長らく、お待たせ致しました。
作者が色々と、忙しく…。
コミケはとんでもなく混雑してました…。
暑くて暑くて…。
冬が楽しみですね。
それでは、本編どうぞ。
『総員おこーし!!』
翌日の朝、目覚ましとも言える放送が、大音量で鎮守府中に響き渡る。
「うお?!ぬお?!」
零は寝ぼけながらも、反射的に飛び起きる。
そこに、足音が近づいてくるのを感じ。
振り向いて見れば、エプロンを纏った瑞鳳の姿があった。
「あ、零君起きた?」
瑞鳳が声をかければ、零は顔面蒼白のまま取り乱す。
「瑞鳳、今のは?!」
空襲警報を聞いた翌日というのもあり。
大音量の放送というのは、零にとっては精神的に来るものがあった。
瑞鳳からしてみれば、それは予想の範疇であった為。
「大丈夫、安心して。朝のマルロクサンマルになると、"総員起こし"っていう放送がかかるんだよ♪」
そう優しく諭す。
瑞鳳の様子から、零は落ち着きを取り戻す。
「そ、そっか、良かった…。」
そう呟けば、瑞鳳は微笑み。
「昨日の今日だからね、仕方ないよ。気にしないで?あ、朝ご飯、食べる?」
「うん!」
朝食を作っていた瑞鳳は、そのまま零を朝食に誘う。
既に出来上がっていたため、テーブルに並べるだけである。
よって。
「零君、着替えて顔洗っておいで?」
「その、着替えが…。」
そう、着の身着のままで運ばれた零には、服がないのである。
「あ、その一着だけかぁ。」
それに気付いた瑞鳳は、一つ案を思いつく。
「私の服、着る?」
「絶対無理。」
零はその提案を、一瞬にして一蹴した。
「あはは、ダメだよね。どうしようか…。あ!明石さんに頼めば、何か見繕ってくれるかも!」
「明石さんって、万能なんだね…。」
「そりゃ、なんでも開発しちゃう艦娘だからね。」
零の呆れたような呟きに、瑞鳳はそう返した。
「じゃあ、顔だけ洗っておいで?それから鎮守府を案内するついでに、工廠に寄ろっか♪」
「うん、ありがと。」
その提案に対して、零が感謝を告げれば。
「良いんだよ、零君。そんなお礼なんていらないんだから。」
瑞鳳は何処か後ろめたさがあるのか、何でもないような素振りをするも。
憂いを帯びたような表情だけは、隠しきれなかった。
(私がこの子にお礼を言う事はあっても…。)
胸中のわだかまりに、瑞鳳自身が向き合い過ぎていた。
「母さんに、教えてもらってたんだ。」
零が切り出す。
「何かしてもらった時、何かを貰った時。そんな時は"ありがとう"って、言いなさいって。」
零は懐かしむように、尚も続ける。
「3年前に、海岸でケガした人が居てさ。その人にも、"ありがとう"って言えば良いんだよって教えたんだ。悪いことをしたら、"ごめんなさい"って言うのも大事って。その人、急に居なくなっちゃったんだけどね。」
瑞鳳は黙って耳を傾けた。
しかし、その目は虚空を見つめていた。
「零君。」
「ん?」
瑞鳳に呼ばれ、目を合わせれば。
「私以外の女に、
瑞鳳のただならぬ殺気に、零は首をブンブンと振る。
「違うよ!俺が瑞鳳に感謝する理由には、母さんからそう教わってたんだよってことを言いたかっただけ!」
それを聞くと、瑞鳳は満足そうに頷き。
「それなら良かった、
瑞鳳が一言告げると、零は胸を撫で下ろす。
(瑞鳳は怖い?時があるから、気をつけなきゃ。)
無意識に、零は瑞鳳への恐怖心を抱くようになった。
それが稀であることから、零自身は然程、気にしてはいない。
かと思えば。
瑞鳳自身に至っては、そんな殺気を出しているなどとは、露程も知らない。
「わかった。零君は、ちゃんとお母さんの言うこと聞いてるって事なんだね♪いい子♪」
「あ…うぅ…。」
瑞鳳に褒められ、顔を赤く染め上げて恥ずかしがる零に。
「さて、時間も無くなっちゃうし…朝ごはん、食べちゃおっか♪」
「うん!」
瑞鳳が食事に誘えば、零は快く受け入れた。
しばらくして、朝食が終われば。
「よし、それじゃ最初に工廠に行くよ?」
「案内よろしくね。」
瑞鳳は零の手を握りながら、工廠へと向かう。
その顔は満足気に、笑顔であった。
工廠に着くなり、瑞鳳が明石を呼ぶ。
「明石さーん!居ますかー?!」
「居ますよー!すぐ行きまーす!」
昨日とは違い、物を落とさずに明石が奥から現れる。
「今日は、何も落としませんでした!」
「今日は…。」
明石が自慢気味に胸を張れば、零は呆れたように繰り返した。
「ところで、どうしたんです?」
明石が頬に付いた機械油を拭いながら、瑞鳳を見る。
「今日来たのは、零君の服を作ってあげて欲しくて。」
「あー、そのまま来たんですもんね。良いですよ?ただ、時間が掛かるので、それまで私の作業着を着ておきます?作業着なら男の子でも、大丈夫なはずだし。」
零の様子を伺いながら、替えの作業着を棚から取り出し、明石が訊くと。
「サイズが合うかどうか…。」
と、零が困りながらも着てみると。
「意外と着れる!」
少し緩いながも、気にする程では無かった。
「良かったね♪」
「うん!」
瑞鳳が隣で喜べば、零は元気よく頷いた。
そのまま、瑞鳳が零に提案をする。
「このまま見学させてもらう?」
「え?いいのかな?」
零が申し訳なさそうに、明石を見れば。
「構いませんよ?ただ、機械には触れないようにだけしてくださいね。」
明石は二つ返事で、快諾した。
「ありがとうございます!」
零が頭を下げ、瑞鳳と二人で中に入れば。
「うっわ!すげー!飛行機も、
興奮気味に零が、はしゃぎ出す。
瑞鳳は、聞き逃さなかった。
「零君、
「え?」
零自身、気付かぬ間に専門用語を出していた。
「なんでだろ…?」
咄嗟に出た言葉のせいか、理解が追いつかない。
「んー、これは飽くまでも私の推測だけどね?」
瑞鳳が一拍置いて、持論を述べる。
「きっと、何かのショックか、キッカケって言うのかな?そういうので、零君は記憶が無くなってると思うの。」
瑞鳳は神妙な顔つきで、零を見つめる。
「ここに来てから、ずっとそうじゃない?引っかかってるというか、思い出せそうで思い出せない。消化不良じゃないけど、そんな感じで零君は悩んでるように見えるの。」
零から目を離し、整備に出していた自身の艦載機を見つけ、撫でながら続ける。
「私もね、ずっとずっと悩んでた。記憶が無くなればいいのにって。でも、記憶を失くしてる零君を見てたら、忘れて寂しい部分もあるんだなぁって、思い始めたんだ。だから、このまま記憶が戻るといいね?きっと、
瑞鳳の言葉は重くも、何処か儚げなモノであり。
零は何も言えず、ただその姿を目に焼き付けるだけである。
「あはは、ごめんね、変な雰囲気にしちゃったね…。」
「ううん、気にしなくていいよ。瑞鳳の言う通りだと思うし、艦娘にだって事情があると思うから。」
瑞鳳が謝罪をすれば、零は笑みを浮かべながらそう言った。
「あ、零君。」
そんな会話が終わったと同時、明石が声をかける。
「名字が橘花でしたっけ?」
「そうですよ?」
明石は考えるように、腕を組む。
「元帥の御子息…。うーん…。偶然でしょうか?大本営に居た艦娘が、この鎮守府にも居るんですよね。」
「「え?!」」
明石の一言は、二人を驚かせた。
「あれ?瑞鳳さんも知りませんでした?」
「も、もちろん…。」
瑞鳳は驚愕のあまり、語彙力が低下していた。
「
「私が来た頃には居たから…知りませんでした。」
明石の説明に。
瑞鳳は俯きながら、答えた。
「阿武隈…。」
零はその名前に、どうにも引っ掛かるが。
「それはそうと、零君、どうですか?工廠を見学した感想は。」
「はい!色々と見れて、嬉しいです。機械を使えて、修理も開発も出来る明石さんは、かっこいいですね!」
明石に話をすり替えられ、考えるのをやめた。
「か、かっこいいかな…。」
零に褒められ、明石は頬を掻く。
「あ、飛行機で思い出した!瑞鳳が飛行機を飛ばすところ、見てみたい!」
先程とは打って変わって、零が目を輝かせ、瑞鳳を見る。
「あー、発艦かぁ。そしたら、訓練場に行こっか?艦載機ならそこで発艦出来るから。」
その提案に、零は目を輝かせたまま激しく頷く。
「うん!ありがと!明石さんも、見学させてくれて、ありがとうございました!」
そのまま、明石に感謝をすると。
「はーい!また、いつでも来てくださいね!あ、服は洗っておきますから!」
それだけ伝えると、明石は奥へと、そのまま作業に戻った。
「さ、じゃあ訓練場に出発!」
瑞鳳の号令で、工廠を後にし、二人は訓練場に向かう。
「うわ!広いな!」
訓練場に着くと、零はその広さに驚いた。
「艦娘がそれなりに居るし、発艦訓練も、砲撃訓練もやるからね。演習っていう艦娘同士で模擬戦をすることもあるんだよ♪」
瑞鳳が零に説明をすれば。
「そういうことかぁ。そしたら、これだけの広さがなきゃ足りないか。」
至極簡単に理解した。
そんな折。
「あら?あなたが保護された少年かしら?」
青い袴を着た艦娘が声をかければ。
「随分と可愛らしいじゃない!」
赤い袴を着た艦娘がそれに続いた。
その二人の姿を見て、瑞鳳が零に紹介する。
「二人は、この鎮守府のエース空母で、赤い袴を着てるのが、赤城さん。青い袴を着てるのが、加賀さんだよ♪」
「はじめまして、一航戦の赤城です。」
「同じく、一航戦の加賀です。」
瑞鳳の紹介を受け、赤城と加賀が零に自己紹介をした。
「橘花零です、よろしくお願いします!」
「随分と礼儀正しいのね!」
零が二人に向かって頭を下げると、赤城は感嘆の声をあげた。
「今日は、どうしてこちらへ?」
「瑞鳳の、発艦?してるところを見たくて来ました!」
加賀が尋ねると、零が元気よく答えた。
その姿は、少年そのものである。
「まぁ!失敗は出来ませんね、瑞鳳さん?」
赤城が悪戯っぽく微笑みながら、瑞鳳を見れば。
「が、頑張ります!」
瑞鳳が気概を見せる。
そして。
「零君、着替えてくるから二人と待っててね。」
零にそう声をかけ、更衣室に向かった。
瑞鳳が戻るまでの間、三人はプールサイドの椅子に座って待つことにした。
ふと、赤城が瑞鳳の後ろ姿を見ながら。
「ふふっ、あんな瑞鳳さん初めて見ました。ね、加賀さん?」
赤城が微笑み、加賀に訊く。
「えぇ。何がキッカケなのかわかりませんが、
加賀の言葉に、零が表情を変え、怪訝な顔を加賀に向ける。
「自沈?」
加賀が、"やってしまった"とばかりに、口を閉じると。
「それは、本人の口からいずれ聞けます。それと、加賀さん?私が間違っていなければ、
赤城の言葉に続いて、加賀も零を見る。
(そう…。この子から何か感じたのね、瑞鳳さん。)
加賀は胸中で、表情は真顔のまま誰に言うわけでもなく、そう述べた。
零としては、赤城にそう言われてしまっては、何も聞けないと幼いながらに感じ取り。
「その時を待ってみます。」
と、返した。
その会話が終われば、着替えた瑞鳳が姿を現した。
「零君、お待たせ♪さ、やるわよ!」
弓を持ち、まるで巫女にも思わせる服を着たその姿に。
「わぁ…。」
と、零は感嘆した。
その格好は、零には輝いて見えた。
「じゃあ、見ててね。」
そう言って瑞鳳は、設置されたプールに立つ。
そして矢を番え、集中力を高める。
目を開き、矢を放つと。
「六五三空、発艦、始めてください♪」
放たれたその矢は、合図と同時に、"零戦三二型"に変わる。
零戦がプールの上空を一周し、枯葉が落ちるかのように回転させながら急降下すると。
「あ、落ちちゃう!」
零が立ち上がり、心配するも。
「大丈夫ですよ、あれは瑞鳳さんの十八番である、"枯れ葉落とし"という芸当ですから。」
赤城の説明通り、水面へ落下するかと思われた零戦は、水面ギリギリで体制を整え、そのまま飛び続ける。
「あの技は、私達でも難しくて出来ないんですよね…。」
加賀が残念がるように、尚も低空飛行を続ける零戦を見やる。
「恐らく…この鎮守府で、あの技を披露出来るのは瑞鳳さんくらいね。」
赤城は真顔で、そう言った。
「瑞鳳って、やっぱり凄いんですね。」
零は、"凄い"としか表現出来なかった。
そんな零の目に、操縦士と思われる小人のような存在が映る。
小人が零に向かって、敬礼をする。
返さなければいけない、そう思った零は。
「これでいいのかな?」
と、見様見真似で敬礼を返した。
零の敬礼に、小人は満足そうに頷いた。
「加賀さん、あの小人?みたいなのってなんですか?」
零は、零戦に乗る小人を指しながら、加賀に訊く。
「あれは、妖精さんね。操縦の他に、砲撃の照準を手伝ってくれたり、私達の装備を整備したり、建造、開発も明石さんと一緒にやってくれたりするのよ…え?」
そこまで説明して、加賀は疑問を持つ。
「待って、あなた妖精さんが見えるの?!」
加賀は勢いよく、零の肩を掴む。
「み、見えました。明石さんが言っていた妖精さんって…。」
「え、えぇ、間違いないわよ。」
これには、赤城も驚愕の色を示す。
「嘘!?さすがね!」
二人の会話に、瑞鳳も零戦を戻し、プールサイドに駆け寄ってくる。
「零君!ほんとに見えるの!?」
「う、うん、赤城さん達にも言った通りだよ?」
瑞鳳にも詰め寄られ、戸惑うも、しっかり答える。
「零君、見学よりも先に、提督のところに行かなきゃかもね。」
「え?」
キョトンとする零を他所に。
「執務室に行こ!」
と、瑞鳳が零の腕を引く。
「あ、う、うん!」
「「私達も行きます。」」
この一連が、
如何だったでしょうか?
更新速度が遅くて、申し訳ない限りです…。
投稿は頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
それでは、また次回に。