この世の関節が外れた世界   作:灰桜空虚

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いつも読んで頂き、ありがとうございます。
8月も終わりですね…。
更新が最近は遅くて、申し訳ない限りです…。
頑張りますので、ご容赦ください。

それでは、本編どうぞ。


Episode-6

四人が執務室に向かう途中、廊下で1人の艦娘が声を掛ける。

 

「あら?一航戦の先輩方に、瑞鳳さん、それから…あの時の少年ですね。皆さん揃ってどうされたんですか?」

 

「翔鶴さん、この子が妖精さんが見えるみたいで。」

 

「まぁ!凄いことですね!」

 

赤城の説明に、翔鶴は手を一つ叩き、喜ぶかのように微笑んだ。

 

「あ、自己紹介がまだでしたね。五航戦、翔鶴です。島の時以来ですね。」

 

「あの時はありがとうございました、橘花零です。」

 

翔鶴が零に挨拶をすれば、零も頭を下げる。

 

(あんなことがあってから…日も浅いのに、無理してるのかしら…。)

 

胸中で零を案じていれば、瑞鳳の声で我に返る。

 

「これは提督に報告しなきゃって、執務室に向かってるんです。」

 

瑞鳳が付け足すと、翔鶴は気まずそうに。

 

「実は、私も提督から招集命令を受けてるんです。」

 

翔鶴の言葉に、瑞鳳が考えるように手を顎に当てる。

 

「私達のところには、何も通達来てないわね。」

 

「恐らく…瑞鳳さんが呼ばれるとは…。」

 

翔鶴が瑞鳳を困ったような顔で見る。

その様子を、赤城と加賀も不思議そうに眺める。

 

「あの島にもう一度行くみたいでして…。その、事後経過観察とでも言うのでしょうか…。」

 

翔鶴は自身の説明が過不足であると、自覚しながら伝える。

零が居る手前、‪”‬島民の亡骸の回収が終わったから、復旧可否確認に行く‪”‬とは、到底言えるはずもない。

 

「なんとなくわかりました…。」

 

翔鶴の説明で、瑞鳳は察した。

零は1人、話についていけずに呆然としていた。

 

「ごめんね、難しい話してたね。零君は気にしなくて大丈夫だよ。」

 

瑞鳳が腑に落ちない零の頭を撫でながら、優しく諭す。

 

「皆さん、執務室に向かわれるのでしたら、私もご一緒しても?」

 

「えぇ、どうせならそうしましょう。」

 

「ありがとうございます。」

 

翔鶴が訊けば、全員が受け入れた。

そして、五人が執務室にそのまま向かい。

 

「提督、翔鶴です。瑞鳳さん達も居ますが、大丈夫でしょうか?」

 

「あぁ、翔鶴かい?ん、丁度いいかな、入って来ていいよ。」

 

雪の返事を確認し、執務室のドアをノックした翔鶴に続き、全員が中に入る。

 

「「失礼します。」」

 

「翔鶴、急に呼び出して申し訳なかったね。それと、瑞鳳達はどうしたんだい?」

 

雪が不思議そうに見つめれば、瑞鳳が雪のデスクに駆け寄る。

 

「零君は妖精さんが見れるんです!」

 

その迫真の声に、雪は驚きつつも。

 

「そ、そうなのか、と、とりあえず落ち着こう?ね?」

 

「す、すみません…。」

 

なんとか、瑞鳳を落ち着かせれば、その瑞鳳は申し訳無さそうに俯いた。

しかし、そこは提督である。

 

「ふふっ、瑞鳳が驚くのも無理は無いさ、そんなに落ち込むことはないよ。そうか、零君にも見えるのか。」

 

「は、はい、間違いが無いなら…。」

 

零は雪に問われ、緊張しながらもそう答えた。

 

「さすが、元帥の息子と言ったところか。それにしても、本当に何の因果だろうね。」

 

雪の呟きに、零が首を傾げる。

 

「いやいや、元帥の息子がここに居るという事実がね。それより、翔鶴を呼び出した理由だけれど。」

 

雪が本題とばかりに、デスクの前に向き直る。

艦娘は全員、無意識に整列し、姿勢を正す。

…零は置いていかれ、呆然としているが。

 

「零君は…いや、ここに居る以上は、君も聞くといい。」

 

雪は覚悟を決めんばかりに、目を閉じ、大きく息を吐く。

 

「件の島の残骸捜索と、現状確認をしてもらう。」

 

雪の一言に、全員が唾を飲み込む。

 

「提督、その残骸捜索とは…?」

 

翔鶴が尋ねれば。

 

「あぁ、深海棲艦の残骸、それから…島のね。」

 

雪は言葉を選んだ。

その結果、言葉足らずになるも、全員が察せた。

翔鶴が説明した時と、同様である。

 

「さて、そこで零君。」

 

おもむろに雪が零を名指す。

 

「なんですか…?」

 

零が恐る恐る聞けば。

 

「どうだい?君も行きたいかい?」

 

雪が零に、真剣な眼差しを向ける。

 

「俺は…。」

 

零が拳を握る。

 

「俺は…提督になりたいです。」

 

問いとは関係があるかわからない返答を出し、零が雪を見つめる。

そして。

 

「…続きを。」

 

雪もまた、零を同じように見る。

 

「俺は、提督になって、艦娘に恩返しがしたいんです。それに、母さんに墓も立ててません。」

 

「それで?」

 

言葉を区切る零に、雪は"それだけじゃないだろう"という眼差しを向ける。

 

「俺は、あの惨状を二度と見ない為に…!他の人にも見せない為に…!立派な提督になって見せる…!母さんに、そう伝えたいです…。だから…もし、島に行くなら、俺も連れて行ってください…!」

 

零はその目に涙を浮かべ、吐き出すように、雪に言い放った。

その姿に、感銘を受けたとばかりに雪が口角を上げる。

 

「よく言ったじゃないか、零君。それでこそ、男の子だよ。よし、提督への第一歩だ、いいよ、君も行くといい。」

 

零はその言葉を聞いて、笑顔を雪に向ける。

雪もまた、笑顔を返す。

 

「良かったね、零君!!」

 

瑞鳳は一際、喜んでいた。

 

(そう…前を向くのね。)

 

翔鶴だけは、神妙な顔をしていた。

 

「翔鶴さん?」

 

赤城が声をかければ、我に返る翔鶴。

 

「あ、いえ、編成はどうなるのかなって。」

 

必死に誤魔化す翔鶴に、雪が編成内容を伝える。

否、翔鶴が誤魔化しているとは、雪も気づいていない。

 

「うん、ついでに遠征も済ませたいからね。」

 

雪は、デスクの上にある書類の山から、一枚の紙を出す。

 

「編成は、旗艦が五十鈴、続いて暁、雷、響、電、あとは翔鶴か瑞鳳か…。」

 

雪が頬に手を当て、デスクに肘をつき悩んでいる折に。

 

「失礼するわ!司令官、第六駆逐隊、入ってもいいかしら?」

 

「あ、丁度揃ったね。いいよ、入ってきて。」

 

「「失礼します!」」

 

六駆の四人が揃って入るなり、雪は姿勢を威厳あるものに戻す。

 

「やっぱり、司令官はレディね!」

 

「ありがとう、暁。」

 

この暁のためである。

暁は、"レディ"という響きに憧れを抱いているのか、事あるごとに雪を真似ようとする。

よって、雪も自然と気が抜けなくなっていた。

 

「私達が呼ばれた理由はなんなのです?」

 

電が雪に訊くと、雪は一つ頷き。

 

「件の島に行くついでに、遠征をお願いしたくてね。」

 

雪が言えば。

 

「なら、このレディである私の出番ね!」

 

「ハラショー…暁だけじゃないよ…。」

 

「そうよ!私だっているんだから!」

 

「なのです!」

 

六駆の四人の言い合いが始まり。

 

「提督が困ってしまいますから、落ち着きましょう?」

 

赤城が鎮火のために、手を叩き落ち着かせる。

すると、四人は黙り込み。

 

「「すみませんでした…。」」

 

一拍置いて、謝罪した。

 

「ま、元気なのは良しとしよう。赤城と加賀は下がっていいよ。大方、瑞鳳に付いて来たんだろう?」

 

「「はっ!」」

 

「うん、また指示を出すから、それまで部屋で待機でもいいし、訓練でもいい。任せるよ。」

 

「「失礼します!」」

 

赤城と加賀は、雪に敬礼をして執務室を出た。

一航戦の二人が去ったところで、雪は再び本題に入る。

 

「さて、遠征だけれど…瑞鳳か翔鶴で迷っているんだ。空母ならどちらがいい?」

 

六駆に聞けば。

 

「ここは、燃費のいい瑞鳳でいいんじゃないかな?」

 

その響の一言は、翔鶴に刺さった。

 

「うっ…。まるで、私が大食いみたいな…。」

 

翔鶴は、知らぬ間に、墓穴を掘っていることに気が付いていない。

 

「なのです!一航戦の二人と同じくらい食べるのです!」

 

「ってことは、翔鶴もやっぱり…。」

 

電と響に続いて。

 

「一航戦の二人に言わなきゃ!"翔鶴さんが二人ほど食べない"って言ってたって!」

 

「それはやめてください!」

 

暁の発言に顔を真っ赤にし、翔鶴は必死に止める。

 

「そうよ、暁…いくらなんでもそれは…。」

 

それに雷が続くように、暁を説得する。

 

「舞鶴って…賑やかだね…?」

 

それを傍観していた零が、瑞鳳に向かって苦笑する。

 

「あ、あはは、そうだね…。いつものことと言えば、そうなのかなぁ…?あはは…。」

 

無論、瑞鳳もであった。

収拾が付かなくなりそうだと、悟った雪が手を一つ叩く。

 

「はい、そこまで。響を除いて、彼の紹介がまだだったね。橘花零君だ。」

 

「「はじめまして。」」

 

雪が紹介すると、暁、雷、電が挨拶をする。

 

「はじめまして、橘花零です。」

 

「私は暁よ!立派なレディになるんだから!よろしくね。」

 

「電は、いなづまなのです!」

 

「雷よ!かみなりじゃないわ!」

 

零に続いて、三人はそれぞれ自己紹介をした。

 

「響だよ、その活躍から不死鳥の名もあるんだ。島では挨拶できなかったからね。」

 

と、零を知っている響もついでにと、その輪に入った。

 

「えーと、暁、雷、響、電か。これからよろしくね!」

 

「「こちらこそ!」」

 

そんな会話が終われば。

 

「さて、遠征の編成だけれど、旗艦は五十鈴、続いて、瑞鳳、暁、雷、電、響の編成で行こうか。翔鶴は呼んだ手前、すまない。」

 

雪が翔鶴に頭を下げる。

 

「いえ、お気になさらず。零君がいるともなれば、()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

翔鶴は何を思い、何を悟ったのか、雪にそう告げた。

 

(瑞鳳が適任…か。)

 

雪はその言葉を胸中に仕舞い込み、響を見て。

 

「今回、零君には小型船に乗ってもらう。よって、響にはその小型船を曳航してほしい。頼めるかい?」

 

雪が問えば。

 

「ハラショー、任された。」

 

響は、二つ返事で返した。

そこで、暁はあることに気付く。

 

「そういえば、旗艦の五十鈴さんは?」

 

辺りを見渡すも、影はない。

 

「あぁ、演習中じゃないかな?多分、そろそろ来るはずだよ。」

 

「あ、そういえばそんなこと言ってたな…。」

 

雪の説明に、響が思い出し、全員が腑に落ちた。

 

「五十鈴さんが旗艦なら、安心なのです!」

 

電は零に向かって言った。

 

「え?」

 

零が訊き返すと、電は目を輝かせながら。

 

「五十鈴さんは、この鎮守府で一番強い軽巡なのです!」

 

『オレは、この鎮守府で一番なんだぜ?心配いらねぇ、見てろよ、零。世界水準を超えた軽巡の活躍をな!』

 

電の"一番強い"というワードで、何度目になるかわからない、言葉のリフレイン。

 

「あぁ…、なんとなくわかってきた…。」

 

零は続けざまに起こるリフレインを、何度も経験するうちに。

言葉も、その相手も、幼いながらに鮮明になってきていた。

 

「零君?」

 

心配になり、瑞鳳が零を見る。

 

「ううん、大丈夫。瑞鳳、なんとなくわかってきたよ。」

 

零は瑞鳳に向き直る。

 

「俺、瑞鳳の言う通り、艦娘達と一緒に居たんだよ。」

 

「え?」

 

瑞鳳と零のやり取りを、他の全員が見守る。

 

「俺、ここに来てから、色々思い出しててさ…。」

 

零の次に発する言葉を、瑞鳳は待つ。

 

「この舞鶴鎮守府って場所に来てから、言葉とか景色とか…今まで思い出せなかったモノが、どんどんわかっていく感じっていうのかな?なんだろ、モヤモヤが無くなるというか…。目の前に、現実みたいに、みんなの一言一言で現れるんだよ。見たことある光景っていうか、それが普通だったみたいに。ずっとおかしかったんだ、一気に剥がされたみたいで、気持ち悪い感じでさ。それが、ちょっとずつ解消されていってるんだよ。」

 

自身の感覚を、まだ達者とは言えないながらも、全員に説明するかのように。

思いの丈、否、今まで腑に落ちなかったモノを打ち明けた。

 

「零君、やっぱり、元帥の息子なんだね。」

 

瑞鳳は零を抱きしめる。

 

「いいんだよ、ゆっくり少しづつ思い出していこ?ね?あんなこともあったばかりで、考えも追いつかないだろうしさ。」

 

零に優しく、言葉をかける。

 

「瑞鳳さん…。」

 

翔鶴は信じられないモノを見たかのように、瑞鳳を見る。

零を除いて、それは全員だった。

 

「瑞鳳、変わったね、いいことだよ。」

 

響が呟く。

 

「え?」

 

瑞鳳は零を抱きしめたまま、響に視線を移す。

 

「いや、なんでもないよ。ただ、そう思っただけさ。」

 

響は微笑んだ。

そこに、ノックの音が部屋に転がる。

 

「五十鈴よ、演習終わったわ。提督、入ってもいいかしら?」

 

「あぁ、五十鈴、入っておいで。」

 

「失礼するわ…って、何?この雰囲気?」

 

「いや、気にしないでくれ。」

 

雪は五十鈴に手をヒラヒラして、気にしないように促す。

 

「あ…そう…。で?遠征だったわよね?決まったの?」

 

「あぁ、編成も決まった。旗艦は君だよ、五十鈴。で、六駆の四人と瑞鳳だ。」

 

「…そう。」

 

五十鈴は平然と、返事した。

 

「それと、彼、零君も連れて行ってあげてくれ。あの一帯の厳戒態勢は解除されたからさ。」

 

「わかったわ。あ、零君だっけ?長良型軽巡、五十鈴よ。島で以来ね。よろしく。」

 

「よ、よろしくお願いします。」

 

雪の説明のついでに、零に五十鈴は挨拶した。

五十鈴はなぜか、挨拶を返した零を不思議そうに見つめる。

 

「俺がどうかしましたか?」

 

零は視線に気付き、五十鈴に訊く。

 

「なんていうか、不思議な子ね。」

 

五十鈴は、至極真面目な顔でそう告げた。

 

「さて、ではヒトサンマルマルだね。五十鈴、食事は済ませてあるのかい?」

 

雪が時計を見て、演習終わりの五十鈴に尋ねる。

 

「えぇ、済ませてから来なさいって言ったの、提督じゃない。」

 

「あ、そうだったね…。」

 

五十鈴が呆れたように額に手を当て、雪を見れば、雪も頬を掻きながら、苦笑した。

そこから咳払いを一つ挟み、雪が号令もとい、命令を出す。

 

「それでは、早速向かって欲しい。頼めるかな?」

 

「「はっ!!」」

 

全員が一糸乱れぬ敬礼をした。

零も慣れないながらに、敬礼した。

そのワタワタとした慣れぬ敬礼に、全員が微笑んだ。

 

「さて、ヒトサンマルマル。作戦、開始。」

 

雪の号令と共に、全員が港に向かう。

そして、艤装の装備を終え。

零を小型船に乗せ、響が艤装と小型船を繋げば。

 

「準備出来たよ。」

 

「提督、いつでも出れるわよ。」

 

響が全員に言えば、旗艦である五十鈴が無線で雪に伝える。

 

[よし、全艦出撃せよ。]

 

「「出撃します!!」

 

雪の号令で、全員が大海原へと駆ける。

 

「零君、大丈夫かい?」

 

響はスピードを出している為、零を気遣う。

 

「うん、ありがとう響。にしても、艦娘ってすげーよな、やっぱり。」

 

「そうかな?」

 

零の感嘆に、響は照れ笑いを見せる。

 

「響が笑った?!」

 

「気の所為じゃないかい?」

 

雷が驚くのも束の間、笑っていないように見せる響に。

 

「んー、気の所為かぁ…。」

 

至極単純に考えるのをやめた。

しばらく進むと、五十鈴が瑞鳳に指示を出す。

 

「瑞鳳、索敵よろしく!」

 

「はい♪六五三空、発艦!始めて下さい♪」

 

索敵機、‪”‬彩雲‪”‬を弓から放つ。

 

「うっは!すっげー!!瑞鳳、すっげー!」

 

彩雲は、空高く上昇し、まっすぐに飛んだかと思えば。

空中で一回転し、水面ギリギリまでもを、飛びこなした。

零は、感激のあまり、語彙力など忘れて歓喜した。

無論その声は、瑞鳳の耳にも届いており。

 

「…敵影ありません♪」

 

飛行甲板に彩雲を誘導し、矢を戻した後に。

そう伝えたその顔は、耳まで真っ赤に染め上がっていた。

 

「良かったじゃない、すごいって言われてるわよ?」

 

五十鈴が揶揄うように、瑞鳳に笑顔を向ける。

 

「あ、あうぅ…。」

 

瑞鳳は更に顔を紅くし、さながら茹でダコのようになった。

 

(瑞鳳、あんたは今みたいに、明るい方がいいわよ。)

 

そんな瑞鳳を見ながら、胸中で思い、五十鈴は微笑んだ。

 

「零君は、ほんとに提督になるのです?」

 

電が零の方に振り向く。

 

「うん、なりたい。いや、なるよ。」

 

電を見る零のその目は、真剣そのもの。

それを感じ取り、電もまた真剣な眼差しを向ける。

 

「提督になるのなら、応援するのです。でも、簡単じゃないと思うのです。それでもきっと、零君なら出来ると思うのです!」

 

電は"簡単ではない"と言いながらも、零を応援する意思を見せた。

 

「ありがとう、電。」

 

零は、素直に感謝した。

会話を聞いていた、五十鈴も話に入る。

 

「あら、あんたも提督になったら、親子で海軍じゃない。もし本当にそうなったら、驚きね。」

 

五十鈴が微笑めば、零も。

 

「はい!そうなれるように頑張ります!」

 

そう、元気よく答えた。

 

「瑞鳳。」

 

五十鈴が前触れもなく、瑞鳳に話しかける。

 

「なんですか?」

 

瑞鳳はキョトンとする。

 

「直近のあんたは…なんだか活き活きとしてるわね。」

 

「普段と変わらないと思いますよ…?」

 

「いや、この前までのあんたは…。」

 

五十鈴はそこまで言って、言葉を飲み込むか悩んだ。

 

「…どうぞ言ってください、()()()。」

 

それを察して、瑞鳳が真顔で五十鈴を見る。

 

「それじゃ、遠慮なく。沈むことしか頭に無かったあんたが、そこまで立ち直った理由は何?舞鶴に来たときから、何年もそうだったじゃない。それが、どうしてこんなに…。」

 

そこまで言ったところで、瑞鳳を見た五十鈴は絶句した。

瑞鳳の()()()()()()()()()()

その目に、光は宿っていない。

五十鈴は言いようのない、空気と圧に呑まれた。

そんなことは露知らず、零と六駆は別の話で盛り上がっていた。

だが、五十鈴のその耳には、そんな会話は入って来ない。

それほどまでに、瑞鳳の圧は凄まじいモノである。

 

「私は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう思って、()()()()()()()()()()()。」

 

瑞鳳のその圧を交えた答えに、五十鈴は胸中で焦りを感じた。

 

(それじゃ、()()()()()()()()()()()()()…!あの子が居なくなった時…どうなるのよ…!)

 

五十鈴はそれを顔には出さないように、必死に耐えた。

 

「だから、今の私があるのは、零君のおかげです♪生きる理由をくれましたから♪」

 

そんな五十鈴を置いて、更にそんなことを言った。

 

(バカね…!()()()()()()()()()()()()…!)

 

五十鈴は後戻りが出来ない所まで来ていると、歯ぎしりした。

 

「…そう。ま、あんたがそれで良いなら、私は何も言わないわ…。」

 

何とかそれだけを口にした五十鈴は、これ以上は何も言わないと決めた。

そんな会話をしていれば。

 

「…着いたわよ。」

 

五十鈴が島の近くまで来ていることを、全員に伝える。

 

「話してたら、もう着いたのです。」

 

電が言いながら、ふと五十鈴を見る。

 

「い、五十鈴さん、凄い汗なのです!大丈夫なのです?」

 

「え?え、えぇ、大丈夫よ。ありがとう、速度を出してたからかしらね。」

 

五十鈴は平然を装うのが、精一杯ながらも、電達に心配をかけないように振る舞った。

 

「あ、ほんとですね…?五十鈴さん、無理はしないでくださいね?」

 

「あ、ありがとう…。」

 

誰のせいだと思って(ふざけないで頂戴)…!)

 

瑞鳳の心無い心配に、怒りを覚えるもなんとか堪えた。

 

「さて、到着だよ。零君、降りれるかい?」

 

「うん、大丈夫。」

 

響が零を気遣い、零が小型船から降りるのを待つ。

そして、全員が島に上陸すると。

 

「さてと…うわぁ…酷いわね…。」

 

雷は、渋い顔をしながら呟く。

 

「…ここに来たときはもっと…。」

 

五十鈴が言えば、瑞鳳も俯く。

 

「こっちの方に、俺の家があったはず。」

 

零は悔やむ二人を置いて、坂を登り始める。

 

「ちょっと、零君!待って、私も行く!」

 

瑞鳳が、その後ろ姿を追いかける。

 

「私達はこっちを見ましょ。」

 

「「了解!」」

 

五十鈴は二人を見送り、六駆と共に反対方向へと向かう。

 

(二人だけの方がいいこともあるわ…よね?)

 

先ほどのやり取りを思い出し、五十鈴は再び冷や汗をかいた。

 

 

 

 

 

その頃の鎮守府では、ただならぬ状況に見舞われていた

 

「海野少将、視察に来ましたぞ。」

 

「私は呼んでいませんが…。」

 

雪の元に訪れた、巨漢の男。

 

「はぁ…また話にならんのか。」

 

そして、執務室で銃を構える。

 

指宿(いぶすき)中将…!何を…!」

 

「海野少将、貴官が悪いんだぞ…?」

 

 

――バァン!!

 

 

執務室に、否、鎮守府に銃声の音が響き渡る。

 

 

「提督!なんだ、今の音は!」

 

「提督…え?!」

 

偶然近くを通っていた長門と、赤城が音を聞きつけ執務室に入る。

執務室の光景を見た赤城は、目を見開いた。

 

「おやおや、ここの艦娘か。」

 

長門と赤城の目前には。

銃を構えた指宿と、壁に空いた銃撃痕。

そして、額に銃を突きつけられている雪の姿だった。

 

「貴様、提督に何をしている?」

 

長門は冷静に、指宿を見る。

 

「そこを動くなよ?艦娘。動けば、貴様らの提督の命はないからな?」

 

指宿の笑みは、長門と赤城には薄汚く映った。




如何だったでしょうか?
今回は少し長めでしたね。

それでは、また次回に。
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