いざとなれば顧みないであろう。
――『翔鶴姉ぇ…ごめんね…。』
「っ…!」
翔鶴が思い出すのは。
姉妹の、それも妹の最期の声。
それでも、翔鶴は引き返せない。
「私は生きてる…艦の時とは違うのよ。それよりも――」
――提督を無事に送り届けなきゃね。
今、やるべき事。
今、守るべき存在。
再確認した翔鶴は、雪を見る。
「提督、お願いしますね。」
呟き、速度を安定させたまま先を急ぐ。
――…く!
――…とく!
――ていとく…!
「提督!到着しましたよ!」
雪の肩を揺らし、翔鶴はひたすら呼びかける。
「ん?あぁ、寝てしまってたか…。」
「やっと起きてくれましたね。」
漸く、雪は目を覚まし、翔鶴が安堵する。
寝ぼけ眼を擦りながら、雪は自身の居る場所を確かめる。
「もう舞鶴か…ん?山城達は?」
「先に大湊の皆さんを連れて行きましたよ。それから、柳中佐も。」
やっとのことで状況を理解し、雪は船を降りる。
港から海を見ながら、伸びを一つすると。
翔鶴に向き直り、指示を出す。
「さて、父上達の為に準備をするか。鎮守府に残っている、艦娘全員に呼びかけてくれ。」
「はっ!」
舞鶴を会議場にするべく、総動員で準備を始める。
その間、雪はといえば。
「報告書かな?」
デスクにある出撃報告書を確認する。
「阿武隈のか…長距離遠征を頼んでいたね。」
目を通すと、やはり深海棲艦との対峙があった。
「困ったものだね…にしても、今回の遠隔出撃は…まさか、休まずに阿武隈が旗艦をやったのか?」
雪は怪訝な顔をしながら、報告書を睨む。
何も言わなければ、阿武隈は無理をする。
それは想定内。
だが、時間的に考えれば。
「さては、
呟き、頭を掻きながら、報告書を乱暴に仕舞うと。
「軽巡、阿武隈。至急、執務室まで来てほしい。」
すぐに放送をかける。
椅子に座り、頬杖のまま。
「まったく、世話の焼ける姉貴分だ…大本営から抜け出した時から、
鼻で笑いながら、窓を見る。
「ま、私も大人になったということで――」
と、自嘲気味に言ったと同時。
――コンコン
「来たかい?いいよ、入っておいで。」
ノックの音に気付き、ドアに向かって声をかける。
「阿武隈、来ました!」
何故、呼び出されたかなど知らない阿武隈は。
「提督…?」
睨みを効かせる雪に、阿武隈は戸惑いを見せる。
「
至極真面目に訊く。
しかし、何故。
それを問われるのかも、皆目も見当が付かない。
「いや…その…。」
言葉に詰まる阿武隈に。
雪は立ち上がり、更に詰め寄る。
「私の為に出撃してくれたのは、確かに有り難く感じるよ。だが、君が万全じゃないのは受け入れられない。報告書を見た限りでは、交戦もあったんだろう?疲労がある状態で、再出撃と遠征…今回も交戦があったはずだ。入渠もせず出てしまえば、それは自沈行為だ。」
そう言われてしまい、阿武隈は返す言葉など思いつかない。
視線を泳がし。
(そんなに責めなくても…。)
と、内心では思っている。
だが、雪にとっては重大だった。
「いいかい?これからの戦いは、海軍の命運がかかっているとも思っていい。よって、万全な状態で居るためにも、入渠は欠かしちゃいけないんだ。」
そう返され、阿武隈は反撃とばかりに。
俯き、頬を膨らませ。
「あんなに小さかったくせに…。」
聞こえないように、呟いたつもりだが。
「私も人間だからね、大人にはなるよ。あの頃のまま、というわけにはいかないさ。」
阿武隈は、”してやられた”という気分になった。
棘を見せたつもりが、根こそぎ刈り取られた。
よって。
「…気をつけます。」
と、威勢もなく言うと。
「頼んだよ、阿武隈。」
雪らしからぬ、むず痒い言葉。
それでいて、歯の浮くような台詞。
否、他の艦娘なら何も思わないであろう。
しかして、阿武隈には聞き慣れない言葉であった。
「提督も…そんなこと言うんですね?」
気に入らない表情で、そのまま言い放つ。
「私だって、提督だよ。」
「そ、そうですか。」
旧知の仲だというのに、何処か他人行儀なやり取り。
阿武隈が一番、食い違っている。
(いつまでも子供じゃない、かぁ。)
阿武隈の中での雪は、十歳の幼女で止まっているのだ。
むず痒さをそのままに、阿武隈は廊下へと出た。
「私の知る限りは、この程度です。大湊のことは、ロゼさんの知る限りです。」
説明を終えた雪は、一息つく。
「そう…出撃中に寝るなんてこと、あなたもあるのね?」
ロゼはコロコロと笑いながら、雪の肩に肘を当てる。
「つ、疲れてたんです、きっと。」
他人事のように、顔を赤くさせながら照れた表情を見せる。
ロゼは”珍しいものを見た”とばかりに、目を見開く。
「そんな顔も出来るようになったのね?あ、それと。」
そのまま付け足すように。
「瑞鳳ってあんなに
そう疑問をぶつけた。
白を切るつもりもなく、雪はそのまま答える。
「指宿が攻め込んだ際、瑞鳳は零君を救うべく…いや、私の救出に駆けつけてくれていたんですが…私を庇って撃たれた零君を見た瞬間から、深海棲艦のようになりかけたのが原因です。」
ロゼは目を丸くする。
「あなたを庇って、零君が撃たれたの?指宿に?」
「はい。」
悪びれることもなく、雪は率直に返事をする。
ロゼは心底驚いた。
「それで、瑞鳳が深海化…なんで?待って、理解が追いつかないわ…。」
ロゼはその時の状況を理解するべく、雪に訊く。
詳細を説明するべく、雪は再びロゼに当時の状況を説明した。
数十分後。
「なるほどね…あの瑞鳳が…。」
「それほど、彼に対する思いが強いのかも知れません。」
雪が茶を一口啜ると、ロゼは核心をつく。
「あんな少年に、それも元帥の息子に恋心を…不思議なものね。」
雪には程遠い感情だった。
故に。
「人の思い以上の恋情なんて、
そう告げる。
「そうね…さ、作戦も始まるし、私は戻るわね。」
「わかりました。」
軽く手を振り、ロゼは持ち場へと戻った。
「零君、君の手腕も見せて貰うよ。」
再び、デスクへ視線を向け。
ロゼの居なくなった執務室で、ペンを走らせながら呟いた。
「ん…?私は…?」
そんな最中、一人の人間が目を覚ました。
如何だったでしょうか?
毎回、最近は難産です…。
勢いで書いていたリメイク前に戻りたい…。
それでは、また次回に。