この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
2日間のコミケも終わり、一段落です。
もちろん、両日参加してきました。
暑かった…疲れた…。

それでは、本編どうぞ。


Episode-35

「増えるのが、深海棲艦の特技なのかしら!」

 

その頃、恋の艦隊は苦戦を強いられていた。

交戦は突然であった。

 

 

 

 

――数刻前。

 

 

 

 

 

「提督!彩雲が敵艦隊を捕捉しました!」

 

敵艦隊の反応を見るなり、急ぎ大鳳は恋へと伝達する。

 

[わかったお!そのまま撃破してくれお!]

 

順調過ぎるほどに、進行できていた。

それが故に、高を括っていたまである。

いつ現れてもおかしくない、それが深海棲艦。

気が抜けていたとも言えよう。

恋の率いる佐伯湾の面々は、舞鶴での会議にも出ていない。

無鉄砲でいて、無計画。

それも全面に出ていた。

 

「提督からの交戦指示が出ました!皆さん、お願いします!大鳳、出るわよ!」

 

旗艦である大鳳の激が飛ぶなり、全艦が戦闘態勢に入る。

現れたのは、三十は超える敵艦隊。

深海棲艦、戦艦水鬼筆頭。

舞鶴への進軍、それのみ。

 

「アラァ?ヤラレニ来タノ?」

 

戦艦水鬼は不敵に笑みを浮かべ、大鳳を嘲笑し挑発する。

 

挑発を無意味と示すべく、睨みを利かせ。

 

「やられるのは、あなた達よ。」

 

開口一番、クロスボウを構える。

そのまま相手に向けるでもなく。

 

「攻撃隊、発艦!!」

 

空中に打ち上げるように、矢を放つ。

 

「この数相手に、対空が間に合うかしら?」

 

大量発艦。

中将の艦娘でありながら、大将達の度肝を抜いている由縁。

それは当しく、この艦載機の使用方法であろう。

 

「本気出してますね、大鳳さん。」

 

対空機銃を構えながら、大鳳を見るのは如月。

相手にも空母は勿論、居合わせている。

空母ヲ級、決して侮れない敵空母。

ヲ級は無言で艦載機を飛ばす。

それらは、大鳳の艦載機と交戦する。

 

「制空権くらい、()って見せます。」

 

「大鳳さんなら余裕よね。」

 

足柄は空中戦の様子を見ながら、”なんてことはない”とばかりに呟く。

しかして、それは打ち砕かれることになる。

 

()()()()()?」

 

戦艦水鬼は後ろを振り返り、ヲ級三隻を見据える。

頷くと、ヲ級は更に艦載機を増やす。

間髪入れずにである。

 

「なっ?!」

 

大鳳も負けじと増やそうと、クロスボウを構えるが。

 

「ま、間に合わない!皆さん、対空射撃お願いします!」

 

制空権は、相手の有利に陥った。

大鳳の艦載機は、ものの見事に敵艦載機に撃ち落とされた。

 

「摩耶様に任せな!」

 

対空要員である摩耶は、対空砲を構え。

敵艦載機に向かって乱射する。

無論、狙いは定めている。

一機一機を撃っていては、時間の無駄。

 

「おりゃおりゃおりゃあ!」

 

隙間無く弾幕を作り、次々に撃ち落とす。

その勢いは凄まじい。

が、裏目に出るもので。

 

「危ないっぴょん!味方の位置くらい把握するっぴょん!」

 

「おぉ、すまんすまん…。」

 

輪形陣での戦い、撃ち落とした艦載機の残骸が卯月の横を掠めた。

頬を膨らませ、責め立てる卯月。

流石に頭を軽く掻きながら、申し訳なさそうに摩耶は謝る。

掠めた艦載機を避けようと卯月は、回避行動を取った。

その隙を待っていたかのように。

魚雷の影が、卯月に迫って来る。

 

「っぴょん!?」

 

そこは駆逐艦、小回りも効くのが売り。

視認すると、そのまま真逆に舵を取る。

 

「ぷっぷくぷー!うーちゃんに魚雷を当てるなんて、無理っぴょん!」

 

魚雷の元凶が潜水ヨ級だとわかるなり、爆雷を浴びせる。

 

「卯月、手伝うぞ。」

 

若葉が後ろに立ち、同じく爆雷を浴びせる。

 

「助かるっぴょん!」

 

「礼はいい、戦うのが優先だ。」

 

潜水ヨ級の群れを撃破したものの。

 

「「グオオォォ!」」

 

駆逐イ級の群れに囲まれる。

 

「ふ、増えたっぴょん!!」

 

「落ち着くんだ!相手はイ級、普段通りに撃ってればいい。」

 

焦る卯月を落ち着かせ、主砲に切り替えるなり。

若葉はイ級を着実に沈める。

 

「うーちゃんも負けないっぴょん!」

 

そのまま砲撃を続ける二隻。

 

「私だって居るんだから!」

 

そこに足柄も加勢し、イ級の数は減少する。

それを良しとしないのが、戦艦水鬼。

唇を噛み締め、面白くないとばかりの表情を見せる。

 

「ハァ、ツマラナイワ。」

 

それは艦娘に対しても、沈んでいく味方に対しても向けたモノ。

 

「戦闘ッテイウノハ、コウスルノヨ!」

 

奮闘虚しく、大鳳が機銃に切り替える隙を狙い。

戦艦水鬼が砲撃を繰り出す。

装甲空母、されど空母。

回避をするが、高速寄りだとしても。

小回りは利かない。

 

「くっ!!」

 

小破で事なきを得たが、それでも命中してしまった。

 

「司令官、聞こえるかしら!?大鳳さんが小破したわ!」

 

[()()()()()。]

 

如月は恋へと無線を飛ばす。

それもまた、隙でしかない。

 

「ホラ、ココニモ。」

 

笑顔で砲弾を如月に浴びせ、煙が晴れるのを待つ。

目を凝らした戦艦水鬼の顔から、笑顔が消える。

 

「その程度で、調子に乗られては困りますね。」

 

無傷で主砲を構える如月に、苛つきさえ見せる。

 

「…当タラナカッタノ?」

 

「当然です、如月改二を舐めないで。」

 

隙を与えただけで、見せてはいない。

いつ撃たれてもいいとすら思っている。

それが、この如月であった。

 

「回避と俊敏さが、駆逐艦の醍醐味ですから。」

 

言いながら速度を上げ、砲撃を喰らわす。

それも一直線に駆け抜けて。

 

「いいですか?()()()()()()()()()()()()()、受けてもらいます。」

 

一度目の砲撃に被せるように、二撃目を放つ。

直進しながらの砲撃。

的ではなく、撃つ側が動く。

それは、狩りをする獣のように。

如月の目は、戦艦水鬼を萎縮させた。

 

「クッ!ヤッテミナサイ!駆逐艦!!」

 

姫級までは無くとも、鬼級の戦艦。

装甲の硬さは、並ではない。

回避しながらも、砲弾同士をぶつける。

なれど、何発かは外れるもの。

 

「グッ!!」

 

命中したが、小破未満。

如月は尚も。

 

「戦艦は硬いですね。」

 

真顔で次の一手を考える。

否、考えるまでも無かった。

 

「攻撃隊!発艦!」

 

小破ならば、発艦は出来る。

それは、大鳳自身がわかっている。

 

「小破にした程度で、いい気にならないで。」

 

「小癪ネ!!」

 

対空射撃に移らざるを得ない。

故に、出た言葉。

 

「撃ちます。」

 

短く伝え、如月が射撃する。

だが、空母は未だ敵艦隊にも残っている。

 

「……。」

 

再び、無言で発艦するヲ級。

摩耶も合わせる。

 

「アタシを忘れんな!」

 

弾幕を張るも、間をすり抜ける一機。

 

「くっ!この摩耶様が…。」

 

艦載機の機銃に撃たれ、中破に近い小破に追い込まれる。

次いで、対空砲の砲塔が折れ曲がる。

 

「ちっ!折れた!対空は期待しないでくれ。」

 

砲塔を確認した上で、大鳳に声をかける。

 

「提督…」

 

大鳳が助言を貰うべく。

無線に呼びかけたところで、戦艦水鬼はイロハ級駆逐艦を呼び寄せる。

 

「駆逐艦ハ良イワネ?()()()()()()()()()()。」

 

「増えるのが、深海棲艦の特技なのかしら!」

 

悪態を吐くのは如月である。

キリの無さに、砲撃しながら戦艦水鬼を睨む。

 

「アラアラ、怖イ顔(スゴイ)。カワイイ顔ガ台無シヨ?」

 

挑発を繰り返す、戦艦水鬼。

 

「か、数が多すぎるっぴょん!」

 

「弾薬がこのままじゃ、足りなくなるぞ!」

 

「なんなのよ、もう!」

 

卯月も若葉も足柄も、度重なる増援に手を焼いていた。

疲弊すら、見せ始めていた。

中将である恋は、流れをしっかり見ていた。

 

「…()()()。」

 

舞鶴へと、ダメ元で緊急打電をする。

 

「頼む、雪ちゃん。艦隊を送ってくれ。」

 

舞鶴ならば、龍玄も動く。

そう勘が働いた。

他でもない、直感である。

 

(雪ちゃんの窮地だ、()()()()()()()()()()。)

 

それは強ち間違いでもなく。

 

 

 

 

 

 

「岬ノ宮中将より、緊急打電が届きました。」

 

雪が龍玄と幸造に伝える。

 

「「緊急?」」

 

二人の声が重なる。

 

「はい、”日本海域ニ増援サレタシ”とのことです。」

 

困惑する二人に、雪が内容を説明する。

顔を見合わせ。

 

「交戦しておるのか?彼奴は。」

 

「そ、そういうことかと…。」

 

龍玄は理解が追いつかないながらに、会議に出なかった恋に唖然とする。

 

「くくっ、本当に交戦しておったか。」

 

幸造だけは予測通りとばかりに、口角を上げる。

 

「しかし、艦隊に余裕は…。」

 

龍玄は頭を悩ませる。

 

「遊撃機動艦隊があるではないか。」

 

「なっ!少年のですか?!」

 

「無論だ。」

 

幸造は当然とばかりに、呆れたように溜息を吐く。

 

「俺の艦隊が、どうかしたんですか?」

 

そこに、丁度良く現れた零に。

 

「すぐに艦隊を日本海に向かわせるんだ!」

 

「は、はっ!」

 

物を言わせぬ焦る龍玄の一喝に、零は二つ返事で敬礼をした。

そのまま、無線を繋ぐ。

 

「瑞鳳、聞こえる?」

 

[提督?どうしたの?]

 

瑞鳳の返事に、零は安心する。

 

「日本海に向かって欲しいんだ。」

 

零がそこまで言ったところで、雪は無線機を零から受け取り。

 

「瑞鳳、橘花少佐の言うとおりにして欲しい。岬ノ宮中将の艦隊が、窮地に追い込まれているんだ。頼めるかい?」

 

[わかりました、すぐに向かうわね。]

 

そのまま無線が切られ、向かったことを示している。

 

「さぁ、零君。本番も本番、大勝負だよ。」

 

雪が軍帽を被り直すと、零も頷く。

 

「瑞鳳達ならやれるはずです。」

 

恋の艦隊と無事に合流出来るか否か。

それ次第で、この戦況は大きく変わる。

雪はそれを見越して、零に発破をかけた。

幾数刻かかるか、それ次第。

緊急打電、恋はそれを遅いとは思っていない。

この思惑が噛み合えば、或いは。

 

しかして、雪も雪で忙しくなるとは、思っていなかった。

 

「提督。」

 

「どうしたんだい?」

 

雪が零から視線を外し、ドアの方を見ると大淀が立っている。

 

「阿武隈さんより打電です。」

 

「阿武隈が打電?無線じゃないのかい?」

 

不思議に思い、再度確認する雪。

大淀はそのまま読み上げる。

 

「”姫級ト接敵、敵意ナシ”と。」

 

「敵意のない深海棲艦…?なんだ、それは。」

 

龍玄も割って入る。

全員が頭を捻る。

 

(まさか…ね。)

 

燐火だけは思い当たる節があるのか、胸中で呟く。

しかし、今は作戦の最中。

余計な考え事を増やしたくないと、忘れることにした。

 

「その姫級は?」

 

「撤退したとのことで、特に交戦も無かったようです。」

 

「本当に深海棲艦なのか、それは…。」

 

雪の勘繰りに、大淀が真面目な顔で返せば。

幸造までもが勘繰り始める始末。

考えるのをやめたのか、雪は深く息を吐いて零を見る。

 

「何がともあれ、交戦が無いならそれでいいさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()、翔鶴あたりかな?まったく、()()()()()()()。」

 

苦笑混じりに言えば、零は首を傾げ呆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくしゅん!!」

 

「お?また司令官あたりに、悪口でも言われてんとちゃうか?」

 

くしゃみをした阿武隈に、龍驤が茶々を入れる。

 

「むぅ。」

 

その阿武隈は、せいぜい頬を膨らませるのが限界である。

 

「阿武隈!無線!提督から!」

 

鈴谷が、無線を取れとばかりに捲し立てる。

無線を取るなり、阿武隈は何事かと問う。

 

「どうしたの?」

 

[日本海側で交戦らしい、零君の艦隊を向かわせるから心配は要らないよ。それより、深海棲艦のことは聞いたさ。驚いたよ、敵意の無い深海棲艦なんてね。]

 

阿武隈は溜息を吐き。

 

「それはあたしもです。」

 

対峙した、自分たちの方が驚いたと言いたげに。

 

[そういうことだから、もしかしたら敵の南下が早まるかも知れない。くれぐれも、警戒だけは怠らないでくれ。]

 

無線が切れると、阿武隈は再び駆ける。

 

「零君がいよいよ、()()()()()()()()()()()。」

 

「めっちゃイイことじゃん!ね、長門?」

 

「あぁ、快挙だろうな。それも、()()()()()()()()()。」

 

喜ぶ二人とは対照的に、阿武隈は俯く。

 

(子供が命のやり取りをするっていうのに…?)

 

阿武隈の思いは、当然である。

しかし、今は戦時中。

綺麗事でしかない、それは阿武隈もわかっている。

わかった上での葛藤。

 

「元帥は今となってはだが、式条の下で鍛えれて少佐になったのは――」

 

 

 

――十歳を数えた頃だそうだ。

 

 

長門の言葉の真意、それを聞いてしまえば。

 

「こんな世界、壊れちゃえばいいのに。」

 

阿武隈は小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?

それでは、また次回に。
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