8月も終わりですね…。
更新が最近は遅くて、申し訳ない限りです…。
頑張りますので、ご容赦ください。
それでは、本編どうぞ。
四人が執務室に向かう途中、廊下で1人の艦娘が声を掛ける。
「あら?一航戦の先輩方に、瑞鳳さん、それから…あの時の少年ですね。皆さん揃ってどうされたんですか?」
「翔鶴さん、この子が妖精さんが見えるみたいで。」
「まぁ!凄いことですね!」
赤城の説明に、翔鶴は手を一つ叩き、喜ぶかのように微笑んだ。
「あ、自己紹介がまだでしたね。五航戦、翔鶴です。島の時以来ですね。」
「あの時はありがとうございました、橘花零です。」
翔鶴が零に挨拶をすれば、零も頭を下げる。
(あんなことがあってから…日も浅いのに、無理してるのかしら…。)
胸中で零を案じていれば、瑞鳳の声で我に返る。
「これは提督に報告しなきゃって、執務室に向かってるんです。」
瑞鳳が付け足すと、翔鶴は気まずそうに。
「実は、私も提督から招集命令を受けてるんです。」
翔鶴の言葉に、瑞鳳が考えるように手を顎に当てる。
「私達のところには、何も通達来てないわね。」
「恐らく…瑞鳳さんが呼ばれるとは…。」
翔鶴が瑞鳳を困ったような顔で見る。
その様子を、赤城と加賀も不思議そうに眺める。
「あの島にもう一度行くみたいでして…。その、事後経過観察とでも言うのでしょうか…。」
翔鶴は自身の説明が過不足であると、自覚しながら伝える。
零が居る手前、”島民の亡骸の回収が終わったから、復旧可否確認に行く”とは、到底言えるはずもない。
「なんとなくわかりました…。」
翔鶴の説明で、瑞鳳は察した。
零は1人、話についていけずに呆然としていた。
「ごめんね、難しい話してたね。零君は気にしなくて大丈夫だよ。」
瑞鳳が腑に落ちない零の頭を撫でながら、優しく諭す。
「皆さん、執務室に向かわれるのでしたら、私もご一緒しても?」
「えぇ、どうせならそうしましょう。」
「ありがとうございます。」
翔鶴が訊けば、全員が受け入れた。
そして、五人が執務室にそのまま向かい。
「提督、翔鶴です。瑞鳳さん達も居ますが、大丈夫でしょうか?」
「あぁ、翔鶴かい?ん、丁度いいかな、入って来ていいよ。」
雪の返事を確認し、執務室のドアをノックした翔鶴に続き、全員が中に入る。
「「失礼します。」」
「翔鶴、急に呼び出して申し訳なかったね。それと、瑞鳳達はどうしたんだい?」
雪が不思議そうに見つめれば、瑞鳳が雪のデスクに駆け寄る。
「零君は妖精さんが見れるんです!」
その迫真の声に、雪は驚きつつも。
「そ、そうなのか、と、とりあえず落ち着こう?ね?」
「す、すみません…。」
なんとか、瑞鳳を落ち着かせれば、その瑞鳳は申し訳無さそうに俯いた。
しかし、そこは提督である。
「ふふっ、瑞鳳が驚くのも無理は無いさ、そんなに落ち込むことはないよ。そうか、零君にも見えるのか。」
「は、はい、間違いが無いなら…。」
零は雪に問われ、緊張しながらもそう答えた。
「さすが、元帥の息子と言ったところか。それにしても、本当に何の因果だろうね。」
雪の呟きに、零が首を傾げる。
「いやいや、元帥の息子がここに居るという事実がね。それより、翔鶴を呼び出した理由だけれど。」
雪が本題とばかりに、デスクの前に向き直る。
艦娘は全員、無意識に整列し、姿勢を正す。
…零は置いていかれ、呆然としているが。
「零君は…いや、ここに居る以上は、君も聞くといい。」
雪は覚悟を決めんばかりに、目を閉じ、大きく息を吐く。
「件の島の残骸捜索と、現状確認をしてもらう。」
雪の一言に、全員が唾を飲み込む。
「提督、その残骸捜索とは…?」
翔鶴が尋ねれば。
「あぁ、深海棲艦の残骸、それから…島のね。」
雪は言葉を選んだ。
その結果、言葉足らずになるも、全員が察せた。
翔鶴が説明した時と、同様である。
「さて、そこで零君。」
おもむろに雪が零を名指す。
「なんですか…?」
零が恐る恐る聞けば。
「どうだい?君も行きたいかい?」
雪が零に、真剣な眼差しを向ける。
「俺は…。」
零が拳を握る。
「俺は…提督になりたいです。」
問いとは関係があるかわからない返答を出し、零が雪を見つめる。
そして。
「…続きを。」
雪もまた、零を同じように見る。
「俺は、提督になって、艦娘に恩返しがしたいんです。それに、母さんに墓も立ててません。」
「それで?」
言葉を区切る零に、雪は"それだけじゃないだろう"という眼差しを向ける。
「俺は、あの惨状を二度と見ない為に…!他の人にも見せない為に…!立派な提督になって見せる…!母さんに、そう伝えたいです…。だから…もし、島に行くなら、俺も連れて行ってください…!」
零はその目に涙を浮かべ、吐き出すように、雪に言い放った。
その姿に、感銘を受けたとばかりに雪が口角を上げる。
「よく言ったじゃないか、零君。それでこそ、男の子だよ。よし、提督への第一歩だ、いいよ、君も行くといい。」
零はその言葉を聞いて、笑顔を雪に向ける。
雪もまた、笑顔を返す。
「良かったね、零君!!」
瑞鳳は一際、喜んでいた。
(そう…前を向くのね。)
翔鶴だけは、神妙な顔をしていた。
「翔鶴さん?」
赤城が声をかければ、我に返る翔鶴。
「あ、いえ、編成はどうなるのかなって。」
必死に誤魔化す翔鶴に、雪が編成内容を伝える。
否、翔鶴が誤魔化しているとは、雪も気づいていない。
「うん、ついでに遠征も済ませたいからね。」
雪は、デスクの上にある書類の山から、一枚の紙を出す。
「編成は、旗艦が五十鈴、続いて暁、雷、響、電、あとは翔鶴か瑞鳳か…。」
雪が頬に手を当て、デスクに肘をつき悩んでいる折に。
「失礼するわ!司令官、第六駆逐隊、入ってもいいかしら?」
「あ、丁度揃ったね。いいよ、入ってきて。」
「「失礼します!」」
六駆の四人が揃って入るなり、雪は姿勢を威厳あるものに戻す。
「やっぱり、司令官はレディね!」
「ありがとう、暁。」
この暁のためである。
暁は、"レディ"という響きに憧れを抱いているのか、事あるごとに雪を真似ようとする。
よって、雪も自然と気が抜けなくなっていた。
「私達が呼ばれた理由はなんなのです?」
電が雪に訊くと、雪は一つ頷き。
「件の島に行くついでに、遠征をお願いしたくてね。」
雪が言えば。
「なら、このレディである私の出番ね!」
「ハラショー…暁だけじゃないよ…。」
「そうよ!私だっているんだから!」
「なのです!」
六駆の四人の言い合いが始まり。
「提督が困ってしまいますから、落ち着きましょう?」
赤城が鎮火のために、手を叩き落ち着かせる。
すると、四人は黙り込み。
「「すみませんでした…。」」
一拍置いて、謝罪した。
「ま、元気なのは良しとしよう。赤城と加賀は下がっていいよ。大方、瑞鳳に付いて来たんだろう?」
「「はっ!」」
「うん、また指示を出すから、それまで部屋で待機でもいいし、訓練でもいい。任せるよ。」
「「失礼します!」」
赤城と加賀は、雪に敬礼をして執務室を出た。
一航戦の二人が去ったところで、雪は再び本題に入る。
「さて、遠征だけれど…瑞鳳か翔鶴で迷っているんだ。空母ならどちらがいい?」
六駆に聞けば。
「ここは、燃費のいい瑞鳳でいいんじゃないかな?」
その響の一言は、翔鶴に刺さった。
「うっ…。まるで、私が大食いみたいな…。」
翔鶴は、知らぬ間に、墓穴を掘っていることに気が付いていない。
「なのです!一航戦の二人と同じくらい食べるのです!」
「ってことは、翔鶴もやっぱり…。」
電と響に続いて。
「一航戦の二人に言わなきゃ!"翔鶴さんが二人ほど食べない"って言ってたって!」
「それはやめてください!」
暁の発言に顔を真っ赤にし、翔鶴は必死に止める。
「そうよ、暁…いくらなんでもそれは…。」
それに雷が続くように、暁を説得する。
「舞鶴って…賑やかだね…?」
それを傍観していた零が、瑞鳳に向かって苦笑する。
「あ、あはは、そうだね…。いつものことと言えば、そうなのかなぁ…?あはは…。」
無論、瑞鳳もであった。
収拾が付かなくなりそうだと、悟った雪が手を一つ叩く。
「はい、そこまで。響を除いて、彼の紹介がまだだったね。橘花零君だ。」
「「はじめまして。」」
雪が紹介すると、暁、雷、電が挨拶をする。
「はじめまして、橘花零です。」
「私は暁よ!立派なレディになるんだから!よろしくね。」
「電は、いなづまなのです!」
「雷よ!かみなりじゃないわ!」
零に続いて、三人はそれぞれ自己紹介をした。
「響だよ、その活躍から不死鳥の名もあるんだ。島では挨拶できなかったからね。」
と、零を知っている響もついでにと、その輪に入った。
「えーと、暁、雷、響、電か。これからよろしくね!」
「「こちらこそ!」」
そんな会話が終われば。
「さて、遠征の編成だけれど、旗艦は五十鈴、続いて、瑞鳳、暁、雷、電、響の編成で行こうか。翔鶴は呼んだ手前、すまない。」
雪が翔鶴に頭を下げる。
「いえ、お気になさらず。零君がいるともなれば、
翔鶴は何を思い、何を悟ったのか、雪にそう告げた。
(瑞鳳が適任…か。)
雪はその言葉を胸中に仕舞い込み、響を見て。
「今回、零君には小型船に乗ってもらう。よって、響にはその小型船を曳航してほしい。頼めるかい?」
雪が問えば。
「ハラショー、任された。」
響は、二つ返事で返した。
そこで、暁はあることに気付く。
「そういえば、旗艦の五十鈴さんは?」
辺りを見渡すも、影はない。
「あぁ、演習中じゃないかな?多分、そろそろ来るはずだよ。」
「あ、そういえばそんなこと言ってたな…。」
雪の説明に、響が思い出し、全員が腑に落ちた。
「五十鈴さんが旗艦なら、安心なのです!」
電は零に向かって言った。
「え?」
零が訊き返すと、電は目を輝かせながら。
「五十鈴さんは、この鎮守府で一番強い軽巡なのです!」
『オレは、この鎮守府で一番なんだぜ?心配いらねぇ、見てろよ、零。世界水準を超えた軽巡の活躍をな!』
電の"一番強い"というワードで、何度目になるかわからない、言葉のリフレイン。
「あぁ…、なんとなくわかってきた…。」
零は続けざまに起こるリフレインを、何度も経験するうちに。
言葉も、その相手も、幼いながらに鮮明になってきていた。
「零君?」
心配になり、瑞鳳が零を見る。
「ううん、大丈夫。瑞鳳、なんとなくわかってきたよ。」
零は瑞鳳に向き直る。
「俺、瑞鳳の言う通り、艦娘達と一緒に居たんだよ。」
「え?」
瑞鳳と零のやり取りを、他の全員が見守る。
「俺、ここに来てから、色々思い出しててさ…。」
零の次に発する言葉を、瑞鳳は待つ。
「この舞鶴鎮守府って場所に来てから、言葉とか景色とか…今まで思い出せなかったモノが、どんどんわかっていく感じっていうのかな?なんだろ、モヤモヤが無くなるというか…。目の前に、現実みたいに、みんなの一言一言で現れるんだよ。見たことある光景っていうか、それが普通だったみたいに。ずっとおかしかったんだ、一気に剥がされたみたいで、気持ち悪い感じでさ。それが、ちょっとずつ解消されていってるんだよ。」
自身の感覚を、まだ達者とは言えないながらも、全員に説明するかのように。
思いの丈、否、今まで腑に落ちなかったモノを打ち明けた。
「零君、やっぱり、元帥の息子なんだね。」
瑞鳳は零を抱きしめる。
「いいんだよ、ゆっくり少しづつ思い出していこ?ね?あんなこともあったばかりで、考えも追いつかないだろうしさ。」
零に優しく、言葉をかける。
「瑞鳳さん…。」
翔鶴は信じられないモノを見たかのように、瑞鳳を見る。
零を除いて、それは全員だった。
「瑞鳳、変わったね、いいことだよ。」
響が呟く。
「え?」
瑞鳳は零を抱きしめたまま、響に視線を移す。
「いや、なんでもないよ。ただ、そう思っただけさ。」
響は微笑んだ。
そこに、ノックの音が部屋に転がる。
「五十鈴よ、演習終わったわ。提督、入ってもいいかしら?」
「あぁ、五十鈴、入っておいで。」
「失礼するわ…って、何?この雰囲気?」
「いや、気にしないでくれ。」
雪は五十鈴に手をヒラヒラして、気にしないように促す。
「あ…そう…。で?遠征だったわよね?決まったの?」
「あぁ、編成も決まった。旗艦は君だよ、五十鈴。で、六駆の四人と瑞鳳だ。」
「…そう。」
五十鈴は平然と、返事した。
「それと、彼、零君も連れて行ってあげてくれ。あの一帯の厳戒態勢は解除されたからさ。」
「わかったわ。あ、零君だっけ?長良型軽巡、五十鈴よ。島で以来ね。よろしく。」
「よ、よろしくお願いします。」
雪の説明のついでに、零に五十鈴は挨拶した。
五十鈴はなぜか、挨拶を返した零を不思議そうに見つめる。
「俺がどうかしましたか?」
零は視線に気付き、五十鈴に訊く。
「なんていうか、不思議な子ね。」
五十鈴は、至極真面目な顔でそう告げた。
「さて、ではヒトサンマルマルだね。五十鈴、食事は済ませてあるのかい?」
雪が時計を見て、演習終わりの五十鈴に尋ねる。
「えぇ、済ませてから来なさいって言ったの、提督じゃない。」
「あ、そうだったね…。」
五十鈴が呆れたように額に手を当て、雪を見れば、雪も頬を掻きながら、苦笑した。
そこから咳払いを一つ挟み、雪が号令もとい、命令を出す。
「それでは、早速向かって欲しい。頼めるかな?」
「「はっ!!」」
全員が一糸乱れぬ敬礼をした。
零も慣れないながらに、敬礼した。
そのワタワタとした慣れぬ敬礼に、全員が微笑んだ。
「さて、ヒトサンマルマル。作戦、開始。」
雪の号令と共に、全員が港に向かう。
そして、艤装の装備を終え。
零を小型船に乗せ、響が艤装と小型船を繋げば。
「準備出来たよ。」
「提督、いつでも出れるわよ。」
響が全員に言えば、旗艦である五十鈴が無線で雪に伝える。
[よし、全艦出撃せよ。]
「「出撃します!!」
雪の号令で、全員が大海原へと駆ける。
「零君、大丈夫かい?」
響はスピードを出している為、零を気遣う。
「うん、ありがとう響。にしても、艦娘ってすげーよな、やっぱり。」
「そうかな?」
零の感嘆に、響は照れ笑いを見せる。
「響が笑った?!」
「気の所為じゃないかい?」
雷が驚くのも束の間、笑っていないように見せる響に。
「んー、気の所為かぁ…。」
至極単純に考えるのをやめた。
しばらく進むと、五十鈴が瑞鳳に指示を出す。
「瑞鳳、索敵よろしく!」
「はい♪六五三空、発艦!始めて下さい♪」
索敵機、”彩雲”を弓から放つ。
「うっは!すっげー!!瑞鳳、すっげー!」
彩雲は、空高く上昇し、まっすぐに飛んだかと思えば。
空中で一回転し、水面ギリギリまでもを、飛びこなした。
零は、感激のあまり、語彙力など忘れて歓喜した。
無論その声は、瑞鳳の耳にも届いており。
「…敵影ありません♪」
飛行甲板に彩雲を誘導し、矢を戻した後に。
そう伝えたその顔は、耳まで真っ赤に染め上がっていた。
「良かったじゃない、すごいって言われてるわよ?」
五十鈴が揶揄うように、瑞鳳に笑顔を向ける。
「あ、あうぅ…。」
瑞鳳は更に顔を紅くし、さながら茹でダコのようになった。
(瑞鳳、あんたは今みたいに、明るい方がいいわよ。)
そんな瑞鳳を見ながら、胸中で思い、五十鈴は微笑んだ。
「零君は、ほんとに提督になるのです?」
電が零の方に振り向く。
「うん、なりたい。いや、なるよ。」
電を見る零のその目は、真剣そのもの。
それを感じ取り、電もまた真剣な眼差しを向ける。
「提督になるのなら、応援するのです。でも、簡単じゃないと思うのです。それでもきっと、零君なら出来ると思うのです!」
電は"簡単ではない"と言いながらも、零を応援する意思を見せた。
「ありがとう、電。」
零は、素直に感謝した。
会話を聞いていた、五十鈴も話に入る。
「あら、あんたも提督になったら、親子で海軍じゃない。もし本当にそうなったら、驚きね。」
五十鈴が微笑めば、零も。
「はい!そうなれるように頑張ります!」
そう、元気よく答えた。
「瑞鳳。」
五十鈴が前触れもなく、瑞鳳に話しかける。
「なんですか?」
瑞鳳はキョトンとする。
「直近のあんたは…なんだか活き活きとしてるわね。」
「普段と変わらないと思いますよ…?」
「いや、この前までのあんたは…。」
五十鈴はそこまで言って、言葉を飲み込むか悩んだ。
「…どうぞ言ってください、
それを察して、瑞鳳が真顔で五十鈴を見る。
「それじゃ、遠慮なく。沈むことしか頭に無かったあんたが、そこまで立ち直った理由は何?舞鶴に来たときから、何年もそうだったじゃない。それが、どうしてこんなに…。」
そこまで言ったところで、瑞鳳を見た五十鈴は絶句した。
瑞鳳の
その目に、光は宿っていない。
五十鈴は言いようのない、空気と圧に呑まれた。
そんなことは露知らず、零と六駆は別の話で盛り上がっていた。
だが、五十鈴のその耳には、そんな会話は入って来ない。
それほどまでに、瑞鳳の圧は凄まじいモノである。
「私は、
瑞鳳のその圧を交えた答えに、五十鈴は胸中で焦りを感じた。
(それじゃ、
五十鈴はそれを顔には出さないように、必死に耐えた。
「だから、今の私があるのは、零君のおかげです♪生きる理由をくれましたから♪」
そんな五十鈴を置いて、更にそんなことを言った。
(バカね…!
五十鈴は後戻りが出来ない所まで来ていると、歯ぎしりした。
「…そう。ま、あんたがそれで良いなら、私は何も言わないわ…。」
何とかそれだけを口にした五十鈴は、これ以上は何も言わないと決めた。
そんな会話をしていれば。
「…着いたわよ。」
五十鈴が島の近くまで来ていることを、全員に伝える。
「話してたら、もう着いたのです。」
電が言いながら、ふと五十鈴を見る。
「い、五十鈴さん、凄い汗なのです!大丈夫なのです?」
「え?え、えぇ、大丈夫よ。ありがとう、速度を出してたからかしらね。」
五十鈴は平然を装うのが、精一杯ながらも、電達に心配をかけないように振る舞った。
「あ、ほんとですね…?五十鈴さん、無理はしないでくださいね?」
「あ、ありがとう…。」
(
瑞鳳の心無い心配に、怒りを覚えるもなんとか堪えた。
「さて、到着だよ。零君、降りれるかい?」
「うん、大丈夫。」
響が零を気遣い、零が小型船から降りるのを待つ。
そして、全員が島に上陸すると。
「さてと…うわぁ…酷いわね…。」
雷は、渋い顔をしながら呟く。
「…ここに来たときはもっと…。」
五十鈴が言えば、瑞鳳も俯く。
「こっちの方に、俺の家があったはず。」
零は悔やむ二人を置いて、坂を登り始める。
「ちょっと、零君!待って、私も行く!」
瑞鳳が、その後ろ姿を追いかける。
「私達はこっちを見ましょ。」
「「了解!」」
五十鈴は二人を見送り、六駆と共に反対方向へと向かう。
(二人だけの方がいいこともあるわ…よね?)
先ほどのやり取りを思い出し、五十鈴は再び冷や汗をかいた。
その頃の鎮守府では、ただならぬ状況に見舞われていた
「海野少将、視察に来ましたぞ。」
「私は呼んでいませんが…。」
雪の元に訪れた、巨漢の男。
「はぁ…また話にならんのか。」
そして、執務室で銃を構える。
「
「海野少将、貴官が悪いんだぞ…?」
――バァン!!
執務室に、否、鎮守府に銃声の音が響き渡る。
「提督!なんだ、今の音は!」
「提督…え?!」
偶然近くを通っていた長門と、赤城が音を聞きつけ執務室に入る。
執務室の光景を見た赤城は、目を見開いた。
「おやおや、ここの艦娘か。」
長門と赤城の目前には。
銃を構えた指宿と、壁に空いた銃撃痕。
そして、額に銃を突きつけられている雪の姿だった。
「貴様、提督に何をしている?」
長門は冷静に、指宿を見る。
「そこを動くなよ?艦娘。動けば、貴様らの提督の命はないからな?」
指宿の笑みは、長門と赤城には薄汚く映った。
如何だったでしょうか?
今回は少し長めでしたね。
それでは、また次回に。