この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
投稿頻度が遅くて遅くて…。
インスピレーションも湧かないし、インプットもアップデートも…。
(知ってる英語全部並べました。)
作者の創作限界とでも言うのでしょうか?

それでは、本編どうぞ。


Episode-37

[いいのか?大鳳。]

 

無線越しに恋が、大鳳に何やら発破をかける。

 

「な、何がですか?」

 

大鳳とて、制空権の維持で手一杯。

無線でのやり取りは、些か億劫ですらある。

焦燥を唇の震えが表している。

しかし、そんなもの恋にとっては。

 

[精(・)一(・)杯(・)さ(・)を(・)見せるな。]

 

至極、関係の無い話。

提督であり、鎮守府を預かる身。

艦娘を鼓舞してこその、あるべき存在。

その恋に、八つ当たりの如く。

大鳳は艦載機を放ちながら、苦言を呈する。

 

「この現状を見ても…ですか?焦りくらい出ます。」

 

[だとしても。お前がこの場を切り抜けられねぇと、舞鶴の支援艦隊も切羽詰まった戦況で戦わなきゃいけなくなる。]

 

恋の、容赦など一切ない言葉。

それが大鳳の鼓膜を揺らす。

放った艦載機は、一体どれほどだろうか。

腕は疲労で、ボウガンを持つ手を追い詰められていた。

体感にして小一時間は、苦戦を強いられている。

 

「…無茶ばかり言いますね…!」

 

苛立ちを見せ、唇を噛む。

一機でも多く、撃墜せねばと焦れば焦るほど。

 

「くっ!」

 

追いかけては、撃たれを繰り返す。

数では勝っているものの、動き回る的に当てられない。

普(・)段(・)の(・)大(・)鳳(・)で(・)は(・)あ(・)り(・)え(・)な(・)い(・)。

それを、恋はわかっている。

 

[…数で言えば、お前の勝ちだろ。何の為に、お前を連れてきたと思ってんだ?その程度なわけないだろ。支援艦隊は確かに呼んだ、飽(・)く(・)ま(・)で(・)も(・)支(・)援(・)だ(・)が(・)な(・)。この意味がわかるか?]

 

試練を与えるが如く、大鳳に問いかける。

自身の艦娘を、信頼しているが故の問いかけ。

語尾にも、穏やかさはない。

それに応えたのは、大鳳ではなく。

 

「わかります、仕留めればいいんですね?舞鶴の艦隊到着前に。」

 

如月である。

その目は、かくも恐ろしさを際立てている。

答えるや否や。

 

「如月、出ますね。」

 

一言を置き、最大戦速で駆け出したかと思えば。

主砲の狙いを定め、敵艦を蹂躙する。

 

「ごめんなさいね、司令官の邪魔なの。」

 

如月の眼力、それには重巡である足柄をも震わせる。

 

「…や(・)る(・)気(・)ね(・)。」

 

額の汗を拭いながら、自身も主砲を構える。

照準には、どういうわけか如月が入り込む。

 

「如月さん!邪魔…いえ、なんでもないわ。」

 

文句の一つでも付けようと思うも。

有無も言わさぬ、如月の追撃。

それは、動きすら読ませない。

言葉の続き、それを足柄が口にすることは無かった。

照準を合わせながら、如月は間を埋めるように。

 

「いいですか?大鳳さん、私に構うこと無く艦載機を飛ばし続けてください…私が機銃に当たることは、絶(・)対(・)に(・)あ(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)。」

 

敵艦隊の旗艦、戦艦水鬼を狙い。

 

「今度こそ…!!」

 

距離を詰め、機銃を放ち続ける。

 

「機銃…?」

 

戦艦水鬼は回避に移りながら、眉間を顰める。

その視線を、機銃の動きから離さずに。

 

「機銃のほうが…当てやすいんですよ。」

 

駆逐艦の軽快さを活かし。

連射という、機銃を使う。

それらを駆使した、飽くなき戦術。

如月を止めようなど、誰も思わない。

 

「…如月さん、約(・)束(・)通(・)り(・)、絶対に当たらないでください。」

 

「如月を舐めないでください。」

 

意を決し、大鳳は艦載機を射出する。

それも尋常な数ではない。

 

「小破でもこれくらいは…出来るんです…!」

 

軋む身体、艤装、震える腕。

必死に抑えつけた結果である。

大鳳の気合いと気概、それを恋は目にするなり。

 

「大鳳、お前はそれでいい。」

 

満足そうに頷く。

それと同時、激しい爆撃音が響く。

 

「こっちにまで来やがった…!!」

 

恋は小型船を急旋回させる。

被弾こそ無いが、夾叉による至近弾で大きく揺れる。

 

「ちきしょうが!!」

 

「コ(・)レ(・)ガ(・)一(・)番(・)早(・)イ(・)ワ(・)ネ(・)?」

 

不敵に笑う深海棲艦の顔は、恋には見えない。

しかし、見ていた艦娘は居る。

 

「司令官への侮辱と見倣します。」

 

如月は勢いを付けて、駆け出す。

 

「如月さん!」

 

足柄が叫ぶように呼ぶが、当の本人は。

 

「なんですか?」

 

恋の船にしか、視線が向いていない。

周りなど、その目には。

 

「オバカサン。」

 

映っていなかった。

深海棲艦の言葉の意味、それは如月を狙ったものだったが。

 

「だから何ですか?」

 

「何デ…?」

 

如月はそれを意図から外れ、砲撃を見ていたかのように避ける。

一直線に恋の船に向かいながら、である。

敵の砲撃を回避しながら、最大戦速で縫うように。

眼前の光景に、深海棲艦は目を疑う。

 

「司令官、如月が居ます。」

 

そう呟きながら、如月は目付きを鋭くさせる。

 

「如月!!」

 

恋は自身の窮地に向かってくる如月に。

嬉しさが込み上げるが、如月への心配もある。

 

 

――如月は居なくなりませんから。

 

 

恋の脳裏にリフレインする、過去の言葉。

それ故に、心配すら見せる。

だが、それは杞憂であり如月とは無縁(止められない)。

 

「私の司令官に…弾薬一発でも当てさせません。」

 

小型船に近づくなり、身体を翻し。

至近弾諸共、機銃で弾き返す。

 

「如月、助かるお!」

 

艦娘の前では穏やかで居ようと、語尾を柔らかくする。

しかし、それは如月を逆に気を遣わせる。

 

「司令官、余裕が無いですか…?」

 

「あ、いや…つい…。」

 

如月こそ、恋の本性を知っている。

故に、出た言葉。

恋も言葉を濁す。

 

「如月が付いていますから。」

 

これ程、心強いことはあるだろうか。

駆逐艦と言えど、深海棲艦を屠る艦娘。

初期艦であり、旧知の仲。

自身にここまで付いてきた数少ない艦娘。

恋が信頼を置いているのも頷ける。

 

「如月!右舷に魚雷!」

 

如月を見ていた恋は、魚雷が海面に見えるなり。

声を張り上げ、危険を知らせる。

 

「くっ!」

 

如月は、回避が間に合うかどうかの瀬戸際に追い込まれる。

更に上空からの艦載機による銃撃。

海上と上空による挟み撃ち。

 

(魚雷に当たるか、機銃に当たって大破か…二者択一ね。)

 

覚悟を決めたところで、声が響き渡る。

 

「魚雷一斉射!!」

 

舞鶴から支援に来た、五十鈴である。

引き連れた第六駆逐隊に指示を出し、一斉射した魚雷をぶつける。

激しくぶつかり合い、水柱が立つ。

 

「うおぉ…。」

 

波が勢いを付けて、恋の乗る小型船を揺らす。

思わず情けない声を出してしまったと、口に手を当てる。

如月が駆け寄り、心配する。

 

「司令官!」

 

「大丈夫、それより雪ちゃんの艦隊が間に合ったな。」

 

その言葉に、五十鈴は首を振る。

 

「今は、橘(・)花(・)少(・)佐(・)の(・)艦隊よ。」

 

「少佐…?」

 

聞き馴染みのない名前に耳を疑う恋。

否、頭では理解している。

だからこそ、耳にしたことに驚きを隠せない。

 

「橘花零がこの作戦から、昇級したとでも言うのか…?」

 

「その通りよ。」

 

雷が腕を組み、笑顔で答える。

 

「零君が提督として、この作戦で精進したの!誇らしいわ!」

 

それらは、恋の全身を総毛立たせた。

 

「零君が提督か…。」

 

怒りなどではない、驚愕故にである。

 

「そうか、軍学校から…。」

 

恋は口角を上げると、全艦に指示を出す。

 

「橘(・)花(・)少(・)佐(・)の(・)艦(・)隊(・)が(・)追(・)い(・)つ(・)い(・)た(・)!全艦、総攻撃に移れ!反撃だ!」

 

「「はっ!!」」

 

そこからは、早かった。

舞鶴、佐伯湾の共闘により。

日本海の航路は確保できた。

 

「ワタシタチヲ沈メテモ…安心シナイデネ…。」

 

沈み間際、戦艦水鬼は意味深げな一言を残す。

聞きたくないと言わんばかりに、瑞鳳が艦載機でとどめを刺す。

 

「…知らないわよ、そ(・)ん(・)な(・)こ(・)と(・)。」

 

瑞鳳の姿を見た恋は、目を凝らす。

 

「瑞鳳は…そんなに髪が白かったか…?」

 

呟きは、電に拾われる。

 

「瑞鳳さんは襲撃の時に…積み重なった何(・)か(・)が(・)一気に出たのです。」

 

「深くは聞かないお。」

 

目を伏せる恋に、電は安堵する。

電としても、掘り下げられるのは面白くない。

 

「岬ノ宮中将が岬ノ宮中将(良い人)で良かったのです。」

 

「お…?おぉ…。」

 

恋は何とも言えぬ表情で、電に気の抜けた声で返す。

 

「ところで、岬ノ宮中将。舞鶴の会議に居なかったのは?」

 

暁が気になったとばかりに聞く。

 

「会議?そんなのあったのかお?みんな来ないから、心配してたんだお?」

 

「おや?海野大将から聞いて無かったのかい?みんなで待ってたのは、こちらも同じさ。」

 

響は呆れ混じりに恋を見る。

 

「いや…すまないお。そしたら、すぐにでも舞鶴に向かうお。」

 

帰投と共に、舞鶴に向かう意思を見せる恋。

そこに佐伯湾の艦娘が合流する。

 

「提督、やっぱり舞鶴だったんじゃねぇか!」

 

摩耶が怒鳴る。

恋は、後頭部を掻き。

 

「そうみたいだお。」

 

冷や汗をかく。

 

「…すぐに向かいましょう。」

 

如月が提案すると、全員が頷く。

 

「んじゃ、舞鶴に向かうお!ついでに、入渠もさせて貰うお、大鳳には無理をさせたし。」

 

恋が大鳳を気遣うと、頬を赤くさせ。

 

「申し訳ありません。」

 

と、短く謝りながら俯く。

 

「ま、生きてりゃ物種よ。」

 

足柄が大鳳の肩に手を置き、片目を瞑る。

 

 

 

 

 

退けた朗報は、舞鶴にも届いた。

 

「零君、君の艦隊もどうやら活躍したようだよ。」

 

会議室から廊下に出て、歩きながら。

雪が零に言ってみせれば、零は笑顔を見せる。

 

「はい、五十鈴さん筆頭ですから。海野少将の力あってこそです。」

 

「君の語彙力は、やはり榛名の賜物か。」

 

苦笑交じりに、零を褒めれば。

零は恥ずかしそうに、軍帽を指で押さえる。

 

「岬ノ宮中将も、この舞鶴に来る予定だよ。本人から通信があった。」

 

「恋さんが!?」

 

零は歓喜しながら、目を輝かせる。

少年さながらの様子に、雪は目を丸くする。

 

「あ、あぁ。うん、零君は岬ノ宮中将と面識があったね。」

 

「はい!俺の憧れです!」

 

零の屈託の無い笑顔と、眼差し。

雪には、年相応に戻ったとしか思えなかった。

 

「ふふ、会えるからね。待ち遠しさを楽しむといいさ。」

 

「はっ!」

 

そう伝えると、雪は執務室へと入って行った。

敬礼を交わした零は、一人廊下を進むと妖精が現れる。

 

「…出(・)来(・)た(・)の?」

 

零が聞くと、悲しそうに妖精は頷く。

妖精は言葉を発せない。

故に、身振り手振りでしか表せない。

それを感じ取れるあたり、提督の素質があるとも言える。

 

「この先、必要になるのは確実だからね。」

 

覚悟を決めたように、零は拳を握る。

 

「妖精さんは悪くないよ、ありがとう。これは俺の問題だから。」

 

それだけ言うと、会議室に戻る足取りは重くなる。

 

「生(・)き(・)て(・)る(・)人(・)達(・)の(・)方(・)が(・)…大事だからね。」

 

その呟きは、木霊することもなく消えた。




如何だったでしょうか。
更新を一ヶ月も放置してしまい、申し訳ありません。

それでは、また次回に。
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