2日間のコミケも終わり、一段落です。
もちろん、両日参加してきました。
暑かった…疲れた…。
それでは、本編どうぞ。
「増えるのが、深海棲艦の特技なのかしら!」
その頃、恋の艦隊は苦戦を強いられていた。
交戦は突然であった。
――数刻前。
「提督!彩雲が敵艦隊を捕捉しました!」
敵艦隊の反応を見るなり、急ぎ大鳳は恋へと伝達する。
[わかったお!そのまま撃破してくれお!]
順調過ぎるほどに、進行できていた。
それが故に、高を括っていたまである。
いつ現れてもおかしくない、それが深海棲艦。
気が抜けていたとも言えよう。
恋の率いる佐伯湾の面々は、舞鶴での会議にも出ていない。
無鉄砲でいて、無計画。
それも全面に出ていた。
「提督からの交戦指示が出ました!皆さん、お願いします!大鳳、出るわよ!」
旗艦である大鳳の激が飛ぶなり、全艦が戦闘態勢に入る。
現れたのは、三十は超える敵艦隊。
深海棲艦、戦艦水鬼筆頭。
舞鶴への進軍、それのみ。
「アラァ?ヤラレニ来タノ?」
戦艦水鬼は不敵に笑みを浮かべ、大鳳を嘲笑し挑発する。
挑発を無意味と示すべく、睨みを利かせ。
「やられるのは、あなた達よ。」
開口一番、クロスボウを構える。
そのまま相手に向けるでもなく。
「攻撃隊、発艦!!」
空中に打ち上げるように、矢を放つ。
「この数相手に、対空が間に合うかしら?」
大量発艦。
中将の艦娘でありながら、大将達の度肝を抜いている由縁。
それは当しく、この艦載機の使用方法であろう。
「本気出してますね、大鳳さん。」
対空機銃を構えながら、大鳳を見るのは如月。
相手にも空母は勿論、居合わせている。
空母ヲ級、決して侮れない敵空母。
ヲ級は無言で艦載機を飛ばす。
それらは、大鳳の艦載機と交戦する。
「制空権くらい、
「大鳳さんなら余裕よね。」
足柄は空中戦の様子を見ながら、”なんてことはない”とばかりに呟く。
しかして、それは打ち砕かれることになる。
「
戦艦水鬼は後ろを振り返り、ヲ級三隻を見据える。
頷くと、ヲ級は更に艦載機を増やす。
間髪入れずにである。
「なっ?!」
大鳳も負けじと増やそうと、クロスボウを構えるが。
「ま、間に合わない!皆さん、対空射撃お願いします!」
制空権は、相手の有利に陥った。
大鳳の艦載機は、ものの見事に敵艦載機に撃ち落とされた。
「摩耶様に任せな!」
対空要員である摩耶は、対空砲を構え。
敵艦載機に向かって乱射する。
無論、狙いは定めている。
一機一機を撃っていては、時間の無駄。
「おりゃおりゃおりゃあ!」
隙間無く弾幕を作り、次々に撃ち落とす。
その勢いは凄まじい。
が、裏目に出るもので。
「危ないっぴょん!味方の位置くらい把握するっぴょん!」
「おぉ、すまんすまん…。」
輪形陣での戦い、撃ち落とした艦載機の残骸が卯月の横を掠めた。
頬を膨らませ、責め立てる卯月。
流石に頭を軽く掻きながら、申し訳なさそうに摩耶は謝る。
掠めた艦載機を避けようと卯月は、回避行動を取った。
その隙を待っていたかのように。
魚雷の影が、卯月に迫って来る。
「っぴょん!?」
そこは駆逐艦、小回りも効くのが売り。
視認すると、そのまま真逆に舵を取る。
「ぷっぷくぷー!うーちゃんに魚雷を当てるなんて、無理っぴょん!」
魚雷の元凶が潜水ヨ級だとわかるなり、爆雷を浴びせる。
「卯月、手伝うぞ。」
若葉が後ろに立ち、同じく爆雷を浴びせる。
「助かるっぴょん!」
「礼はいい、戦うのが優先だ。」
潜水ヨ級の群れを撃破したものの。
「「グオオォォ!」」
駆逐イ級の群れに囲まれる。
「ふ、増えたっぴょん!!」
「落ち着くんだ!相手はイ級、普段通りに撃ってればいい。」
焦る卯月を落ち着かせ、主砲に切り替えるなり。
若葉はイ級を着実に沈める。
「うーちゃんも負けないっぴょん!」
そのまま砲撃を続ける二隻。
「私だって居るんだから!」
そこに足柄も加勢し、イ級の数は減少する。
それを良しとしないのが、戦艦水鬼。
唇を噛み締め、面白くないとばかりの表情を見せる。
「ハァ、ツマラナイワ。」
それは艦娘に対しても、沈んでいく味方に対しても向けたモノ。
「戦闘ッテイウノハ、コウスルノヨ!」
奮闘虚しく、大鳳が機銃に切り替える隙を狙い。
戦艦水鬼が砲撃を繰り出す。
装甲空母、されど空母。
回避をするが、高速寄りだとしても。
小回りは利かない。
「くっ!!」
小破で事なきを得たが、それでも命中してしまった。
「司令官、聞こえるかしら!?大鳳さんが小破したわ!」
[
如月は恋へと無線を飛ばす。
それもまた、隙でしかない。
「ホラ、ココニモ。」
笑顔で砲弾を如月に浴びせ、煙が晴れるのを待つ。
目を凝らした戦艦水鬼の顔から、笑顔が消える。
「その程度で、調子に乗られては困りますね。」
無傷で主砲を構える如月に、苛つきさえ見せる。
「…当タラナカッタノ?」
「当然です、如月改二を舐めないで。」
隙を与えただけで、見せてはいない。
いつ撃たれてもいいとすら思っている。
それが、この如月であった。
「回避と俊敏さが、駆逐艦の醍醐味ですから。」
言いながら速度を上げ、砲撃を喰らわす。
それも一直線に駆け抜けて。
「いいですか?
一度目の砲撃に被せるように、二撃目を放つ。
直進しながらの砲撃。
的ではなく、撃つ側が動く。
それは、狩りをする獣のように。
如月の目は、戦艦水鬼を萎縮させた。
「クッ!ヤッテミナサイ!駆逐艦!!」
姫級までは無くとも、鬼級の戦艦。
装甲の硬さは、並ではない。
回避しながらも、砲弾同士をぶつける。
なれど、何発かは外れるもの。
「グッ!!」
命中したが、小破未満。
如月は尚も。
「戦艦は硬いですね。」
真顔で次の一手を考える。
否、考えるまでも無かった。
「攻撃隊!発艦!」
小破ならば、発艦は出来る。
それは、大鳳自身がわかっている。
「小破にした程度で、いい気にならないで。」
「小癪ネ!!」
対空射撃に移らざるを得ない。
故に、出た言葉。
「撃ちます。」
短く伝え、如月が射撃する。
だが、空母は未だ敵艦隊にも残っている。
「……。」
再び、無言で発艦するヲ級。
摩耶も合わせる。
「アタシを忘れんな!」
弾幕を張るも、間をすり抜ける一機。
「くっ!この摩耶様が…。」
艦載機の機銃に撃たれ、中破に近い小破に追い込まれる。
次いで、対空砲の砲塔が折れ曲がる。
「ちっ!折れた!対空は期待しないでくれ。」
砲塔を確認した上で、大鳳に声をかける。
「提督…」
大鳳が助言を貰うべく。
無線に呼びかけたところで、戦艦水鬼はイロハ級駆逐艦を呼び寄せる。
「駆逐艦ハ良イワネ?
「増えるのが、深海棲艦の特技なのかしら!」
悪態を吐くのは如月である。
キリの無さに、砲撃しながら戦艦水鬼を睨む。
「アラアラ、
挑発を繰り返す、戦艦水鬼。
「か、数が多すぎるっぴょん!」
「弾薬がこのままじゃ、足りなくなるぞ!」
「なんなのよ、もう!」
卯月も若葉も足柄も、度重なる増援に手を焼いていた。
疲弊すら、見せ始めていた。
中将である恋は、流れをしっかり見ていた。
「…
舞鶴へと、ダメ元で緊急打電をする。
「頼む、雪ちゃん。艦隊を送ってくれ。」
舞鶴ならば、龍玄も動く。
そう勘が働いた。
他でもない、直感である。
(雪ちゃんの窮地だ、
それは強ち間違いでもなく。
「岬ノ宮中将より、緊急打電が届きました。」
雪が龍玄と幸造に伝える。
「「緊急?」」
二人の声が重なる。
「はい、”日本海域ニ増援サレタシ”とのことです。」
困惑する二人に、雪が内容を説明する。
顔を見合わせ。
「交戦しておるのか?彼奴は。」
「そ、そういうことかと…。」
龍玄は理解が追いつかないながらに、会議に出なかった恋に唖然とする。
「くくっ、本当に交戦しておったか。」
幸造だけは予測通りとばかりに、口角を上げる。
「しかし、艦隊に余裕は…。」
龍玄は頭を悩ませる。
「遊撃機動艦隊があるではないか。」
「なっ!少年のですか?!」
「無論だ。」
幸造は当然とばかりに、呆れたように溜息を吐く。
「俺の艦隊が、どうかしたんですか?」
そこに、丁度良く現れた零に。
「すぐに艦隊を日本海に向かわせるんだ!」
「は、はっ!」
物を言わせぬ焦る龍玄の一喝に、零は二つ返事で敬礼をした。
そのまま、無線を繋ぐ。
「瑞鳳、聞こえる?」
[提督?どうしたの?]
瑞鳳の返事に、零は安心する。
「日本海に向かって欲しいんだ。」
零がそこまで言ったところで、雪は無線機を零から受け取り。
「瑞鳳、橘花少佐の言うとおりにして欲しい。岬ノ宮中将の艦隊が、窮地に追い込まれているんだ。頼めるかい?」
[わかりました、すぐに向かうわね。]
そのまま無線が切られ、向かったことを示している。
「さぁ、零君。本番も本番、大勝負だよ。」
雪が軍帽を被り直すと、零も頷く。
「瑞鳳達ならやれるはずです。」
恋の艦隊と無事に合流出来るか否か。
それ次第で、この戦況は大きく変わる。
雪はそれを見越して、零に発破をかけた。
幾数刻かかるか、それ次第。
緊急打電、恋はそれを遅いとは思っていない。
この思惑が噛み合えば、或いは。
しかして、雪も雪で忙しくなるとは、思っていなかった。
「提督。」
「どうしたんだい?」
雪が零から視線を外し、ドアの方を見ると大淀が立っている。
「阿武隈さんより打電です。」
「阿武隈が打電?無線じゃないのかい?」
不思議に思い、再度確認する雪。
大淀はそのまま読み上げる。
「”姫級ト接敵、敵意ナシ”と。」
「敵意のない深海棲艦…?なんだ、それは。」
龍玄も割って入る。
全員が頭を捻る。
(まさか…ね。)
燐火だけは思い当たる節があるのか、胸中で呟く。
しかし、今は作戦の最中。
余計な考え事を増やしたくないと、忘れることにした。
「その姫級は?」
「撤退したとのことで、特に交戦も無かったようです。」
「本当に深海棲艦なのか、それは…。」
雪の勘繰りに、大淀が真面目な顔で返せば。
幸造までもが勘繰り始める始末。
考えるのをやめたのか、雪は深く息を吐いて零を見る。
「何がともあれ、交戦が無いならそれでいいさ。
苦笑混じりに言えば、零は首を傾げ呆ける。
「へっくしゅん!!」
「お?また司令官あたりに、悪口でも言われてんとちゃうか?」
くしゃみをした阿武隈に、龍驤が茶々を入れる。
「むぅ。」
その阿武隈は、せいぜい頬を膨らませるのが限界である。
「阿武隈!無線!提督から!」
鈴谷が、無線を取れとばかりに捲し立てる。
無線を取るなり、阿武隈は何事かと問う。
「どうしたの?」
[日本海側で交戦らしい、零君の艦隊を向かわせるから心配は要らないよ。それより、深海棲艦のことは聞いたさ。驚いたよ、敵意の無い深海棲艦なんてね。]
阿武隈は溜息を吐き。
「それはあたしもです。」
対峙した、自分たちの方が驚いたと言いたげに。
[そういうことだから、もしかしたら敵の南下が早まるかも知れない。くれぐれも、警戒だけは怠らないでくれ。]
無線が切れると、阿武隈は再び駆ける。
「零君がいよいよ、
「めっちゃイイことじゃん!ね、長門?」
「あぁ、快挙だろうな。それも、
喜ぶ二人とは対照的に、阿武隈は俯く。
(子供が命のやり取りをするっていうのに…?)
阿武隈の思いは、当然である。
しかし、今は戦時中。
綺麗事でしかない、それは阿武隈もわかっている。
わかった上での葛藤。
「元帥は今となってはだが、式条の下で鍛えれて少佐になったのは――」
――十歳を数えた頃だそうだ。
長門の言葉の真意、それを聞いてしまえば。
「こんな世界、壊れちゃえばいいのに。」
阿武隈は小さく呟いた。
如何だったでしょうか?
それでは、また次回に。